宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

なぜ、コロナはこんなに超高温になるのか? 熱以外の手段でエネルギーを伝える仕組み光遷移とその確率を上げる電弱ホール効果

2024年04月28日 | 太陽の観測
太陽の表面温度(※1)は5500℃なのに、数千キロ上空の“コロナ(太陽コロナ)”の温度は100万℃にもなります。

なぜ、コロナはこんなに超高温になるのでしょうか?

このコロナが加熱されるメカニズムはまだ分からず…
“コロナ加熱問題”と呼ばれるこの謎の解明は、太陽研究における大きな課題になっています。
※1.太陽を含めた恒星の“表面”は、通常は不透明な部分の最表層部のことを指す。これは“光球”と呼ばれ視覚的な表面と一致する。
今回の研究では、“電弱ホール効果”と呼ばれる現象を通じて、コロナ加熱のカギは素粒子“ニュートリノ”が崩壊して“光子”となるとする理論を発表しています。
この研究は、北海道大学の石川健三さんと北海道科学大学の飛田豊さんの研究チームが進めています。


熱以外の手段でエネルギーをコロナへ伝える仕組み

地球から見て太陽が月に完全に隠される“皆既日食”では、黒い影のような月の周りに白い光の環を観察することができます。
この環は、ラテン語で冠を意味する“corona”に因んで“コロナ”と名付けられています。

コロナの正体は、太陽の外側を覆うプラズマ化した薄い大気。
その温度は100万℃以上にも達しているんですねー

でも、太陽の表面温度は5500℃なので、コロナは表面と比べると実に200倍も高温なことになります。

炎がその温度以上に空気を加熱することがないのと同じように、コロナの高温は太陽放射だけでは説明ができません。
なので、コロナの高温は、熱以外の手段でエネルギーが伝えられていることを示しています。

このエネルギーの伝達手段が大きな謎に包まれているので、これまでコロナの加熱をうまく説明できていませんでした。

長年有力視されている説には“波動説”(※2)と“磁気リコネクション説”(※3)の2つがあるのですが、どちらも観測された現象だけでは、コロナの温度上昇を十分に説明できないという問題を抱えていました。
※2.プラズマ内では音波に似た波が発生し、エネルギーを伝えることが知られている。太陽は巨大なプラズマの塊なので、光球内部のエネルギーが波を通じてコロナへと伝達しているのではないかという予測が波動説。波の発生は観測されているが、波のエネルギーをコロナの過熱に変換する機構が謎のままで、また温度上昇の一部しか説明できないという問題もある。

※3.太陽の磁場は太陽自身の活動によって、局所的に激しく捻じ曲げられる箇所がある。この捻じれが限界に達すると、逆向きの磁力線と繋ぎ変わると同時にエネルギーが解放される。このエネルギーがコロナが高温となる原因と予測しているのが磁気リコネクション説。磁場の捻じれの解消は、小規模な太陽フレア(ナノフレア)を伴うので観測で証明が可能。ただ、今のところはコロナを加熱するには到底足りないフレアしか観測されておらず、やはり温度上昇の一部しか説明できないという問題がある。
図1.2023年4月20日にオーストラリアのエクスマウスで観測された皆既日食。黒い太陽の周りにみられる白い輪がコロナ。(Credit: Mantarays Ningaloo, Australia/MIT-NASA Eclipse Expedition)
図1.2023年4月20日にオーストラリアのエクスマウスで観測された皆既日食。黒い太陽の周りにみられる白い輪がコロナ。(Credit: Mantarays Ningaloo, Australia/MIT-NASA Eclipse Expedition)


コロナを加熱する原動力は光遷移というニュートリノの崩壊にあった?

今回、研究チームが考えたのは、“電弱ホール効果”と呼ばれる現象を通じて、重いタイプの“ニュートリノ”が軽いタイプの“ニュートリノ”と“光子”に崩壊される過程が、コロナを加熱する原動力となっているのではないかとする理論でした。

ニュートリノは、宇宙を形作る基本要素となる“素粒子”の1グループ。
そのニュートリノは3種類に分かれていて(※4)、お互いにわずかながら質量が異なる関係にあります。
太陽の中心部では水素の核融合反応に伴って、大量のニュートリノ(太陽ニュートリノ)が放出されていることが知られています。
※4.ニュートリノのタイプは3種類、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノがある。ニュートリノの質量がゼロではなく、お互いに異なる質量の値を持つことは証明されているが、それぞれのタイプが具体的にどれくらいの質量をもつのかは判明していない。
光子とは、肉眼でも見える可視光線も含めた“電磁波”を粒子と考えた場合に対応する素粒子で、電気と磁気を統合した力“電磁相互作用”を伝える粒子(ゲージ粒子)です。
大雑把に言えば、私たちが物質を見たり物質に触れたりできるのは、電磁相互作用によって原子同士が相互作用しているためです。

