宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

来年暮れに期待の新彗星“アイソン” 肉眼でも見えるかも

2012年09月30日 | 流星群/彗星を見よう
来春注目の“パンスターズ彗星”に続き、2013年暮れには日本からも肉眼で見える(っと期待される)彗星が見つかりました。

この彗星は国際光学ネットワーク“アイソン(ISON)”のロシアチームが発見したもので、
“C/2012 S1(ISON)”と符号が付けられました。








ニューメキシコ州のRAS天文台で
とらえられた“アイソン彗星”
(黄色い印の箇所)





この“アイソン彗星”は現在、木星軌道周辺から太陽・地球付近に向かっている途中で、“ふたご座”と“かに座”の間に位置しています。
未明には地平線上に出ているのですが、18等級とまだ暗いので観測するのに本格的な望遠鏡が必要なんですねー

予測軌道によれば、2013年の春には冬の星座とともにいったん地上の視界から消え、
2013年の9月~10月に再び“かに座”や“しし座”とともに姿をあらわすことになります。

彗星が太陽に最も近づく“近日点”を通過する11月28日前後には“さそり座”まで南下して日本からは見えなくなるんですねー

気がかりは、“アイソン彗星”が太陽のすぐそばをかすめる“サングレーザー彗星”なことです。
太陽中心から約190万キロまで大接近するので、彗星が蒸発せずに“近日点”を通過できるか…(太陽直径は約140万キロ)

昨年12月の“ラブジョイ彗星(C/2011 W3)”は“近日点”距離がわずか80万キロでした。
でも、大方の予想に反して太陽の向こう側から生還しているんですねー

なので、“アイソン彗星”も生き残ることができれば、12月には“へび座(頭)”の位置で、見事な大彗星として日本の夜明け前の空にあらわれることが期待できます。

来年期待の彗星“バンスターズ”も、3月9日に近日点を通過します。
4月には日本でも目にするチャンスがあるんですねー

2013年はこの2つの彗星に注目ですねー

天の川銀河を取り囲む高温ガスのハロー

2012年09月29日 | 宇宙 space
天の川銀河を数十万光年にもわたって取り囲む、高温ガスのハローの存在が明らかになりました。

これは、NASAの“チャンドラ”とESAの“XMMニュートン”、日本の“すざく”という3つのX線天文衛星のデータに基づいた最近の研究から分かったことなんですねー
天の川銀河を取り囲む高温ガスのハローの温度は、100万~250万ケルビンと推定されています。

銀河全体を包み込むように希薄な星間物質や、球状星団がまばらに分布している球状の領域をハローと言います。

天の川銀河や周辺の銀河が、10万~100万ケルビンの温かいガスに取り囲まれていることは以前から示されていたのですが、
最近では100万度以上の熱いガスの存在も明らかになってきています。

今回の研究では、この「熱いガスのハロー」の質量は「温かいガスのハロー」を遥かにしのぎ、太陽100億個分以上、おそらくは600億個分にも相当するという証拠が示されています。
○○○
天の川銀河を覆っている巨大な高温ガスのハロー(青)
天の川銀河や、その伴銀河である大小マゼラン雲を取り囲んでいる
天の川銀河の周囲にはガスが、とても大きく広がっていることも分かり、広がりは数十万光年…
ひょっとすると、それ以上で、近傍の銀河にまで及ぶかもしれないんですねー どちらにしても、その質量はとてつもないものになります。

今回の研究から“ミッシング・バリオン問題”と呼ばれる銀河天文学の謎が解決できるかもしれません。
“バリオン”とは陽子や中性子などの粒子のことで、宇宙で見られる普通の(暗黒物質でない)質量の99.9%をしめています。

現在の近傍宇宙では、遠方宇宙の観測から予想される量の半分しか確認できていません。
これが“ミッシング(行方不明の)バリオン問題”なんですねー

もちろん、まだ不確定な要素が残っています。
でも、今回の研究成果は行方不明のバリオンが、銀河を取り囲む数百万度の“ガスのハロー”に隠されていることを示す最も強力な証拠になったことなんですねー

今年の“中秋の名月”lは9月30日の日曜日

2012年09月28日 | 宇宙 space
旧暦の8月15日は十五夜です。
この日の月は“中秋の名月”として知られていて、お月見をするのがならわしとなっています。

