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どのくらい地球に似ている? 11光年彼方の系外惑星の調べ方

2018年07月29日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
赤色矮星を回る系外惑星がどのくらい地球に似ているのか?

今回の研究で調べているのは、地球から11光年彼方に位置する赤色矮星“Ross 128”の化学組成。

“Ross 128”にどのような元素がどのくらいの量存在しているのかを調べることで、周りの惑星の組成も推測できるんだとか。

さて今回の研究は、系外惑星が地球に似ているのかを推測するのに役立つのでしょうか。
Ross 128b
“Ross 128b”のイメージ図。画像の中央上は中心星“Ross 128”。



太陽よりも小さく低温な恒星

天の川銀河に存在する星の約7割は、太陽よりもずっと低温で小さい“赤色矮星”と呼ばれる分類の天体になります。

これら赤色矮星の多くには、その周りを回る惑星が少なくとも1つ存在すると推測されています。

太陽系から最も近い系外惑星を持つケンタウルス座のプロキシマケンタウリや、7つの惑星を持つみずがめ座のトラピスト1といった、近年話題になっている星々も赤色矮星です。

また、昨年秋に地球サイズの系外惑星が発見された、地球からわずか11光年の距離に位置するおとめ座のRoss128も赤色矮星なんですねー
  なぜ宇宙人は見つからない? 太陽に似た恒星ばかり探していたからかも…
    

中心星を調べれば分かる惑星の組成

今回、ブラジル国立天文台の研究チームが行ったのは、スローン・デジタル・スカイサーベイの装置“APOGEE”を使った近赤外線の分光観測。
“Ross 128”の炭素や酸素、マグネシウム、鉄などの存在量を初めて詳しく調べています。

中心の星にどのような元素がどのくらいの量存在しているのかを調べると、周りの惑星の組成も推測できるようになり、その惑星がどのくらい地球に似ているのかを予想するのに役立ちます。

地球のような岩石質の惑星は、若い星の周囲に存在するガスやチリの円盤の内部で形成されます。

中心星の化学組成は円盤を構成する物質にも影響を及ぼすので、惑星に存在する鉱物や惑星の内部構造も中心星の組成の影響を受けることになります。

そして、惑星内部の核とマントルとの質量比は、マグネシウム、鉄、ケイ素の量によって制御されることになります。

このことから示されたのは、惑星“Ross 128b”の核が地球よりも大きいらしいこと。
  研究チームは、中心星“Ross 128”におけるマグネシウムに対する
  鉄の存在比からこのことを突き止めている。

さらに、直接計測することができない惑星の半径を、惑星の質量の下限値と中心星の物質の量をもとに推測しています。

惑星の質量と半径が分かれば密度が計算でき、そこから惑星がどのような物質から構成されているのかを知ることができます。

“Ross 128b”の半径は最大で地球の1.5倍程度とみられているので、可能性が高いのはこの惑星が岩石質であるということ。

また、中心星の温度と惑星の半径の推測値から、中心星の光が惑星の表面でどのくらい反射されているのかを見積もってみると、この惑星は穏やかな気候であるらしいことも分かります。

“Ross 128b”の地質学的な活動については多くのことが分かっていません。

ただ、今回の観測研究により、“Ross 128b”の表面は水が液体で存在できる可能性が高いということは分かってきましたね。


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ガイアが見つけたのは天の川銀河の大衝突の証拠

2018年07月27日 | 宇宙 space
約100憶年前に天の川銀河と矮小銀河の衝突合体があった… っという証拠が見つかりました。

この銀河衝突は天の川銀河にとってこれまでで起こったもののうち最も大規模なもの。
位置天文衛星“ガイア”の恒星データから見つかったそうですよ。


銀河内にある衝突の証拠

今回見つかったのは、およそ80~100憶年前に矮小銀河が天の川銀河に衝突した証拠。
研究には位置天文衛星“ガイア”の恒星データが用いられています。
  矮小銀河は数十億個以下の恒星からなる小さな銀河。

