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探査衛星“ケプラー”の観測データから系外惑星を一度に44個も発見!

2018年08月30日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
太陽系の外にある惑星探しに活躍している衛星 “ケプラー”。
この“ケプラー”の観測データの分析と地上にある望遠鏡のフォローアップ観測から、一度に44個も系外惑星が発見されたんですねー

さらに今回の研究で重要な成果になったのが、比較的明るい恒星を巡る小型惑星の発見数が増加したこと。

これらの系外惑星は地球型岩石惑星の形成や進化を理解する上で、重要な観測ターゲットになりそうです。
NASAの系外惑星探査衛星ケプラーのイメージ図

系外惑星を探査する衛星“ケプラー”

太陽系の外にある惑星を系外惑星といいます。
この系外惑星を探査するために2009年に打ち上げられたのが、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”です。

“ケプラー”がとらえているのは惑星が恒星の前を通過する現象。
この通過時に見られる、わずかな減光から惑星の存在を検出しているんでえすねー

“はくちょう座”と“こと座”の境界付近の領域にある大量の恒星の観測から、これまでに2000個以上の系外惑星と3000個近くの系外惑星候補が見つかっています。

“ケプラー”は姿勢制御装置の故障のため2013年に主要ミッションを終了するのですが、2014年から太陽光圧を姿勢制御に利用する“K2ミッション”を開始。
  故障中の“ケプラー”が復活ミッションで系外惑星を発見!
    

この“K2ミッション”でも300個ほどの系外惑星の存在が確認されていたほか、多くの惑星候補も発見されています。

でも、これらの惑星の存在を実証するために不可欠なものがあります。
それは、地上での高解像度観測などフォローアップ観測です。

フォローアップ観測で実証された44個の系外惑星

今回の研究では国際研究チームが“K2ミッション”の生データを解析し、恒星の明るさを精密に測定して有力な惑星候補を選び出しています。

さらに、アメリカ・キットピーク天文台の天体望遠鏡などを用いたフォローアップ観測で、72個の候補天体の撮像や分光を実施。

その結果、44個の天体が系外惑星であることが実証されたんですねー

一度にこれだけ多数の系外惑星が発見されたのは、“ケプラー”の主要ミッションで1000個単位での発見があった例を除けば極めて珍しいことになります。
  残る28天体のうち27個も有望な惑星候補で、1個は偽惑星と判明している。
44個の惑星の大きさと軌道の大きさの比較。左上は太陽系の惑星の大きさ、左下は水星の軌道の大きさを表す。惑星の色は表面の温度で、赤は溶岩、青は地球の表面程度になる。
44個の惑星の大きさと軌道の大きさの比較。
左上は太陽系の惑星の大きさ、左下は水星の軌道の大きさを表す。
惑星の色は表面の温度で、赤は溶岩、青は地球の表面程度になる。
今回の研究では、単に一度の発見数が多いことだけでなく、比較的明るい恒星を巡る小型惑星の発見数が増加したことも重要な成果になっています。

さらに分かったことは、44個の惑星のうち18個は複数惑星系に属していること、4個は周期が1日未満という超短周期惑星であること、1個は赤色矮星を回る金星より小さい惑星であることでした。

今後、これらの系外惑星は、地球型岩石惑星の形成や進化を理解する上で、重要な観測ターゲットになるそうですよ。
赤色矮星を周回する金星より小さい惑星(イメージ図)。
赤色矮星を周回する金星より小さい惑星(イメージ図)。


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ブラックホールや中性子星でもないのに高エネルギー粒子を放射する天体“りゅうこつ座イータ星”

2018年08月25日 | 宇宙 space
“りゅうこつ座イータ星”は太陽質量の90倍と30倍の恒星からなる銀河系でも最大級の連星です。

この連星が太陽フレアの1万倍以上の高エネルギー粒子をまき散らしている様子が、世界で初めて観測されたんですねー

普通の星が、このような現象を起こすことは予期されないことのようですよ。


高エネルギーはどこから?