でも、ニュートリノは電磁相互作用をしないので、通常は光子と相互作用をすることはありません。
ただ、“弱い相互作用”という力でのみ、他の物質と相互作用をする性質があります。(※5)
※5.ニュートリノは他に重力相互作用もするが、素粒子レベルの世界ではあまりにも弱い力なので無視される。
弱い相互作用は、太陽の中心部で発生する核融合反応や、ニュートリノが他の物質と相互作用するときなどに働く力です。

弱い相互作用が伝わる距離は、原子の約1万分の1の大きさしかない原子核の内部に収まるほど短いものです。
なので、ほとんどのニュートリノは原子と出会っても、そこに何もないかのように素通りしてしまいます。

核融合反応が起きている太陽の中心核は極めて高密度ですが、そこで発生したニュートリノはほとんど何の抵抗も受けずに通過できると考えられるので、物質の密度が極めて希薄なコロナではなおさら素通りすると考えられます。(※6)
※6.太陽の中心核に対するコロナの密度は750京分の1以下しかない。
あまりにも他の物質と衝突することがないので、ニュートリノは物理学者の間で“幽霊粒子”と呼ばれるほどです。
このため、コロナ加熱問題において、ニュートリノの存在はこれまで無視されてきました。


ニュートリノの光遷移の確立を大幅に高める電弱ホール効果

ただ、電磁相互作用と弱い相互作用は、条件次第では区別できない同じ性質の力になることが知られているんですねー
なので、これを考慮した場合には話が変わってきます。

電磁相互作用と弱い相互作用を統一した力は“電弱相互作用”と呼ばれていて、1964年に理論が提唱されて以来、電弱相互作用で予言された素粒子の存在も実験的に確かめられています。

ニュートリノは電磁相互作用をしませんが、電弱相互作用は電磁相互作用と弱い相互作用の性質を併せ持つので、ニュートリノと光子との直接的な相互作用が発生することになります。

通常、電弱相互作用が現れるのは、恒星の中心部でも実現しない約1000兆℃という超高温環境での話になります。(※7)
でも、実際にはそれよりも低い温度でも低い確率で電弱相互作用が現れ、重いタイプのニュートリノが軽いタイプのニュートリノと光子に分解する“光遷移”と呼ばれる現象が発生すると考えられます。
※7.このような環境は、誕生直後の宇宙と高エネルギーな粒子同士の衝突で一瞬生み出される以外は、存在しないと考えられている。
ただ、電弱相互作用を考慮した上でも、これまではコロナ加熱問題とニュートリノの関りは考えられてきませんでした。

光遷移で生じた光子はコロナにエネルギーを与えることになるので、ニュートリノがコロナを加熱するというのは理論的にはあり得ますが、光遷移が発生する確率は極めて低いと考えられます。
また、ニュートリノが光遷移する現象の実験的な観測にも成功していないので、ニュートリノの光遷移もコロナ加熱問題では無視されてきました。

そこで、今回の研究で提唱しているのは、“電弱ホール効果”と呼ばれる現象が、ニュートリノの光遷移の確立を大幅に高めるのではないかとする理論です。

これは、電磁相互作用での“量子ホール効果”という現象を、電弱相互作用に拡大したもの。
量子ホール効果の詳細は、この記事のレベルを超えてしまいますが、簡単に言えば、強い磁場の下で電子が運動したときに発生する現象のことを指します。(より詳細な注釈は(※8)へ、この内容は読まなくてよいかも…)
※8.試料に流れている電流(電子の運動方向とは逆向き)に対して垂直な方向に磁場をかけると、電流、磁場、そしてローレンツ力(電子が磁場を受けて発生する力)がそれぞれ垂直となる。ローレンツ力は電子を試料の片側に寄らせて電荷を蓄積するため、やがて発生するクーロン力と釣り合い、磁場や電流と垂直方向に電圧が発生。これは“ホール電圧”と呼ぶ。ホール電圧と電流との大きさの比率は“ホール低効率”と呼ばれ、磁場の強さに比例することが知られている。この説明全体が“(古典的)ホール効果”と呼ばれる。量子ホール効果とは、このホール効果を量子力学の下で説いたもので、ホール低効率が強い磁場の下では特定の値(フォン・クリッツィング定数)の整数倍にしかならない(量子化する)現象のことを指す。
今回の電弱ホール効果を考える上で重要なのは、
“電弱相互作用が電磁相互作用と弱い相互作用を統一したものなら、電磁相互作用で発生する現象が電弱相互作用で起きていてもおかしくない”
と考える点です。

電子の運動や磁場は電磁相互作用で説明できる現象なので、電弱相互作用に考えを拡大すれば、弱い相互作用を受けるニュートリノもまた量子ホール効果と似たような相互作用が発生すると考えられます。


