薬屋のおやじのボヤキ

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それでもまだ減塩を続けますか

2020年01月27日 | 正しい栄養学

それでもまだ減塩を続けますか

 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」一般向け解説冊子には、高血圧に関して生活習慣で気を付けることとして、減塩について次のように書かれています。
 減塩は血圧を下げるだけでなく、脳卒中や心疾患、腎臓病と直接関係がある可能性もあります。とくに食塩摂取量の多い日本人では減塩による降圧効果が大きいと考えられます。高血圧の人は1日6g未満が目標です。…1日1g減らすことで平均1㎜Hg強の収縮期血圧の低下を期待できます。…なお、日本高血圧学会減塩委員会のウエブサイトでは多数の優良で美味しい減塩食品を紹介しています。

 ついでながら、5年前の同解説冊子では“高血圧の人は、食塩を5g/日ほど減らせば、血圧は5~6㎜Hg下がるといわれています。”と書かれています。

 先に結論を申せば、“たったの5~6、あっ、そう。”と、軽く受け流せばいいです。
 だって、医者から“血圧が150もあるから、少なくとも10、できれば20下げなさい。理想は30下げることだ。”と言われているのですから、5~6下がっても全然意味がないじゃないですか。皆さん、冷静になって計算してみてください。
 加えて、食塩摂取量を5g/日も減らすなんて並大抵の努力でできるものではなく、その努力をしたところで血圧は誤差範囲の数値しか下がらない
。労多くして功少なし、です。
 5g/日減らすとは、半減させることなんですよ。
平成27年国民健康・栄養調査における食塩摂取量の平均値は1日あたり男性11.0g、女性 9.2gなんですからね。
 なお、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における食塩摂取量の目標値は「高血圧予防の観点から1日当たり男性で8g未満、女性で7g未満」とされています。これに従うと、血圧は2~3下がり、これでもって万々歳とでもいうのでしょうかねえ。算数を知っている小学生から、“大人はアホか?”と言われてしまいますよ。

 ところで、上の解説引用の中に「とくに食塩摂取量の多い日本人」との記述がありますが、これは全くの根拠レスです。現在、日本の厚労省のようなチマチマした調査は世界各国とも全然やっていないようで、食塩摂取量に関しては世界中どこも全く無関心のようです。小生の手元にある、数少ない食塩摂取量データの寄せ集めによれば、少々古い調査ですが、欧州各国は(男)10~11g台、(女)7~9g台、米国は男女平均で8g前後とあり、別の調査によると欧州各国は男女平均で9~12g台、米国は同14.5gと出ていますが、これらは信頼が置ける数値とはとても言えません。
 小生の欧州への旅行経験からすれば、日本列島と同様に「北に行けば塩っ辛く、南に行けば薄味」と感じました。ひどかったのはスウェーデンのストックホルムでして魚の塩漬はビールをがばがば飲まねばなりませんでしたし、オーストリアのウイーンの生ハムはやたら塩っ辛かったです。日本の東北地方の
料理より上を行き、小生の周りの人の経験もほぼ同様です。皆さんご自身の経験なり周りの人の感想をお聞きになれば、きっと同じでしょう。食塩摂取量の比較調査は人間の舌が一番正しいのではないでしょうか。

 さてさて、日本の減塩運動は、厚労省や日本高血圧学会に止まりません。「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」(日本脳卒中学会・日本循環器学会 2016年)では、減塩に関して「2gの減塩」を掲げています。このように厚労省、各種学会あげて、減塩、減塩また減塩の大合唱が性懲りもなく続けられ、国民に対して減塩を無理強いしています。それどころか、日本高血圧学会は「減塩委員会」まで設けたりし、2017年には毎月17日を「減塩の日」に定めたりと、悪乗りまでするようになりました。