“りゅうこつ座イータ星”は、りゅうこつ座の方向約7500光年彼方に存在する連星で、太陽質量の90倍と30倍という2つの大質量星が互いの周りを公転しています。
  恒星同士の連星としては天の川銀河の中で最も重いものの1つになる。

1840年代に大爆発を起こし、全天で2番目の明るさにまで増光したことがあり、連星の周囲には、このときの爆発で放出されたと思われる物質が鉄アレイのような形に広がっているんですねー

この“りゅうこつ座イータ星”を国際共同研究グループが観測。用いられたのは、NASAのX線天文衛星“NuSTAR”でした。
  国際共同研究グループはNASAゴダード宇宙飛行センターと広島大学大学院によるグループ。

すると、X線の中でも特にエネルギーの高い“硬X線”がこの天体から放射されていることが分かります。
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ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“りゅうこつ座イータ星”
ゴダード宇宙飛行センターの研究グループでは、8年前にNASAのガンマ線天文衛星“フェルミ”の観測データを解析し、強力なガンマ線が“りゅうこつ座イータ星”付近から放射されていることを明らかにしていました。

ガンマ線が放射されるには光速近くまで加速された電子や陽子が必要になります。

でも、こうした超高エネルギー粒子はブラックホールや中性子星などで作られるのが普通で、“りゅうこつ座イータ星”のような普通の恒星に、これほど高いエネルギーまで粒子を加速できる激しい現象があるとは考えられていませんでした。

ただ、“フェルミ”はガンマ線の飛んでくる角度の分析精度があまり良くないんですねー

なので、観測されたガンマ線が“りゅうこつ座イータ星”出たものか、それとも“りゅうこつ座イータ星”の近くにガンマ線源となる未知の天体が隠れているのかがはっきりしていませんでした。

一方、“NuSTAR”は1万電子ボルト以上のエネルギーを持つ“硬X線”を集光できる初の天文衛星で、現在稼働している観測衛星では唯一、“硬X線”で高解像度の撮像が行えます。

このおかげで今回、“硬X線”源の位置を5秒角以内の精度で突き止め、“硬X線”が確かに“りゅうこつ座イータ星”から出ていることが明らかになります。

今回得られた硬X線のスペクトルは“フェルミ”で得られたガンマ線のスペクトルとスムーズにつながっていることから、“フェルミ”が観測したガンマ線も、“りゅうこつ座イータ星”が起源だと考えられます。
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観測を行うX線天文衛星“NuSTAR”(イメージ図)


衝撃波が高エネルギーを作り出していた

“NuSTAR”は“硬X線”の明るさの変化を高い精度で測定することもできます。

研究グループでは、“りゅうこつ座イータ星”からの“硬X線”を2014年から4年間にわたって継続的に測光し、連星の2つの星が5.5年周期で最も近づくときに“硬X線”の明るさが数か月間にわたって急激に弱まることを発見。

このことは、“硬X線”の源である超高エネルギー粒子が2つの星の相互作用で生じている証拠になります。

質量の大きな星では、陽子や電子といった荷電粒子を高速で噴き出す“恒星風”という現象が起こっています。
  太陽でみられる“太陽風”も恒星風の一種になる。

こうした大質量星が連星になっていると、2つの星から噴き出す恒星風が中間で激しく衝突し、衝撃波が常にできている状態になります。

衝撃波にはフェルミ加速と呼ばれる仕組みで粒子を加速する働きがあるので、連星から噴き出した恒星風の粒子が、この衝撃波によって加速されると考えることができます。

そう、このメカニズムが“りゅうこつ座イータ星”で実際に働いていて、加速された粒子が宇宙線となって宇宙空間に撒き散らされていることを今回の発見が明らかにしたんですねー

連星系が宇宙線をどれだけ作り出しているのか? 恒星風同士の相互作用でどのように高エネルギー粒子が加速されるのか?

今後、“りゅうこつ座イータ星”やこれに似た連星を“NuSTAR”で観測することで、このような謎を解く手がかりが得られるのかもしれませんね。


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予測されていても決定的な証拠が見つからない“中間質量ブラックホール”

2018年08月22日 | 宇宙 space
ブラックホールには2つのタイプがあるのを知ってます?