電弱ホール効果は典型的なコロナ内部の環境で起きやすい

本研究では、強い磁場の下にある環境下で電弱相互作用の理論を解くことで、量子ホール効果と同じ形式の相互作用が現れることを理論的に証明しました。
簡単に言えば、電弱相互作用の理論をある形式で解いた場合、電磁相互作用での量子ホール効果と同じ形の式が現れるという意味になります。

この式で関与する素粒子はニュートリノと光子なので、ニュートリノと光子の相互作用、つまり重いタイプのニュートリノが軽いタイプのニュートリノと光子に崩壊するという現象が発生します。

コロナ内部の物質密度そのものは低いものの、極めて強い磁場がかかっていて、電子の密度は高い傾向にあります。
本研究で示した、電弱相互作用における電弱ホール効果が起きやすいと理論的に示されている環境は、典型的なコロナ内部の磁場および電子密度の値と一致します。

一方、太陽の他の場所では、この条件が満たされることはないので、電弱ホール効果によって太陽本体が過熱されることはありません。
なので、太陽表面とコロナの温度に大きな差が生じていることとも矛盾しません。

電弱ホール効果によってニュートリノが光子に崩壊する場合、崩壊して生じた光子がコロナのプラズマにエネルギーを与えることで、コロナは過熱されます。
今回示された電弱ホール効果によって、ニュートリノが光子に崩壊する確率は10の40乗倍に上がるので、これまで無視されてきたニュートリノとコロナとの関りが見直される可能性はあります。

もし、電弱ホール効果の理論が正しければ、超新星爆発(※9)に並ぶニュートリノが積極的に関わる数少ない天文物理現象の一つに挙げられることになります。
※9.超新星爆発で放出される膨大なエネルギーは、恒星の中心核の崩壊で発生したニュートリノの1%程度が、物質と衝突することで発生すると考えられている。でも、超新星爆発の直前に発生する他の現象(崩壊する物質と中心核との衝突による衝撃波や、衝突による跳ね返り)も考慮しなければならず、どの現象がどの程度の割合で関与しているのか、詳細はよくわかっていない。
電弱ホール効果は、今のところ提唱されたばかり。
なので、理論が正しいかどうかは第三者による検証が必要となるんですねー
ただ、電弱ホール効果の直接観測は極めて難しく、当面は不可能だと考えられています。

また、仮に電弱ホール効果の理論が正しいとしても、コロナの過熱にどの程度の割合で関与しているのかについての検証も必要となります。

このため、現時点ではコロナ加熱問題は解決したとは言えません。

一方、電弱ホール効果を通じて生じる光子やニュートリノの性質は理論的に決定できるので、観測によって理論と合致する光子やニュートリノを検出することは可能です。

電弱ホール効果の実在や、それによってコロナ加熱問題が解決するのかは、当面の間は光学とニュートリノの両面で太陽観測を行い、詳細なデータを得られるかどうかにかかってくるのでしょうね。


こちらの記事もどうぞ


紀元前1万2351年に発生した史上最大の太陽嵐の痕跡を発見! 1年単位という非常に高い精度での炭素14濃度の決定が決め手

2024年04月12日 | 太陽の観測
太陽活動に伴う“太陽嵐”は、大規模なものでは現代の文明に致命的な影響を与えかねない現象です。
そのような活動は過去何度も繰り返されてきたと見られていますが、過去の太陽活動を知るのは容易なことではないんですねー

今回の研究では、年代測定で重要となる“炭素14”の濃度を調査。
そこから、紀元前1万2351年からの1年間という非常に正確な年代の範囲内で、炭素14の発生量が顕著に増大した“三宅イベント(Miyake event)”があることを突き止めています。

他の角度からの調査も合わせると、紀元前1万2351年の三宅イベントは知られている中で最大の太陽嵐の痕跡と見られています。

今回の研究と校正によって得られた年代測定は精度が高く、これほど細かく年数を特定することができるという点も重要な成果と言えます。
この研究は、エクス=マルセイユ大学のEdouard Bardさんたちの研究チームが進めています。
図1.太陽から放出される大量の荷電粒子は、地球の磁気圏と相互作用し、大規模なものは太陽嵐を引き起こす。(Credit: NASA)
図1.太陽から放出される大量の荷電粒子は、地球の磁気圏と相互作用し、大規模なものは太陽嵐を引き起こす。(Credit: NASA)


太陽嵐が社会インフラストラクチャーに与える影響

地球に光と熱を送る太陽は、私たちに不可欠な存在と言えますが、時に文明を危機に陥れる可能性も持っているんですねー

太陽の活動は長期的には安定していますが、短期的には突発的で局所的な“太陽フレア”という激しい活動で“太陽嵐”が発生することがあり、大量の電磁波や荷電粒子(電気を帯びた粒子)を放出します。
これが地球の磁気圏に衝突すると“磁気嵐”と呼ばれる現象が発生します。

