薬屋のおやじのボヤキ

公的健康情報にはあまりにも嘘が多くて、それがためにストレスを抱え、ボヤキながら真の健康情報をつかみ取り、発信しています。

今月の笑い話<チャイナ版>(2月)

2013年02月28日 | 笑い話&回文物語

<笑話:1000> 鄧小平のドライブ

ある日、鄧小平は楊尚昆と江沢民をともなって郊外にドライブに行きました。

北京市を出るとすぐに後ろからロバが着いてくるのに気がつきました。振り切ろうとしてもどうしても振り切れません。

鄧小平は不吉に感じて光沢民に言いました:「江さん、降りて行ってロバに言いなさい、着いてくるな、と」

江沢民は下車して長い時間ロバと話をしていましたが、功を奏せず車を出すとやっぱり走って着いてきます。

鄧小平は不機嫌になって楊尚昆に言いました:「楊どん、降りて行ってロバに言ってくれ、着いてくるな、と」

楊尚昆は下車して長い時間ロバと話をしていましたが、功を奏せず車を出すとまたしても走って着いてきます。

そこで鄧小平は自ら下車してロバの前に立ち、ロバの耳に口を寄せてこっそり一言だけ言いました。それを聞くとロバは向きを変えて逃げるように行ってしまいました。

すると鄧小平は言いました:「オレはこう言ったのさ。俺たちが走っているのは社会主義の道なんだぞ、とな」

※舜氏曰く:「このロバ、よっぽど足が速かったのか、車が遅かったのか。いずれにせよ中国的社会主義の恐ろしさをよく知っていたようです。

(選者解説:中国指導者の肩書きはいろいろあって分かりにくく、小平、江沢民、楊尚昆の関係を選者も知りませんでした。そこで、ウイキペディアから得たにわか知識で以下に簡単に解説しておきます。)
・鄧小平
 文化大革命終了後、改革開放政策を推進して社会主義経済の下に市場経済の導入を図り、中国の近代化の礎を築いた。1978-1992年の間、最高指導者。1997年死去。
・江沢民
 小平が抜擢した後継者。1992-2004年の間、最高指導者。2011年死去。
・楊尚昆
 小平を支えた人物。1988-1993年の間、国家主席の肩書き。1998年死去。

 

<笑話:999>江沢民の揮毫

江沢民は引退後、終日することもなく気が塞いでいました。

ある日、彼は北京の全衆徳北京ダック店(鴨焼き店)で飲んだり食ったりして満足したので、その店の題字を揮毫することにしました。

全衆徳北京ダック店の店主はそれを聞いて墨、硯、筆、紙の文具四宝を持ってこさせました。

江沢民は遠慮せず、筆を持つとさっささっさと八文字を大書きしました。

周りでそれを見ていた人は床を転げ回って喜びました。

その8つの大きな文字とは:
「天下第一のアヒル 江沢民」(天下第一鴨江沢民)

※舜氏曰く:「昨年中国に行って、毛沢東らの史跡を回ったのですが、そのすべての巨大な石碑の題字はすべて江沢民が揮毫し、“江沢民”と署名してありました。異常なほどでした。江沢民は“天下第一焼鴨”と書いたつもりだったのでしょうが、“焼”の字を抜かしてしまったんですね。自己顕示欲の強い、アヒル顔の江沢民を比喩する中国版のアネクドートです」
(選者注:原文中、衆、焼、そして沢と鴨の一部は漢字変換できませんでしたので、常用漢字に置きなおしました。)

 

<笑話:994>正月の長期休暇、どうやって過ごす?

香港に行くのは珍しくもなく、

マカオの行くと賭の途中で帰れなくなり、

東北地方は季節的に不可だし、

海南島に行くと無駄遣いばかりさせられるし、

青海省やチベットに行くと高山病になるし、

江南地方に行くと冷たい雨に降られるし、

北京に行けば渋滞で押しつぶされるし、

上海に行けばたくさんの人が苦しんで毎日酔っぱらって家に帰るし、

アトラクションを見に行けば入場料が高いし、

山に登ると足が痛くなるし、

海辺に行くと人がわあわあ騒いでいるし、

ミニブログで遊ぶのもつまらないし、

もっともいいのは家にいて、

ひたすら寝るに限る。

※舜氏曰く:「来週(2月)9日から中国は春節=旧正月の休みになります。この休みに数億人が大移動するのだそうです。寝正月を決め込むのは日本人だけではなさそうです…」

 

<笑話:993>ワイシャツのサイズが合わない

夫:「お前が買ってくるワイシャツのサイズが合わない。いつも大き過ぎる」

妻:「知ってるわよ。ワイシャツを持ってくる女店員に見抜かれたくないからよ、私の夫がそんなに小さくて干からびてるって…。恥をかきたくないわ」

舜氏曰く:「中国人は面子を大事にします。旦那さん、ワイシャツくらい自分で買いに行きましょう」

 

<笑話:998>綺麗な看護師さん

綺麗な看護師さんが医者に言いました:

「病人の脈を測ると、いつも脈が速くなるんです。どうしたらいいでしょうか?」

医者:「患者の眼を塞いでから測りなさい」

※舜氏曰く:「そんなことしたって、手を握られたら同じですよ、先生!」

コメント

アトピー性皮膚炎の本質に迫る。そこに改善策が見えてくる。

2013年02月27日 | アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の本質に迫る。そこに改善策が見えてくる。

 アトピー性皮膚炎は、「アイスクリームのてんぷら」だと、過去記事で書きました。
 体の芯は冷えており、皮膚が炎症を起こして熱くなっているというものです。
 根本原因は、たいてい腸内環境の悪化などによる体の冷えにあるのですが、これを正常化するには根気良く年単位で取り組まねばなりませんから、とりあえずは対症療法として、皮膚の異常をどれだけかでも正し、不十分ながらも健全化させねばなりません。