 ここまですさまじい減塩運動が行われているのは日本だけなんですが、そうなってしまった本元は、奇をてらった、たった一つの調査報告です。世界で最初に食塩と高血圧の関係が示されたのが1954年のことで、米国のダールという学者が世界5地域の食塩摂取量と高血圧者率を示した簡単な報告です。なお、この調査は標本数が少なく、かなり恣意的なもので、統計学的有意性はなく、非科学的代物なのです。よって、紹介しても意味のないものですが、これが“経典”にされてしまっていますから、お示しします。
 (図からの読み取りにつき数値は概数)
                  食塩摂取量    高血圧者率
  日本・東北地方        27 g/日       40 %
  日本・九州地方        17           22
  アメリカ・北部        11           7
  太平洋・マーシャル諸島     8           6
  北極・エスキモー        4           0

 その後、この種の疫学調査が幾つも行われたのですが、統計学的に不備なものが多く、そこで、1982年に国際心臓学会連合が、統計学的に意味のある手法を用いて国際的な統一調査をすることにし、1988年にインターソルト・スタディーを発表しました。
 世界32か国の52地域、10,079人を対象としたもので、1地域の男女(20~59歳)各100人以上としています。なお、食塩摂取量は、これと因果関係が深い尿からの排泄量を元に推定。
 その結果は、ダールの報告どおりのものが期待されたのですが、たしかに文明から隔絶された地域(狩猟採集民)では、食塩摂取量、高血圧者率ともにゼロか極めて小さな数値であることが分かったものの、文明化された地域(食塩が流通している地域)にあっては、ほとんど相関関係が見い出せない結果となってしまったのです。

 本来なら、ここで、ダールの研究報告なるものを、科学者たる医学・栄養学者は否定せねばならないのですが、日本ではこのときすでに厚生省が動き出していて減塩運動が盛り上がっており、それを強力に推進しようとする学者(御用学者)も多く、もう引くに引けなくなって、食塩摂取量と高血圧の相関性を捻り出し(本来なら血圧は10単位<例えば140とか150>で物を言わねばならぬのに、高血圧学会ガイドラインにあるように「食塩1日1g減で、血圧1㎜Hg強の低下」という、1桁下の誤差範囲の数値)でもって、減塩運動を続けさせるという暴挙に打って出たのです。
 これは学者ばかりでなく、厚生省という役所もいったん動き出させた政策というものは、よほどのことがないかぎり引っ込めないという頑強な体質を持ち備えていますから、官学が強力に連携し、やってはならない減塩運動を絶対に止めることはしないのです。
 かててくわえて質が悪いのは、脆弱な根拠しか持ち合わせなくなった場合には、あの手この手でごり押しし、大手マスメディアをも取り込んで国民を洗脳し、誰にも文句を言わせない“空気”を作り出し、もって彼らは“赤信号、皆で渡れば怖くない”とばかりに思考停止し、言いだしっぺの御仁たちとそれに追従する官学サポーターどもの、何でもいいから我が身を守ろうとする、人間の悲しい性がそこにはあるのです。特にその気質が強いのが日本人ですから、もうどうにもしようがなくなってしまった、それが日本
の現実です。
 ただし、全部が全部の学者が御用学者になってしまっているわけではなく、日本脂質栄養学会に所属(または賛同)する多くの学者らはそうではないです。著名な方では例えば、奥山治美、浜崎智仁 、大櫛陽一、浜六郎氏らがそうで、次項のコホート研究の紹介も奥山治美氏らによるものです。
 なお、世界保健機関(WHO)もインターソルト・スタディーの発表後も減塩指針を崩さなかったのですが、その当時、日本はWHOの分担金比率も高く、機関トップの事務局長が日本人であったことも背景にありましょう。よって、今日でもWHOは厳しい減塩指針(1日5g)を示しています。また、WHO発表の高血圧基準なども御用学者の意図する数値となっており、WHOという機関も信頼がおけるものではありません。