太陽の数倍程度の質量を持つ恒星質量ブラックホールと、
太陽質量の数百万倍から数十億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールです。

超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体してできると考えられているので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ“中間質量ブラックホール”もあるはず。

なのに、“中間質量ブラックホール”の決定的な証拠はまだ見つかっていないんですねー

今回、2つの研究チームがそれぞれ数十個の“中間質量ブラックホール”の候補を見つけました。

この“中間質量ブラックホール”を調べていけば、いまだ謎になっている超大質量ブラックホールの形成過程を解明する手がかりが得られるかもしれません。
  初の中間質量ブラックホールを確認 “HLX-1”
    


小さな銀河に活動的なブラックホールを発見

今回、2つの国際共同研究チームがそれぞれ独立に、“中間質量ブラックホール”に関する新たな研究成果を発表しています。

その1つ、スペイン・宇宙科学研究所を中心とする研究チームが用いたのは、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”で行われた“チャンドラCOSMOSレガシー・サーベイ”の観測データ。

このデータから、通常の銀河の1/100ほどの質量しかない“矮小銀河”に存在する“中間質量ブラックホール”を探しています。

  “チャンドラCOSMOSレガシー・サーベイ”は“COSMOS(Cosmic Evolution Survey)”と呼ばれる
  大規模サーベイ観測キャンペーンの一環として行われた。
  COSMOSは、ろくぶんぎ座の方向にある約2平方度(満月の約2.5倍)のエリアを、
  世界中の天体望遠鏡や観測衛星を使ってあらゆる波長で極めて暗い天体まで
  根こそぎ撮影しようというプロジェクト。


“チャンドラ”は2012年11月から2014年3月まで、述べ53日間にわたってCOSMOSサーベイの観測領域をX線で観測。

X線は、ブラックホール周囲のガスが数百万度にまで過熱されて放射されるので、銀河の中心近くに明るいX線の点光源があれば、そこにブラックホールが存在する紛れもない証拠にななります。
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COSMOSサーベイの観測領域。カラーで表示されているのが“チャンドラ”で検出されたX線減で、
ほとんどがブラックホールだと考えられている。青色に近いほどX線のエネルギーが高い。
赤外線天文衛星“スピッツァー”で撮影された同じ領域の赤外線画像を白黒で重ねている。
右下は銀河中心のブラックホール(イメージ図)。
研究チームは“チャンドラ”のデータから、矮小銀河の中にある活動銀河核を40個発見。
  活動銀河核とは、ガスを盛んに取り込んで成長している活動的なブラックホール。

これらは太陽質量の1万倍から10万倍の“中間質量ブラックホール”だと推定されます。

このうち12個は地球から50億光年以上はなれた距離にあり、最も遠いものは109億光年の距離にあります。
  これは矮小銀河で見つかった活動銀河核としてはこれまで出最も遠いものになる。

また、活動銀河核を持つ矮小銀河として過去最小の銀河も見つけています。

ただ、見つかったのはまだ数十個ほど…
理論を裏付けるほど十分な数の“中間質量ブラックホール”が見つかったわけではないんですねー


過去最大の“中間質量ブラックホール”サンプル

一方、アメリカ・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが用いたのは、スローン・デジタル・スカイ・サーベイの可視光線データです。

このデータから、太陽質量の30万倍以下の活動銀河核を持つと見られる銀河を305個を選出。
この305個のうち18個の銀河について詳細なX線観測のデータを調べてみると、10個からブラックホールによるX線を検出されます。
  ブラックホールの質量は太陽の4万~30万倍と求められた。

この個数の比率から研究チームが見積もったのは、X線を出していないものも含め、305個の候補の約半数は“中間質量ブラックホール”ではないかということ。

発見された“中間質量ブラックホール”候補天体は約9割が13億光年以内にあり、最も遠いものでも28億光年の距離でした。

これは過去最大の“中間質量ブラックホール”のサンプルになります。
今後、これらのブラックホールが超大質量ブラックホール形成の謎を解明するために活用されることになります。


超大質量ブラックホールへの成長

超大質量ブラックホールはビッグバンから間もない初期宇宙でも見つかっています。

宇宙で最初に作られた恒星たちが一生を終えてブラックホールになり、これら複数のブラックホールが合体して超大質量ブラックホールへ成長したとすると、時間がかかりすぎるんですねー

それでは、ビッグバンの後、どうやってこれほど速く超大質量ブラックホールが作られたのでしょうか?

