「免疫力ではがんを防げない」とおっしゃる近藤医師、でも「笑いは良薬である」と。
「医学界の絶滅危惧種」と自称されておられる近藤誠医師。今年65歳になられる。慶応大学医学部を卒業後、同大学に長く勤務されるも、いまだ講師の肩書きしかない。
「病院によく行く人ほど薬や治療で命を縮めやすい」「抗がん剤は効かない」など医学界、特に病院内ではタブーとされる言動を平気で取っておられる方である。
よく名前を聞く方だから一度著書を買ってみようと思い、先日ついでのときにネット注文した。発売されて間もない「医者に殺されない47の心得」という本である。
そしたら、帯に「菊池寛賞受賞」とあり、その理由として「抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、がん治療における先駆的な意見を一般の人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績をたたえ」とあるではないか。世の中もようやく「医学界の絶滅危惧種」を絶やしてはならぬという動きが出てきたのだな、という感じを受けたところである。
また、近藤医師も巻頭で「今回、まともな賞をいただいて、とてもうれしく思っています。」と、素直に喜んでおられる。また、「はじめに」の中で、「がん放置療法」を長く取ってきたことに対して、次のように言っておられる。
…「大学病院の外来なのに、がんの治療をしない」という、ある意味、奇跡的なことをここまで続けてこられたのは、慶応義塾の「自由」「独立自尊」の精神のおかげと、感謝しています。…
そうは言っておられるものの、近藤医師、こう呼ばざるを得ないのが悲しいのだが、師は数少ない本当の医学者であり、本来ならば、講師ではなくて教授の肩書きが与えられて良かろうというものであり、ずっと干されていたに違いないであろう。
世の中には、こうした方がまれにあり、東大医学部講師で退官された西原克成医師もそうであるが、こうした方々が医学の誤りを正し、良い方向に導いてくださるのである。近藤医師は歳からしてまもなく退官かもしれないし、これから先も苦労されるではあろうが、引き続き頑張っていただきたいものだ。
さて、近藤医師の著「医者に殺されない47の心得」を読んで、がんに関すること以外で、食に関する2、3の項目、これは小生が自信を持って言っていることとは大きく違うなという点があったのだが、それはそれで置いといて、ビックリしたのが、表題にした項<心得25 「免疫力」ではがんを防げない>である。
その書き出しは次のようになっている。
免疫の話を続けましょう。「いつも笑っていると免疫力が上がって、がんにならない」「この食品で免疫力を高めてがんを防ごう」「人間の体には1日5千個のがん細胞が生まれるが、免疫細胞のNK(ナチュラルキラー)細胞が殺してくれている」…。まるで、免疫力さえ強化すればがんを防げるような言説が広まっています。すべて何の実証もない、「見てきたようなウソ」です。大学病院でも行なわれている、「免疫細胞療法」も同じです。
確かに「免疫力を高めるという謳い文句の健康補助食品」は当てにはならないのは、飲用された当店お客様の効果の有無から小生も承知していたのだが、「笑いでNK細胞が活性化」され、「がん細胞はNK細胞が殺してくれる」ことは確かなこととして、何ら疑いはしなかった。
これが全否定されたのだから、ビックリ仰天!
また、病院の「免疫細胞療法」の実態は知らなかったものの、その療法があることは聞いたことがあり、これは効果がありそうだなと何となく思っていて、10日ほど前に問い合わせがあった方に対して「免疫細胞療法」をやっているクリニックをネットで調べて紹介しておいた。
そこで、大慌てで汗をかきかき、問い合わせがあった方に「免疫細胞療法は詐欺まがいのものである」旨、メールで訂正し、お詫びを入れておいたところである。
さてさて、今まで小生が書いてきた何本もの「がんに関するブログ記事」はどうしたものか。それなりの根拠をもって記事にしてきたつもりであり、「笑いでNK細胞が活性化」され、「がん細胞はNK細胞が殺してくれる」ことを、近藤説に乗っかって否定する方向へ180度転換するとなると、これまた、それなりの十分な根拠が必要となる。
近藤医師がおっしゃるには、「笑い」に関しては「何の実証もない」の一言しかなく、それ以上の言及はないから、「これは実証されている」との反論でもって、小生のブログ記事は当面そのままにしておいて良かろう。
なお、「笑い」に関しては、同著「心得38 しゃべって、笑って、食べて。口を動かすほど元気になる」の中で、「笑いは副作用のない良薬です。」と言っておられるから、がん治療効果の定量的実証はないとしても、定性的には効果ありと言って良かろう。
次に、「がん細胞はNK細胞が殺してくれるというのはウソである」ということに関しては、近藤医師は同著で次のように解説しておられる。
なぜならば免疫細胞は、外から入ってきた異物を敵として認識してたたくのですが、がんは自己細胞が変異したものです。人間の免疫システムが、がん細胞を敵とみなさないからこそ、がんは発生したのです。…
…免疫細胞は、「非自己」と認識した異物をつぶす細胞です。がんが直径1センチという大きさになって発見されるのは、NK細胞が、がん細胞を「非自己」として見分けられなかったということです。これが「免疫系ではがんを排除できない」ことの、動かしがたい証拠です。
