宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

きっかけはIa型超新星爆発? 宇宙最速! 時速420万キロで移動する星を発見

2015年03月31日 | 宇宙 space
ある星が、これまで見つかった星の中では最高の移動速度で、
天の川銀河を脱出しようとしています。

超高速度星は、これまでにも発見されているのですが、
その多くは、天の川銀河の中心にあるブラックホールの巨大な重力に弾かれるように、
銀河の外に向かって投げ飛ばされていました。

でも、今回観測対象となった星“US 708”は、そうではないようでした…

高速軌道に乗ったきっかけは、
超新星爆発とも呼ばれる、星の爆発の一種である“Ia型超新星爆発”なんだとか。
これは、強さ、明るさともに宇宙で最大級のエネルギーの炸裂なんですねー

“Ia型超新星爆発”が起こる理由は、まだ、はっきりしていないのですが、
超高速で疾走中の“US 708”が重要なヒントを与えてくれるのかもしれません。


超新星が、宇宙のはるか遠くからでも観測できるほど、激しい爆発になるのは何故なのか?

これについては、多くの天文学者が解明を目指していて
専門家の間では、この現象を白色矮星の爆発とみる考えが有力なんですねー

年老いた星が膨張して赤色巨星になり(太陽も約50億年後にはそうなると予想されている)、
外層を失うと白色矮星が残ることになります。

この白色矮星に、対をなす伴星からの物質が大量に降り注ぎ、
その量が限界に達すると、熱核爆発を起こすというのが1つの仮説。

また、2つの白色矮星が衝突して“Ia型超新星爆発”が起こるとも言われています。

そして2013年には、ある発見により第3の可能性が示されることに…

ヘリウムを大量に有する高温準矮星のすぐ近くを公転する白色矮星が見つかったんですねー
白色矮星にヘリウムが降り注げば、熱核反応は容易に起こり得るということです。

ヨーロッパ南天天文台では、
そのような星をとらえようと、高性能を誇るハワイのケック天文台を利用。
高速で移動する高温準矮星“US 708”に照準を合わせます。

その結果、移動速度が驚くほど速いことが判明。

さらに軌道を計算すると、
天の川銀河の中心にあるブラックホールから飛ばされてきた場合とは、
明らかに違う方向から来ていることが明らかになりました。

つまり“US 708”は、
“Ia型超新星爆発”によって飛ばされた可能性が大きいんですねー

さらなる証拠として、“US 708”は、ひじょうに早く自転していることがあります。

これは“US 708”が、かつてもう1つの星と対になり、
近い距離で連星として軌道運動していたことを示すもののようです。


“Ia型超新星爆発”はひじょうに明るいので、天文学では遠くの銀河までの距離を測ったり、
それらの銀河が地球から遠ざかる速度を算出したりするのに使われています。

1990年代末、この速度が変化していることが判明し、専門家らは衝撃を受けることになります。

宇宙の膨張速度は数10億年前より、いまの方が早くなっていて、
このことは、“反重力”効果を持つ未解明の“ダークエネルギー”の存在を示していたんですねー

“ダークエネルギー”の正体を突き止めるには、
宇宙の膨張が、どう変化しているのか正確に知る必要があります。

“Ia型超新星爆発”について、
正確な発生原因や、それにより放出されるエネルギーの大きさを含めた、
完全な解明ができれば、研究に大きく貢献することになるのかもしれません。

丸い円盤銀河の出現時期は70億年前?