この疑問を説明するモデルに、太陽の数十万倍の質量を持つ巨大ガス雲が収縮して、短期間で一気に超大質量ブラックホールが出来るというものがあります。

ただ、かなりの数の“中間質量ブラックホール”が宇宙に存在することを示唆する研究結果もあります。

なので、太陽質量の100倍程度の“ブラックホールの種”が時間をかけて合体して“中間質量ブラックホール”になり、“中間質量ブラックホール”がさらに合体して超大質量ブラックホールに成長しているのかもしれません。

どちらか一方というより、超大質量ブラックホールへの成長には両方のメカニズムが存在するように思えますね。

より確かな結論を得るには、さらに多くのブラックホールのサンプルを得る必要があるので、将来打ち上げられる観測衛星や望遠鏡に期待しましょう。


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初めて太陽のコロナへ突入する探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”が打ち上げ成功!

2018年08月18日 | 太陽の観測
NASAは太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”を2018年8月12日に打ち上げました。

“デルタIVヘビー”ロケットに搭載された“パーカー・ソーラー・プローブ”は、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から予定通りの軌道に投入され、打ち上げは成功。

7年にも及ぶ探査ミッションが始まった“パーカー・ソーラー・プローブ”。
最終的には太陽から600万キロまで近づき、太陽コロナや太陽風などを調査。初めて太陽の大気“コロナ”に突入し直接観測もするそうですよ。
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“デルタIVヘビー”ロケットによる
太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げ


太陽系の内側に向かう軌道

太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”が搭載されたのは、強力な打ち上げ能力を持つユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の“デルタIVヘビー”ロケットです。

デルタIVヘビーは、主に大型で重い偵察衛星などの打ち上げに使われるロケット。
なのに、“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げに使われるのは、太陽に向かうには膨大なエネルギーが必要になるからです。

地球から太陽系の内側に向けて探査機を送り込むには、「太陽の引力を使って近づけばいい」っというほど簡単なものでなく、特殊な考え方が必要になります。

地球は太陽の周りを時速約11万キロで回っているので、地球上に存在する物質には大きな慣性力が存在します。

もちろんロケットにも慣性力が働くので、たとえ太陽に向けてまっすぐに探査機を打ち上げても、太陽からどんどん離れる軌道をたどることに…
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慣性力によって探査機は地球の公転方向に流されていく
この慣性力を打ち消すには、地球が公転する向きとは逆の方向にロケットを加速させてスピードを相殺すれば良いのですが、これは容易なことではないんですねー

それは、時速11万キロという速度にロケットを加速させることが極めて難しいから。

なんせ、アポロ計画で用いられた人類最大のロケット“サターンV”が出したスピードが時速4万キロ、火星を目指すのに必要な速度が時速4万7000キロ、冥王星を目指した探査機“ニュー・ホライズンズ”でもスピードは時速5万8000キロです。

つまり、地球の慣性力を打ち消すためには、これまでの2倍近くもの速さでロケットを打ち出す必要があり、これが極めて困難なことになります。

そこでNASAが取り入れたのが、天体の引力を利用する“重力スイングバイ”を行うことで機体の速度を上手く調節し、目的の周回軌道に探査機を載せるという方法です。

“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げは、8月12日にフロリダ州ケープカナベラル空軍基地の37番発射施設から行われ、約40分後に太陽に向かう軌道に投入。
  軌道への投入はロケットの第3段に装備されたスター48という固体ロケットにより行われた。

その後、“パーカー・ソーラー・プローブ”の状態が良好で動作も正常なのが確認され、打ち上げは無事成功となりました。

計画ではこの後、地球や金星を使ったスイングバイを行うことで、太陽を周回する長い楕円軌道に投入されることになっています。
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打ち上げ後の“パーカー・ソーラー・プローブ”が通る軌道


太陽に最も近づく最速の探査機

“パーカー・ソーラー・プローブ”という名前は、1985年に太陽風の存在を理論化した物理学者ユージン・パーカーから付けられました。

存命の科学者の名前が探査機に付けられたのはNASAのミッションでは初めてのこと。

今後、探査機は金星に向かいながらアンテナの展開や磁力計の伸展などを行い、9月初めから約1か月間にわたって観測機器の試験を行います。

その後、10月初めに金星の重力を利用した軌道調整“フライバイ(接近通過)”を行い、11月初めに太陽から約2400万キロまで接近。
この距離は太陽の高温大気であるコロナの内部にあたり、探査史上最も太陽に近づくものになります。