磁気嵐は、軽度なものならオーロラが見えたり、無線通信やラジオ放送に一時的な障害が生じたりする程度で済みます。
でも、大規模なものは送電線や電子機器などに過剰な電流を与え、多大な被害を発生させると考えられています。

これまで、非常に大きな影響を及ぼしたものに、1989年3月13日の太陽嵐がもたらした磁気嵐があります。
この磁気嵐は、カナダではハイドロ・ケベック電力公社の電力線網を破壊し深刻な被害をもたらし、アメリカの気象衛星の通信が止まるなど、各国の様々な社会インフラストラクチャーが影響を受けました。

詳細な記録が残る最も激しい太陽嵐は、1859年9月に発生した“キャリントンイベント(Carrington event)”と言われていて、大規模な磁気嵐が起こり、ボストンの電信局では機器のバッテリーを使わず、空気中を伝わる電気のみで営業を続けたそうです。

もし、キャリントンイベント並みの太陽嵐が現代で発生した場合、アメリカだけで数十兆円の損害に加え、送電網の復旧に数年かかると言われています。


大規模な太陽嵐はどの程度の頻度で発生しているのか

では、このような大規模な太陽嵐は、どの程度の頻度で発生しているのでしょうか?

太陽活動の本格的な観測が17世紀初頭になって始まったことや、記録の不完全さから、過去の太陽嵐を知るには別の方法が必要となります。

その方法が“炭素14”の発生量を測ることです。

炭素14は天然に存在する放射性同位体で、通常は大気中の窒素が宇宙線と反応することで生成されます。

そのため、太陽嵐が発生すると炭素14の生成量が増加することが知られています。
これは宇宙線に加え、太陽由来の荷電粒子が炭素14の生成に関与するためです。

過去の地層に含まれる有機物の破片は、その当時の炭素14の量を反映しているので、炭素14が多い時代は太陽嵐が発生した可能性があることになります。

炭素14が増加した時期は、宇宙線によって生成する他の同位体(ベリリウム10や塩素36)も増加する傾向にあり、このような増加が見られる時期を“三宅イベント”と呼びます。

このような特異な炭素14の増加は、炭素14による年代測定法“C14法(放射性炭素年代測定法)”の校正を行う研究の過程で見つかることがあります。

炭素14による年代測定が行えるのは、試料中の炭素14の濃度が試料の古さによって一定に変化するという前提が必要になります。
ただ、実際には様々な原因によってズレが生じてしまうので、これに対する補正が必要となります。
C14法は過去5万5000年間の試料に対して適用が可能で、非常に多用されている年代測定法なので、校正を行うことは重要なことと言えます。


炭素14濃度の変化を知るのに最適な試料

今回の研究では、過去25年間に渡ってヨーロッパに存在する樹木の亜化石を採取・分析を行っています。

この亜化石は、1万年以上前に生息していた樹木が部分的に化石化したもので、炭素14濃度の変化を知るのに最適な試料となっています。

樹木の亜化石は年輪が残されているので、1年単位で炭素14の濃度を分析することが可能です。
適切に分析を行えば、精度は他の分析方法を凌駕することもあります。
図2.ドゥルーゼ川で発掘されたヨーロッパカラマツの亜化石。今回の研究では、この亜化石に含まれる炭素14が分析された。(Credit: Edouard Bard, et al.)
図2.ドゥルーゼ川で発掘されたヨーロッパカラマツの亜化石。今回の研究では、この亜化石に含まれる炭素14が分析された。(Credit: Edouard Bard, et al.)
研究では、フランス南部に流れるデュランス川の中流域にあるドゥルーゼ川で発掘調査を実施。
これは、2020年に確定した紀元前1万1951年(13900 cal BP(※1)までのC14法の基準(IntCal20)より以前の炭素14濃度の校正を行うことが目的でした。
発掘調査では、合計172本の“ヨーロッパカラマツ”の亜化石を採取しています。
※1.BPは“Before Present現在より何年前)”の略。C14法では西暦1950年が基点となる。また、炭素14の濃度は様々な要因で左右されるので、それに合わせた校正が必要となる。この校正を加えたものが“cal BP(歴年代)”。cal BPで表された年数は、1950年から起算して何年前という単純計算ができる。


知られている中で最も大規模な太陽嵐の痕跡

研究チームは、採取した亜化石の中から保存状態の良い140本を選び出し、分析用に加工。
その後、年輪の幅で年代を並べる“年輪年代学”の作業と、それぞれの試料における炭素14の濃度を調べる作業を行っています。
図3.炭素14の濃度を年代別にグラフ化したもの。本来このグラフは直線的になるはずだが、約1万4300年前と約1万4000年前の2つの時期に炭素14の濃度が増加するピークがあることが分かる。(Credit: Edouard Bard, et al.)
図3.炭素14の濃度を年代別にグラフ化したもの。本来このグラフは直線的になるはずだが、約1万4300年前と約1万4000年前の2つの時期に炭素14の濃度が増加するピークがあることが分かる。(Credit: Edouard Bard, et al.)
その結果、111本の亜化石の年輪から約680年間の時代がカバーされ、15本分の試料の分析からは、この期間内での炭素14の濃度変化の測定に成功しました。

