宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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7か月ぶりの交信! 彗星着陸機“フィラエ”は運用可能な状態

2015年06月30日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
昨年の11月のこと、
ヨーロッパ宇宙機関の着陸機“フィラエ”は、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸に成功しました。

ただ、着陸後に太陽光が十分に当たらず、
探査を終えた後、バッテリー切れにより活動を停止することに…

その“フィラエ”が再起動に成功したんですねー
彗星着陸機“フィラエ”


“フィラエ”は運用可能な状態

ヨーロッパ宇宙機関によると、
“フィラエ”からの信号は日本時間の6月14日に、
ドイツ航空宇宙センターにあるフィラエ管制センターで受信。

信号は彗星の周囲を飛んでいる
探査機“ロゼッタ”を経由して送られたもので、
最初の通信時間は85秒だったそうです。

“フィラエ”の温度は-35度、電力は24Wと、
ひじょうに良い状態にあり、運用可能な状態。

最初の通信では、300を超えるデータ・パケットを送信しています。

分析が行われた結果、今回のデータが送られてくるよりも前から、
“フィラエ”は、すでに目覚めていたことも分かったんですねー

ただ何らかの理由で、今日まで通信することが出来なかったようです。

“フィラエ”に搭載されたメモリには、
再起動してから取得された8000を超えるデータ・パケットが、
記録されています。

目を覚ましてからの数日間に“フィラエ”に何が起こっていたのか?

現在、これを探るためにフィラエの運用チームは、
このデータをダウンロードできる、
次の通信可能な機会を待っている状態なんですねー


10年を超える航海と57時間の探査

“フィラエ”は2004年3月2日、母船になる“ロゼッタ”に搭載され、
“アリアン5 G+”ロケットで打ち上げられました。

そして10年を超える航海を続け、
2014年8月6日に、目的地であるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着。

“ロゼッタ”の調査によって“フィラエ”が着陸する場所が選ばれ、
11月13日に彗星表面に着陸しました。
彗星探査機“ロゼッタ”から分離する“フィラエ”

でも、機体を彗星表面に固定するための器具がうまく動作せず、
3度バウンドした後、起伏の多い岩場と思われる場所に落ち着くとに…

また、機体が大きく傾いてしまったので、太陽光が十分に当たらず、
太陽電池による発電が十分にできない状態になります。

調査は、あらかじめ充電されていたバッテリーを使うことで開始しています。

そして当初予定されていた観測は、ほぼ完了するのですが、
着陸から約57時間後にバッテリー切れで、
“フィラエ”は活動を停止することになります。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

ただ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
今後、徐々に太陽に近づいていく軌道に乗っているんですねー

なので、“フィラエ”に当たる太陽光の量も増えることになります。

太陽電池によってバッテリーが再充電され、
再起動する可能性があることは予測されていたようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 休眠中の彗星着陸機“フィラエ”との通信再開は可能か?

宇宙で最も遠くにある銀河を発見!

2015年06月29日 | 宇宙のはじまり?
ハワイのケックⅠ望遠鏡が、
宇宙で最も遠くにある銀河を発見しました。

ケックⅠ望遠鏡は、
この最遠の銀河“EGS-zs8-1”を131億年前に出て、
はるばる地球まで旅してきた光をとらえたことになるんですねー
画像では青い染みのようにしか見えないけど、
“EGS-zs8-1”銀河は、地球から約131億光年の彼方にあって、
ビッグバンから7億年以内に作られている。


