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準惑星ケレスには、生命体に必要不可欠な有機物が存在している

2017年03月05日 | 小惑星探査 ドーン
準惑星ケレスを周回しているNASAの探査機“ドーン”の観測から、
ケレスに有機物が存在する形成が見つかったんですねー

  “ドーン”はNASAが打ち上げた
  準惑星ケレスおよび小惑星ベスタを目標とする無人探査機。
  低コストで効率の良いミッションを目指した、
  太陽系内の探査計画“ディスカバリー”の1つ。
  史上初の小惑星帯に永久にとどまる人工物になる予定。

  探査機“ドーン”が主要ミッションを終了
    

これまで、有機化合物は隕石中に見られたり、
天体望遠鏡による観測でいくつかの小惑星に存在が示唆されていました。

でも、探査機が周回軌道上から小惑星帯の天体に、
有機分子をはっきりと検出したのはこれが初めてのこと。

“ドーン”の可視・赤外マッピング分光計による観測からは、
ケレス上の有機物は、1,000平方キロほどの領域に主に広がっていることが分かっています。

特に北半球に位置する直径約25キロの“エルヌテト・クレーター”の内部や、
クレーター南側の縁、クレーター周囲の東西部で顕著に見られ、
その他にはクレーター北西部や、400キロ離れた別のクレーターなどにも見られています。

有機物は、カラー画像で他より赤っぽく写るところに見られ、
今は、その関連性が調べられているところです。
“エルヌテト・クレーター”周辺。
色は強調されている。



ケレスの組成

ケレスの組成の特徴は、水や有機物が豊富な隕石、
特に炭素質コンドライトと呼ばれるグループに分類されるものとの共通点が多いことです。

なので今回の発見により、ケレスとこれらの隕石、
およびその母天体との関連がさらに強まることになりました。

データから考えられるのは、有機物は隕石などで運ばれてきたものでなく、
ケレスで作られたものではないかということ。

これまでにケレスで見つかった炭酸塩やアンモニア化物の粘土は、
水と熱が存在する環境下での化学作用が、ケレスで起こっていることを示していて、
有機物も似たような環境で作られたのかもしれません。
  準惑星ケレスはどこで生まれた? 議論を呼ぶ探査機“ドーン”が発見したアンモニア
    

有機物は地上の生命体に必要不可欠なものなので、
ひょっとすると、遠い昔のケレスには、
生命に必要な環境と、生命の元になった物質が存在していたのかもしれません。

以前の研究でケレスには、水和鉱物や炭酸塩、水の氷、
アンモニア化物の粘土など水が必要な物質が見つかっています。

明るく見える“オッカトル・クレーター”で見つかった塩や炭酸ナトリウムも、
液体によって表面に運ばれた考えられています。


新しい位置から観測

ほぼ2年にわたるケレス周回軌道上からの観測を終えた“ドーン”は、
現在は高度7520キロから9350キロの楕円軌道を飛行しています。

2月23日には高度2万キロで従来と異なる軌道面へと移り始め、
新たな位置からのケレス探査を目指すことになります。

春の終わりには“ドーン”の背後に太陽が位置するようになるので、
これまでになく明るく輝いて見えるケレス。

これでまた、多くのことが分かってくるのかもしれませんね、


こちらの記事もどうぞ
  重力データから明らかになった準惑星ケレスの内部構造
    

重力データから明らかになった準惑星ケレスの内部構造

2016年08月17日 | 小惑星探査 ドーン
探査機“ドーン”の動作の計測から、
準惑星ケレスの内部構造が明らかになってきました。

ケレスの密度が地球や月などに比べて、はるかに低いことが確かめられ、
ケレス内部がいくつかの層に分かれていることも示されています。


重力場の地図

NASAの探査機“ドーン”は、
2015年3月から準惑星ケレスの周回探査を行っています。

撮影された画像も数万枚にのぼり、ケレスの調査は進んでいるのですが、
内部の構造がどうなっているのかは、まだ分かっていないんですねー

ただ、“ドーン”の動きのわずかな変化を調べれば、
ケレスの内部構造や地形によって生じる重力の違いを測定することが出来ます。

そして、“ドーン”から地球に送り返される電波から、
探査機の速度が秒速0.1ミリという誤差精度で計測され、
それをもとにしてケレスの重力場の地図が作られることになります。

