宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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新現象を発見! ブラックホール近傍から噴き出す電波ジェットのふらつき

2015年08月31日 | 宇宙 space
超大質量ブラックホール近傍から噴出する電波ジェットの根元の位置は、
これまで不動と思われていました。

でも、ジェット噴流の軸に沿って大きくふらつくという新現象が、
初めて発見されたんですねー

しかも、超大質量ブラックホールと電波ジェットの根元は、
30光年以上も離れる時期があるようです。


相対VLBIによる位置決定精度がカギ

今回の観測対象となったのは、
おおぐま座の方向約4.3億光年彼方にある活動銀河“マルカリアン421”。

“マルカリアン421”の中心核付近で起こった爆発現象を、
発生直後から約7か月間にわたって観測しています。

そして活動銀河の中心に潜む、
超大質量ブラックホール近傍から噴出する電波ジェットの根元が、
大きくふらついている様子を、とらえることに成功したんですねー
VERA電波望遠鏡で観測した“マルカリアン421”のジェットの根元の動き。
最も大きく動いた時には、最初の位置に比べて30光年下流まで動いたことになる。

観測は超長器線電波干渉計“VLBI”である国立天文台“VERA”電波望遠鏡で行われ、
とくに相対VLBIと呼ばれる手法が用いられました。

相対VLBIでは、ひとつの受信機の視野を観測天体に、
もうひとつの受信機の視野を観測天体の近くにある参照天体に向けて、
同時に観測することによって大気揺らぎを補正し、
天体の位置決定制度を向上させることができます。

高い空間解像度と合わせ、高頻度でフォローアップを行ったことで、
電波ジェットの根元が動いていることが突き止められたんですねー
研究成果を様式的に示した図。


プラズマ塊の速度の違い

ふらつき現象は、
超大質量ブラックホール近傍での活動が活発なときに、
噴き出すプラズマ塊の速度の違いにより、
プラズマ塊同士が衝突する場所が大きく変化することによって生じている、
という理論モデルでよく説明できるそうです。

また、ふらつきの大きさは、
プラズマ塊の速度が従来考えられていたよりも速いことと、
電波ジェットの根元と銀河中心核の超大質量ブラックホールが、
30光年以上離れているときがあることを示唆していると考えられます。

今回の発見は、長年の謎となっている活動銀河中心核ジェットの、
形成メカニズムを理解する上で、
新たな手がかりの1つとなることが期待されているんですねー


こちらの記事もどうぞ。 ⇒ アルマ望遠鏡が解き明かす、銀河中心ブラックホールの活動

彗星着陸機“フィラエ”のデータから16種の有機物を発見。

2015年08月30日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
史上初の彗星への着陸ミッション。

ヨーロッパ宇宙機関の彗星着陸機“フィラエ”は、
この着陸ミッションを成功させるのですが、いまは通信が出来ない状態にあります。

フィラエの運用チームは、
途絶えている地球との通信を復活させようとしているなか、
“フィラエ”が新天地で最初に得たデータから、大きな発見もしているんですねー
彗星周回機“ロゼッタ”から切り離された実験用着陸機“フィラエ”の
カメラがとらえたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。


“フィラエ”のデータから分かったこと

“フィラエ”は着陸したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星で、
16種類の有機化合物を検出しています。

うち4種類は、これまで彗星では確認されたことがないモノでした。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した着陸機“フィラエ”(イメージ図)。

こうした有機分子は、
原始地球に落下して、海の中で生命が誕生する材料になった可能性があります。

分析されたデータは、昨年11月12日の着陸から60時間以内に、
“フィラエ”が搭載している10種類の観測機器が収集したもの。

このデータからは、
他にも、彗星の内部の約75~85%が多孔質構造だった一方、
表面は一部が砂利で、その他は硬い地殻で覆われていることが分かりました。

どれも、これまで知られていなかった発見になり、
この彗星の物理的な特性も構造も、
これまでに想像したことのないようなものなんでえすね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 探査機“ロゼッタ”が発見! チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に謎の穴

史上最軽量の超大質量ブラックホールを発見

2015年08月29日 | 宇宙 space
矮小銀河の中心に、
太陽の5万倍の質量を持つブッラクホールが見つかりました。

銀河中心にある超大質量ブラックホールとしては、史上最も軽いもので、
こうした天体が、どのように作られるかを知る手掛かりになるそうです。


軽くてもふるまいは一緒

今回の研究では、
へび座の方向約3億4000万光年彼方の矮小銀河“RGG 118”を、
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”と、
南米チリの口径6.5メートル“クレイ望遠鏡”で観測。

すると、矮小銀河“RGG 118”の中心に、
「軽い」超大質量ブラックホールが見つかります。
矮小銀河“RGG 118”の可視光線(中央)とX線(右上)。

銀河中心付近のガスの運動から分かったのは、
ブラックホールの質量が太陽の5万倍ほどということ。

この質量は、銀河中心の超大質量ブラックホールとしては、
これまで知られていた中で最も軽いものの半分以下なんですねー

天の川銀河の中心にあるブラックホールと比べると100分の1で、
最も重い超大質量ブラックホールと比べると20万分の1に過ぎないんだとか…

その軽さの一方で、
“RGG 118”の中心ブラックホールに吸い込まれる高温ガスの特徴は、
他の超大質量ブラックホールに見られる性質と一致していました。

また、ブラックホールの質量と銀河中心の星々の速度範囲には、
一定の関係があることが知られていて、“RGG 118”でも同様の関係にあります。

要は、「軽い超大質量ブラックホールも、
重いブラックホールとよく似たふるまいを見せる」
っということが分かったんですねー

つまり、銀河中心のブラックホールは、
質量に関わらず同じように成長するということです。

超大質量ブラックホールは、
種となる小さいブラックホールが合体を繰り返すことで、
形成されたと考えられています。

でも、その種の作られ方には、
  太陽の1万倍から10万倍程度の質量を持つガズ雲が崩壊してできる
  太陽質量の100倍という巨大な星が燃料を使い果たし
   超新星爆発を起こした後にできる
という主に2つの説がありました。

どの形成モデルが正解に近いのかを知り、
ブラックホールの成長に関してさらに理解するためにも、
軽い超大質量ブラックホールは重要なんですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 小さな銀河の中心に、超大質量のブラックホールを発見!