 さて、最近、といっても2014年のことですが、興味ある研究報告がなされました。カナダ・マックマスター大学のMartin O’Donnell氏らがまとめたコホート研究で、食塩摂取量と血圧・心血管疾患死亡率の関連を調査したものです。
 標本数は世界18か国101,945人(ただし地域的に偏りがあり中国人が42%)、平均追跡期間は3.7年。食塩摂取量はインターソルト・スタディーと同様に尿中ナトリウム排泄量を元にする推定値。なお、コホート研究とは、特定の要因と疾患の発生の関連を長期にわたり観察する研究のこと。
 その結果がどういうものであったかというと、血圧については「食塩摂取量を13g/日から6g/日に半減させても血圧は2㎜Hgしか下がらない」というものです。
 そして、食塩(塩化ナトリウム)摂取量と心血管疾患死亡の相関に関しては、初めての大がかりな調査と思われるのですが、次の図のような結果が出たのです。
 出典:2019.9.8 発刊「日本人は絶滅危惧民族 ー誤った脂質栄養が拍車ー 」(編著者:奥山治美)
 なお、同時にカリウム摂取量についても同時に調査され、心血管疾患死亡との相関が示されました。これは定性的に言われていたことですが、定量的には今回初めて示されたようです。

 図中の*印はp<0.05の状態を示し、通常、統計学的に有意水準を満たすとされます。(語弊がありますが、ざっくり言えば「p<0.05とは、これが正しくない可能性は5%未満である」というものです。)
 この図から、「食塩7.6g/日未満の集団と17.8g/日以上の集団で、心血管疾患死亡の危険度が有意に上がる」と統計学上から言えるということになります。
 また、塩化カリウムについては「5.7g/日以上の集団で、心血管疾患死亡の危険度が有意に下がる」と統計学上から言えるということになります。

 さあ皆さん、2014年に発表された、このコホート研究の結果(ビックニュースなのですが、日本の大手マスメディアも、厚労省や医師会などとつるんでいて、口をつぐんだようでして全然ニュースにならず、小生もつい先日知っただけですし、残念ながらネット検索してもほんのわずかしか見つかりませんでした)を、どう解釈されますか。
 厚労省が国民に対して目標とさせている「男性で8g未満、女性で7g未満」、日本高血圧学会が高血圧の人に目標とさせる「1日6g未満」、これらに従っていたら、“減塩して心血管疾患や脳卒中から身を守ろうとしたのに、真逆じゃないか!”となっちゃいます。
 にわかに信じられないかもしれませんが、以上、これが現実なのです。
 なんとも弱った世の中です。自分の身は自分で守るしかなく、何が真実かを自分で調べるしかない世の中にますますなっていく令和の時代。
 このブログがそうしたことに少しでもお役に立てば幸いです。

(備考)ここに紹介したO’Donnell氏らのコホート研究の結果は、ただし絶対的なものではないです。
 というのは、各種疫学調査全般に言えることですが、標本の偏り(貧富の差による各種栄養に大きな違いがあったり、運動習慣の大きな差があったり、年齢構成が一定でないなど)がありますし、かつ追跡年数が平均3.7年と短いですから心血管疾患死亡者数は十分な数にのぼらず、どうしても統計学的正確性を欠くからです。この調査が世界各国で継続され、追跡年数が10年を超えるようになれば、だいぶ正確性が増す(*(アスタリスク)がたぶん2つ付いたp<0.01になる)でしょうから、それを期待したいです。
 しかしながら、このコホート研究の継続は、減塩派学者や減塩推進公的機関にとっては実に脅威ですから、様々な圧力で潰されてしまう恐れが大です。2014年発表からもう6年経とうとしており、もうそろそろ継続追跡結果がまとめられていい時期ですが、すでにあらかた追跡打ち切りになっているかもしれません。

関連記事(このブログの塩分摂取に関する過去記事)
2017.7.31 年中減塩、ただし夏は熱中症予防に塩分補給って正しい?
2014.1.20 減塩ではなく、1か月に1日「塩断ち」して「塩持ちの良い体質」に改善
2012.8.17 減塩は大間違い!塩味を楽しんでイキイキ元気!
2012.8.15 減塩しすぎるとどうなる?やる気が失せて元気がなくなります。 
2012.8.14 塩を摂りすぎると高血圧になる?心配ご無用!でも、食塩感受性が高い人は注意すべきでしょう
2012.8.13 塩を取りすぎると胃がんになる?そんなことは有り得ません。 

