宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

100億光年かなたの天体を立体視できる?

2013年02月28日 | 宇宙 space
国内の共同研究チームが、
100億光年かなたにあるクエーサーからのガス流出の、異なる2つの像をとらえました。

なぜ2つかというと、天体の重力で光が屈折する“重力レンズ効果”を利用したからなんですねー
この2つの像が、別の角度からの観測と考えれば、立体的な構造が見えるかもしれません。

宇宙に存在する銀河の中には、
銀河全体の100倍以上もの明るさで輝く中心核を持つものがありクエーサーと呼ばれています。
銀河の中心には巨大質量ブラックホールと、
その周囲にガス円盤があり、これが輝いて見えるのが正体と考えられています。

   銀河中心ブラックホールの周囲に明るく輝く円盤が存在していて、
   そこから高速のガス流“アウトフロー”が吹き出される。

円盤の表面からは、外向きのガスが吹き出していると考えられ、
このガスの流れ“アウトフロー”は、周囲の宇宙空間にも大きな影響を与える重要な現象なんですねー
でも、はるか遠方に存在するので、内部構造を詳しく調べることは難しい状態です。

クエーサー“SDSS J1029+2623”は、しし座の方向約100億光年の距離にあり、手前には銀河団があります。







重力レンズ効果の概念図





なので、クエーサーから届く光は、この銀河団の強い重力を受けて進路が大きく歪められることになります。
そして、クエーサーの姿は最大離隔が22.5秒角の3つの像A、B、Cとして地球に届きます。





ハッブル宇宙望遠鏡で
観測されたクエーサーの
3つのレンズ像
重力レンズの役割を果たす
銀河団の銀河(G1a、b、G2)も
写っている



それぞれの像を調べることで、
クエーサーのアウトフローを、それぞれの角度から見ることができるかもしれません。
この可能性を調べるため共同研究チームでは、
すばる望遠鏡でクエーサーの比較的明るいレンズ像AとBの分光観測を行っています。

その結果、2つの像に見られる「アウトフローによる光の吸収の形」が、
一部明らかに異なることが分かりました。
これは、異なる角度からのアウトフローの観測に、成功したということなんですねー

わずか22.5秒角の離隔にもかかわらず、こうした違いがみられたのは驚きの結果だそうです。

今回観測されたアウトフローは、最大で秒速1600キロものスピードで吹き出していて、
その内部には0.1光年程度のスケールでガスの濃淡が存在することが分かりました。

このようにアウトフローの内部は一様ではなく、
うろこ雲のように小さな塊が大量に集まったものなのかもしれません。
それを確認するためにも、今後は今回観測しなかったレンズ像Cについても詳しく調べていくようです。

ただ、今回の結果については別の解釈も可能なんですねー

レンズ像AとBは光がたどる経路が異なるので、地球に届くタイミングに差ができます。
この場合、たとえ2つのレンズ像がアウトフローの同じ場所を通過していても、
その内部の構造が時間とともに変化していれば、今回のような結果が再現できます。

この可能性については、今年の3月の追加観測で検証される予定になっています。

レーダー観測で分かった小惑星の形

2013年02月27日 | 宇宙 space
2月16日に地球に再接近した小惑星“2012 DA14”は、
比較的明るくなったこともあり、多くの天文ファンによってその軌跡がとらえられました。

そして、NASAの衛星追跡用レーダーでも観測が行われ、さらに詳細な姿もとらえられたんですねー

   レーダー観測でとらえた小惑星“2012 DA14”。
   1ピクセルあたり4メートルという解像度で、細長い形が分かった。

カリフォルニにあるNASA深宇宙ネットワークのゴールドストーン追跡局では、70mのアンテナ使って小惑星の観測を行っています。
小惑星が地球に最接近した後、12万キロから31万キロまで遠ざかっていくところでレーダー観測を行ったんですねー

8時間分の72枚の画像をつなげた動画を見ると、
細長い約40メートルサイズの小惑星が、観測時間の間にほぼ1回転していることがわかりまました。

今回、公開されたのは一連の観測の初期成果になり、
ゴールドストーンでは、さらに2月18日~20日の間にも小惑星の観測を行っているそうですよ。

宇宙線の起源を特定

2013年02月26日 | 宇宙 space
宇宙空間を光速に近いスピードで飛び回っている高エネルギーの放射線“宇宙線”。
この“宇宙線”が、太陽よりも重い星が生涯を終えて大爆発を起こした残骸“超新星残骸”で作られていることが分かりました。

これまで、宇宙から地球にやってくる宇宙線(高エネルギーの粒子)の大部分は、
天の川銀河内の超新星の爆発に由来するのではないかと考えられてきました。
でも、観測的な裏付けはなかったんですねー