次に研究チームでは、重点的な分析や、宇宙線によって生成する他の同位体濃度を調べた研究(グリーンランド表彰のベリリウム10)との照らし合わせを実施。
その結果、紀元前1万2351年~紀元前1万2350年までの1年間(14300~14299 cal BP)と、紀元前1万2101~紀元前2001年までの100年間(14050~13950 cal BP)は、炭素14の生成量が平時と比べて約30%増大していることを突き止めています。

特に、紀元前1万2351年からの1年間の炭素14濃度の増加は、期間の短さから大規模な太陽嵐に由来する三宅イベントだと考えられています。

このような短期間での炭素14濃度の増加が記録されていたのは、過去1万5000年間に9回。
特に多かったのは西暦774年と西暦993年で、炭素14濃度から示唆される太陽嵐の規模は、キャリントンイベントの10倍も大きかったようです。

でも、今回見つかった紀元前1万2351年の太陽嵐は、西暦774年と西暦993年の太陽嵐の2倍、キャリントンイベントの約20倍もの規模と推定されているんですねー
これは、知られている中で最も大規模な太陽嵐の痕跡でした。


太陽活動が弱かった“マウンダー型太陽活動極小期”

一方、期間の長い紀元前1万2101年からの100年間は、太陽活動が弱かった“マウンダー型太陽活動極小期”(※2)の時期にあったことを示唆しています。
※2.太陽黒点の数が少なく、太陽フレアの活動が極端に小さい時期をマウンダー型太陽活動極小期と呼ぶ。代表的なのは1645年~1715年にかけて発生した“マウンダー極小期”。マウンダー極小期の時期に顕著な寒冷気候があったことは知られているが、同じ時期に大規模な火山活動もあったので、太陽活動と短期間の寒冷気候に関係があるのかは分かっていない。
太陽嵐の場合と異なり、この時期は太陽活動によって地球の磁場が乱れにくくなります。
磁場の乱れは宇宙線を効果的に弾くので、それが弱まるこの時期は、地球大気に届く宇宙線の量が増大し、炭素14の生成量が増えることになります。

この時代は、地球が温暖な気候であった“ボーレン‐アレレード温暖期”でしたが、短期間だけ“オールダードライアス”と呼ばれる氷河期を挟んでいたことで知られています。

今期見つかった炭素14濃度の増大時期は、ちょうどオールダードライアスの時期と一致するので、興味深い発見となります。

ただ、マウンダー型太陽活動極小期と短期間の氷河期の関連は、はっきりと分かっていません。
なので、研究チームは太陽活動の低下だけでは、オールダートライアスを説明できないと考えています。


炭素14濃度を1年単位という非常に高い精度で決定

今回の研究では、知られている中で最大の太陽嵐の痕跡を発見することができました。

でも、これは研究の結果たまたま明らかにされた出来事なんですねー

本研究のメインは、C14法をより古い時代に精度良く適用するための校正を行うことでした。
これについて、今回の研究では2020年に策定された基準より更に500年も延長することに成功しています。
特に優れているのは、1年単位という非常に高い精度で炭素14の濃度を決定した点です。

この精度が無ければ、たった1年間の炭素14の増加で決定づけられる紀元前1万2351年の太陽嵐を発見することはできませんでした。
このこと考えると、これはとても重要な成果と言えます。

太陽嵐が発生した時期を“およそ紀元前1万2000年”のような曖昧な表現ではなく、“紀元前1万2351年からの1年間”と具体的に書くことができるのは、本研究の精度が高いおかげですね。


こちらの記事もどうぞ


傾圧不安定波が極から赤道へと熱を運んでいることが観測から判明! これにより太陽の磁気活動の源“差動回転”が維持されている

2024年04月09日 | 太陽の観測
太陽の磁気活動の源“差動回転”の維持には、極が赤道に比べてわずかに暖かいことが必要となります。

今回の研究では、観測されている慣性波の中でも、特に極域で時速70キロという大きな速度振幅を持つモードに着目。
最新の数値シミュレーションを実施することで、傾圧不安定波が極から赤道へと熱を運ぶことで、極と赤道間の温度差を7度以下に抑える働きをしていることを突き止めています。

どうやら、傾圧不安定波が太陽の自転分布に決定的な役割を果たしているようです。
この研究は、ドイツ・マックスプランク太陽系研究所(MPS)の戸次宥丸人さんたちの研究チームが進めています。


