宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

観測チャンスは1分 準惑星“マケマケ”

2012年11月30日 | 宇宙 space
太陽系の小天体が、背後の星を隠す“星食”は、その小天体についての情報を得る絶好の機会なんですねー

今回、冥王星とともに準惑星に分類される“マケマケ”の星食観測から、謎につつまれていた太陽系外縁天体“マケマケ”の詳細が明らかになってきました。






“マケマケ”のイメージ図




“マケマケ”は2005年に発見され、ポリネシア地方に伝わる創造神にちなんで名付けられました。
その“マケマケ”が2011年4月23日に、“かみのけ座”の恒星“NOMAD 1181-0235723”を隠す様子が、南半球で観測されたんですねー
そして、この1分間ほどの現象は、チリとブラジルの望遠鏡でとらえられていました。

背後の星の光が“マケマケ”に隠され、また現れる瞬間、その光の変化は徐々にではなく急激なものでした。
大気があれば、手前を天体が通り過ぎる際に、恒星の光は段階的に増減するはずなんですねー

それまで、“マケマケ”には冥王星と同じく、大気があるのではと考えられていたのですが、
この結果から、少なくとも全球規模では大気は存在しない っということが明らかになりました。

これまで、ほんのわずかなことしか分かっていなかった“マケマケ”について、
今回の星食観測でわかったのは、大気の有無だけではありません。

表面の光反射率が泥まじりの雪程度であること、密度が1.7g/cm3(誤差0.3g)であることが新たに分かったんですねー
また、“マケマケ”の大きさは1430キロ(誤差9キロ)×1502キロ(誤差45キロ)で、極方向が少しつぶれた扁球形のようです。

これらはすべて、星食が起こらなければ得られなかった情報なんですねー
“マケマケ”は、比較的背後の星が少ない領域の方向にあるので、星食はなかなか起こりません。

星食という現象を正確に予測して、観測することは非常に難しいようです。
なので、南米各地での観測協力体制がうまくいった今回のようなケースは、大きな成果なんですよねー

いま太陽は最も活発な状態にあるようです

2012年11月29日 | 宇宙 space
11月16日夕方に、太陽の“津波”とでも呼ぶべき現象が、相次いで発生しました。
どうやら、太陽の活動が再び活発化しつつあるようです。

2つの炎が、連続して太陽表面に弧を描いたのですが、その大きさが地球の直径を越える大きなものなんですねー






巨大な炎を巻き上げる
太陽のプロミネンス
(左上)



あまりに巨大だったので、NASAの太陽観測衛星“ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)”に搭載された高解像度カメラも、全体をとらえらるとができませんでした。

吹き上がる巨大な炎の輪は、紅炎(プロミネンス)と呼ばれるもので、今回は16日の15時から19時にかけて発生しました。
SDOにより、4時間以上にわたって撮影されています。

NASAのゴダード宇宙飛行センターが公開した動画の中では、電荷を帯びたガスの描くアーチが、巨大な赤い炎の輪となって太陽から放たれる様子が移っています。

これらのガスは太陽表面の磁場が絡み合って、不安定になった時に放出されるんですねー
そして、その後は再び太陽表面に戻ります。

太陽は11年サイクルの磁気揺動により、その活動や見かけに周期的な変動が生じます。
でも、現在のさまざまな現象は、太陽活動がピークに近づく中で発生したものです。

今回のプロミネンスは、どちらも地球の方向に向かっていないので、地上に直接影響を与えることはないようです。
でも、11月12日に確認された中サイズの太陽フレアは、その後これが地球における磁気嵐の原因となっているんですねー
この磁気嵐が、地球の電離層に大きな電荷を与えたことで、北天の空を見事なオーロラが彩りました。

極大期という名で知られる活動サイクルのピークには、黒点の数が増え、大規模な太陽フレアやプロミネンスが発生します。
極大期は数年にわたって続くことがあり、今はこのサイクルのピークにいるんですねー 太陽は最も活発な状態にあるといえます。

今回の極大期は、地球上に張りめぐらされた送電網に、深刻な影響を与える恐れがあります。
太陽フレアやプロミネンスが、地球に向かって飛んできた場合、電力系統や人工衛星を使用不能に追い込む可能性があるんですねー

