宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

惑星系の材料は、新星爆発が作った複雑な分子のようです

2017年01月27日 | 宇宙 space
古典新星の観測から、新星爆発で飛び散ったガスの中に、
大量の“すす”が発生していたことが分かりました。

このことから、爆発前の白色矮星には炭素が豊富に含まれていたと見られ、
C2分子から“すす”へと大きくなっていく痕跡も世界で初めてとらえたそうです。


古典新星

古典新星は、白色矮星と太陽のような普通の恒星との連星系で生じる現象です。

普通の恒星から白色矮星にガスが降り積もり、
臨界点を超えた段階で白色矮星の表面で爆発が起こるんですねー

この爆発によって飛び散ったガスから、
微小な粒子(ダスト)が大量に作られることがあるので、
古典新星は太陽系や他の星、惑星系の材料の供給源として重要な天体になるようです。
新星爆発で高温のガスから分子が形成され、
さらに複雑な分子へと化学反応が進み、
最終的にチリ(ダスト)が形成される。
ダストは太陽系のような星、惑星系の材料になる。


大量の炭素

今回の研究で観測したのは、
2012年3月にアマチュア天文家が発見した新星“へびつかい座V2676(V2676 0ph)”。

この新星を集中的に観測し、炭素原子が2個結合したC2分子を初めて発見、
新星のガスに炭素が多く含まれていることを示唆する観測結果になりました。

さらに2013年と2014年に、すばる望遠鏡を使った分光観測で、
“V2676 0ph”から放射されている中間赤外線のスペクトルを調査しています。

すると非常に大量の“すす”、
つまり炭素から成る微粒子が生成されていたことが明らかになったんですねー
“V2676 0ph”の中間赤外線スペクトル
波長11.4μmに見られるピークは「赤外未同定バンド」と呼ばれるもので、
おそらく炭素をたくさん含む巨大分子ではないかと言われている。


大量の炭素と巨大分子

“V2676 0ph”に、炭素が大量に含まれている理由については、
新星爆発の原因となる白色矮星が、炭素や酸素に富んだタイプだったと考えることができます。

新星爆発の際に、
白色矮星表面に積もったガスが、もともと白色矮星にあったガスと強く混じり合い、
そこに含まれていた大量の炭素や酸素などを含んで爆発したようです。

“V2676 0ph”では炭素の微粒子の他に、
ケイ酸塩の微粒子も含まれていたことが突き詰められていて、
さらに炭素を含む巨大分子と思われる物質の存在も明らかになっています。

おそらく「C2分子→炭素を含む巨大分子→炭素の微粒子」という具合に、
次第に大きなサイズの物質が形成された結果だと考えることができるんですねー

こうした一連のサイズ成長の痕跡が、
今回の“V2676 0ph”で初めて観測されたということです。

新星爆発で高温のガスから分子が形成され、
さらに複雑な分子へと化学反応が進み、最終的にチリ(ダスト)が形成される…
このようなダストが太陽系のような星、惑星系の材料になっているんですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 新星爆発は、宇宙のリチウム合成工場だった

金星の“巨大な弓状模様”はどうやって作られたの?

2017年01月24日 | 金星の探査
金星探査機“あかつき”に搭載された中間赤外線カメラが、
2015年12月に南北方向に約10,000キロにおよぶ弓状の構造を発見しました。
2015年12月に“あかつき”が撮影した金星画像

金星には“スーパーローテーション”という、
4日で金星を一周する秒速約100キロの東風が吹いています。

でも4日間にわたる観測期間中、
この模様は“スーパーローテーション”に流されることなく、
ほぼ同じ場所にとどまっていたんですねー

数値シミュレーションを用いて調べてみると、
大気下層に乱れが生じると、そこから大気中を伝わる波が発生。

その波は、南北に広がりつつ上空に伝わって広がり、
高度65キロ付近にある雲の上端を通過する際に、
観測された弓状の温度の模様を作ることが分かりました。
2015年12月7日の中間赤外線カメラ観測画像。
画像処理を施し弓状の模様を強調し、地形上にマッピングしたもの。
(地形の等高線の間隔は1キロ)
観測された構造が高地(アフロディーテ大陸の西部)の上空に
出現していることが分かる。

それでは、なぜ金星大気下層の乱が上空へ伝わり広がるのでしょうか?

