宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

タイタンの大気中の窒素はどこから来たのか?

2014年06月30日 | 土星の探査
土星の衛星タイタン

土星の衛星タイタンにおける窒素同位体の存在比に着目した研究から、
タイタンの大気に存在する窒素の起源は、オールトの雲からやってくるような彗星が生まれる冷たい場所だと発表されました。

この発表によりタイタンは、
生まれたての土星の周りにあった、暖かい円盤中の物質で作られていないことになります。
原始の太陽を取り囲むガス円盤“原始太陽系円盤”(イメージ図)

今回の研究では、タイタンの元が太陽系の歴史上初期段階に、ガスやチリからなる冷たい円盤の中で作られたことを示すことになります。

研究チームでは、
タイタンの元になった構成要素は、現在のタイタン大気中にも残っていると考え、
その大気中に大量に含まれる窒素の同位体(窒素14と窒素15)の存在比が、
太陽系の歴史程度の時間では大きく変わらないことを示しました。
あまり変化しないので、他の天体と比較して窒素の起源を探ることができるんですねー

そして、土星探査機“カッシーニ”による探査で、
タイタンと彗星では同位体比が似ていることが明らかになることに…

また、かつてこの比の値は地球とも同じだと考えられていたのですが、
実際には異なっていることが示され、地球の窒素の主な起源は彗星ではないという説を裏付けるものとなりました。

タイタンにおける同位体比は、カイパーベルトからの彗星のものよりも、オールトの雲からの彗星のほうに似ていると考えられていて、今回の研究成果がヨーロッパ宇宙機関のロゼッタ・ミッションで支持されるかが重要になるんですねー

探査機“ロゼッタ”は、
今年の後半にカイパーベルト天体の1つである“チュリモフ・ゲラシメンコ彗星”を探査します。
なので、研究グループの説が正しければ、
同彗星ではタイタンよりも低い同位体比(メタン氷中の水素のもの)が検出されることになるようですよ。

矮小銀河も重要な星の生産工場だった

2014年06月29日 | 宇宙 space
スイスの研究チームが、誕生から数十億年後の宇宙に存在する矮小銀河を調べ、
活発に星が生み出されるようすを明らかにしました。
このことは、宇宙の歴史においては、
小さな銀河も重要な星の生産工場だったということを意味しているんですねー
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた遠方銀河。
赤が調査対象となった暗い矮小銀河。

研究チームが観測を行ったのは、誕生から35億~60億年後の宇宙に存在する矮小銀河。
星が形成されるようすを、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて明らかにしています。

生まれたての大質量星からの紫外線で電離した水素が放つ“Hα輝線”をもとに調べたところ、
そのペースは、たった1.5億年ほどで星の総質量が2倍になるほど、活発なものだと分かりました。

ただ、銀河同士の衝突などで爆発的な星形成が誘発される“スターバースト銀河”以外の、
“普通”の銀河が同程度に成長するには、10億~30億年はかかるといわれているんですねー

調査の対象となった時代は、銀河の星形成が活発だったことで知られています。

同時代の星形成において、
矮小銀河も重要な役割を果たしていたことは予測されていたのですが、
今回はじめて、はっきりと測定されたということです。

太陽系最大級の火山活動! 木星の衛星イオのダイダロス火山

2014年06月28日 | 宇宙 space
アタカマ1メートル望遠鏡のモニタ観測で、
木星の衛星イオにある“ダイダロス火山”の大規模な活動がとらえられました。

この観測は、小型の地上望遠鏡ながら「周期的な明るさの変化から火山活動の場所をつきとめ る」という、新たな手法が実を結んだ重要なものになるそうです。
1979年にボイジャー1号が初めて撮影した
イオの火山性噴出(画像左)

木星の周囲にある4つの大型衛星“ガリレオ衛星”は、小口径の天体望遠鏡でも小さな 光る点として見ることができ、
その1つイオでは、活発な火山活動が起こっていることが知られています。

研究グループでは、チリに設置された東京大学アタカマ天文台1メートル望遠鏡を用いた中間赤外線観測(波長8.9μm)で、イオを2年間にわたり継続的に観測していました。

この波長は太陽の反射光の影響を受けにくく、火山活動を直接検知するのに有利で、
地球大気の水蒸気で吸収されやすいという欠点はあるのですが、標高5640メートルのアタカマ天文台では安定して観測することができるんですねー


