宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ブラックホール通過のガス雲は長大なガス流の一部だった?

2014年11月28日 | 宇宙 space
2013年夏に、天の川銀河中心の巨大質量ブラックホールに近づいたガス雲がありました。

このガス雲“G2”が、
以前観測されたもう1つのガス雲と、ひとつながりである可能性があり、
長大なガス流の一部かもしれないんですねー


2013年夏、天の川銀河中心の巨大質量ブラックホールのそばを、
ガス雲“G2”が通過するようすは、興味深い観測対象として注目を集めました。

ただ、この“G2”がガス雲ではなく「連星が合体してできた巨大星ではないか」
という研究成果が、今月発表されるんですねー

そして対照的な観測結果として新たに発表されたのが、
「長大なガス流の一部かもしれない」という研究成果になります。

この研究では、南米チリの超大型望遠鏡“VLT”を用いて赤外線観測を行っています。

すると、“G2”がブラックホールの強い重力で引き裂かれているようすがとらえられ、
その形と軌道は予測通りのものでした。
2006年と2008年に“”VLTで観測したガス雲とその軌道。

さらに、2004年~2008年の観測データから、
ブラックホール周囲のもう1つのガス雲“G1”に着目し、
星間物質による接近後の減速も考慮しながら計算したところ、
“G2”とひじょうに似た軌道を持つことが分かるんですねー

“G1”と“G2”は、どうやらひとつながりのガス雲の一部で、
“G1”は“G2”より13年早い、2001年にブラックホールを接近通過。

このガス流は、
ブラックホールから離れた銀河円盤内の大質量星から、
100年ほど前に放出された恒星風が由来のようです。

ブラックホールに接近した時の“G2”には、
予想に反してX線での増光が見られなかったのですが、
ガス流の一部だとすれば説明がつくのかもしれません。

銀河中心ブラックホールの自転軸は、宇宙の巨大網に沿っていた

2014年11月27日 | 宇宙 space
明るい銀河の中心ブラックホールの自転軸の方向が、
宇宙に広がる巨大な網の目構造に沿う傾向が見つかりました。

これは、宇宙の進化プロセスを探るうえで重要なヒントになるようです。


南米チリの超大型望遠鏡“VLT”を用いて行った観測研究から、
数十億光年を隔てて位置するクエーサー93個の自転軸の向きが、
揃っていることが分かったんですねー

クエーサーとは、
遠方銀河の中心核にある巨大質量ブラックホールにより、
ひじょうに明るく光る天体のことです。

重力で集まった物質が渦巻く円盤は超高温となり、
ブラックホールの自転軸に沿ってジェットを噴き出します。

研究では、自転軸やジェットそのものを直接見たわけではなく、
それぞれのクエーサーの偏光(光の振動の向き)などから、
円盤の角度と自転軸の向きをつかむことになります。

さらに、これらの自転軸の向きが“宇宙の大規模構造”のフィラメントに、
沿う傾向も見いだしたんですねー
“宇宙の大規模構造”と、網の目に沿ったクエーサーの自転軸
(イメージ図)

数十億年スケールでは銀河の集まりの分布は、
一様ではなく、網の目構造に連なっていて、
これが“宇宙の大規模構造”と呼ばれています。

研究では観測された傾向が、
偶然である確率は1%未満と見積もられているので、
クエーサーの向きと“宇宙の大規模構造”の関連性が、
観測で確認されたのは初めてのことになります。

このことは、宇宙の進化を数値シミュレーションで明らかにするうえで、
重要なヒントになるようですよ。

彗星着陸機“フィラエ”が送ったデータの解析は?

2014年11月26日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した“フィラエ”が送ったデータの初期分析から、
彗星の大気の成分や表層のようすが、少しずつ明らかになってきたようです。


今月12日に探査機“ロゼッタ”から分離されたとき、
“フィラエ”は着陸を待つことなく、
多目的センサー“MUPUS”で、彗星周辺の環境観測を開始していたんですねー

“MUPUS”の一連の機器のうち温度計や加速度計は、
発射に失敗した機体固定用の銛(もり)といっしょに収納されていたので、
残念ながら、それらのデータは得られませんでした。

でも、機体に取り付けられていた温度分布図作成器は、
下降中および3回のタッチダウンの最中にも、観測を続けることになります。

その観測データによると、“フィラエ”の最終着陸点の温度は、
摂氏マイナス160度より低いことが分かります。
“フィラエ”に搭載された観測装置

さらに、土壌サンプルや気化しやすい化合物の分析を行う“COSAC”からは、
着陸直後に大気中の有機分子が検出されるんですねー


“フィラエ”は、地表面下へのプローブ(深針)の打ち込みも行っています。

ただ、モーターのパワーを最大に上げても、数ミリより深く打ち込むことはできず…

実験室での計測データと比較してみると、
どうやら、がちがちに凍った氷のように硬い表面に出くわしたようです。

温度分布測定とプローブの打ち込みの結果から、
彗星表面には、厚さ10~20センチのチリの層があり、
初期評価では、その表面は硬い氷か、あるいは氷とチリの混ざった混合物で、
覆われていると考えられています。