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納豆が体に良い訳は意外な所に(三宅薬品・生涯現役新聞N0.300)

2020年01月25日 | 当店毎月発刊の三宅薬品:生涯現役新聞

当店(三宅薬品)発行の生涯現役新聞N0.300:2020年1月25日発行

表題:納豆が体に良い訳は意外な所に

副題:納豆は菜種油などの植物性油脂の毒消しになるのです

(表面)↓ 画面をクリック。読みにくければもう1回クリック。裏面も同様です。

 

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 やっぱり「油断」しなきゃ(三宅薬品・生涯現役新聞N0.298)

(裏面)瓦版のボヤキ

    生涯現役新聞が300号に

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それでもまだ降圧剤を飲みますか

2020年01月16日 | 高血圧

それでもまだ降圧剤を飲みますか

 日本高血圧学会のサイトでは、次のように謳われています。
 高血圧(140/90 mmHg以上)は、日本人の三大死因のうちの二大疾患である脳卒中や心臓病など、生命に関わる病気を引き起こす最も主要な原因となっています。
 
また、同学会の一般向け「高血圧治療ガイドライン」解説冊子には、
  高血圧は、サイレントキラーといわれるように、自覚症状はほとんど現れませんが、長い時間をかけて動脈硬化を進行させます。症状がないからといって、高血圧を放っておくと、突然脳卒中や心筋梗塞になることがありますし、徐々に腎機能が低下してしまいます。動脈硬化が進行して引き起こされる脳卒中、心筋梗塞や腎臓病などの重大な病気になってから高血圧に気づくことも多いため、注意が必要です。
と書かれています。つまり、
 原因=高血圧、結果=動脈硬化→脳卒中、心筋梗塞や腎臓病などの病気を招く
というのです。

 これって素直に考えてみるに、“おかしい”となりませんか。
 誰しも年を食うと、体が硬くなり、シワも寄ります。血管だって同様でしょう。つまり年を食えば血管は動脈硬化を起こす。すると、血液の流れが悪くなり、体中が欲しがっている酸素が十分に供給できなくなる。そうなりゃ心筋が収縮力を高めて血圧を上げ、酸欠状態にならないようにするでしょう。これは、ヒトにはホメオスタシス(生体恒常性)の維持機構が備わっていますから、血圧上昇はごく自然にスムーズに行われるというものです。

 つまり、日本高血圧学会の主張の真逆の形、
 原因=動脈硬化、結果=高血圧→年を食っても十分な血流を保ち、健康維持
ということになりましょう。

 その昔、血圧は年齢+90、これだけあって普通で、これが基準値と言われました。
 このことは、原因=動脈硬化、結果=高血圧、と言っていると考えるべきことです。
 もっとも、この動脈硬化と血圧の関係は、鶏が先か卵が先か、という因果の問題になりましょうから、容易には解明できない性質のものではありますが。
 でも、間接的状況証拠になるものが幾つかあります。つまり、血圧を降圧剤で下げるとどういう結果を招くか、動脈硬化が止まるのか止まらないのか、これは検査が困難であるも、心血管や脳卒中疾患が減るのか否かをみてみればいいでしょう。

 こうした考え方を取っておられるのが日本脂質栄養学会で、下図のようにまとめられておられます。

出典:2019.9.8 発刊「日本人は絶滅危惧民族 ー誤った脂質栄養が拍車ー 」
<裏表紙:糖尿病 慢性性腎炎 骨折 脳・心血管病 認知症 少子化の予防を目指して> 
(日本脂質栄養学会 食品油脂安全性委員会 糖尿病生活習慣病予防委員会 編著者:奥山治美)

