宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

彗星のように尾を引く系外惑星

2012年05月31日 | 宇宙 space
系外惑星探査衛星“ケプラー”の観測から、恒星の熱で蒸発しつつある惑星の候補が発見されました。

“ケプラー”は地球型の系外惑星を探すためにNASAが運用している宇宙望遠鏡です。
恒星の光が手前を通過する惑星にさえぎられ、わずかに暗くなる現象を観測して惑星の存在を検出するんですねー

この観測で“はくちょう座”の方向1500光年かなたにある16等星“KIC 12557548”に惑星が見つかります。

でも、この惑星は少し他とは違ったんですねー
光が変化する周期は規則正しいんですが、光が変化する量がその都度変わるんです。

惑星は太陽系で最小の惑星である水星よりやや小さいサイズ。
太陽より小さく低温の“KIC 12557548”の周りを16時間弱という非常に短い周期で公転しています。

“KIC 12557548”の直径の2倍ほどしか離れていない軌道にあることから、表面温度は摂氏1,800度近くあると思われます。
特に惑星の光があたる場所は高温になるため、マグマが煮え立ち蒸発しガスやチリとなって宇宙空間へ噴き出すことに…

これが彗星のダストの尾のようになり、光が暗くなる量が規則正しくならない理由だと考えられます。

残念ながら、このような状態が続けば、惑星は2億年以内に完全に蒸発してしまうようです。

アンドロメダ銀河の2重リング

2012年05月30日 | 宇宙 space
アンドロメダ座に位置し、
目視で確認できる渦巻銀河がアンドロメダ銀河です。
NASAの紫外線宇宙望遠鏡“GALEX”がとらえた
アンドロメダ銀河M31の青と白のリング


紫外線で分かること

アンドロメダ銀河の姿は、
可視光では円盤状の渦巻きが分かるだけです。

でも紫外線では、中央の膨らみ(バルジ)や、
中央から外側に向かって螺旋を描くように伸びる渦状腕の構造が、
はっきり見えてます。

2重のリングはアンドロメダが2億年以上前に、
伴銀河M32と衝突して出来たんだとか。

地球からは約254万光年の距離にあり、
およそ1兆個の恒星から成っているアンドロメダ銀河は、
天の川銀河周辺で最大の銀河なんですねー


30億年後にはまた衝突が始まる?

見かけは天の川銀河と似ているのですが、
アンドロメダ銀河の中央のバルジには、
2つの巨大ブラックホールがあり連星系を成しているんですねー

そして天の川銀河のバルジと比較しても、
ガスや暗黒物質が非常に少なかったりします。

これは2つの巨大ブラックホールが、
バルジ周辺のガスや暗黒物質を喰らい尽くした結果なんだとか…

結構違いがある天の川銀河と、お隣さんのアンドロメダ銀河も、
お互いを引っ張り合う重力で、約30億年後には衝突が始まります。

そして約50億年後には、
フットボールのような楕円形をした新しい銀河の出来上がり。

このとき太陽は、赤色巨星になっていて一生の終りを迎えるので、
人類はどうなっているのか…

第二の地球が見つかっていればイイんですがねー


こちらの記事もどうぞ ⇒
 天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突
 赤外線で見るアンドロメダ銀河

けっこう起きている銀河の合体!? ウルトラ赤外線銀河からわかった銀河の多重合体

2012年05月29日 | 宇宙 space
ウルトラ赤外線銀河

普通の銀河100個分もの赤外線を発する銀河をウルトラ赤外線銀河と呼びます。

“アープ220”はウルトラ赤外線銀河の一つなんですが、
今回すばる望遠鏡を用いた観測で、4個以上の銀河が合体して形成された事が分かります。

ウルトラ赤外線銀河は星々が爆発的なペースで生まれ、
それらが起こす超新星爆発により銀河風が吹き荒れる不思議な天体です。

爆発的な星の生成(スターバースト)の次の段階は、
巨大ブラックホールをエネルギー源として非常に明るい放射をする
“クエーサー”に進化すると考えられているので、
宇宙の謎を解くのに重要な天体なんですねー