ここで問題にしたいのは、「自己・非自己」で免疫を語ることがはたして正しいかどうか、ということである。これに関しては、先に紹介した西原克成医師は、これは一面的であって、これにこだわりすぎた現在の免疫学は間違っていると言っておられる。
その詳細は、氏の著「究極の免疫力」に論理的に述べられており、その内容を紹介するには文字数があまりに多くなり過ぎるので割愛するが、十分に納得のいくものであるからして、ここは西原医師の立場に立ち、近藤医師の論を否定させていただくことにする。
なお、NK細胞にしろ他の免疫細胞にしろ、単に免疫系のみの強化に頼るだけでは、がんを根本的に治癒させるのは難しいようであり、これを踏まえれば、近藤医師のおっしゃることは正しいと言えよう。
さて、近藤医師は、「がん放置療法」が最も正しい治療法(放置が“治療法”って言うのは変だが)であることを長年の臨床経験から確信しておられる。複数のデータで“胃がんを手術せず抗がん剤を使った5年生存率は20%以下、何も治療しなかった5年生存率は50%”という数字が出ていることから、これは裏付けられる。
そして、こうも言っておられる。
・がんと診断されたとき
がんの9割は治療するほど命を縮める。放置がいちばん。がんと闘ってはいけない。
・がん放置療法を取ったとき
がんは死の直前まで意識がはっきりしている。がんで自然に死ぬのはすごくラク。
これには皆さん驚かれるかもしれないが、第1項の事実はこのブログでも同様なことを何度も書いてきた。そして、第2項も小生には2例しかないが当店のお客様で実感している。うち1例は、体のだるさは感じておられたものの、お亡くなりになる20日前まで、ちゃんと働いておられたから驚きである。もう1例は、余命半年と診断され、医者の治療なしでアガリクス配合の健康食品を飲んでいただいたところ1年半生きられ、苦しむことなくお亡くなりになった。ご家族はこの健康食品のお陰と喜んでおられたが、それが効いたのではなく、「がん放置療法」の効果であったに違いない。
近藤医師は、「がん放置療法のすすめ」など、がん放置療法に関する本を幾冊か書いておられ、そのうち読まねばならないと思っているが、がんを治すには、氏が言われるように「がんと闘ってはならない」のは何よりも重要なことで、このブログでも複数の医師の臨床経験などを元に繰り返し書いてきた。
がんは放置するべしであり、がんと仲良く付き合うしかなく、過去を振り返って生活態度を改め、過剰なストレスが掛からないようにし、気持ちを明るく楽しくし、低体温から脱却すれば、がんはおとなしくなるというものである。
こうしたことから、理論付けは異なってはいても、行き着く先は同じようなものになり、最初“ビックリ仰天!”したものの、冷静になって考えてみると、氏の見解も小生の今までの説明も大同小異で“これで良いのだ”と相成った次第です。
(高ぶっていた精神がこれで安定しましたので、これより、挑戦的な文体の「である体」から、いつもどおりの一般的な「ます体」に戻します。)
なお、近藤医師の著「医者に殺されない47の心得」はがんに関する項目が飛び飛びに10数項目入っていますが、残りの約30項目はがん以外の事項について書いてあり、小生も“なるほど”と感じ入った部分が多々ありました。
「今、医者にかかっている方、健康診断で基準オーバーになった方、風邪やインフルエンザで医者に行く方」で、医学的知識に乏しい初心者の方には、絶対におすすめの書です。常識は非常識とするものがほとんどですが、これに従っても失敗することは決してありません。それは保証します。
(ただし、食に関する2、3の点については先にも言及したが、間違っていると言わざるを得ない。「牛乳が体にいい」「1日3食取ること」「ミネラルは足りている(これは条件次第だが)」、この3点についてである。)
蛇足ながら、小生が本書で特に気に入った項目は、一番最後の「心得47 リビングウィルを書いてみよう」です。リビングウィルとは、自分の死の間際にどういう治療を受けたいかを判断能力があるうちに文書化したものをいい、近藤医師は自分の最新リビングウィルを巻末に載せておられます。
その内容は、「救急車を呼ばない」から始まって、もし病院に担ぎ込まれても「人口呼吸器をつけない」「点滴も何もしない」など、一切の延命治療を拒否する内容になっています。ただ唯一の治療として「もし私が苦痛を感じているようなら、モルヒネなどの、痛みを和らげるケアは、ありがたくお受けします。」とありますが、これはなるほどとうなづけます。
小生と同年の氏がリビングウィルを既に書いておられますから、小生も、老人となる65歳の誕生日にはこれを書いて自分で持ち、また、家族にも渡しておくことにしようと思っているところです。
(追記)
リビングウィルについては、近藤医師の著の引用を含めて別途記事「延命治療を受けないためのリビングウィルを書く」を起こしましたので参考になさってください。
(2014.11.4追記)
別立てでホームページを開設しました。がん対策についてまとめたページは次のとおりです。併せてご覧ください。
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