発見から300年 “カッシーニ”が衛星ディオネをフライバイ

2015年08月28日 | 土星の探査
8月17日に土星探査機“カッシーニ”が、
土星の衛星ディオネへの5回目となるフライバイを行いました。
フライバイ直前の17日に、
約6万3000~17万キロの距離から撮影された衛星ディオネ。
後ろを横切るラインは土星の環

土星の第4衛星ディオネは、
1984年に天文学者カッシーニが発見した直径1000キロほどの氷の衛星です。

発見者の名を冠した探査機“カッシーニ”は、
2004年から土星と、その衛星を探査していました。
ディオネへの接近通過“フライバイ”は今回で5回目、
そして最後になるそうです。
フライバイ時に撮影された画像。

今回のフライバイで、“カッシーニ”はディオネの上空474キロを通過。

重力や磁気圏、プラズマのデータから、
ディオネの内部構造や、内部構造が表面に及ぼす影響を知る、
手がかりが得られると期待されているんですねー
フライバイ後に広角カメラで約5万9000~7万5000キロの距離から可視光で撮影。


エンケラドスのフライバイへ

“カッシーニ”による土星の衛星フライバイは、
あと数回で終わりを迎えることになります。

そのなかで注目されるのが、
地質学的に活発な活動を見せている衛星エンケラドス。

エンケラドスには、
今年の10月14日と28日、さらに12月19日にフライバイを行う予定です。

10月28日のフライバイでは、エンケラドスの上空49キロまで接近。
表面のひび割れから間欠泉のように噴出する、
氷の粒子や水蒸気の中へ飛び込むように飛行するんですねー

これにより、エンケラドスの地下で何が起こっているのか?
を調べることになっています。

その後“カッシーニ”は、大きな衛星を遠くから数回観測し、
ダフニエ、テレスト、エビメテウス、アイガイオンなど、
いびつな形をした小衛星20個あまりを撮影。

そして2017年、
“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後の1年間では、
土星の本体とその環の間を何度か繰り返し飛行する予定です。


こちらの記事もどうぞ。
  “カッシーニ”が発見。衛星テチス表面に複数の謎の赤い筋
  衛星エンケラドスから伸びる弦状構造って何?
  生命を生む熱水環境を土星の衛星エンケラドスに発見!

来年到着の探査機支援へ! 火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”が軌道を変更

2015年08月27日 | 火星の探査
7月29日のこと、
NASAが運用中の火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”が、
軌道変更を行いました。

この軌道変更は、来年9月28日に火星に着陸する、
新しい探査機“インサイト”に備えたもの。

“マーズ・リコナサンス・オービター”は、
“インサイト”が火星を降下し地表に到着するまでの間、
地球への通信をつなぐ役割りを担うんですねー

火星と地球をむすぶ中継衛星

軌道修正が始まったのは日本時間の7月29日22時21分から。

“マーズ・リコナサンス・オービター”は、
装備されている6基のスラスターを75秒間噴射し、
無事、正確な時間に正確な軌道へ入ることができました。

この軌道変更なしでは、
“マーズ・リコナサンス・オービター”は“インサイト”が火星に着陸する際に、
信号を聞き取ることができないんですねー

“マーズ・リコナサンス・オービター”は、
2005年8月に打ち上げられ2006年3月に火星に到着。

高い分解能を持つ高性能カメラを装備しているので、
火星の地表をつぶさに観測することができます。

また同時に、火星の地表にいる探査機や着陸機と地球をむすぶ、
中継衛星としての機能も持っています。

これまでにも“フェニックス”や“キュリオシティ”の着陸を支援しています。

そして来年9月28日には、新たに“インサイト”が着陸に挑むので、
その様子を見守るのに最適な軌道へ移されたということです。


探査機“インサイト”

“インサイト”は、火星の内部の様子を探ることを目的とした探査機で、
2008年に火星に着陸した“フェニックス”の設計をもとに開発が行われています。

打ち上げは2016年3月8日から27日の間で、火星着陸は同年9月26日を予定。
着陸後は、約2年間にわたって観測を続ける予定になっています。
“マーズ・リコナサンス・オービター”は、
“インサイト”の着陸時に信号を受信し、いったん探査機内のメモリに保管します。

その後、地球と通信ができるようになったタイミングでデータは送信され、
それを地上で受信し解析することで、着陸が成功したかどうかが分かるんですねー

“インサイト”の着陸を見届けた後、
“マーズ・リコナサンス・オービター”は、
2016年10月と2017年4月に2回の軌道修正を行います。

そして、いつもの軌道へと復帰することになります。

2017年の軌道修正の後でも、推進剤は187キロも残っていて、
これは19年間にわたって通常運用を続けるのに十分な量だそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 初惑星間飛行! NASAが火星探査にキューブサットを試験投入