 緊急療法としては、よく知られたステロイド剤の塗布です。炎症を鎮める即効薬です。
 ですが、ステロイド剤は浸透力が強く、皮膚深部にも入り込み、血液を介して全身に入り込みます。すると、本来、ステロイドは副腎で作られるホルモンですから、副腎はステロイドを生産するのを止めてしまいます。そして、ステロイド剤の塗布を止めたら、再び副腎がステロイドを生産してくれるとよいのですが、残念ながら、そうはならないのです。
 そもそもアトピーの方は、ステロイドの出が悪い(だから炎症が酷くなる)上に、副腎がいったんステロイドの生産を止めると、その生産が復活するには少なくとも1か月かかってしまいます。よって、皮膚の炎症を鎮める手立てがなくなってしまい、前より酷い症状に悩まされることになってしまうのです。これを、リバウンドと言います。
 ですから、炎症を鎮める基本は、副腎を鍛えて自前のステロイドを安定的に十分に出せるようにせねばなりません。それには、ビタミンであればパントテン酸の補給にどれだけかの効果があるものの、最も効果的なのは、皮膚への寒冷刺激です。
 このことについては、小山内博氏著「生活習慣病に克つ新常識」からの引用や要約を中心にして書きました「 肝臓病の元凶は飽食暖衣 」の中で、寒冷刺激の重要性について触れましたが、アトピーも全く同様で、これも「 アトピーには“水かぶり”が一番
」 で詳細に解説していますから、一度ご覧なさってください。
 また、冷水シャワーのやり方については、次の過去記事(2011.5.23)で解説しましたから、併せて御覧なさってください。
   今がチャンス!始めましょう、冷水シャワー

 次に、皮膚の保湿です。対症療法はこれが全てと言ってよいでしょう。
 と言いますのは、アトピー性皮膚炎は、皮膚の表皮細胞の死期を異常に早めている現象と言えるからです。のちほど触れますが、ターンオーバーが異常に早いのです。
 正常な皮膚におけるこのことについては、前回の記事「 ヒトの皮膚呼吸、皮膚の吸収・排泄機能をもっと高く評価すべきです 」で書いたとおりでして、皮膚の機能が順調に働いていれば、外気から酸素が得られますし、皮膚表面から皮膚常在菌が作ってくれた有機酸という栄養が得られますから、表皮細胞はかなり長く生き長らえることができます。
 これによって、しっかりしたバリアを形成することができるのです。
 ですから、アトピー性皮膚炎にあっても、皮膚に保湿剤を与えるだけで表皮に潤いが出て、酸素と有機酸の浸透がアップしますから、表皮細胞は以前よりも長く生き長らえることができ、バリア形成の向上にけっこう役立つのです。

 ここで、アトピー性皮膚炎の皮膚と正常な皮膚の違いを少々詳しくみてみましょう。

     

 皮膚は、生きた細胞層の真皮と死につつある細胞層の表皮から成り立っています。
 真皮には血管が入り込んでいて、正常な皮膚であれば、酸素や栄養物が十分に供給されています。よって、表皮最下層にある基底層(この層が細胞分裂して表皮層を順次作る)は、真皮の組織液から必要な物質を受け取って健全な表皮細胞を作ってくれ、これが順次体表側へ押し上げられていくなかで、表皮細胞は自前の保湿剤であるセラミドなどの保湿剤を放出して表皮の組織液を作り出し、表皮細胞を潤します。
 こうして、垢となって剥がれ落ちる体表まで潤い、皮脂腺から出る皮脂が体表を満遍なく覆って、そこに住まう皮膚常在菌が皮脂や垢を食べて有機酸を出し、これでもって皮膚表面を弱酸性に保ち、黴菌の増殖を阻止してくれています。
 ところが、アトピーの場合は、炎症という肉体的にも精神的にも高いストレスがかかることにより、毛根と真皮の間にある立毛筋が緊張しがち(いわゆるサメ肌ないしは鳥肌状態)になっており、毛根と真皮周辺の血液循環、組織液循環が悪化しています。
 また、アトピーの根本原因から来る体の冷えにより、そもそも末梢血流が全体に悪くなっていますから、これにいっそう
拍車をかけます。
 そうなると、表皮最下層にある基底層の働きが大きく阻害され、健全な表皮細胞が作れなくなります。
 その結果、表皮細胞は貧弱なものとなり、かつ、長く生き長らえることができず、いたる所で細胞間に隙間ができてしまって表皮の組織液は枯れ気味になり、この悪循環で、表皮細胞の死期がより早まります。
 これを察知した基底層は、盛んに細胞分裂をして、その補充をしようとするでしょうが、急げば急ぐほど不完全な細胞しか作れず、ここで更なる悪循環が起きます。
 加えて、ひび割れた皮膚表面であっては、皮脂で覆いつくすことが難しくなり、バリア機能が低下して、黴菌や化学物質が侵入しやすくなってしまいます。
 こうして、酷く炎症を起こした状態がいつまでも続くことになってしまうのです。
 健全な皮膚のターンオーバー(表皮全体の入れ替わり)は28日と言われ、アトピーの場合は、それが半分の14日間と言われているのは、このようにして、表皮細胞の死期が異常に早まっているからなのです。

 ところが、これだけに止まりません。
 炎症は痒みを伴いますから、どうしても掻きむしってしまい、これによって、皮脂腺や汗腺の組織が損傷します。
 皮脂腺が損傷すれば、十分な皮脂が出なくなり、皮膚表面はよりかさつきます。
 汗腺が損傷すれば、通常は排出されることが少ないカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル・イオンが汗となって流出します。また、掻きむしりにより、生きた細胞が一度に大量に壊されますから、このとき細胞内に特化して存在するカリウム、マグネシウム・イオンがどっと流出します。
 これらのミネラル・イオンが実は大変な問題を起こすのです。
 正常な汗のpHは4~6の酸性ですが、これらのイオンは汗のpHをアルカリ側に傾けてしまうのです。もっとも、皮膚常在菌が十分に繁茂して有機酸をたっぷり作ってくれていればよいのですが、アトピーの場合は、これも不十分になっています。
 よって、皮脂膜は弱酸性の維持が難しくなり、黴菌の繁殖を許し、化膿させたりもするようになってしまいます。
 加えて、皮膚の弱酸性が保たれていないと、皮脂の一成分である脂肪酸がカリウムなどのアルカリ金属と反応し、界面活性剤(石鹸やシャンプーそのもの)を作り出すことにもなります。そうなると、夏季には汗を多くかきますから、できた界面活性剤によって皮脂が洗い流され、ますます荒れた皮膚になってしまうのです。
(この段落は、「医学博士・歯学博士・薬学博士 堀泰典オフィシャルサイト」の中の『マンスリープログレス「アトピーの真実に迫る」アトピー性皮膚炎の出き方ー理論編』を要約し、一部小生の見解<細胞内カリウム、マグネシウムの大量流出>を交えて、まとめたものです。)

 ミネラル・イオンの流出として、カリウム、マグネシウム、カルシウムを例示しましたが、その他に亜鉛も流出すると思われます。
 アトピー性皮膚炎の方のこれらのミネラルの血中濃度は正常値の範囲内ですが、毛髪分析をすると健常な皮膚の持ち主の方とは大きな違いが生じています。
 木俣肇氏(アレルギー臨床研究者)による、このことに関しての興味ある研究成果の一端を紹介しましょう。