2015年03月30日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した画像データの解析から、
丸い円盤銀河の出現時期が宇宙年齢約60億年…
現在から約70億年前の時代ということが分かってきました。
丸くなる円盤銀河の進化(イメージ図)。

銀河は、その構造と性質によって大きく2タイプに分類されます。

それらは、
渦巻き模様が見られ、現在でも星が誕生している渦巻銀河(円盤銀河)と、
模様が見えず、星をほぼ生み出していない楕円銀河になります。

円盤銀河は名前の通り円盤状の形に見えて、
円盤の軸方向から見ると丸く、縁の方向から見ると薄く見えます。

つまり、縦と横の2方向のサイズはほぼ同じで、高さ方向のサイズがそれよりも薄くなります。

これに対して楕円銀河はは、
縦・横・高さの3方向のサイズが、ジャガイモのようにバラバラなのが特徴。

こうした銀河が、宇宙の歴史の中で、
いつどのようにして誕生し成長してきたのかという問題は、
現代天文学の重要な研究課題の1つなんですねー

とくに、ガスから星への転換史という観点からの研究は、
これまで、盛んに行われてきました。

でも銀河の形態が、どのように変化(進化)するかという問題は、
観測精度の限界もあり、これまでよく分かっていませんでした。


今回の研究では、
宇宙年齢が30億年ごろ(赤方偏移2付近)の星形成銀河を多数選んで見かけの軸比(丸さ)を測定し、銀河の形態を調べています。

昔の銀河にある星形成銀河は、現在の宇宙に存在する円盤銀河の祖先と考えられるので、
もし3次元的な形が変わっていなければ、この時代の星形成銀河の“丸さ”の分布は、
現在の円盤銀河のものと大差ないはずです。

形態を調べるためには、優れた角分解能が必要。
なので、ハッブル宇宙望遠鏡で最近得られた近赤外域での観測データが用いられています。

その結果、現在の宇宙にある円盤銀河とは異なり、
“丸い円盤”ではなく、3つの軸の長さの傾向は、バラバラに近いことが示されることに…

さらに、より赤方偏移の小さい(つまり、より現在に近い)時代の星形成銀河の形を
系統的に調査。

約20億年ごとの時代にわけて、
それぞれ上記と同じ手法を用いて銀河の形態を調べたんですねー

すると、赤方偏移0.85あたりでは、
現在の宇宙で見られるような、ほぼ丸い円盤になっていることが明らかになりました。
宇宙年齢で言えば60億年ごろ、いまから約70億年前ということになります。

丸くなってきた理由については、
銀河内での力学的相互作用によるもの、銀河中心に存在する超巨大ブラックホールの影響、
銀河同士の相互作用が頻繁ではなくなってきたため擾乱がなくなってきた、
といった説が考えられています。

では、なぜ昔は丸くなかったのか? っという疑問もあるのですが、
それは、銀河相互作用が激しかったので、乱れた構造をしていたのかもしれません。

また、そもそもどうやってバルジが出来て、
現在の宇宙に見られるような円盤銀河の構造に進化したのかという問題も、
大きな課題としてあります。

より多くのサンプルを用いて、さらに詳細な構造の進化を追い、
銀河周辺の環境との関係も考慮すれば…
形態進化の物理的な原因が明らかにできるのかもしれません。

このような銀河構造の進化については、
建設の始まった30メートル望遠鏡(TMT)によって、
大きく研究が進展するのかもしれませんね。

銀河の外に生まれた2つの星団

2015年03月28日 | 宇宙 space
天の川銀河の円盤部から1万6000光年も離れた場所で、
新しく生まれた星団が見つかったんですねー

疑問のひとつは、
「いったい星の材料は、どのようにしてこれほど遠くまで運ばれたのか」
なんですねー
くじら座の方向に発見された星団“Camargo 438”(左)と“Camargo 439”。
点の1つ1つが星団の星をとらえている。

NASAの天文衛星“WISE”を用いた赤外線観測で、
天の川銀河の円盤部(直径約10万光年、厚さ数千光年)から1万6000光年離れた場所に、
巨大な分子雲が見つかることに…

さらに、その分子雲の中に2つの新しい星団があることが分かりました。

星の材料になるガスとチリが豊富にある円盤部から、
これほど離れた場所で、新たに誕生している星々が見つかるのは初めてのこと。

ただ疑問は、
どのようにして星の材料が遠くまで運ばれ、巨大分子雲を形成しているのか?
なんですねー

考えられるのは、
超新星爆発が繰り返されたことで、星の材料が銀河の外に吹き飛ばされた、
あるいは、
近隣の矮小銀河になるマゼラン雲との重力的な相互作用で、
星の材料が天の川銀河近くに入り込んだ、
という2つの説。