 そして、上記出典のなかで次のように述べられています。
 上述(資料62図)のように、降圧剤が血圧を下げる結果として抹消組織を虚血状態にし、むしろ脳・心血管病を増やす可能性がある。実際にこのような因果関係を示唆する具体的な臨床データを数例示す。
 一般集団を10年間追跡し、降圧剤の使用群と非使用群について脳卒中死と心血管死が比較された。…この一般集団についての大規模な観察研究の結果にもかかわらず、日本高血圧学会が低い基準値を設定して、降圧剤治療を進める根拠は見いだせない。…


(次に)日本の保健所を中心とした追跡調査の結果を資料65に示す。結果について強いていえば、WHOの分類Ⅵ群(>180 / >110)のみ、降圧剤によってわずかな脳卒中イベントの抑制が期待できるが、促進の場合もありうる。開始時血圧がそれ以下の場合は、降圧剤を使用して脳卒中発症をまったく抑えることはできない。

(引用ここまで)
 これ以外の追跡調査としては、降圧剤使用での総死亡率の増加、自立率の低下の2例が、上記出典に掲載されていますが、このブログの「高血圧は健康で長生きできます。血圧の薬は飲んじゃダメ。中高年は180でも大丈夫。(改訂版)」で紹介したものと同じですので、割愛します。なお、上記出典には図表は乗っていませんでしたが「茨城県民(40歳以上男女)約10万人を5年間追跡調査した結果も同様に、降圧剤を使用しない群のほうが癌死亡率も総死亡率も低かった(入江ふじ子ら、2001)。」との記述があります。
 これだけ状況証拠が出てくると、表題に掲げましたように「それでもまだ降圧剤を飲みますか」と結論付けていいように思うのですが、残念ながら科学的に明確に断定するのは早いようです。上記出典では、これらの研究における降圧剤の使用群と非使用群はランダムに割り付けられたものではなく、背景因子が異なる可能性が高いからであるとし、納得できるRCT試験の結果が待たれる、としています。
 RCT試験:対象者を無作為に介入群(検診など、決められた方法での予防・治療を実施)と対照群(従来通りまたは何もしない)とに割り付け、その後の健康現象(罹患率・死亡率)を両群間で比較するもの。無作為化比較対照試験、ランダム割付比較試験とも呼ばれる。

 しかし、どうでしょう。ダメ押しとなる可能性の高いRCT試験なんぞやろうものなら、降圧剤は有害であるという明確な結論がでてしまい、開業医の倒産続出となりましょうから、日本医師会がだまっていないでしょう。よって、このような医者の生き死に関わる試験は阻止され、そして相も変わらず一般向け「高血圧治療ガイドライン」解説冊子をばんばん配り、患者のみならず国民をだまし続けることでしょうね。
 なんとも弱った世の中です。自分の身は自分で守るしかなく、何が真実かを自分で調べるしかない世の中にますますなっていく令和の時代。
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痛風と上手に付き合う方法は「ビールでも飲んでみるか」だそうです

2020年01月15日 | 生活習慣病一般

痛風と上手に付き合う方法は「ビールでも飲んでみるか」だそうです

 関節に特有の痛みでありながら、リュウマチは女性に多く、痛風は男性に多い。特に、痛風はほぼ全部が男性の疾患です。
 となれば、男性ホルモンが直接なり間接的に働いて、不要物である尿酸の排出が滞るからだろうと推測できるのですが、そのシステムは全く未解明です。

 動物において、もう少し絞り込んで哺乳類において、不要物である尿酸はどう処理されるかというと、体内酵素である尿酸オキシダーゼによって体に有用なアラントイン(皮膚の傷薬になる)に変換されてから排出されます。
 ところが、類人猿にはこの酵素が働いていないのです。

 ということは、痛風は類人猿の、それもオスに特有の疾患という、なんとも摩訶不思議な病ということになります。類人猿は、霊長類(サル)のなかで尻尾がないという大きな特徴があり、進化(この言葉はあまりふさわしくないですが)の過程で、あれこれ退化しつつある、哀れな存在に思えてしまいます。大半の動物が持っているビタミンC合成酵素も、類人猿はじめ霊長類の一部は喪失しているのですからね。