 アトピー性皮膚炎の方の毛髪中のマグネシウム:カリウム比がたいていは大きくバランスを欠いており、いずれかのミネラル(多くはマグネシウム)の排泄が極端に少ない傾向にあるし、また、亜鉛の排泄も低い状態にある。
 これが意味するところは、必要なミネラルは内臓などの生体維持のために優先して使われ、生体維持に直接的に必要としない髪の毛へは不足するミネラルが回されることはないのである。髪の毛のこうした現象は、同様に生体維持に直ちには必要としない皮膚に対しても起こり、皮膚には不足するミネラルは回されないということになる。

 ところで、マグネシウム:カリウム比がアンバランスということは、片方が不足して髪の毛へは回されないのと同時に、もう片方は過剰に存在するから排泄されると考えることもできます。これは、次のように考えて良いと小生は思っています。
 掻きむしりなどによって皮膚細胞が壊されると、細胞内に特化して存在するマグネシウムとカリウムが血液中に入り込みます。この2つのミネラルは、血液中には極めて低濃度にしか存在しないですから、これが一定濃度を越えると生命が危険にさらされます。
 よって、過剰なミネラルを髪の毛が吸収するしかありません。日本人の場合、どちらかのミネラル摂取が不足気味な傾向にあって、不足気味の方のミネラルは全身の細胞が吸収してくれ、足りているミネラルは髪の毛が吸収して排泄することになるのでしょう。

 アトピーの方が、皮膚においてミネラル不足に陥ると、どうなるでしょうか。
 カリウム、マグネシウムの2つは皮膚細胞においても細胞内電解質として高濃度に必要なのですが、たいていは一方が不足していることが多くなり、健全な皮膚細胞が作れなくなります。また、正常な細胞分裂をさせるためには亜鉛が必要なのですが、これが不足がちになっており、これまた健全な皮膚細胞が作れなくなります。
 実際、これらのミネラルの補給によって、アトピー性皮膚炎が随分と改善することが知られていますから、小生の先の推測もあながち間違っていないことでしょう。

 以上のことから、アトピー性皮膚炎の対症療法(直接的ではない対症療法を含む)としては、基本的に次のことが求められます。

  1 保湿
    表皮細胞間の隙間に十分に水・保湿成分を補給
  2 皮脂の保持
    不足がちな皮脂を失わないようガード
  3 酸性の維持
    皮膚常在菌を洗い流さないこと
  4 ミネラルの補給
    正常な表皮細胞づくりのために必須

  5 寒冷刺激
    自前のステロイドづくりのために必須

 これらを全て一度に同時に行なうことができる良い方法があります。
 それは入浴でして、入浴の仕方が非常に重要なものになってきます。
 皮膚表面の黴菌や化学物質は、お湯に浸かっているだけで大半が流されてしまいますから、ボディーシャンプーなどは使いたくないです。なぜならば、ただでさえ皮膚に界面活性剤ができていることが多いのですから、それだけで十分過ぎます。
 そして、お風呂には保湿剤が入った入浴剤を入れることです。これによって、保湿成分が表皮に吸収されます。
 また、自然塩(あるいは食塩ににがりを足す)を一握り程度入れ、各種ミネラルを皮膚から吸収させることです。食塩にはナトリウム(末梢血流改善、体が温まるという効果)が含まれ、にがりにはマグネシウムとカリウム(表皮細胞作りに不可欠)が多く含まれていますから、これらのミネラルが皮膚から吸収されます。(ナトリウムの効果は濃度0.01%で十分に出ますから200リットルに対して食塩20gで良いです。にがりは不勉強で分かりませんが、それ以下であっても十分に効果的と思われます。)
 ぬるめの湯に十二分に(最低20分、できれば30分以上)浸かり、保湿成分や各種ミネラルをしっかり吸収させ、体が温まったところで、冷水シャワーを全身にたっぷり浴びて、風呂から上がります。
 その冷水シャワーによる寒冷刺激で、副腎が鍛えられますからね。
 そのやり方は、最初の方で書きました過去記事で具体的に紹介していますが、概略次のとおりです。
 いきなりの冷水シャワーはキツイですから、少々冷たい程度の混水から始め、順次皮膚を冷水に慣らしてください。これに慣れたら、入浴前にも冷水シャワーをたっぷり浴びて寒冷刺激を与えると、副腎の強化により効果的です。更に理想を言えば、入浴の途中でもう1、2回冷水シャワーを挟むことをお勧めします。
 ここで、念押ししておきますが、風呂場から出るとき寒いからといって冷水シャワーの後でお湯をかぶるのは絶対にしないでください。寒冷刺激の効果が消えてしまいます。
 そして、しばらくの間、裸でいることです。その後、保湿剤を広く塗ってあげてください。

 以上が、アトピー性皮膚炎の本質を捉えた対症療法ということになりますが、入浴では不可能なのが、アトピーの方に絶対的に不足している亜鉛の補給です。
 また、ストレスによって大量発生する活性酸素を消してくれる体内酵素を不足することなく十分に生産するためには、亜鉛、セレン、鉄、銅、マンガンといったミネラルを充足させる必要があります。
 これらのミネラルは日本人皆、不足しがちですから、食事の後には必ず総合ミネラル剤をお飲みになることをおすすめします。
 そして、できることなら、副腎の栄養となるパントテン酸(ビタミンの1種)を含んだ総合ビタミン剤が合わさったマルチビタミン・マルチミネラルとされると良いです。

(2014.11.4追記)
 別立てでホームページを開設しました。アトピー対策についてまとめたページは次のとおりです。ご覧ください。
  生涯現役をサポート:三宅薬品のHP 健康情報 アトピーのコーナー

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ヒトの皮膚呼吸、皮膚の吸収・排泄機能をもっと高く評価すべき。アトピー対策の出発点になります。

2013年02月26日 | アトピー性皮膚炎

ヒトの皮膚呼吸、皮膚の吸収・排泄機能をもっと高く評価すべき。アトピー対策の出発点になります。

 現代医学では、ヒトの皮膚は、単なる防護膜ぐらいにしか考えられていません。
 生きた表皮細胞群(基底層)が、バリアとなる表皮(順次死んでいく細胞)を作り続け、その表面が順次垢となって剥がれ落ちる、といった程度の評価です。
 皮膚というものは、動物の種によって、その構造や役割は実に多様性を持っていますが、いかなる種にあっても、単なる防護膜としての機能だけではなく、様々な非常に重要な働きを担っていると言えましょう。
 例えば、皮膚には物質の透過性がありますから、動物の種によっては、皮膚呼吸そして有用物質の吸収や老廃物の排泄を主として皮膚で行なうものも多いです。