衝突した矮小銀河は短時間のうちにバラバラになり、銀河に含まれていた星々は天の川銀河の中心まで近づく針のように細長い軌道を描くことになります。

これは、矮小銀河が非常に細長い楕円軌道で接近し、天の川銀河に衝突したという証拠になり、矮小銀河の残骸は今も天の川銀河の中に存在しているんですねー
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相互作用する銀河の例、おとめ座のNGC 5426(右上)とNGC 5427(中央)。
天の川銀河と矮小銀河の衝突もこのような現象だったのかもしれない。
“ガイア”はヨーロッパ宇宙機関が運用する位置天文衛星で、天の川銀河に属する恒星の位置と速度をきわめて精密に測定・記録しています。
  “ガイア”のおかげで研究者は、
  星々の位置と運動をこれまでにない精度で知ることができるようになっている。


この研究では、“ガイア”で得られた天の川銀河の星々の動きを、動径方向と円運動方向の成分に分けてプロット。

すると、動径方向に大きな速度を持つ星の集団がソーセージ形の分布となって現れることに…
っということで研究チームは、衝突した矮小銀河に由来する星々の軌道に“ガイア・ソーセージ”、矮小銀河は“ソーセージ銀河”と呼んでいます。
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“ガイア”で得られた700万個の恒星の速度分布。
銀河円盤の星々は約200キロ秒で回転している(図の青い部分)。
それとは別に動径方向に大きな速度を持ち、
円運動方向の速度はほとんど持たない星の集団が
ソーセージのような横長の楕円形に分布している。


衝突は大規模だった

天の川銀河では今でも、いて座矮小銀河などの小さな銀河との衝突合体が続いています。

ただ、ソーセージ銀河はこうした矮小銀河よりずっと大きかったんですねー

ガス・星・暗黒物質(ダークマター)を合わせた総質量は天の川銀河の質量の約10%、太陽質量の100憶倍以上だったと考えられています。

ソーセージ銀河の衝突によって、天の川銀河の円盤部は大きく膨らんだか、あるいは分裂して、再生するまでには長い時間がかかったのかもしれません。

衝突したソーセージ銀河の残骸は天の川銀河の内部にばらまかれ、銀河中心部のバルジと銀河を取り巻く恒星ハローになったと考えられます。

こうした特徴は銀河衝突の数値シミュレーションでも再現されていて、ソーセージ銀河に由来する星々は長く引き伸ばされた軌道を持ち、衝突後に天の川銀河の円盤が大きく厚く成長することで、さらに細長く伸ばされるという結果が得られています。

さらに、このような銀河の再構築が起こった証拠は、矮小銀河から受け継いだ星々の軌道の大きさにも表れることになります。

ソーセージ銀河の星は細長い軌道で天の川銀河の中心を回りますが、軌道の遠点(銀河中心から最も遠い点)までの距離はどれもほぼ同じなんですねー

ソーセージ銀河からもたらされた星々がこのように同じ距離でUターンするので、天の川銀河のハローの密度は星々がUターンする点を境に大きく下がっているそうです。

さらに研究チームが挙げた成果には、ソーセージ銀河によって天の川銀河に持ち込まれた球状星団(8個)の発見があります。

小さな銀河はふつう球状星団を持っていないので、ソーセージ銀河は複数の球状星団を持つほど大きかったことになります。

天の川銀河の歴史の中で、これまでにたくさんの小さな衛星銀河が衝突合体をしてきました。

でも、今回の衝突が最も大規模なもののようですね。


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ブルー・オリジン社が“ニューシェパード”の高高度非常離脱試験に成功

2018年07月22日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
宇宙旅行をリーズナブルに提供するため、ブルー・オリジン社が開発しているのが再使用型ロケット“ニュー・シェパード”です。
  ブルー・オリジン社は、インターネット小売り大手のアマゾン・ドット・コムの
  創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したアメリカの民間宇宙開発企業。


ウエスト・テキサスで9回目の打ち上げを実施した“ニュー・シェパード”。
これまでで最も高い119キロの高度に達し、乗員カプセルの真空点火など、すべての試験に成功したそうです。
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“ニュー・シェパード”は宇宙旅行や科学観測を目的としたロケットで、乗員カプセルを高度100キロまで打ち上げることが可能です。
  ロケットはスペースX社の“ファルコン9”と同じで着陸と再使用が可能になっている。