原因は、この弓状模様の中心の下にあるアフロディーテ大陸でした。

アフロディーテ大陸は標高が5キロほどあるので、
下層大気の乱れが“重力波”という波になって上空へと伝わり、
弓状の模様になっていたわけです。
  この重力波は、地球のアンデス山脈などでも観測されることがあります。
(左)2015年12月7日の中間赤外線カメラ観測画像に見られる弓状の模様の下には、
アフロディーテ大陸と呼ばれる高地が存在している。
(右)コンピュータシミュレーションによって再現された高度65キロ付近の弓状の模様。
金星大気の下層に大気の乱れが生じると、そこから発生した波が上空へ伝わって、
高度65キロでは弓なりの形に広がる。

金星雲頂の観測から下層大気の様子を推測できることが、
この研究から示されました。

今後、研究チームは弓状構造の出現条件を探っていくようなので、
弓状構造の生成メカニズムの全貌が解明されるといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 大気シミュレーションの結果、金星極域の不思議な温度分布を解明できた

4か月ぶりの打ち上げと着地に成功! スペースX社“ファルコン9ロケット”

2017年01月20日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社のファルコン9ロケットが、
1月14日にカリフォルニアのヴァンデンバーグ空軍ステーションから、
打ち上げられました。

打ち上げは成功。
その後、ロケットの第1段機体もドローン船への着地に成功したそうです。

爆発事故から4か月

昨年の9月1日にロケットの爆発事故を起こして以来、
スペースX社はロケットの打ち上げを4か月以上中断していました。

事故当初は「これまでで最も複雑な原因解明になる」と考えられていたのですが、
後にロケット2段目の液体酸素タンク内に浸された“ヘリウム圧力容器”に、
問題があっとことが判明します。

この圧力容器が超低温にさらされることで、
内壁のアルミニウムと外壁の炭素繊維複合材に隙間ができたそうです。

そこに液体酸素が侵入、あるいは液体酸素が固体化し、
周囲の圧力によって炭素繊維複合材が破断、磨耗したことで点火し、
爆発に繋がったと説明されています。

事故原因が分かったことでスペースX社は事故調査を終えることができ、
今年に入って連邦航空局からの打ち上げ許可を得ることが出来たようです。


壮大な計画へ

今回打ち上げられたのは、
イリジウム・コミュニケーション社の人工衛星“イジジウム1”。
ファルコン9は、この人工衛星10個の軌道投入を行います。

さらにスペースX社は2019年1月までの間、
7回にわたりイリジウム社の人工衛星を打ち上げることも決まったそうです。

今回の打ち上げ成功により宇宙開発事業に復帰したスペースX社ですが、
NASAとの間に、宇宙飛行士の商業輸送にかかわる輸送機開発で契約を結んでいて、
その初打ち上げ予定が2018年。

そして、月探査レースに参加するイスラエルチームの“SpaceIL”ローバーを、
ファルコン9が打ち上げることになっています。
  このレース“Google Lunar X Prize”には、
  日本チーム“HAKUTO”も参加することになっています。


さらにスペースX社は、
ロケットの打ち上げから第1段機体の回収による打ち上げコストの削減、
宇宙飛行士の輸送、さらには火星移住まで壮大な計画を立てているんですねー

なので今後進めていくのは、
順調に受注している衛星打ち上げの消化だけでありません。

壮大な計画を実現していくには、一度着地したロケットの再打ち上げや、
最も打ち上げ能力の大きいファルコンヘビーロケットの打ち上げなどを実現し、
信頼性を上げることが必須になります。

なかでもファルコン・ヘビーは、
火星への有人・無人宇宙船の打ち上げにも利用される重要なロケットなだけに、
延期になっている打ち上げが、いつ頃になるのか… が気になりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 民間企業のスペースX社が火星探査を2018年に実施へ!


新設! ブラックホールは食べ残しを投げ捨てている?

2017年01月17日 | ブラックホール
天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールが、
惑星サイズの「食べ残し」を投げ捨てているそうです。

そして、食べ残しの中には、
地球からわずか数百光年の距離をさまようものもあるかもしれない、
っという新設が発表されたんですねー

ブラックホールは物を飲み込むだけで、
吐き出すところではないという一般的な概念からすると、
何か奇妙に思いますよね。

でも、今回発表された新しいシミュレーションによれば、
天の川銀河の中心にある大質量ブラックホールが、
自由に浮遊する惑星状天体を、大量に宇宙空間へ送り出している可能性があるそうです。
天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール“いて座A*”を取り巻く
乱流領域のX線画像


変わった方法で作られる宇宙をさまよう天体

天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”の近くには、
1万年に1回ほどの頻度で恒星が接近してきます。

