宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

発生源は超大質量ブラックホールだった? 銀河の中心から届く高エネルギー宇宙線

2016年03月28日 | 宇宙 space
非常に高エネルギーの宇宙線を生み出している領域。

ナミビアのヘス望遠鏡による長年のガンマ線観測により、
その領域が、天の川銀河の中心に存在するようです。


ガンマ線の観測

地球には宇宙線と呼ばれる、
陽子、電子、原子核といった高エネルギー粒子が絶えず降り注いでいます。

ただ、宇宙線は電気を帯びていて、
天の川銀河内の恒星間磁場によって大きく曲げられてしまいます。

なので、その発生源を直接特定することはできません。

でも、宇宙線が周囲の光やガスと相互作用して生成したガンマ線は別です。

ガンマ線は磁場の影響を受けずにまっすぐ進むので、
その起源をたどることが可能なんですねー


チェレンコフ光

高エネルギーのガンマ線が地球に届くと、
上層大気中の分子と相互作用して、
チェレンコフ光を放射する二次粒子のシャワーが発生します。

このチェレンコフ光を検出することによって、
過去30年間に100個以上の高エネルギーガンマ線源が確認されてきました。

そして、約100テラ電子ボルト(可視光線の100兆倍)ものエネルギーを持つ宇宙線が、
超新星残骸やパルサー風星雲などの天体で生成されていることが分かっています。

一方で天の川銀河内では、
少なくとも1ペタ電子ボルト(=1000テラ電子ボルト)の宇宙線が、
生成されるはずだと考えられています。

でも、そうした非常に高いエネルギーを持つ宇宙線源は検出されたことがないんですねー


発生源は超大質量ブラックホール

今回の研究で用いられたのは、
アフリカ南西部のナミビアに設置されたヘス望遠鏡による、
天の川銀河の中心領域の地図作りのデータ。

10年以上にわたる高エネルギーのガンマ線観測からは、
ガンマ線が銀河の一番奥からやってくる宇宙線によって生成されていて、
宇宙線源は銀河中心の超大質量ブラックホールとだということが明らかになります。

ペタ電子ボルトにおよぶ宇宙線加速の直接的な証拠が、
初めて示されたんですねー

ヘス望遠鏡は最初の3年間で、
銀河の中心領域に非常に強力なガンマ線の点源を発見。

それだけでなく、約500光年にわたる領域内の巨大な分子雲から放射される、
広がったガンマ線放射もとらえています。

この現象は、分子雲が光速に近い速度の宇宙線にさらされ、
分子雲内の物質と相互作用してガンマ線が生成されているようでした。
天の川銀河の中心を取り囲む巨大分子雲と、
そこからガンマ線が放射される様子(イメージ図)。

さらに、その後の観測と分析で、
銀河中心で宇宙線にエネルギーが供給されるプロセスにも、
光が当てられることになります。

そして分かった事が、天の川銀河の中心33光年以内に、少なくとも1000年間、
陽子に約1ペタ電子ボルトものエネルギーを持たせる天体が存在したことなんですねー

ペタ電子ボルトのエネルギーを持つ陽子の側は、
天の川銀河の中心に位置する超大質量プラックホール“いて座A*(エー・スター)”と
考えるのが順当です。

もし、“いて座A*”の活動が過去にもっと活発なものだった場合、
現在地球で観測される銀河宇宙線の大部分の起源は“いて座A*”と言えます。

それが本当なら、
なぞの粒子の起源に関する長年の論争に大きな影響を与えることになりますね。

長さは30万光年… 見つかったのは銀河から伸びる長いガスの尾

2016年03月23日 | 宇宙 space
おとめ座銀河団に属する銀河“NGC 4569”に、
差し渡し30万光年以上という長大なガスの尾が発見されたんですねー

見つけたのは、フランスのマルセイユ天体物理学研究所の国際研究チーム。

この研究で分かってきたのは、
おとめ座の渦巻銀河“NGC 4569”にある長い尾が、
電離した水素ガスからできていることでした。

その長さは30万光年にも及んでいて、銀河そのものの5倍もあるんですねー
長大なガスの尾が発見された銀河“NGC 4569”
銀河右側に伸びる赤い領域が尾にあたる。