 ヒトの皮膚の構造や役割は、ヒトに近い種である猿とでは丸で違います。
 ヒトは、裸の猿で皮膚を露出させていますから、皮脂分泌が盛んで、この皮脂膜が水分蒸散の防止、病原菌の侵入阻止という非常に重要な働きを担っています。
 また、汗腺は、猿が全身にアポクリン腺(しっとりと汗をかき、体毛で蒸散させる)を張り巡らせているのに対して、ヒトはこれを脇の下など一部に残すだけで、大半をエクリン腺(大量に汗を噴出させ、無駄に滴らせる)に変えてしまっています。なお、猿のエクリン腺は、掌・足の裏にあり、滑り止めのために発汗させています。これは、ヒトも同じです。

       

 ここで、ヒトの皮膚の働きにはどんなものがあるのかを考えてみましょう
 まず、皮膚呼吸ですが、これはあり得ないものとして否定されています。また、物質の吸収についても、防護が不完全であるから浸み込むだけのことであって能動的な吸収はないとされていますし、排泄についても、汗で垢や過剰な皮脂が押し流される程度にしか考えられていません。
 そして、格段に進化したヒトという動物の皮膚は、原始的な動物のような皮膚呼吸や物質の吸収・排泄といった機能は既に失ってしまっていると決め付けているのです。
 
でも、皮膚のこれらの役割は、大なり小なりヒトでも果たしていると考えるべきでしょう。
 そう思われる事例を幾つか挙げてみることにします。

 皮膚呼吸については、007の映画「ゴールドフィンガー」で有名な“全身に金粉を塗ると皮膚呼吸ができなくなり死んでしまった”というのがあります。これは少々オーバーな表現かと思われますが、しかし、ヒトにおいても皮膚呼吸という役割はけっこうありそうなのです。例えば、西勝造氏が提唱された西式健康法の中で次のように書かれています。

 胎児の間は、呼吸がないから肺循環の必要がなく、右心房と左心房との間には卵円孔という短絡道があるが、これが胎児が呼吸を始めると、この卵円孔が閉鎖されねばならぬ。この時間内は、肺循環が不完全であるから、皮膚がその間の(呼吸の)補助的作用を営むのである。私が、胎児は生まれてから1時間40分裸体でおくことが必要であると主張するゆえんである。こうすると、…新生児黄疸を起こさないのである。
 人間は衣服で皮膚を包むが、包みすぎると肝臓が弱くなり…腸の蠕動が鈍化して便秘に陥る…これが脳に影響して手足の神経を麻痺する…血液の循環が悪くなって…腎臓に故障を起こし…これが万病に発展する…
 皮膚機能の障害は、その根本は皮膚を包みすぎることからきている。皮膚の酸化作用や同化作用が障害を受け、一酸化炭素の発生を促し、アンモニアの生成が妨げられる。
 …皮膚の鍛錬を…風療法…で行なう…。これは、皮膚を空気にさらす方法であって、主として酸化作用ならびに尿酸の発散を促し、血液、リンパ液の浄化をつかさどるものである。…保健の目的では、春秋の二季に3ヶ月…やると、体質を改造して病弱者も健康になることができる。

 どうでしょうか。既に戦前に確立しているこの西式健康法は、戦後においても採用され、今日に引き継がれていて、その効果が実証されています。ですから、皮膚呼吸というものは、新生児でなくても、どれだけかは補助的に行なわれていると考えるべきです。

 次に、物質の吸収です。これについては、まず、体に悪い物質の吸収がだんだん分かってきています。
 それを、「医学博士・歯学博士・薬学博士 堀泰典オフィシャルサイト」から引用します。

(温泉研究N0.9 特集1基調講演「温泉と健康・長寿」(講師:堀泰典) 2012.9.1)
 従来、皮膚からの物質の吸収は殆どないとされてきた。しかしながら、1960~70年代、洗剤による肝臓、脾臓、腎臓機能障害や、2011年に石鹸に配合された加水分解小麦粉によって、小麦に対するアレルギーが発現し、小麦製品(パン、うどん等)が食べられなくなった事例が1500件以上報告された。また、スマトラ島沖地震(2004年12月26日)の大津波で、日本人や外国人女性のご遺体の腐敗速度が他に比べて明らかに遅く、遺体の判別が容易であったという。このことは、化粧品などに含まれるパラベン、エデト酸などの防腐剤が身体に残留していた可能性は否定できないと現地の法医学者が唱えている。(同氏の別文献から補足:先進国と後進国の間で遺体の腐敗に大きな差があったと現地で伺いました。特に女性に大きな差が出たとの事でした。つまり、先進国と後進国の差は食品に含まれる防腐剤であり、男女の差は化粧品に含まれる防腐剤と考えられます。つまり我々は生きながらにミイラ化されていることになります。)
 このように皮膚は外来異物の侵入に対する最も重要な防御機構ではあるものの、その作用は完璧ではなく、条件によっては異物の侵入を許すことが再認識されてきている。

 一方、体にいい成分の吸収も知られてきつつあります。
 同上堀泰典氏基調講演の中で次のように話されています。
…温泉にゆっくりつかることにより、ミネラルを経皮から吸収させることは大変重要な要因であるといえよう。自分に合う成分の温泉を選び、温泉にゆっくりつかり…お勧めする。…

 このことについては、何も温泉でなくても、家庭の風呂に食塩を一握り入れると、末梢血流改善、体が温まる、湯冷めしないなどの効果が出ることが分かっており、これは、ナトリウムイオンが皮膚から吸収されることによる効果です。200リットルに対して一握り(20g)の食塩は0.01%にしかならない薄い濃度ですが、たったこれだけの濃度であっても、十分に吸収されてしまうのです。

 次のことは別文献(出典不詳)からですが、皮膚からの吸収としては、ミネラルの再吸収があるとのことです。つまり、汗をかいたときに、汗とともにどれだけかは排泄される各種ミネラルが、再び体内に戻るというものです。日常的に汗をかいている人は、大汗でない限り、この機能がうまく働いていて、ミネラル欠乏になりにくいと言われています。
 そして、小生が思うには、ミネラルの再吸収はこれに止まらず、体表の壊れた表皮細胞(垢)の中にある各種ミネラルまでもが、きっと再吸収されることでしょう。
 と言いますのは、汗から出るミネラルであっても、壊れた細胞から出るミネラルであっても、再吸収される仕組みは同じと考えられるからです。