太陽の磁気活動の源“差動回転”

太陽内部の自転速度は緯度によって異なり、極は約34日周期で比較的ゆっくり回転しているのに対して、赤道は約24日周期と速く回転していることが知られています。
こうした自転分布は“差動回転”と呼ばれています。

差動回転は太陽の磁気活動の源でもあるので非常に重要なものなんですが、その物理的起源に関しては、まだ謎が多いのが現状です。

理論的考察によれば、観測されているような太陽の差動回転を維持するのに必要なのは、極が赤道に比べてわずかに暖かいこと。
でも、この小さな温度差を約100万℃に達する背景の中から検出するのは非常に困難なので、これまで直接観測には誰も成功していませんでした。


傾圧不安定波が極から赤道へと熱を運んでいる

今回の研究では、太陽で新たに観測された慣性波の物理特性を利用することで、太陽の極域が赤道に比べて約7℃暖かいという観測的証拠をつかむことに成功しています。

研究チームでは、3年前にNASAの太陽観測衛星“SDO”に搭載されている日震磁気撮像装置“HMI(Helioseismic and Magnetic Imager)”で得られたデータを解析することで、太陽に多数の“慣性波”が検出されたことを世界に先駆けて報告していました。

慣性波は、コリオリ力(※1)を復元力とする波で、数か月という非常に長い周期をもつことが特徴です。
※1.コリオリ力とは、慣性系に対して回転する座標系内を運動する物体に作用する慣性力または見かけの力。時計回りに回転する座標系では、この力は物体の進行方向の左側に働き、反時計回りでは力は右側に働く。
今回、研究チームが着目したのは、観測されている慣性波の中でも、特に極域で時速70キロという大きな速度振幅を持つモード。
このモードは、地球大気の中緯度帯の天気を支配していることで知られる“傾圧不安定波”と本質的に同じ性質を持っていて、その振幅は極と赤道間の温度差に非常に敏感なことが分かっていました。

そこで、研究チームでは最新の数値シミュレーションを実施。
その結果、傾圧不安定波が極から赤道へと熱を運ぶことで、極と赤道間の温度差を7度以下に抑える働きをしていることを突き止めました。

観測されている傾圧不安定波の速度振幅を説明するには、極が赤道に比べて約7℃暖かい必要があることが分かっています。
このことから、太陽内部の緯度温度差は許容最大値に達していると考えられます。
図1.数値シミュレーションによって得られた太陽対流層内部の傾圧不安定波の流線構造。(提供: MPS / Y.Bekki)
図1.数値シミュレーションによって得られた太陽対流層内部の傾圧不安定波の流線構造。(提供: MPS / Y.Bekki)
極と赤道のわずかな温度差は、対流層内の角運動量バランスを決定しています。
太陽の傾圧不安定波は、この緯度温度差を調整することで、差動回転に決定的な役割を果たしていることが、今回の研究から明らかになりました。

一般的に、太陽内部で何が起こっているかを知ることは容易ではありません。
これまでは、私たちの目には見えない太陽内部の診断には、主に音波が用いられてきました。

本研究では、太陽で新たに見つかった慣性波も内部診断に有効だと立証されたことになります。

さらに、今回の傾圧不安定波のように大きな振幅を持つ慣性波は、太陽内部のダイナミックスに重要な役割を果たすことも示されました。
研究チームは、今後もさらに太陽の完成派の研究を進めることで、対流層内部ダイナミクスの解明に迫っていくようです。


こちらの記事もどうぞ


高温のガスでできている太陽の直径はどうやって測るのか? 正確な直径算出は困難だけど今回は太陽の振動に基づいて算出

2023年12月28日 | 太陽の観測
太陽の直径はどのくらいあるのでしょうか?

太陽の直径は測定することが困難なので、過去に様々な値が提唱されています。

今回の研究では、太陽の直径を初めて“pモード”と呼ばれる太陽の振動に基づく計算を行い、太陽の直径を139万1560キロと算出しています。

これは、光学的に直接観測された値よりわずかに小さいもの。
一方、太陽の振動に基づく、これまでの手法の計算値よりわずかに大きな値でした。
この研究は、東京大学の高田将郎さんとケンブリッジ大学のDouglas Owen Goughさんの研究チームが進めています。
図1.2018年2月1日に撮影された太陽。太陽の直径は視覚的な太陽の縁と一致する光学的深さ基づいて定義されているが、測定方法によって異なる値が算出されている。(Credit: NASA, GSFC & Solar Dynamics Observatory)
図1.2018年2月1日に撮影された太陽。太陽の直径は視覚的な太陽の縁と一致する光学的深さ基づいて定義されているが、測定方法によって異なる値が算出されている。(Credit: NASA, GSFC & Solar Dynamics Observatory)


太陽の直径を測定する方法

太陽系唯一の恒星である太陽は、直径がどのくらいあるのでしょうか?