大規模な太陽嵐からの放出物の中でも、最も大きな被害をもたらすものは比較的速度が遅いんですねー
なのでコロラド州にある宇宙天気予報センターでは、その粒子が地球に到達するかなり前に検知することが可能だと考えています。
そして、太陽嵐が地球に与える被害を、前もって予想し、防御する方法の改善にむけては、現在も研究を進めています。

今では人工衛星から、これまで以上に迅速かつ正確に、これらの現象を検知することが可能です。
でも、今必要なのは、どの現象に警戒が必要かを見極めて、被害をもたらしそうなものを予測することだそうです。

太陽型恒星が二度目の最後を迎える

2012年11月28日 | 宇宙 space
太陽に似た星を取り囲むガスの星雲が、この星がかつて物質を放出しながら一度「死んだ」あと、再び蘇ったことを物語っているんですねー
太陽も数十億年後、同じような運命を迎えるかもしれません。

太陽の8倍未満の質量の恒星は、晩年を迎えると、赤くふくれあがった赤色巨星となります。
そして、外部層の物質を周囲に放出し、残された星の高温の核が放つ紫外線で、周囲のガス層が発光します。
ごれが“惑星状星雲”と呼ばれる天体です。

その惑星状星雲の1つ“アベル30”は、地球から約5500光年かなたにあります。
この“アベル30”の中心にある星は、約1万2500年前に外部層の物質を乗せた高密度の恒星風を、ゆっくり放出しながら最初の死を経験しました。
画像に見える大きな球殻状の層は、このときのものなんですねー





惑星状星雲“アベル30”
右上の四角は中心部の拡大図
ハッブル宇宙望遠鏡と、
2機の天文衛星
“XMMニュートン”と
“チャンドラ”の
X線画像を合成




そして、850年前に星は再び息を吹き返すことに…
恒星の核の周囲の物質が、断熱収縮して再び核融合反応が始まったんですねー

そのエネルギーが残りの外部層を加熱して、星は炭素とヘリウムが大量に含まれるガスを咳のように吐き出しています。

外部層が急膨張して、一時的に赤色巨星の姿に戻った星は、わずか20年後に急速に収縮して2度目の死を迎えました。

このとき星の最後の息として、時速1400万キロ以上の高速恒星風が吐き出されています。
この恒星風が、それ以前に噴出された物質に追いついてぶつかったんですねー
そして、中心部に見える彗星のような、美しく複雑な構造ができあがったというわけです。
こうして2度目の死によって、星雲の内部にさらに小さな惑星状星雲が作られました。

周りの物質にぶつかった恒星風の様子は、地球やその他の太陽系の惑星が、数十億年後に迎えるかもしれない凄まじい未来を見せてくれます。
太陽は晩期を迎えると赤色巨星になり、近くの惑星を飲み込んでしまいます。
たとえ生き残ったとしても、太陽が惑星状星雲の中で吐き出す最後の息とともに、惑星は強力な恒星風と強烈な放射線に襲われ、蒸発してしまうんですねー

もしも、どこか遠くの知的生命体が高性能望遠鏡で、この様子を見ていたら…
恒星風に飲み込まれていった、地球の燃えさしが放つX線が見えるかもしれませんね。

ビッグバンから、わずか4億2000万年後の銀河

2012年11月27日 | 宇宙のはじまり?
“ハッブル宇宙望遠鏡”と赤外線天文衛星“スピッツァー”、
そして、重力レンズという自然の拡大鏡を利用した観測により、
これまで知られている中で最も遠い銀河が発見されました。

この銀河は、“ハッブル宇宙望遠鏡”による銀河団拡大観測および超新星サーベイプロジェクト(CLASH)で、発見されたんですねー

ビッグバンからわずか4億2000万年後のものと見られています。
つまり、この銀河の光は約133億3000万年の時間を経て、たどり着いたんですねー

これだけ遠い銀河は、本来なら非常に暗くて観測することはできません。
なので、天体の姿をとらえるには重力レンズの助けが必要になります。

重力レンズとは、地球から見て手前にある天体の重力の影響で、向こう側にある天体の姿や光が移動したり、変形したりして見える現象です。

今回は、この銀河の80億光年手前にある大質量銀河団です。
その強い重力によって、光が屈折し拡大されることによって観測ができたんですねー




大質量銀河団の
重力を通して見える
遠方銀河(左枠)
重力レンズ効果で
拡大された3つの
像が見える


“MACS0647-JD”と名付けられたこの銀河の幅は600光年ほどしかありません。
天の川銀河の直径が約15万光年なので、“MACS0647-JD”はかなり小さな銀河になるんですねー
質量も、天の川銀河の星を全て合わせたものの0.1%から1%しかなく、どうやら銀河の初期段階にあると見られています。