そして、科学観測の開始は12月。7年間のミッションの間に探査機はあと6回の金星フライバイを行い、計24回太陽の近くを通り過ぎながら観測を行うことになります。

探査機は徐々に太陽へ近づいていき、最終的には太陽の表面から約600万キロまで接近。
この時、探査機の速度は時速約70万キロになり、探査機史上最速の記録を打ち立てることになります。
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太陽を観測する“パーカー・ソーラー・プローブ”(イメージ図)


太陽の謎はけっこう多い

太陽は私たちにとって最も近くにある恒星なんですが、けっこう謎が多いんですねー

たとえば、太陽の表面温度は摂氏約6000度なのに、数千キロ上空のコロナは100万度にもなります。
なぜ、こんなに超高温になるのかという“コロナ加熱問題”の原因は、まだ分かっていません。
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また、太陽系に吹く超音速の太陽風の駆動源や、太陽から放出され光速の半分以上もの速度に達している高エネルギー粒子の加速メカニズムも謎のまま…
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研究者は60年以上もそれらの謎の解決に取り組んでいるのですが、答えを得るにはコロナへ探査機を送る必要があったということです。

ただ、太陽コロナを探査機で調べることは、宇宙探査で最も難しいミッションの1つになります。
それは、コロナの高熱から探査機を防護することが難しいからです。


コロナの高熱から探査機を守る

集められたデータは、太陽フレアの発生や宇宙天気の突発的な変化を予知するモデルの構築に使われます。

これらは衛星に不具合を起こし、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士たちを危険にさらし、そして地球上の電力系統を破壊する可能性があるからです。

ただ、観測データを得ることは簡単ではないんですねー

“パーカー・ソーラー・プローブ”による太陽への接近は24回も予定されています。
つまり、太陽の焼けつくような光にさらされながら飛行することになります。
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接近時の熱から探査機を守るもの、それが幅2.4メートルで厚さが11.4センチのディスク状の耐熱シールドです。

このシールドは、超軽量の断熱カーボンフォームを2枚の堅いカーボンファイバーのプレートで挟んだ構造をしていて、仮に片側のプレートに火炎を噴射しても、もう片方は手で触れるくらいに冷たいままだそうです。

探査機の内部はたった30度くらいにしかならないので、これまでの計測機器を高熱対応させることなく使うことができたそうです。


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太古の海の痕跡? 生命生息の可能性は? 火星の地下に湖らしいものを発見!

2018年08月14日 | 火星の探査
火星に水があるということは知られていますが、今回はもっと大きな水のお話し。

サイエンス誌に掲載された論文によると、火星の南極の地下約1.5キロの深さに幅約20キロの湖があるそうです。

地球以外では木星や土星の衛星に地下海があることが分かっているのですが、これまで火星でまとまった量の水は見つかっていませんでした。

なので湖の存在が確定すれば、太古の火星にあった海の水の行方について謎が解けるかもしれません。

さらに、この湖は人類が火星に移住する際の水源になることが期待できるのと、地下の湖は地球外生命探索の最有力候補にもなるんですねー
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周回軌道上から見た火星の南極の極冠。
レーダーを使った観測から、その地下に液体の水がある可能性が出てきた。


火星は海に覆われていた

数十億年前の火星は、おそらく地球と同じように温暖で表面は海に覆われていました。

でも今は、赤い乾ききった砂漠の惑星になっています。
では、かつての火星の海にあった水はどこにいったのでしょうか?