 このように、皮膚は、体に悪いもの、体にいいものに関わらず、“吸収する力”があり、決して、皮膚の防御不完全が原因であるとして片付けてしまうことはできないでしょう。

 3つ目が、物質の排泄です。
 排泄の本来の目的は、有毒物質や老廃物を外へ出すことにあります。
 この仕事は腎臓に全て依存しているわけではありません。例えば水銀などの有害金属は、ヒトの場合、髪の毛に集めて、毛が抜けることによって放出されているように、腎臓が全てを担っているのではないのです。当然に、皮膚にもその機能が備わっています。
 日頃全く汗をかかない人が、サウナで汗をかいた後、すっきりした気分になれるのは、皮膚から老廃物が排泄されたからではないでしょうか。
 また、汗をかかなくても、断食すると皮膚から嫌な臭いがしてくることが多いようです。
 これは、揮発性老廃物の排泄としか考えられません。
 考えられるのは、断食による体内細胞の貧栄養が引き金となって、細胞が老廃物を細胞外へ放出し、それを尿としてではなく、皮膚に集めて体外排泄するからでしょう。
 なお、断食した
後は、サウナ以上に身も心も格段にすっきり感が味わえるとのことですから、揮発性老廃物以外の各種老廃物も同時に排泄されると思われます。

 小生は、ヒトの皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄が、思いのほか盛んに行なわれているのではないかと考えています。
 と言いますのは、断食によって皮膚からの排泄がグーンと高まることから推し量られるのですが、表皮基底層で順次作られた細胞は、まさに断食状態にあります。そこへは、真皮層の組織液からの栄養が届きにくくなるばかりでなく、真皮層に存在する毛細血管から染み出る酸素も届きにくくなっているからです。
 そうした細胞は、まだ生きており、生き続けようとします。
 飢餓状態になりますから、老廃物を真っ先に吐き出すことでしょう。そして、表皮細胞の隙間の組織液に含まれる外界から溶け込んできた酸素を得ようとするでしょうし、代謝で生じた二酸化炭素を細胞外へ放出します。つまり、皮膚呼吸をすることでしょう。
 こうして、単細胞真核生物と同じ生命活動をするようになると考えて良いと思うのです。

 ここで、動物とは何なのかを原点に立ち返って考えてみましょう。
 ヒトの遺伝子は、単細胞真核生物とどれだけの違いもありません。ヒトは、単細胞真核生物が単に多細胞化しただけのことであって、少々複雑な形状になっているから、それぞれの器官に特有な機能が、それぞれの器官の所在部位で目立って発現しているだけのことであると考えた方がよいでしょう。
 ヒトの体の中の一つ一つの細胞を捉えてみると、細胞膜を通して細胞外液から酸素と栄養物を入れ込み、二酸化炭素と老廃物を排泄しているのですから、皮膚の表皮細胞とて、そうした機能を当然に持っていますし、飢餓状態となれば、能動的な吸収・排泄を必至になって行なおうとするでしょう。

 さて、皮膚における有用物質の吸収ですが、その大半は表皮の上部から行なうことになります。体表の皮脂膜には細菌がビッシリと生息しています。これを皮膚常在菌と言いますが、彼らは皮脂腺から分泌される皮脂と皮膚の垢(たんぱく質)を食べつつ有機酸を排泄しています。これによって、皮膚表面の皮脂膜は弱酸性に保たれ、病原菌(一般に中性や弱アルカリ性で増殖し、弱酸性では増殖不可)の侵入を防いでくれていて、ヒトと皮膚常在菌は共生関係にあります。
 そして、この有機酸は、ブドウ糖に代る栄養にもなるのです。腸内環境が優れていると、大腸で食物繊維が腸内細菌によって発酵し、有機酸が作られ、これが大腸で吸収されてブドウ糖の代替になるのと同じです。(ゴリラはこれを盛んに行い、ヒトもどれだけか可能で、オリゴ糖を多く摂取すると、ヒトも有機酸の産生が盛んになります。)
 よって、飢餓状態にある表皮細胞は、皮膚常在菌が作ってくれた有機酸をエネルギー代謝して命を長らえようとするに違いありません。
 ここで、一つお断りしておきますが、通説では、皮膚常在菌は皮脂しか
食べないとされています。せいぜい皮膚常在菌がたんぱく質を分解するのは、脇の下などアポクリン腺から出るたんぱく質だけであって、不潔にしておくと、これを皮膚常在菌が分解して様々な窒素化合物を作り、それでもって異臭を発生させるぐらいなものと説明されています。
 でも、小生はそのようには考えていません。あまりにも異常すぎる日本人の徹底した清潔文化の下においては、垢は皮膚常在菌に食べられる前に、タオルに付けたボディーシャンプーでゴシゴシ洗いされて剥がれ落ちてしまうから、皮膚常在菌は垢を食べないとされているだけのことでしょう。
 小生は風呂に入ったとき、石鹸もボディーシャンプーも使わず、体も擦りません。単に、シャワーをたっぷり浴び、湯船に浸かるだけです。そうすると、浴槽に垢がくっ付くことはないですし、下着に垢が張り付いているようには全く思えませんから、体表で皮膚常在菌が垢を食べて分解してくれていると考えるしかないのです。これでもってしても、体臭がすることは全然ないです。
 ただし、顔はけっこう脂ぎっていますから、シャワーや浴槽内で掌でどれだけか擦りますが、これは過剰な皮脂を洗い流しているだけで、垢までは落ちていないと思われます。
 もっとも、頭皮も脂ぎってきますから、時々シャンプーを使い、このときには過剰な皮脂とともに垢(ふけ)も洗い流されるでしょうが。

 少々横道にそれましたが、話を元に戻しましょう。
 こうして、表皮細胞群は、皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄を真皮層の組織液に頼らなくても、表皮層でもって独自にかなり行なうことができると思われるのです。
 そして、表皮層にも組織液があって、表皮・真皮の組織液はつながっており、相互に物質の移動が可能となりますから、一旦吸収された有用物質(有機酸)や汗で放出され再吸収されたミネラルは、真皮の方へ受け渡され、真皮層に届いている血管中へと入り込んでいくことも考えられましょう。また、血管から染み出した老廃物なり真皮層で生じた老廃物が、その逆の流れで排泄されもしましょう。

 ヒトの皮膚(表皮、真皮)は厚さ約2mmで、総重量は約3Kgもあり、肝臓(約2.5Kg)を上回る最大の臓器です。ですから、皮膚細胞群における皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄作用は、決して無視できるものではなく、皮膚のこれらの機能が健全に働くか否かは、ヒトの健康にも大きく影響していると考えざるを得ないのではないでしょうか。
 
