宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

巨大なガス流“マゼラニック・ストリーム”の起源は?

2013年08月31日 | 宇宙 space
南天の夜空で肉眼で、もやっと光る雲のように見える銀河が大マゼラン雲と小マゼラン雲です。

これらの銀河は天の川銀河の周りを回っている矮小銀河で、
1970年代に、この2つの銀河からたなびくリボンのようなガス流が発見されました。

天の川銀河を半周取り囲むほど長いこのガス流は、“マゼラニック・ストリーム”と呼ばれているんですねー
○○○
上は、天の川銀河の可視光画像と、それを取り巻く“マゼラニック・ストーム”(電波画像)
下は、大小マゼラン雲(右)と、そこから伸びる“マゼラニック・ストーム”(電波画像)
×印が組成を調べた領域
大小マゼラン雲は、天の川銀河に近づく方向に移動していて、
天の川銀河を球状に取り囲む高温ガスの圧力で、マゼラン雲中のガスが押し出されています。

この圧力と、2つのマゼラン雲の間にはたらく重力相互作用の両方の影響で、“マゼラニック・ストーム”が作られたと考えられています。

でも、その由来がマゼラン雲のいずれかひとつなのか? あるいは両方なのか?
この疑問の答えは、これまではっきりと分かっていませんでした。

アメリカ宇宙望遠鏡科学研究所では、ハッブル宇宙望遠鏡と超大型望遠鏡“VLT”を用いて、
“マゼラニック・ストーム”中の6ヵ所領域の組成を分析。

“マゼラニック・ストーム”の向こう側に見えるクエーサーからの紫外線を調べると、
“マゼラニック・ストーム”に含まれる元素について情報を得ることができました。

そして分かってきたのが、“マゼラニック・ストーム”中のほとんどの箇所では、酸素や硫黄などの重元素が少ないこと。
これは、かつての小マゼラン雲の組成と一致しているので、20億年前に小マゼラン雲から出ていったっと考えることができます。

一方、マゼラン雲からすぐ近くには硫黄が多い領域もあります。
ここは、比較的近年に大マゼラン雲から出ていったものだということが分かったのですが、
コンピュータシミュレーションで、“マゼラニック・ストーム”のガスのほとんどが、より重力の小さい小マゼラン雲由来であることが示されていたので、これは意外な結果だったんですねー

やがて天の川銀河に引き込まれ、新たな星の材料となる可能性がある“マゼラニック・ストーム”。
この起源が明らかになってきたことは、銀河の星形成について知るうえで重要な一歩になるようです。

火星で起こった食現象

2013年08月30日 | 火星の探査
写真はNASAの火星探査車“キュリオシティ”がとらえた食のようす。







火星の衛星フォボス(大きいほう)とダイモス






火星の衛星フォボスが、もうひとつの衛星ダイモスを隠す食現象を、
火星の地表から初めてとらえたんですねー

8月1日に起こったこの現象は、フォボスがダイモスの手前を通過したもので、
1分足らずの間に撮影された41枚の画像をつなげた動画として公開されています。

フォボスはもっとも長い部分が約27キロしかありません。
でも、撮影時の“キュリオシティ”からの距離が6240キロと近いので、
地球から見た月の半分ほどの大きさに見えるんですねー

一方ダイモスは十数キロとさらに小さく、撮影時には2万キロ以上の距離にありました。

現在、フォボスは火星に少しずつ近づいていて、
もうひとつのダイモスは、だんだん遠ざかっているそうです。

今回の観測から衛星の軌道の精度を上げ、
フォボスが火星の地表に及ぼす潮汐力や、フォボス内部の密度ムラ、
そして、ダイモスの軌道が変化しているかどうかなどが、調査の最終目標になっているようです。

小惑星の捕獲と探査ミッション

2013年08月29日 | 宇宙 space
これは2025年までの実現を目指す、NASAの有人探査ミッション。

このミッションは無人機で小惑星を月周辺まで誘導し、
宇宙飛行士がそこに行って直接探査するというものなんですねー

今年4月に公開されたCG動画では、
小惑星捕獲・誘導プロセスを中心にミッションの大まかな流れを見ることができ、
今回新たに、有人ミッションとしての面に、よりフォーカスした動画・画像資料が新たに公開されました。

CGアニメーションでは、
探査クルーを乗せた宇宙船“オライオン”が、9日間かけて捕獲された小惑星に向かっています。





船外活動により、
無人機で捕獲した
小惑星を直接調べる



月の重力を利用してスピードを上げ、地球から見て月の裏側にある重力均衡点“ラグランジュ点L2”で、
小惑星を引き連れてきた捕獲機とドッキング。
宇宙飛行士が船外から小惑星の格納袋に近づき、サンプルを採取するんですねー






小惑星のサンプル採取のようす




最長で6日間の探査期間の後に捕獲機から離脱し、10日間かけて地球に戻ることになります。

NASAでは現在、技術者と科学者が連携して、
産業界、学術界などの外部意見も含めて、ミッションに関するさまざまなオプションの評価検討が行われているようですよ。

超新星爆発の総エネルギーは?