火星ではこれまでに何度か水が発見されています。

でも、大気中に漂っていたり、永久凍土層や極冠に閉じ込められていたり、季節ごとにクレーターの斜面からしみ出していたりと、一時的なものや手の届かないものばかりでした。

さらに、その量は古代の火星の海を満たせるような量ではないんですねー

そう、行方不明の水の一部が地下の帯水層に閉じ込められている。っと考えると疑問は解けることになります。
  火星に深さ1.6キロの海があったかも、約40億年前に…
    


29回にわたるレーダー観測

21世紀になってから、人類は地下の水を見つけることができる探査機を火星に送り込んできました。

その1つが2003年から火星の軌道を周回しているヨーロッパ宇宙機関の火星探査機“マーズ・エクスプレス”です。

“マーズ・エクスプレス”が搭載している観測装置“MARSIS”は、レーダーパルスを利用して火星の地下を探っていて、2008年には非常に明るい反射を発見。
  “MARSIS”は低周波数の電波を火星に照射し、跳ね返ってきた反射波を調べることで、
  地中にあるものを観測できる。


火星の南極付近にある氷床が何層にも重なっている領域を詳細に観察することになります。

それから数年間は役に立つデータを収集できなかったのですが、2012年の観測から全体像を描くのに十分なデータを収集できるようになります。
  研究に必要な情報が揃うのはそれから3年後、29回に及ぶレーダー観測の後。

“MARSIS”のデータ解析は容易ではなく、それからの2年間、研究チームは地下の湖以外の可能性を1つ1つ否定していことになります。
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火星の中緯度地方のあちこちにある浸食された崖では、
地表から1~2メートルの深さに、青みがかった色をした層が帯状に見えている。

さらに、火星での反射率のパターンを地球で見られるパターンと比較することで、反射は地下にある湖のものだと確信していきます。


緩い泥の可能性もある

今回の発見から連想するものに地球の“ボストーク湖”があります。

“ボストーク湖”は南極大陸の氷の下(約4キロ)にあり、数種類の微生物が繁殖していることが知られているので、火星の地下の湖にも生物に適した環境があると考えることができます。

でも、火星の地下の湖が本当に湖であるとは考えていない人もいます。

研究チームでも、くぼ地を満たしているのは水ではなく、水で飽和した堆積物(ゆるい泥)だという可能性を否定はしていませんでした。

ただ、その性質を特定するには別の観測装置が必要に…
そう、情報が足りないので、湖が泥沼か断定することができないんですねー

実は、火星の周回軌道にはレーダーで地中を探れる探査機がもう1機あります。
2006年から火星の軌道を周回しているNASAの“マーズ・リコネサンス・オービター”です。

ただ、この探査機が話を少々ややこしくしてしまいます。

“マーズ・リコネサンス・オービター”は火星の南極の堆積物の層を含め、広大な範囲をレーダーで探査しています。

でも、搭載されているSHARADという観測装置では反射物はとらえられず…
そう、地下に湖のようなものは見つけていないんですねー

なぜ、観測結果に違いがでたのでしょうか?

ここで考えられるのが、“SHARAD”のレーダーと“MARISI”のレーダーが使う波長の違いです。

塩水は金属を除けば、おそらく最強の電波反射体になります。
湖なら表面は鏡のように滑らかなので、その反射はSHARADでとらえられるはずです。

“SHARAD”でとらえられないということは、表面がデコボコしているもの… そう水で飽和した堆積物なのかもしれません。


湖から考えられる色々なこと

火星の地下に湖があるとすると、この小さな塩水の水溜りは、火星の失われた海の謎の解明に役立つ可能性があります。
  火星の水については、極冠で融けた水は地下に帯水層として蓄えられ、
  水の大部分は南の高地から北の低地に流れているとする理論がある。

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黒っぽい色をした盆地と白っぽい色をした極冠は、火星の際立った特徴。

さらに、地下には鉱物があるので両極地方に新しい火山でもあれば、湖という環境に栄養分とエネルギー源が揃うことになります。

そう、地下の湖は生命が生息できる可能性が高く、生命探査のターゲットになるんですねー

ただ、火星の両極地方は惑星を保護するための特別な領域にあたるので、この場所を訪れることは簡単なことではありません。
  国連は、生命が生息している可能性のある惑星間環境の汚染を防ぐために、
  厳しい規制を行っている。


地下の湖は、人類が火星への定住を考えるときに、すぐにではなくてもいつかは利用したい資源でもあります。

最初に火星に降り立った人々が、地下何キロにも達するような穴をあけるとは考えられないので、他のもっと表面に近いところにも湖を探すはずです。

将来のベースキャンプ建設の候補地のためにも、もっと地下の湖のことを知る必要がありますね。


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