“ロゼッタ”の観測から、
彗星核全体では、低密度であることが分かっているので、
さらに深いところでは、氷はすき間の多い“すかすか”な構造なんだとか…

今後、十分な電力を得て“MUPUS”が再び作動すれば、
プローブが差し込まれた層を直接観測でき、
太陽に接近するにつれて起こる変化を見ることができるそうですよ。
“ロゼッタ”のOSIRISカメラによる“フィラエ”。
降下して最初のタッチダウンから、リバウンドしたようす。


ビッグバン直後に、なぜ宇宙は崩壊しなかったのか?

2014年11月25日 | 宇宙のはじまり?
素粒子物理学の標準理論では、
「なぜヒッグス粒子の生成によって、ビッグバン後に宇宙が不安定となり崩壊しなかったのか?」
について、まだ答えを出せていません。

その謎については、
「未知の物理が働いた」といった理論が、複数考え出されているのですが、
答えは意外にシンプルなのかもしれないんですねー

天文衛星“プランク”による宇宙マイクロ波背景放射の全天マップ。

欧州原子核研究機構でヒッグス粒子が発見されたのは、2012年のことです。

ヒッグス粒子が発見されたということは、
加速膨張する初期宇宙で、ヒッグス粒子が作られたことによって宇宙が不安定になり、
崩壊が引き起こされた、はずであることを示します。

でも、現実として宇宙が崩壊していないのは、なぜなんでしょうか?

その理由については、
「知られざる未知の物理が働いた」という説が、いくつか唱えられてきました。

そして今回の研究では、
「“時空の曲率(重力)”によって安定性が得られたため」という、
とてもシンプルな解決案が発表されることに…

エネルギーが、どのように変換するかを考慮に入れ、
ヒッグス粒子と重力との相互作用を研究した結果、
わずかな相互作用で、崩壊をまぬがれるには十分だと分かります。

素粒子物理の標準モデルにおいて、
未知のパラメータである、ヒッグス粒子と重力の相互作用についての研究では、
このパラメータは、粒子加速器による実験では測れないレベルなのですが、
インフレーションの最中に、ヒッグス粒子が引き起こす不安定性には大きな影響を与えます。

比較的小さな値でもあっても、新しい物理法則や現象を考えることなく、
この宇宙が生き残れたことを説明するのに十分なんですねー

今後得られる宇宙マイクロ波背景放射や重力波の観測データから、
この相互作用をより詳細に明らかにし、
初期宇宙の進化に、どのような影響を及ぼしたのかを解き明かす計画です。

粒子物理学の標準理論… 
この最後の未知数が得られたとして、
私たちすべての存在に関する基本的な謎の答えに、迫ることができるんですかねー

“いて座A*”ブラックホールニュートリノ工場?

2014年11月22日 | 宇宙 space
これまで由来が分からなかった、高エネルギーのニュートリノ。

このニュートリノが、
天の川銀河中心の巨大質量ブラックホールからやって来ることが分かってきたんですねー

巨大質量ブラックホールが存在する、
天の川銀河中心部の“いて座A*”(画像のSGR A)付近。

ニュートリノは電荷を持たず、電子や陽子とほとんど相互作用しない粒子です。

光や荷電粒子と違い、物質をすり抜け、
磁場に影響されることもなく、宇宙空間を飛び回ることができます。

地球には、太陽から大量のニュートリノが降り注ぎ、
さらに太陽系外からは、その数百万倍から数億倍ものエネルギーを持つニュートリノが飛来しています。

こうした高エネルギーのニュートリノは、
銀河同士の衝突や、ブラックホールへの物質の落ち込み、
パルサー風といった大規模な現象で作られると考えられています。

今回の研究で、高エネルギーのニュートリノが、
天の川銀河の中心に存在する巨大質量ブラックホールで生成されている、
という兆候を初めてつかむことになります。

NASAの“チャンドラ”などの天文衛星が、
ブラックホール周辺で爆発的なX線フレアを観測した数時間後、あるいは数日後に、
南極地下のアイスキューブ観測所で、ニュートリノを検出したんですねー

これで、ブラックホール周囲の粒子が、衝撃波で加速されて荷電粒子が作られ、
それが崩壊してニュートリノになるとう仮説が成り立つことになります。

この仮説は、高エネルギー宇宙線の由来という、もう1つの謎のヒントにもなるようです。

荷電粒子から成る宇宙線は、銀河内の磁場に影響されて進みます。

なので、どこから来たか分かりにくいのですが、
銀河中心ブラックホールの衝撃波による加速が、エネルギー源という可能性も出てきたんですね。