銀河同士の合体が激しい星生成の引き金になっているようですが、
何個の銀河が合体したのかは分かっていません。

それは、ウルトラ赤外線銀河が、
すでに合体がかなり進んでいるので特定するのは難しいからです。


銀河が合体した証拠

そこで注目されたのが、
ウルトラ赤外線銀河の代表例である“アープ220”のスターバースト領域です。

銀河内の一般的な星の生成とは異なり、
爆発的な勢いで星が生まれるスターバースト領域は、2つ以上の銀河が合体した証拠になるからです。

手掛かりは水素原子の放射・吸収によって生じるHa線でした。
Ha線を目安に「スターバースト中の領域」と「スターバースト後の領域」を見分けたんですねー

左はHα線で見たアープ220。明るい色の場所はHα輝線が観測された領域(スターバースト中の領域)で、黒く見える場所はHα吸収線が観測された領域(スターバースト後の領域)。右側に上下に伸びる2本の尾が見えます。右は別の波長で見たアープ220。

そして南北方向に細長く伸びる2本の尾の形をした「スターバースト後の領域」を見つけました。
この形はアンテナ銀河などの衝突を起こした銀河で見られるもの。

2つの円盤銀河が相互作用しているアンテナ銀河。
きれいな2本の尾が見えている。

2つの銀河が衝突した場合には、1個の銀河につき1本の尾が出ると考えられています。

つまり“アープ220”で見つかった2本の尾は、
この銀河が「スターバースト後の領域」が2つ合体して出来た事を意味します。

1つの「スターバースト後の領域」が出来るには、2個以上の銀河の合体が必要となります。

なので“アープ220”は、少なくとも4個以上の銀河の多重合体で出来た事に…
銀河同士の合体って、けっこう起こっているものなんですねー

木星探査計画 ヨーロッパ宇宙機関 “JUICE”

2012年05月28日 | 宇宙 space
ヨーロッパ宇宙機関の次世代探査計画が発表されました。

The Jupiter Icy mons Explorer“JUICE”と名付けられた新しいミッションは、
木星やその氷衛星の磁気圏と生命環境を調査するものです。
木星に接近した“JUICE”(イメージ図)左下は衛星イオ。

“JUICE”は、
ヨーロッパ宇宙機関が実施するコズミックビジョン2015-2025に選ばれた、
初めての大型プロジェクトです。

2022年に南米のギアナから打ち上げられ、
木星に到着するのが2030年になるんですねー

到着後には、3年以上かけて詳細な観測が行われることになります。

木星の4大衛星であるイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストは、
ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で発見したので“ガリレオ衛星”とも呼ばれています。

この発見は一つの天体の周りを別の天体が回っているという、
地動説で考えられていた、太陽系のミニチュア版の発見にあたるんですねー

当時は地動説と天動説のどちらが正しいのかが分かっていなかったので、
ガリレオの発見は、地動説を支持する重要な発見となりました。


生命探査と木星系形成について

“ガリレオ衛星”の中でもエウロパとガニメデ、カリストは、
内部に海を持っていると考えられています。

そうです。 海といえば地球外生命ですよねー
“JUICE”では、これらの衛星が生命が存在可能な環境なのかを調べます。

また、木星の大気や磁気圏、
そして木星とガリレオ衛星との関連性も継続的に調査するそうです。

カリストやエウロパへの接近はエウロパの氷表面の厚さを測るためで、
これは将来の着陸探査の場所を検討する材料になります。

そして、2032年にはガニメデの周回軌道に入り、
氷の表面や内部構造を調査します。

ガニメデは磁場を持つ太陽系唯一の衛星なんですねー
この特殊な磁場とプラズマが、
木星の磁気圏とどのように相互作用するのかも調べる予定です。

太陽系以外で見つかっている多くの惑星は、
“ホットジュピータ”と呼ばれる巨大ガス惑星です。

木星は巨大ガス惑星の典型的な例といえるので、
“JUICE”の調査は系外惑星と衛星系の形成過程、
そして生命の可能性について参考になるかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 影の中でも発光する衛星の謎

気候文明史

2012年05月27日 | book gadget goods etc
8万年前に誕生した人類が、寒冷化と温暖化の気候変化にどう格闘してきたか?

この本は大手金融機関勤務から気象予報士になられたユニークな経歴を持つ著者のせいか、分かりやすく書かれているんですねー
素人の自分でも興味深く最後まで読みきれる本です。

古代文明は前から興味があったので、第二部の「古代編:気候変動が文明を生んだ」は楽しく読めました。

気候の変動が文明の発生・発展・衰退に影響を与えるのは分かるんですが、気候変動という一面から一方的に話が進んでいる気がしないでもありません (^^;

もちろん気候変動が一つの要因になったろうし、中には寒冷化による急激な砂漠化のように主要因になった可能性もあるだろうし… 

まぁー 気候変動について書かれた本なので仕方ありませんね。
自分は「こういう視点で物事を見るのも面白い」っと思えました (^^)

とにかく楽しく読みきれる良くできた本です。