国際天文学連合(IAU)の作業部会が2009年に定義した太陽の直径は139万2000キロでした。

でも、この値は1891年に測定された太陽の大きさを100年以上採用してきたもの。
太陽の大きさを求める試みが続けられた結果、2015年には定義値が139万1400キロに変わっていました。
特に断りが無ければ、混乱を避けるためにこの値が引用されています。

ところが、太陽は高温のガスでできているので、地球のように個体の表面がありません。

それでは、太陽の直径を求めるにはどうすればいいのでしょうか?
簡単に言えば、光が通らなくなるほどガスの密度が濃くなる場所を“表面”とみなして、測定することになります。
これは、より正確には“光学的深さ”と呼ばれる手法による定義であり、視覚的な太陽の大きさと一致します。

ただ、太陽の正確な直径を、光学的に直接測定するのは難しいんですねー
それは、太陽は極めて明るい上に、普段の空には太陽と大きさを比べられるものが存在しないからです。

でも、数少ない例外もあります。
それは、水星や月が太陽の前を横切る太陽面通過や金環日食の発生している時間を正確に観測し、直径を直接求める方法です。

ただ、これらの天文現象は滅多に起こらない上に、大気の揺らぎなどで測定結果に誤差が生じてしまうので、正確な値を求めることは困難でした。


太陽表面に発生する振動から直径を求める

一方、1960年代に太陽の表面に発生する固有の振動が見つかったことで、振動から太陽の直径を求める“日震学”の手法でも太陽の直径が求められています。

弦楽器が弦の長さによって固有の音が出せるように、太陽の振動(日震)の周期は太陽の直径によって決まります。
つまり、振動周期を正確に求めることができれば、太陽の直径を計算により求めることができる訳です。

この手法だと、太陽の表面を詳細に観測できれば、時期に依存せずに求めることができます。

これまで、太陽の直径を振動周期で求めるには“fモード”と呼ばれる振動を利用してきました。
この振動を利用するメリットは、太陽の表面に現れやすいので、測定しやすいというものでした。

国際天文学連合における太陽の直径の定義値も、fモードを元に太陽の直径を計算した研究をもとに定められています。

でも、一部にあるのが「fモードは太陽表面に正確に表れていないのではないか」っという見解でした。
この見解が正しいと、fモードは太陽の直径を正確に反映していないことになります。

実際、光学的に直接観測された太陽の直径と、fモードに基づき計算した太陽の直径にはズレがあり、このことは太陽観測における問題として残されていました。

例えば、国立天文台では、古い値であることを承知の上で、国際天文学連合の2009年の定義である139万2000キロを太陽の直径として引用しています。
これは、光学的な直接観測による太陽の直径に近い値でした。


振動モードによって太陽の直径が変わってしまう

本来、直接観測と計算値には大きなズレは生じないはずです。
それでも、問題が発生しているということは、太陽の振動に関する理解が不十分だということになります。

そこで、今回の研究で試みているのは、“pモード”と呼ばれる別の振動モードに基づく太陽直径の計算でした。

“pモード”は、より太陽の表面に近い場所で反射されると考えられていて、太陽の正確な直径を反映すると考えられます。
また、“pモード”は太陽内部の活動によって発生した波で、発生状況が太陽内部の物質密度を正確に反映していることが予測されます。

このため、正確な太陽モデルを用意し、“pモード”に基づく計算を行えば、より正確な太陽の直径を計算できると、研究チームは考えた訳です。
図2.太陽の直径に関する過去の値と、今回の測定結果との比較。(Credit: 彩恵りり氏)
図2.太陽の直径に関する過去の値と、今回の測定結果との比較。(Credit: 彩恵りり氏)
計算の結果、“pモード”に基づく太陽の直径は139万1560キロ(±320キロ)と算出されました。

これは、光学的な測定に基づいた値139万2000キロよりわずかに小さいもので、“fモード”に基づいた値139万1400キロよりわずかに大きな値でした。
“pモード”に基づく太陽直径の算出は初めてのことでした。

今回の研究から分かったのは、算出される太陽の直径が振動モードによって変わってしまうこと。
この点から、これまでの研究に用いられている太陽のモデルの正確性に疑問符を付ける結果となりました。

ただ、太陽のモデルに対する太陽の振動の表れ方や伝わり方は極めて複雑なので、この結果だけでは太陽のモデルを書き換えることは困難です。

実際、他の研究では異なる太陽の直径が算出されています。
この結果は、異なるモデルやデータに基づいて計算されたものかもしれません。
もしくは太陽の直径そのものが活動によって変化している可能性もあります。

今回の研究では、太陽の正確な直径を算出することはできませんでした。
でも、太陽直径の研究を続けることは、太陽の性質そのものをより深く知ることに繋がり、結果として太陽以外の恒星についての理解を深めることにも繋がるはずです。