宇宙線の1%にあたる電子成分の源が、超新星残骸ということは最近の観測で突き止められています。

でも、大部分をしめる陽子成分(陽子と原子核)については、超新星残骸で作られているという決定的な証拠は得られていません。

証拠を得るために必要なのが、ガンマ線観測です。
これは、高エネルギーの陽子や原子核が周囲のガスと衝突すると“中性パイ中間子”が生成され、それがすぐに崩壊すると特有のエネルギー(波長)を持つガンマ線を放つからです。

もし、超新星残骸からこの特徴的な放射が観測されれば、それは宇宙線の陽子成分が超新星残骸で生成することの決定的な証拠となるんですねー





超新星残骸“IC 443”の
ガンマ線(ピンク)、
可視光(黄)、
赤外線(青、緑、赤)の
合成画像




国際研究チームでは、“ふたご座”の方向にある“IC 443”と“わし座”の方向にある“W44”という2つの“超新星残骸”について、日欧米が打ち上げたガンマ線天文衛星“フェミル”の4年にわたる観測データを解析しました。
そして、“中性パイ中間子”の崩壊による放射と結論づけられる特徴が、両方のガンマ線スペクトルから見つかりました。




超新星残骸“W44”の
ガンマ線(ピンク)、
電波(黄)、赤外線(赤)、
X線(青)の合成画像


発見から100年… やっと“宇宙線”の源が特定されたんですねー

原始星が放つフラッシュライト

2013年02月19日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡が、規則正しい周期で明るいバーストを起こす原始星をとらえました。

“LRLL 54361”と呼ばれるこの天体は、ペルセウス座の方向約950光年の距離にある原始星で、25.34日の周期で瞬間的な爆発現象“バースト”を起こしています。
これは従来観測されているわずか3例の中で、もっとも激しいものなんですねー






ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた
“LRLL 54361”の変化
(各画像の中央)




動画を見ると、原始星が明るくなった後しばらくして、その周りのガスが外側に向かって明るくなっていくことが分かります。

これは“光のこだま”と呼ばれる現象で、光源から離れた場所にあるチリまで光が届き、そこで反射した光が観測されることで発生するんですねー
つまり、外側からの光ほど遅れてやってくる っという事です。
こうした“光のこだま”を伴った観測は、今回が初めてとなります。

厚いチリの円盤と外層にはばまれているので、このようなバーストの原因は、まだ分かっていません。

でも、どうやら「新しく誕生した連星同士の周期的な相互作用によるもの」のようです。

これは、2つの星が周囲のガスやチリの円盤から物質を引き込んでいて、
軌道上で2つの星が近づくと、物質が成長中の2つの星に向かって、投げ込まれるように大量に落ち込むためという説明からです。

近接連星は、天の川銀河でもわずかしかありません。
しかも、このような点滅光を発するのは、星が生れたばかりの頃の短い間なので、今回のような現象はとても貴重な観測例なんですねー

太陽系形成の謎に手がかり?

2013年02月17日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡による観測で、原始惑星系円盤内側の穴や、それをまたいで伸びる腕のようなチリの構造などが発見されました。

“さそり座J1604星”の原始惑星系円盤とその構造

この原始惑星系円盤は、およそ470光年かなたにある“さそり座J1604星”の周囲にあり、
チリの構造は、内部にひそむ惑星の重力で曲げられたと考えられています。

原始惑星系円盤とは、生まれたばかりの恒星の周りにできるガスとチリの構造です。

その中でチリが集まって、小さなかたまりが作られます。
そして、それらがぶつかって合体して、大きな惑星が誕生すると考えられています。

円盤の外側にはチリが豊富に残るのですが、内側では惑星の材料として消費されるので、やがてその領域が穴になります。
この穴の観測が、惑星形成について知るうえで重要になってきます。

今回すばる望遠鏡の赤外線画像にとらえられた構造は、
穴の深さや幅、そして腕構造の形状や湾曲の度合などが、惑星が作られる際にできると理論上予測されているものとよく似ているんですねー

また、円盤の左側に見えるくぼみも、やはり予測される構造にあたるものでは っと考えられています。

これまでにアルマ望遠鏡が、チリの腕をとらえた例はあったのですが、
太陽と同等の質量を持つ天体の円盤で、チリの腕構造が直接見つかったのは、今回が初めてです。

この円盤は、地球から見てほぼ正面を向いているので、惑星形成の研究にはうってつけなんですねー
なので、太陽系形成の謎を解明するうえで、重要な手がかりを与えてくれるのかもしれません。