そして分かってきたのが、
ケレス内部は深さによって明確に組成が違う層構造をしていて、
その中心には密度の高い核が存在していること。

また、これまでの推定どおり、
ケレスの密度が地球や月、小惑星ベスタなど太陽系内の他の岩石質天体に比べて、
ずっと低いことが確かめられています。

ケレスには水の氷など、低密度の物質が含まれていると考えられてきましたが、
こうした物質は岩石質の物質とは分けられて存在しているようです。
ケレスの内部構造(イメージ図)

これまでに得られてきたケレス表面の組成データと、
重力データをもとにした内部構造の新情報とを合わせることで、
ケレスが辿ってきた歴史を再構築することができます。

これまでの調査で、
ケレス内部では水と岩石との相互作用が起こっていたようです。

この事と、今回明らかになった内部構造とを合わせて考えると、
ケレスでは熱に関する複雑な歴史があったと考えることができるんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ 準惑星ケレスの地図が公開。光点のあるクレーターは“オッカートル”


準惑星ケレスはどこで生まれた? 議論を呼ぶ探査機“ドーン”が発見したアンモニア

2015年11月19日 | 小惑星探査 ドーン
今年の3月から準惑星ケレスを周回している探査機“ドーン”による、
新たな観測結果が議論を呼んでいるんですねー

46億年前に生まれたケレスは、
ひょっとすると、より低温の太陽系外縁部から火星と木星の間にある小惑星帯へ、
飛ばされて、やって来たのかもしれません。
太陽に照らされる準惑星ケレスの北極周辺。
2015年4月14日と15日に探査機“ドーン”が撮影。


アンモニアを発見したこと

今回の観測で興味深いのは、
NASAの探査機“ドーン”が、ケレスの地表にアンモニア化した鉱物を発見したことでした。

アンモニア化した鉱物が存在するということは、
ケレスが生まれたのは、海王星の軌道よりもさらに外側だということを意味します。

それは、鉱物ができたときは太陽から遠すぎて、
アンモニアが蒸発したり分散したりしなかったと考えられるからです。

その後の5億年のどこかの時点で、
ケレスは重力の作用で太陽系の内側に飛ばされ、
火星と木星の間の小惑星帯までやって来たことになるんですねー

もちろん別の可能性もあるので、
  ・ケレスはずっと遠くで現在の形になり、小惑星帯に移動してきた。
  ・太陽系外縁部の物質をまとって、今の位置で形成された。
どちらとも言えない状態です。

ただケレスが、どこか別の場所から小惑星帯にやって来たという考えは、
突拍子もないというわけではありません。

そもそも、岩石でできた周辺の天体のいずれとも、ケレスは似ていません。

ケレスの形は球状で、大きさは小惑星帯では他を大きく引き離して最大、
水の含有量も一帯では突出しています。

むしろ、小惑星帯より外側にある木星や土星を周回する氷の衛星を、
暖めたような天体なんですねー
探査機“ドーン”からの画像を合成して作成されたケレスのクレーター“オッカートル”。
不思議な明るい点が集まっているが、その組成は未解明。