 こうした退化は、類人猿に特有の食性や生活環境によるところが大きいと思われるのですが、大型類人猿は、小型の類人猿(テナガザル)と分かれてから、一部食性を変えてきていると思われ、それに適応すべく、それなりの対応をしているやに思われます。
 ところが、ヒトはさらに大きく食性を変化させ、それによって、様々なトラブルを抱え込むようになったと推測されます。三大栄養素と言われる「炭水化物、脂肪、たんぱく質」は、類人猿のなかでヒトに特有の栄養素と言えます。小型の類人猿はこれを一切口にしませんし、大型の類人猿にあっても少々食すだけですから、ヒトにとっても三大栄養素は本来の食性から離れた、いまだ代替食糧と言えましょう。
 よって、テナガザルの食性(葉っぱ、花、甘くもない果物だけ)に戻せば、食が原因する様々なトラブルが解消するということになりましょうか。

 しかし、これは到底不可能です。特に「肉」という“麻薬”性の美食にはまってしまった、飽食時代の現代人にとっては、テナガザルの餌ばかりを食わされる毎日を過ごすくらいなら死んだほうがまし、となりましょう。
 
こと痛風に関しては、美食家がなりやすい感がしますからね。
 美食の素となるのは、たんぱく質が分解されて生ずる窒素化合物であるアミノ酸であり、これがエネルギー源として使われ、ヒトにおいては最終産物は尿素になるというも、一部は尿酸に変換されるのではなかろうか、あるいは尿素の存在が尿酸の産生を促すのではないか、これは単なる憶測にすぎないのですが、否定しきることはできないでしょう。

 でも、痛風になる方は美食家のごく一部です。たいていの方はスムーズに体外排泄してしまいます。関節において析出して結晶化するほどに尿酸を抱え込むという異常は、単に排出システムの故障として片づけてしまうことは安易すぎる感がします。そこには尿酸を有効活用しようという生体反応が働いているかもしれません。現に尿酸は強力な抗酸化物質であり、何らかの形でこれが体内で有効に働いているかもしれないからです。

 ここまで推測や憶測ばかりで物を言ってまいりましたが、こと痛風に関しては現代医学も暗中模索の状態にあり、痛風の改善には、逆転の発想でもせねば収まりがつかないかもしれません。
 “俺の体には尿酸がたんと要るんだ。飲んじゃいかんというプリン体が多いビールで晩酌するか。”というのも一法でしょう。要は析出して結晶化するほどに尿酸が濃くならないように水分補給でもしっかりすればいいでしょうからね。論文によっては、ビールのプリン体は痛風のリスクを高めないとありますし。

 このことについては、「武田邦彦(中部大学)」さんの音声ブログ「楽しい人生を送るヒント:痛風の時にはビールを飲む」で、ご自身の経験を踏まえて、かなり詳しく語られています。痛風持ちの方はぜひお聞きになってください。上手にビールを飲めば、痛風を瞬時に治せることも多いようですよ。

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賤ケ岳の戦い「美濃返し」に学ぶ(三宅薬品・生涯現役新聞バックナンバーN0.215)

2020年01月10日 | 当店発刊の生涯現役新聞バックナンバー

 毎月25日に発刊しています当店の「生涯現役新聞」ですが、これをブログアップしたのは2014年陽春号からです。それ以前の新聞についても、このブログ読者の方々に少しでも参考になればと、バックナンバーを基本的に毎月10日頃に投稿することにした次第です。ご愛読いただければ幸いです。

当店(三宅薬品)生涯現役新聞バックナンバーN0.215:2013年12月25日発行
表題:賤ケ岳の戦い「美濃返し」に学ぶ
副題:戦国時代の「玄米菜食と発酵食品」が日本人の元気の源です