もっとも、皮膚呼吸そして物質の吸収・排泄機能の主力となる箇所は表皮であり、表皮だけを捉えてみると、厚さ約0.2mmで総重量は約0.3Kgしかなく、小さな臓器になってしまいますが、表皮は真皮と深い関わりがありますし、真皮層にある汗腺や皮脂腺などの働きも表皮に重要な影響を与えますから、表皮・真皮を一体として皮膚として捉え、総合的に働きを評価する必要があります。

 こうしたことから、「健康な皮膚づくり」を考えたとき、まずもって、表皮層に存在する飢餓状態の細胞群が少しでも命を長らえることができるように表皮の快適な環境を保持してあげるとともに、真皮への十分な血流の確保、そして汗腺や皮脂腺の正常化が必要となりましょう。
 このことは、肌荒れ、敏感肌やアトピー性皮膚炎を改善する上で、重視すべき事項となります。
 次号「 アトピー性皮膚炎の本質に迫る 」で
は、アトピー性皮膚炎の皮膚がどのような状態になっているかをみてみることにします。そして、対症療法について述べることにします。

(2014.11.4追記)
 別立てでホームページを開設しました。アトピー対策についてまとめたページは次のとおりです。併せてご覧ください。
  生涯現役をサポート:三宅薬品のHP 健康情報 アトピーのページ 

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毎日がなぜか楽しくなる「“一日一楽”日記」のすすめ

2013年02月18日 | 心の病から脱却

毎日がなぜか楽しくなる「“一日一楽”日記」のすすめ

 8月29日からso-netブログで書き始めた“一日一楽”日記です。
 その経緯については、このブログの9月2日付けで下記の記事で書きました。
 
 “一日一楽”日記の書き始め
 この日記をほぼ毎日綴り、今日で172本にもなりました。
 間もなく半年になります。
 当初は、必死になって「何か楽しいことはないか」と探しまくり、「ない」となると、本の記事を引用したりして、取り繕っていました。
 そこまで無理する必要はないと、友人からアドバイスも受けましたが、毎日落ち込んでいる方々の助けとなり、落ち込みからの脱却法の見本となればと思い、少々無理もしました。

 そうして、毎日“一楽”を探しまくる生活をしていましたら、いつの頃からかははっきりしませんが、気張らなくても、「ああ、楽しい」という事柄が、直ぐに見付かるようになってしまいました。
 なぜだろうと考えてみると、「以前は楽しいとは思わなかったほんの些細な事柄が、なぜだか楽しく思えてしまう」という自分がいることを発見したのです。

 こうして、約半年前の自分と違う自分が今ここにいるような気がします。
 “毎日が楽しい” そんな気分の連続です。
 落ち込むような日がめったにない小生ですが、以前は、“今日は何もいいことがなかった”と思える日が多かったものの、“一日一楽”日記を書き綴ることによって、“ああ、今日もいいことがあった”となってしまったからでしょうね。
 “楽しいこと探し”にはまってしまった小生。
 その“楽しさ”から、今日、中間報告として、「“一日一楽”日記のすすめ」を書かせていただきました。
 なお、最近“楽しいこと探し”をしていて、これが見付かる前に“幸せだなあ”と感ずる事柄の方が心に浮かぶことが多くなりました。
 “楽しい”と“幸せ”は、似ているようで似ていない、そんな感じがします。
 でも、どちらも心を明るくしてくれますから、“楽しい”と“幸せ”の両方の事柄が訪れてくれるのは、よりうれしいことです。そう言えば、“うれしい”という言葉も、似ているようで似ていないですね。
 何だか全てが、いい方に、いい方に、と回っていきますね。

 皆さんも、“一日一楽”日記なり、“一日一幸”日記なり、“一日一嬉”日記なり、はたまた“一日一福”日記なり、“一日一喜”日記なりを、お書きになるとよいですよ。
 なお、日記帳を作るなり、ブログを立てて投稿する場合は、例えば、「“一日一楽”おやじ日記」など、何か自分を指し示す適当な言葉を挿入すると、より楽しめることでしょう。そうしたブログが幾つもありますから、そのうち小生も改題しようと思っているところです。
 

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古典的な砂糖の害の原因は間違い。本当の害は“ブドウ糖の暴走”なのです。

2013年02月15日 | 正しい栄養学

古典的な砂糖の害の原因は間違い。本当の害は“ブドウ糖の暴走”なのです。

 このブログの過去記事「砂糖は健康に悪いのか良いのか」(2012.5.25)で、砂糖の害を総論的に述べ、古典的な砂糖の害の原因についても少々触れました。
 でも、古典的な砂糖の害の原因にはこれといった根拠がなく、正しいとはいえません。
 そこで、本稿では、真の原因を科学的根拠に基づいて説明することにします。

 まず、砂糖とは何か、どんな形で体内に吸収されるかをみてみましょう。
 砂糖とは蔗糖のことを言い、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルコース)が結合した二糖類です。ブドウ糖、果糖は単糖と言い、C6H12O6の分子式で書き表され、異性体(構造が異なるもの)です。同じ異性体としては、乳糖(二糖類:ラクトースとグルコースが結合)を構成するラクトースがあります。さらに、最も代表的な単糖であるブドウ糖には3種類の異性体があり、その中のαグルコースがたくさん結合したものがデンプンです。

 さて、砂糖を摂ると、小腸で容易に加水分解されてブドウ糖と果糖に分かれ、速やかに吸収されて、いったん肝臓に入ります。
 先に、果糖の動きについてみてみましょう。生体内ではブドウ糖が使いやすいようで、空腹時には果糖はその3分の2が肝臓でブドウ糖に変換されるようです。変換されなかった果糖は貯蔵が利きませんので、血液で運ばれ、全身の細胞に渡されて、エネルギー産生回路に入れられ、消費されます。
 ただし、砂糖を過剰に摂ると、一気に果糖が吸収されてしまいますから、その処理が追いつかず、エネルギー産生回路で一時的に乳酸を過剰に発生させます。そして、過剰な乳酸は肝臓に送られ、ブドウ糖に変換されて、一件落着となります。
 次に、ブドウ糖ですが、少し形を変えて肝臓で貯蔵されたり、幾つもを結合させてグリコーゲンにして貯蔵することができますが、血糖値が一定レベル以下であれば、ブドウ糖の多くは血液中に入り、全身に供給されます。
 ただし、砂糖を過剰に摂ると、肝臓での貯蔵処理が間に合わず、一気に血液中に大量に入り込み、血糖値(ブドウ糖の血液内濃度)が急激に上がるのは知られた事実です。
 そして、全身の細胞がインスリンの働きを借りてブドウ糖の受入れをします。ブドウ糖を受け入れた細胞は、その一部をエネルギー産生回路に回しますが、過剰なブドウ糖は、筋肉であればグリコーゲンに、脂肪細胞であれば脂肪に変換して蓄えます。