お月見といえば、丸いお月様と団子が目に浮かびますよね。
でも、“中秋の名月”は必ずしも満月とは限らないんですねー

しかも、9月であったり10月であったり、日付も年によってまちまちです。
今年の“中秋の名月”は9月30日にあたり、昨年に続いて満月でお月見ができます。

また、来年も“中秋の名月”と満月が同じ日に起こるのですが、2014年から7年間にわたって少しだけ欠けた“中秋の名月”になるんですねー

天体観測には嬉しくない月明かりなんですが、この日ばかりは名月を眺めながらお酒を楽しむのがいいですね。

スペースX社“ドラゴン宇宙船” 国際宇宙ステーションへの正式ミッションへ

2012年09月27日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
民間企業の“ドラゴン宇宙船”の打ち上げが発表されました。
前回も国際宇宙ステーション(ISS)には行っているのですが、テストミッションだったんですねー

今回はNASAとの契約に基づく、初の正式ミッション“SpaceX CRS-1”で、ISSへ補給物資の運搬と物資の回収を行います。

“ドラゴン宇宙船”を載せた“ファルコン9ロケット”の打ち上げは、10月8日の9時34分(日本時間)。

“ファルコン9ロケット”は2段式のロケットで、初段にケロシン・液体酸素を燃料とするマーリン・エンジンを9基束ねていて、2段目には同じくケロシン・液体酸素を燃料とするマーリン・バキュームエンジンを搭載しています。

静止トランスファ軌道への打ち上げ能力は約4,500キロで、日本のH-2Aロケットに匹敵するんですねー

一方、“ドラゴン宇宙船”は、最大7名の宇宙飛行士を乗せる有人タイプと、2,500キロ以上の物資を載せる補給タイプの2種類があります。

補給タイプは、日本のこうのとり(HTV)やロシアのプログレス補給船、ESAの欧州補給機(ATV)と同じ無人宇宙船になります。

廃棄品とともに大気圏で燃え尽きる他の無人補給機と違い、“ドラゴン”は大気圏再突入能力を備え、実験試料の回収にも使用出来るんですねー

“ファルコン9ロケット”によって打ち上げられ、ISSへの自動ドッキング、そして帰還はパラシュートを使った海面への着水となります。

もちろん有人タイプ(の型開発後)には、人員の地球への帰還も可能になる予定ですよー

小惑星ベスタで水の痕跡を発見

2012年09月26日 | 小惑星探査 ドーン
NASAの探査機“Dawn(ドーン)”のデータに基づいた2通りの研究により、小惑星ベスタの表面に水らしき揮発物の存在が明らかになりました。

小惑星ベスタは、火星軌道と木星軌道に挟まれた小惑星帯の中で2番目に重い天体です。

探査機“ドーン”は、約1年にわたり小惑星ベスタの観測を行ってきました。
そして、今月はじめに小惑星ベスタを離れた後、次のターゲットである準惑星ケレスに向かいました。

今回の発見は高度約210キロからの観測によるもので、
赤道付近の広い範囲に、隕石やチリで運ばれた水和物の痕跡をはっきりととらえることができたんですねー

これまで“ベスタ”の極地域では、水の氷が存在できるのでは っと考えられてきました。
でも、月と違って“ベスタ”には永久影(決して日が当たらない場所)が無いんですねー
一方、今回痕跡が見つかった赤道付近では、水の氷は安定して存在できません。

“ドーン”のガンマ線・中性子検出器(GRaND)の観測では、水和物に含まれる水または水酸基のものと思われる水素が検出されてました。










“ベスタ”地表の水素分布
赤道付近に高濃度(赤)の領域がある




これは炭素を含んだ隕石が“ベスタ”に衝突したときに運ばれた水和物のようなんですねー
遅いスピードでの落下だったので、揮発物が逃げずに残ったようです。

GRaNDによる“ベスタ”の組成分析データは、地球で見つかる隕石のものと一致していて、
それらの隕石に豊富に含まれる揮発性物質が“ベスタ”にも存在していると考えられています。

“ベスタ”で起きたゆるやかな衝突で、水和物が地表に蓄えられます。
そこに隕石が高速で落下すると、その熱によって水素が水となり蒸発するんですねー





多数のくぼみ地形が集中している
マルシア・クレーター内部










火星(左と中央)と“ベスタ”(右)
どちらのくぼみも同じような過程で
形成したと考えられている




かつて水が豊富に存在した っと考えられている火星でも、隕石が衝突した地形がたくさん見られます。
でも、“ベスタ”でこんなに多く見られるとは、まったく予想外の発見でした。

“ベスタ”はマントルや核といった内部構造を持ち、表面にある火山活動の形跡などから「熱く乾いた」状態を経験していると考えられている小惑星です。

今回の発見は、水和物がただ存在するというだけでなく、“ベスタ”の地質や地形の成り立ちにも深くかかわってくるようです。