今回の打ち上げで実施されたのは、宇宙へ向けて上昇中にブースターに異常燃焼や何らかの問題が発生した時、乗員カプセルをブースターから切り離して帰還させるための動作試験。

動作試験では、乗員カプセルの脱出エンジン(エスケープ・モーター)を上空のほぼ真空状態で点火させることになります。

ロケットと乗員カプセルは西テキサスから宇宙へと上昇し約2分40秒後に分離。

乗員カプセルはロケットとの距離が十分に離れてからエスケープ・モーターに点火、急速に上昇し高度約119キロに到達しています。
  排気が当たるなどして乗員カプセルに影響を与えないようにするため、
  ロケットと分離して20秒後にエスケープ・モーターに点火している。


今回の動作試験で必要だったのは、宇宙船の反応制御システムスラスターが宇宙環境下で宇宙船を安定させる能力があるかの確認でした。

乗員カプセルは、これまでで最も高く宇宙空間へと押し上げられたことになり、反応制御システムは、この動作試験を問題なく実行できたことになります。

約11分後の飛行後、乗員カプセルはパラシュートで着陸、ロケットも垂直着陸を実施し無事地上へ戻ってきています。
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パラシュートで帰還した乗員カプセル(写真中央下)とロケット(右上)。
また今回のテストでは、内部にダミー人形“マネキン・スカイウォーカー”や科学装置を搭載。

今回のテストでは、もし打ち上げに不具合が生じた際にも乗員がいつでも脱出できることが確認できた重要な内容でした。

有人飛行までに、あと2回程度のテストを行うという同社の説明を信じるなら、2019年のチケット販売開始も現実味を帯びてきましたね。


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太陽系外からやってきた“オウムアムア” 予想外の加速をするのはなぜ?

2018年07月20日 | 宇宙 space
太陽から遠ざかりつつある恒星間天体の“オウムアムア”が、予測よりもわずかに大きい速度を持っていることが分かりました。

なぜ“オウムアムア”は加速をするのか? “オウムアムア”の正体は?

小惑星だと考えられていた“オウムアウア”ですが、どうやらその正体は彗星の可能性が高いようです。


太陽系の外からやってきた天体

昨年の10月にハワイのPan-STARRSサーベイで発見された天体が“オウムアムア”です。
  “オウムアウム”はハワイ語で「遠方からやってきた最初の使者」の意味。

近日点が水星の軌道よりも太陽に近く、軌道傾斜角が非常に大きな軌道を持っているんですねー
  近日点とは天体が太陽に最も近づく地点のこと。

観測の結果から太陽系外の恒星系からやってきた史上初の“恒星間天体”だと考えられています。

発見されたのは近日点通過の1か月ほど後で、現在は木星軌道を越えて、時速約11万4000キロで太陽から遠ざかっているところ。

これは太陽の重力を振り切って太陽系から飛び出すのに十分な速度なんですねー


彗星なのか小惑星なのか

当初、“オウムアウム”の正体は彗星だと思われていました。

その理由は、生まれ故郷の恒星系の重力を振り切って宇宙空間に飛び出す“恒星間小惑星”よりも、同じようにして宇宙空間に飛び出す“恒星間彗星”の方が数が多いと考えられているからです。

ただ、“オウムアムア”を撮影した画像からは彗星だとする証拠は見つからず…
ガスを放出したりチリが取り巻いたりしていないので、“オウムアムア”は恒星間小惑星として分類されることになります。

でも、“オウムアムア”をめぐるこの話には続きがあり、驚くべき展開が待っていたんですねー


軌道がズレた原因

ヨーロッパ宇宙機関の研究チームは、“オウムアムア”の発見直後の観測に引き続き、地上の天体望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を用いて天体の精密な位置測定を続けていました。
  これ以降、“オウムアムア”は太陽から遠ざかるとともに暗くなり、
  現在は撮影できないほど暗くなっている。“オウムアムア”の画像は、
  今年の1月にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたものが最後。