ただ、イオの構造を画像として直接見るのに、1メートル望遠鏡では難しいので、
イオの自転周期と明るさの変化をもとに活動の場所(緯度)を推測し、
2011年にダイダロス火山が活発に活動したことをつきとめたんですねー
今回の観測で得たイオの画像。
自転にともない見せる面のなかで、緯度277度で得られた画像が明るいので、
緯度280度にあるダイダロス火山の活動であることが推測できた。

火山の総放射エネルギーは10兆Wで、太陽系でも最大級の火山活動になるようです。

大型望遠鏡や探査機ではなく、継続的な観測がしやすい小規模の地上観測装置で、
イオの火山活動がとらえられたのは初めてのことになります。
惑星観測研究の新しい手法を確立した、という意味でも重要な成果になるんですねー

影の中でも発光する木星の衛星の謎

2014年06月27日 | 宇宙 space
木星の周りを回る衛星が、
木星の影に入り太陽光に直接照らされていない“食”の状態なのに、
ごくわずかに輝いていることが分かりました。
食にもかかわらず、かすかな発行が観測された
木星の衛星ガニメデ(上)とカリスト(下)の赤外線画像


衛星が発光するしくみ

今回観測したのは、ガリレオが木星の周りに見つけた4つの衛星。
“ガリレオ衛星”と呼ばれ、通常は5等星か6等星ほどの輝きがあります。

木星では、月が地球の影に隠れる月食のように、
“ガリレオ衛星”も木星の影に隠れて暗くなる“衛星食”が、
毎週1回程度と頻繁に起きています。

研究チームは“ガリレオ衛星”のうち、
火山活動があるイオを除く、
エウロパ、ガニメデ、カリストの“衛星食”中の光を観測。

その結果、木星に近いエウロパは食の時に真っ暗だったのですが、
ガニメデとカリストは食で木星の影に入っている時にも、
通常の100万分の1程度のかすかな光を放っていたんですねー


木星大気の“もや”

かすかに光る詳しい原因は解明されていないのですが、
研究チームでは、木星の上層大気に存在する“もや”で拡散された太陽光が、
“ガリレオ衛星”を間接的に照らしていると考えています。
エウロパは木星からの距離が近すぎるので、散乱した光が届かないそうです。
木星の上層大気に存在する“もや”によって散乱された太陽光が、
影の中にある“ガリレオ”衛星をてらしている。(イメージ図)

これは、月が地球の影に完全に隠れてしまう皆既月食の時にも、
月が赤く光るのとやや似た現象といえます。

今後、この現象を継続的に調べれば、
木星の大気にある“もや”の性質に迫ることができます。

木星の大気のしま模様は、この“もや”からできていると考えられているので、
これまで観測が難しかった“もや”に迫れる意義は大きいんですねー

さらに、近年数多く発見されている太陽系外惑星の大気についても、
あらたな知見が得られるかもしれません。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 木星探査計画 ヨーロッパ宇宙機関 “JUICE”

金星の大気圏に突入! 探査機“ビーナス・エクスプレス”

2014年06月26日 | 金星の探査
ヨーロッパ宇宙機関の金星探査機“ビーナス・エクスプレス”が、
金星の厚い二酸化炭素の大気を静かに降下して、高度130キロまで到達しました。
金星大気の上層で太陽風の荷電粒子を浴びる
“ビーナス・エクスプレス”(イメージ図)

金星の周回軌道を飛行中だった“ビーナス・エクスプレス”は、
3週間かけて二酸化硫黄の雲をかき分け、存在の可能性が指摘されている弱い磁場を探索し、
低層大気に関する情報を収集する予定なんですねー

また、将来のロボット探査で応用が期待されている、
大気抵抗を利用して減速、軌道を制御する“エアロブレーキング”もテストするそうです。

すべてが計画通りに運んだ場合は、
再び大気層から浮上し、数か月間データを収集してから、
今年の後半には最後のメッセージを、地球に発信する予定なんだとか…
まぁー 探査機の状況や残燃料の量によっては、計画が変更を余儀なくされる可能性もあるそうです。

2005年に打ち上げられた“ビーナス・エクスプレス”は、
2006年4月に金星を周回する極軌道に投入されています。

南極では高度6万6000キロ、北極では高度250キロと偏った軌道を飛行しながら、
地球に最も近い惑星のデータを、休むことなく収集し続けてきました。

8年後の現在、観測運用は終了したのですが、
これまでに蓄積された豊富な観測データからは、かつては地球そっくりの高温の惑星について、
新たな疑問が数多く提示されてるそうです。