研究者たちは長年ケレスを観察してきました。

でも、地上の望遠鏡では地球の大気が障害になり、
確信をもってアンモニアを特定できず…

なので、ケレスを周回する探査機“ドーン”は、観測には理想的な位置にあり、
地表にある分子が、さまざまな波長の光をどう反射するかを調べることが出来ます。

この波長の中に、
他の物質に交じってアンモニア化層状珪酸塩の痕跡を見つけ出したんですねー
地球上の土に似た鉱物です。

アンモニアのような揮発性の分子が現在のケレスの位置にあれば、
単独では温度が高すぎて蒸発してしまいます。

なので、このアンモニアは小惑星帯よりもずっと低温のどこかで、
鉱物と合わさった可能性が非常に高いんですねー

ケレスは、はるか遠くから現在の位置まで飛んできたか、
太陽系外縁に由来するアンモニアを含む物質が表面に降り注いだかの、
どちらかということになりますね。


極寒のなかで形成された

この2つのシナリオの中では、
ケレスは極寒のなかで形成されたという推測が妥当なようです。

低温のため固体状のアンモニアの小石が、
セレスを覆うほど降り注いだという推測は、つじつまが合わない部分があります。

もし、そうだとすると小惑星帯の天体が、
いずれもアンモニアに覆われているはずです。

でも、そのような観測結果は出ていないんですねー

ただ、実際に起こったのが、
どちらのシナリオなのかを判断するのは簡単ではありません。

ケレスにあるクレーターの大きさと数の独特な分布は、いわば指紋のようなものなので、
どちらが正しいにしても、シナリオとの整合性が取れなければいけません。

原則的には、ケレスのクレーターを分析し、
どちらの予測が適切か突き止めればいいわけです。

やっかいなのは、ケレス全体のクレーターの分布。
なかでも大きなクレーターが無いという点は、
どちらのシナリオとも合わないことです。

さらに根本的な問題も…

ケレスの地表から得られた光の波長が、
小惑星帯で簡単に形成されるマグネシウム鉱物“ブルーサイト”
だとする研究者もいます。

なので、アンモニアの特定事態が誤りという可能性もあるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 準惑星ケレスの地図が公開。光点のあるクレーターは“オッカートル”

準惑星ケレスの地図が公開。光点のあるクレーターは“オッカートル”

2015年09月01日 | 小惑星探査 ドーン
NASAの小惑星探査機“ドーン”の観測データを元にして作られた、
準惑星ケレスの高低差を表した地図が公開されました。

クレーターには農耕に関係する神々の名前が付けられているそうです。
ケレスの高度地図。青が低く赤が高い。

クレーターの底から山の頂までの高低差は約15キロに及び、
クレーターの深さや大きさは、土星の衛星ディオネやテチスに見られるものと、
とても良く似ているんですねー

これら氷の衛星は、大きさや密度もケレスと似ていて、
ケレスの地殻に氷が多く含まれているということとも一致しています。

“ドーン”は現在、第3次探査に向け軌道を修正しているところ。

8月中旬からは、
これまでの3倍も表面に近い高度1500キロ以下でケレスを周回し、
画像の撮影やデータの取得を行うことになっています。

今回、国際天文学連合により、
ケレスのクレーターのうち、まず18個の名前が承認されました。

ケレスの地形の名前は、
様々な文化における農耕に関係する神々から、採用されることになっているんですねー

明るい謎の光点が存在するクレーター(直径90キロ、深さ4キロ)の名前は、
ローマの神“オッカートル”。

“オッカートル”は、馬鍬(まぐわ)で土をかきならす事を司る神様だそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 姿勢制御システムに異常発生! 探査機“ドーン”は軌道変更を延期


姿勢制御システムに異常発生! 探査機“ドーン”は軌道変更を延期

2015年07月09日 | 小惑星探査 ドーン
準惑星ケレスを周回中のNASAの小惑星探査機“ドーン”。

姿勢制御システムに異常が発生したため、
6月30日から実施予定だった、軌道変更を延期していたそうです。
小惑星探査機“ドーン”


姿勢制御システムの異常

“ドーン”が準惑星ケレスに到着したのが今年の3月6日。

4月23日から5月9日まで高度1万3500キロからの観測を行い、
さらに軌道の高度を下げ、
6月6日から30日までは、高度4400キロから観測を行っていました。

当初の計画では、
6月30日からイオン・エンジンに点火し、らせん状に軌道の高度を下げ、
8月からは高度1450キロの軌道から、観測が開始される予定だったんですねー

でも、6月30日にイオン・エンジンを点火した直後、
機体の姿勢が制御できなくなり、それを検知した“ドーン”自身が、
イオン・エンジンなどを停止。

その後“ドーン”は、
必要最小限の機器のみ動かす「セーフモード」に移行することに…

「セーフモードに入った」という信号が“ドーン”から入ると、
地上の運用チームは、7月1日から2日にかけて対処に当たり、
通常の運用モードに戻すことに成功しています。


今後の探査に大きな影響は出ない

NASAによると、
今回の問題の分析が完了し、新しい飛行計画を立てるまでの間、
“ドーン”は高度4400キロの軌道に、とどまることになります。

先日、冥王星探査機“ニューホライズンズ”も、
コンピュータの問題で、「セーフモード」への移行が発生しています。

冥王星最接近のチャンスが一度きりの“ニューホライズンズ”と違い、
“ドーン”は、すでにケレスの周回軌道に乗っています。

ある決まったタイミングで軌道を変えなければいけない、
といった制約がないんですねー

なので、今回の問題で3回目の軌道変更が遅れたとしても、
観測目標を変えたり、得られる成果に変化が出ることは無いそうです。

また今年12月からは、
軌道高度を、さらに375キロまで下げた運用が予定されています。

こちらも単に開始日が遅れるだけで、影響はまったく出ないようですよ。


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