ビッグバン後の宇宙史を解き明かすカギ

今回とらえた光は、ビッグバンから7億年も経たない時代に、
誕生から約1億年しか経っていない“EGS-zs8-1”銀河の星から発せられたもの。

ちなみに、私たちの銀河系は、誕生から132億年経過しています。

私たちを取り巻く世界を構成する全ての元素は、
初期宇宙の銀河の中で、作り出されたと考えられています。

なので今回の発見は、ビッグバン後の宇宙の暗黒時代から、
最初の星々が形成された過程を、解き明かすのに役立つかもしれません。

これほど古い時代まで、遡ることができたのは驚異的なことになります。


古い銀河の見つけ方

実は、ビッグバンから、
わずか3億8000万年後に形成されたと思われる銀河を含め、
“EGS-zs8-1”より古い可能性のある銀河は見つかっていたりします。

ただ、この数字は、
銀河の色の大雑把な測定から推測したものに過ぎません。

銀河の色は、地球からの距離(つまり古さ)を知るための、
重要な手がかりになります。

膨張する宇宙の中では、
遠方の銀河ほど高速で遠ざかっていきます。

なので、光のドップラー効果(赤方偏移)により、
高速で遠ざかる銀河ほど赤みがかって見えることになります。

ハッブル宇宙望遠鏡と、
赤外線天文衛星“スピッツァー”の両方を使った今回の発見は、
さらにケックⅠ望遠鏡を使って距離を厳密に測定。

巨大なケックⅠ望遠鏡の集光力は、
どの宇宙望遠鏡と比較しても格段に高いんですねー

4時間の露光により“EGS-zs8-1”のスペクトルを撮り、
高い精度で距離を測定しています。

このときの“EGS-zs8-1”は、
今日の銀河系の80倍の速さで星々を生み出していて、
異常に明るかったそうです。

この条件が無かったら、
ケックⅠ望遠鏡の強力な近赤外線撮像分光器“MOSFIRE”をもってしても、
距離を測定することは出来なかったそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 130億光年彼方の小さな銀河

失敗に終わったけど成功? NASAの空飛ぶ円盤“LDSD”の実証試験

2015年06月28日 | 宇宙 space
NASAの“LDSD”は、将来の火星探査機に使う減速技術の実証を行う試験機です。

今回、2回目となる飛行試験が行われたのですが、
2つ搭載された減速装置のうち、1つは正常に作動したものの、
もう1つのパラシュートは展開に失敗し、太平洋上に落下。

ただNASAの発表では、実験としては成功だったようです。


“LDSD”の役割り

“Low Density Supersonic Decelerator”の略が“LDSD”です。

直訳すると“低密度超音速減速装置”という意味で、
火星のような密度の低い大気の中で、
探査機を超音速から減速させるための、新しい技術を試験するのに開発された試験機です。

機体の直径は4.7メートルで、質量は3088キロ。
その見た目から宇宙ファンからは「空飛ぶ円盤」と呼ばれていて、
NASA自身も「flying saucer」と呼んでいます。


“LDSD”が必要だった理由

火星探査機の着陸では、これまでパラシュートが主に使われてきました。

たとえばNASAは、1976年に火星着陸に成功した探査機“ヴァイキング”から、
“マーズ・パスファインダー”や“マーズ・エクスプロレーション・ローバー”、“フェニックス”、
そして2012年に着陸し、現在も活動を続けている最新の“キュリオシティ”に至るまで、
ほとんど同じ設計で造られたパラシュートを使用し続けています。

でも、その能力には限界があるので、
将来、より大型の探査機や有人火星探査船を着陸させる場合には、
役に立たなくなります。

そこで、より大型のパラシュートや、
まったく新しい減速装置が必要になってくるんですねー

“LDSD”に装備されているのは、
“キュリオシティ”などで使われたモノの約4倍の面積を持つ、
直径30メートルを超える巨大パラシュート。

そして、機体の周囲に配置された風船などを膨らませて面積を大きくし、
機体にかかる空気抵抗を増やすことで減速させる“SIAD”という新技術。

さらに“SIAD”には、
機体からガスを注入して風船のように膨らませる“SIAD-R”と、
空気抵抗の圧力を利用して展開する仕組みで、より大型の“SIAD-E”の、
大きく2種類があります。


実証試験へ

“LDSD”は、2012年から地上で試験が行われていて、
2014年6月28日には、1回目の試験飛行が行われています。

この1回目の試験では、“SIAD-R”の展開には成功したものの、
巨大パラシュートは展開に失敗。

その後、パラシュートの構造などに改良が加えられ、
今回の試験に備えていました。

また“SIAD-R”は成功したので、
2回目では“SIAD-E”が搭載されることになります。

2回目の試験は、現地時間2015年6月8日7時45分に開始。
“LDSD”は気球に吊るされて上昇していきます。

高度約36キロで分離された後、
“LDSD”は機体下部に装備されたロケット・モーターを噴射し、
高度約55キロまで一気に上昇。

そして弾道の頂点にくると、速度約マッハ3の状態で“SIAD-E”を展開して、
速度をマッハ約2.5まで落とし、続いてパラシュートを展開、
減速しつつ太平洋上に着水するという流れが計画されていました。

でも、“SIAD-E”の展開と減速には成功したものの、
今回もパラシュートが展開後に破れ、機体はそのまま太平洋上に落下…

まぁー 今回もパラシュートの展開には失敗したのですが、
NASAによると、前回の失敗に比べると進歩があり、
海上に落下した機体から映像を含むデータを回収できたので、
実験としては成功だったようです。

今後、今回得られたデータを基に、さらなる改良を加え、
2016年夏ごろに、3回目の試験飛行が実施されるようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 火星着陸に不安の種 “キュリオシティ”

冥王星の衛星が、不規則な自転をするのはなぜ?