以前から“NGC 4569”のガスが予想より少ない事は知られていました。

ただ失われたガスが、
どこへ行ってしまったのかは分かっていませんでした。

そして今回発見したのが、
銀河の背後に大量のガスが引きずられるように存在している様子でした。

ガスの尾の質量を測ってみると、
銀河の円盤から失われている量と同じだと分かったんですねー

“NGC 4569”は天の川銀河から5500万光年離れた、おとめ座銀河団にあり、
その中を秒速約1200キロで移動しています。

銀河団には大量の高温ガスが閉じ込められていて、
銀河が運動すると周囲のガスの圧力を受けるので、
“NGC 4569”中の物質が引き剥がされるんですねー

今回の発見は、
超高感度カメラを搭載した口径3.6メートルのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡が、
長い時間をかけて“NGC 4569”を観測した結果によるもの。

今後も長いガスの尾を引く銀河が、多数発見されるそうですよ。

太陽系に9番目の惑星はある? 探査範囲が絞り込まれたそうです。

2016年03月05日 | 宇宙 space
海王星より遠い位置にあるはずの“第9惑星”が今どこにいるのか?

惑星発見の可能性について発表したアメリカの研究チームでも、
“第9惑星”がどこにいるのかは分かっていません。

それもそのはず、“第9惑星”が太陽を1周するのに1万~2万年もかかるので、
公転軌道上のどこにいるのか探すのが難しいんですねー

でも今回、フランスの研究者4人のチームが探査範囲の絞り込んだそうです。
太陽を背にした9番目の惑星(イメージ図)


“第9惑星”の影響を調べる

今回の研究では、太陽系第6惑星の土星を周回している、
NASAの探査機“カッシーニ”で得られたデータを調査しています。

その結果、2つの領域を探査範囲から除外できることが分かったようです。

これにより“第9惑星”が単にどこにいるのかでなく、
特定の範囲内にいる可能性を示すことになります。

まず研究チームが行ったのは、
アメリカのチームが仮定した公転軌道を“第9惑星”が移動する際に、
近くにある他の惑星の運動にどの程度の影響を及ぼすかを、
数理モデルに基づいて算出することでした。

次に、太陽系内にある惑星が、
実際にどのような挙動をしているかを詳細に調査。

すると、存在が仮定された“第9惑星”は、
一方に片寄った細長い楕円形の輪を描いて、
太陽の周りを公転していることが分かってきます。

これにより“第9惑星”が太陽から最も遠いところにあると、
距離が離れ過ぎるので、他の惑星への影響は検出可能なレベルにならない、
と考えることができます。

なので、観測で探索可能な範囲は、
全軌道のほぼ半分に限定されるんですねー

こうして研究チームは、
数理モデルが実態と合わないとする範囲を除外することで、
“第9惑星”の探索エリアを縮小することになります。

さらに研究チームが考えているのは、
2017年に終了予定の探査機“カッシーニ”の利用。

“カッシーニ”のミッションを2020年まで延長すれば、
探索範囲をさらに狭めることが可能になるようです。


発見には数年が必要

地球の約10倍の質量を持つとされる“第9惑星”の存在は、
数理モデルとコンピュータシミュレーションを用いて予測されました。

海王星の軌道の外側にあり、
氷に覆われた天体やその残骸が存在する領域“カイパーベルト”。

この“カイパーベルト”内に凝縮して分布する一群の準惑星の奇妙な挙動については、
“第9惑星”の存在で正確に説明できるそうです。

ただ、“第9惑星”が存在するとしても、
発見には数年を要すると天文学者たちは見ています。

はるか遠く、非常に大きな公転軌道上…
その軌道のどこにあるのかもはっきりとは分からない“第9惑星”を見つけるには、
かなり大きな望遠鏡が必要になるからです。

これまで数多くの惑星の存在が、数理モデルを通じて予測されてきました。
でも、大半の予測は誤りだったんですねー

もちろん正しかった予測もあります。
天王星に及ぼす重力から、その存在を予測された海王星が発見されたことは、
有名なケース1つになりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 外縁天体の奇妙な軌道は、太陽系に9番目の惑星がある証拠

とても冷たかった!? 惑星のゆりかご“原始惑星系円盤”

2016年03月04日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡などの観測により、
若い星の周りにある原始惑星系円盤の外縁部が調べられました。