 ↓ 画面をクリック。読みにくければもう1回クリック。

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二十四節気をさらに3分割した「七十二候」に親しみませんか

2020年01月01日 | よもやま話

二十四節気をさらに3分割した「七十二候」に親しみませんか

 七十二候(しちじゅうにこう)とは、古代中国で考案された季節を表す方式のひとつ。二十四節気をさらに約5日ずつの3つに分けた期間のこと。各七十二候の名称は、気象の動きや動植物の変化を知らせる短文になっている。中には「雉入大水為蜃」(キジが海に入って大ハマグリになる)のような実際にはあり得ない事柄も含まれている。古代中国のものがそのまま使われている二十四節気に対し、七十二候の名称は何度か変更されている。日本でも、江戸時代に入って渋川春海ら暦学者によって日本の気候風土に合うように改訂され、「本朝七十二候」が作成された。現在では、1874年(明治7年)の「略本暦」に掲載された七十二候が主に使われている。

とのことです。「略本暦」の「七十二候」を以下に紹介します。
 大自然と毎日触れ合うなかで、日に日に移ろいゆく季節感を味わってみてはどうでしょうか。
 その中に「腐草為蛍」(腐った草が蒸れ 蛍になる)という、おかしなものがありますが、これは「刈り取った雑草が暑さで腐ってきた頃に蛍が舞うようになる」と解釈すればいいでしょう。
 なお、このブログで各節気ごとに記事にしている「24節気の健康と食養」のページに関係部分を順次再掲することとします。

立春
 初候 東風解凍(こち こおりを とく)東風が厚い氷を解かし始める

 次候 黄鶯睍睆(うぐいす なく)鶯が山里で鳴き始める
 末候 魚上氷(うお こおりを いずる)割れた氷の間から魚が飛び出る
雨水
 初候 土脉潤起(つちの しょう うるおい おこる)雨が降って土が湿り気を含む

 次候 霞始靆(かすみ はじめて たなびく)霞がたなびき始める
 末候 草木萌動(そうもく めばえ いずる〉草木が芽吹き始める
啓蟄
 初候 蟄虫啓戸(すごもり むし とを ひらく)冬蘢りの虫が出て来る

 次候 桃始笑(もも はじめて さく)桃の花が咲き始める
 末候 菜虫化蝶(なむし ちょうと なる)青虫が羽化して紋白蝶になる
春分
 初候 雀始巣(すずめ はじめて すくう)雀が巣を構え始める

 次候 桜始開(さくら はじめて ひらく)桜の花が咲き始める
 末候 雷乃発声(かみなり すなわち こえを はっす)遠くで雷の音がし始める
清明
 初候 玄鳥至(つばめ きたる)燕が南からやって来る

 次候 鴻雁北(こうがん きたへ かえる)雁が北へ渡って行く
 末候 虹始見(にじ はじめて あらわる)雨の後に虹が出始める
穀雨
 初候 葭始生(あし はじめて しょうず)葦が芽を吹き始める

 次候 霜止出苗(しも やんで なえ いづる)霜が終り稲の苗が生長する
 末候 牡丹華(ぼたん はな さく)牡丹の花が咲く
立夏
 初候 蛙始鳴(かわず はじめて なく)蛙が鳴き始める

 次候 蚯蚓出(みみず いづる)蚯蚓が地上に這出る
 末候 竹笋生(たけのこ しょうず)筍が生えて来る
小満
 初候 蚕起食桑(かいこ おきて くわを はむ)蚕が桑を盛んに食べ始める

 次候 紅花栄(べにばな さかう)紅花が盛んに咲く
 末候 麦秋至(むぎの とき いたる)麦が熟し麦秋となる
芒種
 初候 螳螂生(かまきり しょうず)螳螂が生まれ出る

 次候 腐草為蛍(くされたる くさ ほたると  なる)腐った草が蒸れ 蛍になる
 末候 梅子黄(うめの み きばむ)梅の実が黄ばんで熟す
夏至
 初候 乃東枯(なつかれくさ かるる)夏枯草(うつぼぐさ)が枯れる