今見える“MACS0647-JD”は、銀河の部品のようなものなんですかねー
この後130億年の間に、数十回、数百回の合体によって、大規模な銀河になっているのかもしれません。

こういった遠方にある銀河は、近傍にある赤い天体と似たように見えます。
遠方の銀河ほど高速で遠ざかるため、その光の波長は伸びて赤みを帯びる“赤色偏移”を見せるからです。

なので、研究チームでは数か月の間慎重な検証を行ってから、遠方の銀河に間違いないという結論を出しています。

今回は、様々な波長域に対応した“ハッブル宇宙望遠鏡”の17のフィルターを通した観測で、この銀河が強い“赤色偏移”を示していることが分かりました。
さらに赤外線天文衛星“スピッツァー”の遠赤外線画像で明るく見えなかったので、遠方の銀河だと確認できています。

銀河までの距離を確実に知るためには、
光を細かい波長に分離して“分光赤色偏移”を測定する方法があります。
でも、“MACS0647-JD”は非常に遠く暗いんですよねー

なので今回は、精度は落ちるのですが、より暗い天体に適用できる“測光赤色偏移”を測定する方法が使われています。

ということで、“MACS0647-JD”との距離は、とりあえず参考記録となっています。

暗い超新星の正体は、爆発しそこねた白色矮星

2012年11月26日 | 宇宙 space
Ia型超新星は、真の明るさがほぼ全て一定なので、銀河までの距離の目安として活用されています。
でも、中には通常の10~100分の1の明るさしかない、特異なものも見つかっているんですねー







不発超新星となった
白色矮星
(イメージ図)






シカゴ大学などのシミュレーション研究によれば、こうした現象は中途半端な爆発が原因みたいなんですねー

白色矮星は、恒星が核燃焼をほぼ終えて、収縮した高密度の天体です。
Ia型超新星とは、白色矮星と呼ばれる天体の爆発により起こる現象なんですねー
そのほとんどは絶対的な明るさが一定なので、所属する銀河までの距離を推定するのに利用されています。

でも、ここ10年で珍しいタイプのIa型超新星が、20個ほど観測されています。
これらのIa型超新星は、非常に暗く通常の10~100分の1程度の明るさしかないようです。
暗いので見つけにくいのですが、実際にはIa型超新星の15%を占めると見積もられています。

今回の研究によれば、こうした特異Ia型超新星の正体は、爆発しそこねた不発超新星らしいんですねー
Ia型超新星爆発をスーパーコンピュータでシミュレーションしたところ、通常より星の核の中心に近いところで着火した場合に、余分な燃焼が起こります。

そのため星が大きく膨らみ、温度や圧力が十分上がりきらないので、星内部を伝わる爆轟波(爆発的な燃焼の広がり)が発生しないということです。
なので、白色矮星は爆発をまぬがれ原型を留めるのですが、星の一部は燃えて放出されます。

こうした「不発」シナリオが、珍しいタイプのIa型超新星の元になると考えられます。
そして、シミュレーションでは、予想外の結末が出ています。

放出された星の一部が表面に降り積もることで、通常の白色矮星では見られない重い元素が作られたり、
非対称な爆発により伴星との重力関係が変わり、時には銀河を抜け出してしまうほどのスピードで吹き飛んだり…

どれも今まで聞いたこともない奇妙な白色矮星なんですよねー
でも、過去の観測報告の中には、これらのシナリオで説明がつくものも見つかっているとか…

この新しいシミュレーション結果は、予測される実に様々な結末を示しています。
一見無関係なものも含めて、いろいろな謎の解明にもつながるかもしれませんね。