こちらの記事もどうぞ


画像から見つけたのは磁場のS字型ねじれ! 太陽の磁場が突然反転する現象“スイッチバック”の謎を解明

2022年10月15日 | 太陽の観測
探査機“ソーラーオービター”が太陽に最接近した際の観測から、50年近く前から知られている太陽磁場の反転現象“スイッチバック”の発生メカニズムが明らかになりました。

太陽の磁場が突然反転する現象

1970年代半ばにアメリカ・ドイツの太陽探査機“ヘリオス”が太陽に接近した際、太陽の磁場が突然反転する様子が記録されました。

この現象は突然始まり、数秒から数時間で磁場の方向は元に戻るというもの。
1990年代後半にはアメリカとヨーロッパの探査機“ユリシーズ”も同じ現象を観測しています。

さらに、2018年にはNASAの探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”による観測で、その磁場反転が太陽に近いほど多いことが明確に示され、その原因が磁場のS字型のねじれにあることが示唆されています。

この現象は“スイッチバック”と呼ばれるようになり、形成のメカニズムについてはこれまでに多くのアイディアが出されています。
“スイッチバック”のイメージ動画。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez)
“スイッチバック”のイメージ動画。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez)

コロナのプラズマに見られた歪んだS字型のねじれ

水星軌道よりも内側まで太陽に近づいて観測を行うヨーロッパ宇宙機関の探査機“ソーラーオービター”は、太陽最接近直前の2022年3月25日に、太陽の外層大気であるコロナをとらえました。
ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”は太陽を斜めに周回する軌道に投入され、これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するための探査機。
2020年2月にアメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から“アトラスVロケット”により打ち上げられた。
その画像の1つで見られたのは、コロナのプラズマに歪んだS字型のねじれでした。

そこで、イタリア・トリノ天文台とイタリア国立天体物理学研究所の研究チームが考えたのは、これが“スイッチバック”ではないかということ。

研究チームは詳細なスペクトル分析を実施。
すると、磁力線が開いている領域と閉じている領域との相互作用から“スイッチバック”が起こることを確認します。

このことは研究チームの一員が2020年に提案した、太陽表面における開いた磁場と閉じた地場の相互作用に着目したアイディアを裏付けるものでした。
2020年に提唱された“スイッチバック”の生成メカニズムのイラスト。(a)太陽の活動領域にある開いた磁力線と閉じた磁力線。閉じた磁力線は、太陽大気中に向かって弧を描いてから、太陽に向かって丸く曲がって戻る。開いた磁力線は、太陽系の惑星間磁場とつながる。(b)開いた磁場領域が閉じた磁場領域と相互作用すると、磁力線がつながり、ほぼS字型の磁力線が形成されてエネルギーが爆発的に増加する。(c)磁力線が磁気リコネクションとエネルギー放出に反応してねじれ、それが外側に向かって伝搬する(スイッチバック)。同様の“スイッチバック”は、反対方向にも送られ、磁力線を下って太陽の中に入って行く。(Credit: Zank et al. (2020))
2020年に提唱された“スイッチバック”の生成メカニズムのイラスト。(a)太陽の活動領域にある開いた磁力線と閉じた磁力線。閉じた磁力線は、太陽大気中に向かって弧を描いてから、太陽に向かって丸く曲がって戻る。開いた磁力線は、太陽系の惑星間磁場とつながる。(b)開いた磁場領域が閉じた磁場領域と相互作用すると、磁力線がつながり、ほぼS字型の磁力線が形成されてエネルギーが爆発的に増加する。(c)磁力線が磁気リコネクションとエネルギー放出に反応してねじれ、それが外側に向かって伝搬する(スイッチバック)。同様の“スイッチバック”は、反対方向にも送られ、磁力線を下って太陽の中に入って行く。(Credit: Zank et al. (2020))
さらに、他の研究チームと協力して“スイッチバック”によるコロナのふるまいをモデル計算で再現してみると、今回の観測と驚くほどよく似た結果になったんですねー

そう、今回の研究では、太陽コロナ内での磁気“スイッチバック”をとらえた最初の画像が、その起源の謎を明らかにしたことになります。

“ソーラーオービター”は軌道を1周するごとに、搭載された10個の観測装置から更なるデータが得られています。
今回のことは、まさに研究者が“ソーラーオービター”に期待していた成果といえます。

“スイッチバック”の発生メカニズムを知ることは、太陽嵐がどのように太陽から加速、加熱されるのかを理解する上での一歩となりそうです。

研究チームではこの研究成果をもとに、さらに期待していることがあります。

それは、次の太陽接近で計画されている観測を微調整し、太陽が太陽系の広い磁気環境とどのようにつながっているかを理解すること。
多くの成果が得られるといいですね。
“スイッチバック”のイメージ動画。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez)


こちらの記事もどうぞ