 次候 菖蒲華(あやめ はな さく)あやめの花が咲く
 末候 半夏生(はんげ しょうず)烏柄杓(からすびしゃく)が生える
小暑
 初候 温風至(あつかぜ いたる)暖い風が吹いて来る

 次候 蓮始開(はす はじめて ひらく)蓮の花が開き始める
 末候 鷹乃学習(たか すなわち わざを なす)鷹の幼鳥が飛ぶことを覚える
大暑
 初候 桐始結花(きり はじめて はなを むすぶ)桐の実が生り始める

 次候 土潤溽暑(つち うるおうて むしあつし)土が湿って蒸暑くなる
 末候 大雨時行(たいう ときどきに ふる)時として大雨が降る
立秋
 初候 涼風至(すづかぜ いたる)涼しい風が立ち始める

 次候 寒蝉鳴(ひぐらし なく)蜩が鳴き始める
 末候 蒙霧升降(ふかき きり まとう)深い霧が立ち込める
処暑
 初候 綿柎開(わたの はな しべ ひらく)綿を包む萼(がく)が開く

 次候 天地始粛(てんち はじめて さむし)ようやく暑さが鎮まる
 末候 禾乃登(こくもの すなわち みのる)稲が実る
白露
 初候 草露白(くさの つゆ しろし)草に降りた露が白く光る

 次候 鶺鴒鳴(せきれい なく)鶺鴒(せきれい)が鳴き始める
 末候 玄鳥去(つばめ さる)燕が南へ帰って行く
秋分
 初候 雷乃収声(かみなり すなわち こえを おさむ)雷が鳴り響かなくなる

 次候 蟄虫坏戸(むし かくれて とを ふさぐ)虫が土中に掘った穴をふさぐ
 末候 水始涸(みず はじめて かる)田畑の水を干し始める
寒露
 初候 鴻雁来(こうがん きたる)雁が飛来し始める

 次候 菊花開(きくの はな ひらく)菊の花が咲く
 末候 蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)蟋蟀が戸の辺りで鳴く
霜降
 初候 霜始降(しも はじめて ふる)霜が降り始める

 次候 霎時施(こさめ ときどき ふる)小雨がしとしと降る
 末候  楓蔦黄(もみじ つた きばむ)もみじや蔦(つた)が黄葉する
立冬
 初候 山茶始開(つばき はじめて ひらく)山茶花(さざんか)が咲き始める

 次候 地始凍(ち はじめて こおる)大地が凍り始める
 末候 金盞香(きんせんか さく)水仙の花が咲く
小雪
 初候 虹蔵不見(にじ かくれて みえず)虹を見かけなくなる

 次候 朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)北風が木の葉を払い除ける
 末候 橘始黄(たちばな はじめて きばむ)橘の実が黄色くなり始める
大雪
 初候 閉塞成冬(そら さむく ふゆと なる)天地の気が塞がって冬となる

 次候 熊蟄穴(くま あなに こもる)熊が冬眠のために穴に隠れる
 末候 鱖魚群(さけの うお むらがる)鮭が群がり川を上る
冬至
 初候 乃東生(なつかくれくさ しょうず)夏枯草が芽を出す

 次候 麋角解(おおしかの つの おつる)大鹿が角を落とす
 末候 雪下出麦(ゆき わたりて むぎ いづる)雪の下で麦が芽を出す
小寒
 初候 芹乃栄(せり すなわち さかう)芹がよく生育する

 次候 水泉動(しみず あたたかを ふくむ)地中で凍った泉が動き始める
 末候 雉始雊(きじ はじめて なく)雄の雉が鳴き始める 
大寒
 初候 款冬華(ふきの はな さく)蕗の薹(ふきのとう)が蕾を出す

 次候 水沢腹堅(さわみず こおり つめる)沢に氷が厚く張りつめる
 末候 鶏始乳(にわとり はじめて とやに つく)鶏が卵を産み始める

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