2013年08月28日 | 宇宙 space
わし座の方向、およそ1万光年彼方にある超新星残骸“W44”。
この超新星残骸の衝撃波の膨張速度を、
慶應義塾大学の研究チームが精密に計測することに成功したんですねー

超新星爆発は太陽の約8倍以上の質量の恒星が、最期をむかえる瞬間です。

この爆発では、衝撃波が周囲の物質の組成や物理状態に大きな影響を及ぼしながら膨張し、
星間空間に運動エネルギーを供給しています。

でも、これまで高密度の星間雲の中で起こる、超新星爆発による衝撃波の膨張速度や運動エネルギーを、
観測し定量的に調べた研究は行われていませんでした。

今回研究チームでは、超新星爆発の残骸“W44”と残骸に隣接する巨大分子雲において、
高温で濃い分子ガスが放射する電波の一種、ミリ波・サブミリ波を観測しています。

この観測には、国立天文台野辺山の45m電波望遠鏡と、
南米チリの10mASTE望遠鏡が使われているんですねー









分子雲中を伝わっていく
超新星爆発の衝撃波
(イメージ図)






その結果、“W44”の衝撃波の膨張速度が、およそ毎秒13キロであること、
また、超新星爆発によって星間物質に与えられた運動エネルギー量が、1050エルグの1~3倍とみられることが分かりました。
ちなみに、太陽が1秒間に放出するエネルギーは約3.6×1033エルグになります。

さらに、毎秒100キロを超える局所的に極めて大きな速度を持つ分子ガスも検出され、
局所的に特に強い衝撃波が存在することも分かったのですが、その理由は分かっていないんですねー

今回の研究では、高温の濃い分子ガスの観測から、超新星爆発の衝撃波を受けた分子ガスの分布や運動を把握する手法が示されました。

観測結果と理論モデルを比較し、
超新星爆発の総エネルギーを直接測定する可能性が開かれたことになります。

JAXAの新型ロケット“イプシロン”打ち上げ!

2013年08月26日 | 宇宙 space
8月27日、JAXAが新型ロケット“イプシロン”を打ち上げます。

13時45分から14時30分に惑星分光観測衛星“SPRINT-A”を載せて、
鹿児島県肝付町の内之浦宇宙間観測所から打ち上げ予定なんですねー

“イプシロン”はJAXAとIHIエアロスペースが開発した新型ロケットで、
“はやぶさ”の打ち上げなどで活躍した“M-V”ロケットの後継機になります。

特長は、打ち上げ費用が高かった“M-V”を教訓にしていること。

第1段は“H-IIA”や“H-IIB”ロケットの補助ブースターとして使われているSRB-Aを改修したもの、
第2段と第3段には、“M-V”の第3段とキックモーター(第4段)を改修したものが使われています。

要は、すでにある部品を組み合わせることで、徹底した低コスト化が図られているんですねー

“イプシロン”の打ち上げ能力は“M-V”の約65%ほどです。
でも、H-IIAやH-IIBと部品の共通化が図られていたり、少人数で打ち上げ管制が行えるなど新しい取り組みの結果、
打ち上げ費用は“M-V”の約80億円から38億円へ… 半分以下にまで下がっています。

これまでのロケットの打ち上げには、地上での点検や組み立てに膨大な人手と時間がひつようでした。
“M-V”の場合、第1段ロケットを発射台に立ててから打ち上げまでに、2カ月近くかかっていたんですねー

これが“イプシロン”では打ち上げシステムの革新により、打ち上げに向けた準備を世界のロケットの中でも最短、
わずか1週間で行えるようにコンパクト化されています。

“イプシロン”により、ロケットの打ち上げが日常的なものへ
そして、宇宙をもっと身近に感じることができる、そんな時代が近づいているのかもしれませんね。




■イプシロンロケット/惑星分光観測衛星(SPRINT-A)特設サイト
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/epsilon/index.html