すると恒星はブラックホールの強力な重力で破壊され、
スパゲティのように引き伸ばされることに…

そして天の川銀河の中心付近に、
リボンのようにたなびくガスだけが残ることになるんですねー

ここまでは、よく知られている話なんですが、
今回の研究では、この先を解き明かそうとシミュレーションを行っています。

シミュレーションが行われたのは、ブラックホールが恒星を引き裂く過程の50回。

すると、崩壊してスパゲティ状になった物質が再結合して球状になり、
ガスとチリからなる惑星ほどの質量の塊を形成することが確認できたというわけです。


95%が天の川銀河の外へ

今回のシミュレーションでは、
ブラックホールの食べ残しから1万1473個もの天体が生まれています。

いずれも海王星より大きく、なかには木星の数倍の大きさのものもありました。

ブラックホールが、これらの天体を遠くに飛ばし、
その速度は時速3000万キロ以上になることも分かります。

新しく生まれた惑星状天体のうち、約95%が天の川銀河の外に飛び出し、
天の川銀河とその隣の銀河を隔てる宇宙の僻地へと消えていったそうです。

そして数%の天体は、いて座A*の近くにとどまり、
親天体を引き裂いたブラックホールの周りを永遠に回ることになります。

最後に全体の1%未満の天体は、
銀河系の外れ… おそらく地球から約600光年以内のところをさまようそうです。
天の川系の中心で繰り広げられる激しい活動。
ブラックホールの存在は、この領域の星やガス塊の軌道運動によって明らかになる。

いて座A*が、通りすがりの恒星を引き裂く頻度の推測が正しければ、
天の川銀河にはこうした奇妙な惑星状天体が、数百万個も存在している可能性があります。

さらに、近隣の銀河の中心にあるブラックホールによって宇宙空間にはじき出され、
天の川銀河内に飛び込んできた天体もあるかもしれません。


天の川銀河以外からきた食べ残し

一般的に、こうした天体は猛スピードで移動し、銀河から完全に離脱することができます。

なので、天の川銀河内をさまよう恒星の残骸の中で、
天の川銀河以外の銀河で作られたものはどのくらいあるのか?
っという疑問が生まれますよね。

でも、こうした「食べ残し」の天体を見分けることが出来るかは、
まだ分かっていないんですねー

星が崩壊してできた惑星状天体は低温なので、
赤外線望遠鏡を用いたとしても、それが恒星の崩壊によって出来たのか、
あるいは天の川銀河以外の銀河から飛び込んできたのかを示す痕跡を、
発見できるとはかぎりません。

それでも、惑星状天体を発見することに意味が無いわけではありません。

その化学組成を調べることで、元の恒星についてもっと良く知ることができるからです。
それに、生命に関する発見があるかもしれませんからね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ブラックホールも食事の後には「ゲップ」する?


月を作ったのは“巨大衝突(ジャイアントインパクト)”ではなかった。これで地球と成分が似すぎる矛盾に説明が付きそう!

2017年01月14日 | 月の探査
約45億年前に地球の衛星として誕生した月は、どうやって形成されたのでしょうか?

有力な仮説は、地球に火星くらいの大きさの天体“テイア”が斜めに衝突し、バラバラになった“テイア”と地球の一部がまとまって月になったという“ジャイアントインパクト説”です。

ただ、この説は地球の一部と“テイア”から形成されたはずの月が、地球と成分が似すぎているという問題を抱えているんですねー

今回発表された研究は、1回の大規模衝突ではなく、原始地球に小さな天体が次々衝突したいうもの。
この仮説だと、地球と月の成分が似すぎているという矛盾に説明がつくそうです。


1回の大規模衝突“ジャイアントインパクト説”の矛盾

月の起源をめぐっては、これまで「地球に火星サイズの天体“テイア”が衝突したことにより形成された」という、巨大衝突説“ジャイアントインパクト説”が定説になっていました。

ただ、ジャイアントインパクト説は大きな矛盾を抱えているんですねー

それは、ジャイアントインパクト説が事実なら、月の成分の5分の1は地球の物質で、残る5分の4が衝突した天体の物質ということになるからです。

でも実際にはそうならず… 地球と月の成分構成はほぼ同一になっていて、これはジャイアントインパクト説の支持者たちを長く困惑させてきた矛盾点でした。

でも、1回の大規模衝突ではなく、小さな衝突が繰り返されたと考えれば、この矛盾について説明がつくんですねー

地球に微惑星が20回衝突して月が形成された

この説の方が、月の形成をより自然に説明できそうです。

今回の研究では、火星より小さい“微惑星”と呼ばれる天体と原始地球との衝突をコンピューターシミュレーションで再現(約1000パターンのシミュレーションがおこなわれた)。

すると、微惑星が衝突するごとに原始地球の周囲に残骸の環が形成され、その後それらが合体して“小衛星”が形成されることが分かりました。

こうした小衛星の数々が集まって最終的に月を形成。
現在の月のサイズになるまでに数百万年もかかったそうです。

月と地球の成分が似ているのは、複数の衝突の方が単独の衝突よりも多くの物質を地球からえぐり出すため。
このため小衛星の成分構成は地球に近くなったということです。

月の形成にはこうした衝突が約20回必要になるようです。

まぁー ジャイアントインパクト説にも、「衝突時にはテイアだけでなく地球もほとんどが蒸発するほどだった」という新設が出てきているので、すぐには結論は出なさそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 天体の衝突で地球はほぼ蒸発… そして月ができたようです。