 このようにして、砂糖を大量に摂ったとしても、通常は何も問題なくスムーズに処理されてしまい、健康上悪影響を引き起こすものではありません。
 でも、飽食してブドウ糖やグリコーゲンが十分に体内に存在する状態で、砂糖を大量に摂った場合には、必然的に大きな問題が生じてきます。
 肝臓や細胞でのブドウ糖や果糖の受入れ余力が小さいですから、脂肪細胞に受け入れてもらうしかなく、これには時間がかかりますから、高血糖状態が長く続きます。
 これは、糖尿病の状態と同じことですから、体にいいわけがありません。

 参考までに申しますが、果糖の摂取による乳酸の産生は何ら問題がありません。
 乳酸飲料を飲んだからと言って何ら害がないのと同じことです。
 蛇足ながら、激しい運動をすると乳酸が筋肉中に溜まり、これが疲労物質として筋肉痛を起こすと言われていましたが、近年、これは否定されています。確かに乳酸は溜まるものの、乳酸はエネルギー産生回路の途中の段階で生ずる物質ですから、これが害になるものではなく、筋肉痛は微細な筋繊維の損傷が原因しているとのことです。
 また、乳酸の産生との絡みかもしれませんが、砂糖の摂取は血液を酸性に傾かせ、健康上問題が生ずるとの説明をよく見かけますが、血液のPHは恒常性が保たれており、これは、血液中にかなりの高濃度で存在する重炭酸イオン(HCO3-)やアルブミンが緩衝材として働いていますから、その説明は間違いとしてよいと思われます。

 さて、これより、砂糖の本当の害について説明することとしましょう。
 その前に、ブドウ糖というものの特性について触れておきます。
 ブドウ糖は生体内に入ったとき、エネルギー源になるだけでなく、様々な物質と化学的に結合したり、物理的に結合したりします。
 配糖体と呼ばれるものは、ブドウ糖(他の単糖の場合もあり、以下同じ)が、他の物質と化学的に結合したもので、有用な作用をするものが非常に多いです。例えば、抗酸化物質で有名なポリフェノールの代表的なものにフラボノイドがありますが、これは、別名フラバン配糖体とも呼ばれ、ブドウ糖が化合しています。この他に、サポニンも配糖体です。
 また、人の体内で作られる配糖体も数多くあり、その例は後ほど紹介します。
 これら配糖体は酵素を介してブドウ糖が化合するのですが、酵素なしで勝手にブドウ糖が化合する場合もあります。その代表的なものが、メイラード反応です。
 メイラード反応は、食品加工で良く知られた化学反応ですが、加熱によって、ブドウ糖とアミノ酸(たんぱく質のアミノ基)が結合し、香気がある褐色物質を生み出します。
 タマネギを炒めたとき、肉を焼いたとき、パンを焼いたとき、ご飯のおこげ、チョコレートの色素形成など、非常に多いです。
 このように、ブドウ糖は加熱により、あらゆる物質と化合する性質があります。
 ここに例示したものは有用なものばかりですが、害になるものも多いです。例えば、高温加熱してポテトチップスを作るとき、ブドウ糖がアスパラギン酸と化合してアクリルアミドになり、これは神経毒性があったり、発がん作用があって、問題視されています。

 こうしたブドウ糖の性質は、何も加熱により起こるだけでなく、常温であっても起きますし、体内でもいろいろ起きています。常温の例としては、味噌や醤油の醸造です。味噌、醤油の香はメイラード反応によるもので、味噌の場合は長く寝かせるとメイラード反応がより進み、味噌の色が褐色から黒へと変わります。(* この1文は2016.12.24挿入)
 体内でのよく知られた例が、糖尿病の指標となる糖化ヘモグロビン(HbA1c)
です。高血糖が続けば、ブドウ糖がヘモグロビンとメイラード反応を起こしやすくなり、糖化ヘモグロビンが増えて、ヘモグロビンの活性が失われ、酸素供給力が落ちることになります。
 でも、糖尿病の方でも、糖化ヘモグロビンの割合が異常に高くなることはなく、酸素の運搬にさしたる悪影響を与えませんが、生体内で起きるメイラード反応で、健康に大きく悪影響するものがかなりありそうです。主なものを紹介しましょう。
 まず、体内で作られる代表的な抗酸化物質であるSODがメイラード反応を起こしてしまい、その機能が発揮できなくなりますから、活性酸素の害を防ぐのが難しくなります。
 次に、細胞外たんぱく質であるコラーゲンがメイラード反応を起こし、これによってコラーゲン間に架橋ができてしまいます。水晶体の濁り(白内障)がそうです。
 3つ目に、免疫グロブリン(血液中にある抗体)の活性が失われます。これは、そもそも配糖体なのですが、違う箇所にもブドウ糖が化合してしまうことによります。
 以上の3つは、糖尿病を進行させる元になります。SOD不活性で活性酸素を十分に消すことができないから動脈硬化が進みますし、コラーゲン間架橋で白内障が進行しますし、抗体の不活性で感染症を拾いやすくします。
 これら皆、糖尿病の進行と一致し、過剰なブドウ糖の存在により、メイラード反応が盛んになることによって起きてしまうと考えられます。

 このことは、何も糖尿病患者に限らず、飽食生活をしていた人が、砂糖を大量に摂取したときには高血糖状態がかなりの時間続くことになるのですから、その間は、メイラード反応が盛んになって、同じことが起きてしまうことでしょう。
 そして、いったんメイラード反応が起きてブドウ糖が化合してしまうと、元には戻らず、後々まで悪影響が続くのです。これが、メイラード反応の怖いところです。

 生体内におけるメイラード反応は、この他にもいろいろあります。その程度は、まだ研究が始まって間がないようですから、手元に情報が少なく、小生の調査不足で分かりませんが、何らかのメイラード反応を起こすことが分かっているものを例示しましょう。
 酵素:カテプシンB、リゾチーム、膵リポアーゼ、炭酸デヒドラクターゼ
 血清:アルブミン、フィブリン、フィブリノーゲン
 ホルモン:甲状腺ホルモン、インスリン
 細胞:赤血球膜たんぱく質