2015年06月27日 | 冥王星の探査
地球から遠く離れた冥王星の衛星ニクスとヒドラ。

もし、これらの天体の表面に立てたとすると、
いつ、どの方向から日の出が見えるか分からないそうです。

それは、予測不可能な自転をしているから…

今回、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から、
冥王星の衛星ニクスとヒドラが、
予測できない無秩序な自転をしていることが分かったんですねー
冥王星とその衛星の(イメージ図)
手前に描かれているのが冥王星。
5つの衛星のうち圧倒的に大きいカロンは、
冥王星と連星系を形成していて、
その周囲を4つの小さな衛星が公転している。


衛星カロンのふるまい

冥王星は、最大の衛星カロンと共に、太陽系で唯一の“二重惑星”を形成。
この“二重惑星”の周りを小型の衛星4個が公転しています。

そして冥王星とカロンが生成する重力場が、不均衡で常に変化していることが、
小型衛星のランダムな自転を引き起こしているようです。

同じことが、土星と衛星タイタンの重力によって、
衛星ハイベリオンでも起きています。

さらに、小衛星が球形でなくフットボールのような楕円形をしていることも、
不規則な自転に関係があるようです。
自転するニクス(イメージ図)

月やカロン、木星のガリレオ衛星などは、自転周期と公転周期が一致していて、
中心の天体に対して常に同じ面を向けています。

これは、衛星と惑星(や冥王星)との間に働く重力の影響の結果なんですねー


ケルベロスの色の違い

ハッブル宇宙望遠鏡の観測からは、
衛星のうちケルベロスだけが練炭のように暗く、
他の衛星は白い砂のように明るいことも分かってきました。

どの衛星も同じように、
小天体の衝突で飛び散ったチリに覆われていると予測されていただけに、
この観測結果は意外なものでした。

また、ニクスとステュクス、ヒドラが軌道共鳴の関係にあり、
公転周期の比率が簡単な整数になっていることも確認されています。


“ニューホライズンズ”に期待

今年7月半ばには、
NASAの探査機“ニューボライズンズ”が冥王星に再接近して、
観測が行われることになっています。

なので、ケルベロスの色の問題や、
ハッブル宇宙望遠鏡では明らかにならなかった冥王星系の謎。
これらを解くヒントが得られるかもしれません。

“ニューホライズンズ”が冥王星に到達すれば、
驚かされることが一杯あるのでしょうね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ “ニューホライズンズ”がとらえた冥王星と衛星カロン

超大質量ブラックホールが作ってきた3組の巨大な空洞

2015年06月26日 | 宇宙 space
銀河中心の超大質量ブラックホールが、
5000万年にわたって起こしてきた爆発的な噴出。

これによって、周囲の高温ガスに3組の巨大な空洞が作られた様子を、
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”が明らかにしたんですねー
銀河NGC 5813。
X線(紫)と可視光線観測のデータを合成したもの。
黄色の矢印の部分が、銀河を取り巻くガスに空いた空洞。

“チャンドラ”が観測したのは、
おとめ座の方向1億500万光年の距離に位置する銀河群に、
属する銀河NGC 5813。

すると、銀河NGC 5813の中心にある、
超大質量ブラックホールが起こしてきた爆発的噴出の歴史が、
分かってきたんですねー


ブラックホールが作った空洞

銀河中心のブラックホールのすぐ近くからは、
強力な高速の双極ジェットが噴出。

この双極ジェットの衝撃波によって、
銀河内に広がる数百万度もの高温ガスが外に押し出され、
ガスに空洞のペアが作られます。

そして“チャンドラ”による最新の観測で、
この銀河に3組目となる空洞のペアが見つかることになります。

つまりブラックホールから、
これまでに3回も、爆発的な噴出が起こったことになるんですねー

さらに詳しく調べると、
ブラックホールに最も近く一番新しい1組の空洞を作るのに必要なエネルギー量は、
古い2組の空洞を作ったエネルギーよりも小さいことが分かります。

でも、3組のエネルギー生成率はほぼ同じで、
最も内側の空洞を作ったブラックホールからの噴出は、
まだ続いていることを表していました。

また、空洞の端(衝撃波面)が少しぼやけているのは、
高温ガスの乱流によるものと考えられています。

この仮定に基づくと、
ガスのランダムな運動速度は時速約25万8000キロになり、
理論モデルの予測や他の銀河群、銀河団に存在する高温ガスのX線観測に、
基づいた計算と一致したそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 最強クラスのブラックホールが作る、銀河サイズのガスの穴