今後、シミュレーションなどにより詳しく調査されるようです。

“キュリオシティ”のサンプル採取装置にショート発生

2015年03月27日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“キュリオシティ”のサンプル採取装置に、
電気ショートが発生しているんですねー

検証の結果、掘削用ドリルの振動機構に問題があるようです。

2012年に火星に着陸した探査車“キュリオシティ”は、ゲールクレーターの中央にあるシャープ山のふもとパーランプの丘で、約5か月前から探査を行っていました。

ここの露出した岩盤では、
それまでの探査場所に比べて、アルミニウムやマグネシウムに対するケイ素の比率が高く、酸性の環境だったことがうかがえる興味深い結果が出ることに…

なので、鉱物組成を調べるために、ドリルを使ってのサンプル採取が行われてきました。

2月末、パーランプの丘での3度目のサンプル採取として、
“テレグラフ・ピーク”と名付けられた岩石を削り、
ドリルから粉状のサンプルを採取装置にふるい落としていたところ、
電気ショートが発生して動作が停止したんですねー
2月24日、穴の掘削を終えた後のドリル。
この後ショートが発生した。

運用チームが検証した結果、
ドリルの振動機構を動かすと、瞬間的なショートが頻発することが分かります。

今週中にも検証を完了し、
中断していたサンプルの処理を再開するそうです。

また、“キュリオシティ”の他の装置による探査は継続していて、
サンプルの採取後には、さらに高い場所を目指して移動を再開するようですよ。


史上2個目! 4重連星の中の惑星…

2015年03月26日 | 宇宙 space
系外惑星を持つ3重連星とみられていた連星系に、
さらに、もう1つ星が見つかったんですねー

惑星を持つ4重連星としては史上2個目の発見で、
連星が惑星形成に及ぼす影響を知るうえで、手がかりを与えてくれるのかもしれません。


私たちの太陽は孤立した星ですが、多くの星は他の星と回り合う連星系になっていて、
さらに、その中に惑星を持つものもあります。

では、複数の“太陽”が存在する環境は、
惑星にどのような影響を与えているのでしょうか?

この研究では、
パロマ天文台での観測から、すでに惑星が見つかっている2つの連星系に、
それぞれ、さらにもう1つ星が存在することを突き止めています。

くじら座の方向およそ180光年彼方の“HD 2638”には、
主星のすぐそばを、わずか3日周期でめぐる巨大ガス惑星があります。

さらに、0.7光年離れた伴星のほかに、もう1つの伴星が至近距離に見つかり、
3連星であることが分かりました。

ガス惑星は、この伴星の重力で主星の近くに押しやられた可能性があるそうです。
おひつじ座30番星(イメーズ図)。
巨大ガス惑星(中央)を持つ主星(左)は、伴星(左上)と回り合うペアを成し、
このペアは、さらにもう1つのペア(右上)と回り合っている。

136光年彼方のおひつじ座30番星は、新たな星が見つかったことで、
2重星が、さらにお互いを回り合うという、典型的な4重星であることが分かりました。

これは、惑星を持つ4重星としては史上2個目の発見。

この4重星に含まれる、木星の10倍の重さの巨大ガス惑星は、
生命に適した環境ではなさそうですが、
もし、この惑星に降り立ったら、小さめの太陽(主星)が空をめぐり、
昼間の空には、2つのとても明るい星が見えるそうです。

1つは、今回新たに見つかった主星の伴星で、
もう1つを望遠鏡で見ると、1670au離れたもう一組のペアであることが分かるかもしれません。

主星の伴星は、23auしか離れていませんが、
“HD 2638”の場合と異なり、
335日周期という惑星の軌道は、この伴星の影響を受けていないようです。

この違いは、どうやって生まれるのか?

まだ、はっきり分かって分かっておらず、
連星が惑星の形成段階に及ぼす影響について、さらなる解明が待たれますね。

おひつじ座30番星の概略図。