この追観測の結果、研究チームは予想外の事実を発見することに…
“オウムアムア”が、太陽と惑星からの重力だけを受ける場合に辿るはずの軌道からわずかにズレていたんですねー
  “オウムアムア”は太陽から遠ざかるにつれて速度を落としていくのですが、
  この減速の割合が重力の影響だけを受けている場合よりも小さかった。

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“オウムアムア”の軌道。
重力の影響だけの場合にとるはずの軌道(緑色)に比べ、
実際の観測から得られた“オウムアムア”の軌道(青色)は、
今年5月の位置に比べると10万キロほど先行することになる。
この軌道のズレを厳密に分析した結果、太陽光が及ぼす圧力(放射圧)や太陽熱、太陽風の影響で軌道が変わったという説は否定。

他にも、別の天体が“オウムアムア”に衝突して起動がズレたという説や、実は“オウムアムア”は2個の天体が重力でゆるく結び付いているという説も検討されますが、いずれもありそうにないという結論になります。

そして最も可能性が高かったのが“オウムアムア”は彗星だとする説。
彗星表面から放出されるガスが軌道のわずかなズレを引き起こしているというものでした。


彗星だけど奇妙な小天体

彗星の核には氷が含まれていて、太陽に暖められると氷(固体)から水蒸気(気体)に昇華します。

すると、表面からチリが放出され、ぼんやりとした“コマ”や尾を作り出すんですねー

こうして核から噴き出すガスの圧力によって、重力だけが働く場合の軌道に対してズレが生じるというわけです。
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“オウムアムア”のイメージ図。
太陽に暖められることでわずかにガスを放出している可能性がある。
ただ、ハッブル宇宙望遠鏡を使った“オウムアムア”の長時間露出撮影では、典型的な彗星に見られるようなチリや、彗星らしい化学的特徴は一切検出されず…

このことについては、“オウムアムア”が放出しているチリの量が非常に少ないか、あるいはほとんどチリを含まないガスだけを放出していので検出されなかったのではないか、という結論に達します。

“オウムアムア”は依然として奇妙な小天体です。
ただ、今回の研究から得られた結果からすると、“オウムアムア”は彗星であって、小惑星の可能性は無いということになりますね。


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初テスト飛行へ向け熱真空試験を完了! スペースX社の有人宇宙船“ドラゴン2”

2018年07月13日 | 宇宙 space
アメリカの宇宙開発企業スペースX社は、地上約400キロの軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)への物資を輸送するための無人補給船“ドラゴン”を開発して、2012年には民間企業として初めてISSへの物資輸送を成功させています。

“ドラゴン2”はそんな“ドラゴン”の有人版として、宇宙飛行士の輸送に向けて開発が進められている宇宙船。
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ドラゴン2(クルー・ドラゴン)
貨客モードで貨物と一緒に最大4人、旅客モードでは最大7人の宇宙飛行士の輸送を可能としています。

その“ドラゴン2”が、初のテスト飛行に向けてNASAのグレン研究センターで熱真空試験を完了したんですねー

ただ、これまでの発表では、“ドラゴン2”は2018年8月に無人でのテスト打ち上げ、12月には有人でのテスト打ち上げが実施されるはずでした。

まぁー スケジュールは遅延していますが、これで打ち上げのための最後のステップを終了したことになります。

次に予定されているのはケネディ宇宙センターで行われる打ち上げに向けた最終試験。
“ドラゴン2”はフロリダに輸送されることになります。

スペースX社とともにNASAの商業乗員輸送プログラムの契約により有人宇宙船を開発していたボーイング社もスケジュールの遅延を発表しています。

ボーイング社の宇宙船“CST-100 スターライナー”が、初の有人打ち上げを行うのは2019年初旬にズレ込むようです。
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CST-100 スターライナー

  ボーイング社の新型宇宙船は、旅客機に連なる“スターライナー”と命名
    

“ソユーズ”による宇宙飛行士輸送の契約が切れるのが2019年の秋。

ここにきて“ドラゴン2”のスケジュールにも遅延の可能性があるという発表が… この先しばらくは“ソユーズ”頼みが続きそうですね。


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