この観測では、
外縁部に含まれる大きなチリの粒子の温度が初めて測定され、
チリが摂氏マイナス266度であることが突き止められたんですねー

予測よりずっと低いこの温度は、
これまでの惑星形成モデルを書き換えるほど、
衝撃を与えるものだそうです。


チリの粒子の温度

今回、大きなチリの粒子の温度を測定したのは、
フランスのボルドー天文台の研究チーム。

地球から約400光年離れた、へびつかい座ρ(ロー)星の星形成領域にある、
若い星“2MASS J16281370-2431391”の周りを測定しています。

この星はガスとチリの円盤に囲まれていて、
円盤内は惑星形成の初期段階(原始惑星系円盤)にあるそうです。

地球からは、円盤をほぼ真横から見る位置関係にあり、
可視光線で撮影された姿から“空飛ぶ円盤”と呼ばれているそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、
へびつかい座ρ星の星形成領域の若い星“2MASS J16281370-2431391”と、
周りの原始惑星系円盤。

そして、アルマ望遠鏡による円盤の測定と、
スペインのIRAM30メートル望遠鏡による背景の星雲とを組み合わせて、
分かったことがあります。

それは、中心の星から150億キロの位置にあるチリの粒子の温度が、
絶対零度よりわずか7度高いだけの摂氏マイナス266度しかないことでした。


惑星形成モデルの書き換えも

同種の天体で、1ミリほどの大きなチリの粒子の温度を、
直接測定したのは今回が初めてのことでした。

最新の惑星形成モデルが予測する温度は、
摂氏マイナス258度~マイナス253度なのですが、
今回測定された温度は、その予測よりも低いことに…

この不一致を説明するためのアイデアとして、
「温度は粒子の大きさに依存し、大きな粒子は小さなものより冷たい」
といったことが考えられるのですが、まだ確証はありません。

ただ、これほどの低温がありふれた特徴だとすると、
円盤の形成や進化についても考え直す必要がでてくるんですねー

それは、チリの粒子がぶつかり合うときに何が起こるのか、
惑星形成においてチリがどんな役割を果たすのか、
といった事柄にも影響が生じるからです。

また、より小型な円盤を考える上でも、
チリの温度が低いことは大きな影響があります。

チリの量を計算する時には、あらかじめ温度を仮定するのですが、
温度が低いと電波が弱くなります。

小型円盤が現在の予測よりも低温の粒子で構成されているとすれば、
観測される電波強度を生み出すためには、
想定より多くの物質を含んでいることになるからです。

これは、中心星から比較的近いところで、
巨大惑星が形成されうることを意味するんですねー

より詳しい理解のためには、今後さらなる観測が必要なんですが、
今回アルマ望遠鏡が発見した冷たいチリは、
原始惑星系円盤を理解する上で重要な知見になりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 原始惑星系円盤に2つ目のリングギャップを、すばる望遠鏡が発見

一時通信普通になっていた?! 今は復旧 金星探査機“あかつき”

2016年03月02日 | 金星の探査
金星探査機“あかつき”が、
2月20日に一時通信不通に陥っていたそうです。

JAXA宇宙科学研究所の発表によると、
この日の臼田局では、衛星の温度や電流などの状態を示す信号が取れず、
地上からの指令(コマンド)も効かない状態だったそうです。

ただ翌21日には、
当初から仕込まれていたタイムラインコマンドが実行。

これにより、
通信するためのアンテナが自動的に変更され、
地球との通信が回復したんですねー

今回の通信不通の原因は、
コマンド入力の際に不適切な姿勢系制御パラメータを、
探査機に送ってしまったこと。

なので、“あかつき”の通信・観測機器の問題ではなく、
探査機の状態が健全であることも確認されています。

宇宙科学研究所では、対策として運用方法を見直すと同時に、
コマンド入力項目について、チェックする手順を整えたそうです。

日本初の金星探査機として、
2010年5月21日に打ち上げられた“あかつき”。

同年12月7日には、金星を回る軌道への投入には失敗するのですが、
その5年後の2015年12月7日に再挑戦して軌道投入に成功しています。

現在は観測機器の立ち上げや試験などが行われていて、
JAXAによると、今回の不具合による今後の観測への影響はないそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 大気シミュレーションの結果、金星極域の不思議な温度分布を解明できた