 この最近の知見からして、砂糖の摂り過ぎで糖尿病になる可能性が高いのは、インスリンがメイラード反応を起こして、インスリンが不活性になることも影響しているのではないかと思われます。
 また、砂糖の摂り過ぎで赤血球同士が固まりやすくなるのも、赤血球膜たんぱく質のメイラード反応が原因しているのかもしれません。
 そして、アレルギーに関する最近の研究では、砂糖の摂り過ぎでアレルギー反応が強まるのは、アレルゲンにブドウ糖が結合し、その作用が強まるからと考えられています。

 ここまでは、過剰なブドウ糖によるメイラード反応という化学的結合について述べてきましたが、ブドウ糖が単にくっ付くだけという物理的結合もブドウ糖には強いようです。
 砂糖の摂り過ぎで赤血球同士が固まりやすくなるのは、これによる可能性が大です。
 そして、砂糖を取りすぎると、免疫細胞の1種であるマクロファージ(最前線で細菌やウイルスを飲み込んで消化する白血球)の活性が大きく落ちることが知られています。これは、ブドウ糖の化学的結合なのか物理的結合なのか定かでないですが、いずれにしても高濃度のブドウ糖が原因していると考えるしかないでしょう。

 砂糖は精製糖であり、ビタミン・ミネラルが除去されていて、砂糖をエネルギー変換するときに必要なビタミンB1やマグネシウムなどの貴重なビタミン・ミネラルが消費されてしまい、これらが不足してしまうから、砂糖はよくないとも言われています。
 たしかに、これも一理あって、過去記事で粗製糖が望ましいと書きました。
 でも、砂糖の本当の恐ろしさは、こうしたことではなくて、一気に吸収されて体内に入り込み、体中でブドウ糖が高濃度になり過ぎることにより、ブドウ糖の特性であるところの、何にでも化学的・物理的に結合してしまうという“ブドウ糖の暴走”にあるんだ、ということを十分に理解していただきたいです。

 最後にご忠言申し上げます。
 砂糖たっぷりの甘い物は、腹が減って腹が減って死にそうだ、というときになって、はじめてお召し上がりください。そうなされば、高血糖になるのを防げますからね。
 なお、『甘』という字は、“落とし穴”の象形文字ですから、“甘い物”にはくれぐれもご用心なさってください。“触らぬ神にたたりなし”と言いますから、できることなら“落とし穴”である“甘い物”は口にしないことですね。

(本稿は、 医学博士・歯学博士・薬学博士 堀泰典オフィシャルサイト の中の メディア掲載記事:アトピーについて「甘党は老化しやすい」 を参考にさせていただきました。) 

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“腹八分”どころか“腹4分の1”健康法というのがあります

2013年02月07日 | 朝食抜き・断食で健康

“腹八分”どころか“腹4分の1”健康法というのがあります

 “腹八分に医者いらず”と言ったのは、江戸時代の貝原益軒ですが、“これでは生ぬるい、もっともっと減食せねばだめだ”という健康法がたくさんあります。
 誤解を招かないよう、あらかじめお断りしておきますが、貝原益軒の言っていることが間違っていると批判しようとするものではありません。ベースとなる食事量をどこに置くかで、“腹八分”になり、“腹五分”にもなるのです。多分、貝原益軒は飽食を前提にはしておらず、江戸時代における通常の粗食に対して“腹八分”と言ったことでしょう。

 さて、“腹何分”が理想的か、ということに関しては、過去記事で2回書きました。
・20111.1.18 腹「X」分目健康法(カテゴリー:メタボ・糖尿病)
 ここでは、日本人の平均的カロリー摂取量(男2100、女1700)に対して、“腹八分”は糖尿病健康法の摂取カロリー(男1600、女1400)と同じとなり、これが一つの目安になるとしました。
 そして、“腹七分”健康法を小林博:元北海道大学医学部教授が提唱されていたり、“腹六分”あたりがちょうどいいと生活習慣病予防の第一人者:小山内博氏が主張されていることを紹介しました。
 
極め付けは、少食健康法で難病治療に当っておられた甲田光雄先生が“腹二分”(1日400Kcal)でよいとする極端な考え方も披露しました。

・2012.11.20 最適食事量は「腹五分」、よって「1日1食にするしかない!」(カテゴリー:朝食抜き・断食で健康)
 南雲吉則氏の著“「空腹」が人を健康にする”で紹介されている飼育動物の最適食事量から、自然の状態で暮らしている動物がどの程度の食糧を摂取しているかを推計すると“腹五分”となり、人にとってもこれが理想であろうと自論を述べました。
 そして、紀元前中国の基本古典医学書「黄帝内経素問」のなかで「1日2食にすると鼓張(消化不良による腹部膨満感?)という病気になることがある」と記されており、大昔は“1日1食”であったと書きました。

 このように、時代を遡っていくと、“1日1食の少食”が人を健康にしてくれると教えてくれています。このことは、何も東洋だけで言われているのではないことを最近知りました。
 出典:医学博士・歯学博士・薬学博士 堀泰典オフィシャルサイト
 http://www.dr-hori.com
 その中の<アトピーについて「腹八分に医者いらず」>の記事で、食事量について興味深い次の紹介があります。

 「腹八分に医者いらず」という言葉は、江戸時代の貝原益軒がいった言葉ですが、古代エジプトのピラミッドには次のような碑文が残っているそうです。「我々は普段食べている食べ物の4分の1で生かされている。あとの4分の3で◆◆が生きている」。この「◆◆」の所は何だと思いますか。実は「医者」なのです。つまり、生きていくには「4分の1」でよいのに、「4分の3」は食べすぎで、病気をし、それで医者がもうかっているという意味です。
 これは大変重要な言葉だと思います。古代エジプトというのは奴隷制の時代で、…食べ物を吐くほどに食べられた人はほんの一部の支配階級だったはずです。この文を書いた人は支配階級の人のことを書いたと想像されます。現代の日本では…大部分の人が満腹し、吐くほどに食べて、食べ過ぎで病気をし、医者が繁盛しているのです。何とも矛盾した馬鹿げた現象です。
  

 古今東西、様々な健康法がありますが、こと食事の量に関しては、昔人の教えは数多くの臨床経験から導き出されたもので、それが皆の生活の知恵となり、正しい養生法であることは間違いありません。
 我々現代人に、その真似をせよ、とは言いませんが、少なくとも“腹が減ってもいないのに義務的に食べる”ということだけは止めるべきです。そして、たまには“しばらく何も食べないでいると空腹感というものがどのように変化していくのか”を観察なさってみてください。回数を重ねていくと、きっと思わぬ発見ができることでしょう。

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