宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙より古い星の正体

2013年04月22日 | 宇宙 space
推定年齢が、なんと宇宙よりも古い“てんびん座”の恒星。






デジタルスカイサーベイ
プロジェクトでとらえられた
“HD 140283”




てんびん座の恒星“HD 140283”は、2000年の研究で160億歳ということになっていました。
この研究結果は、宇宙の年齢が137億歳であることから考えると奇妙なんですよねー

今回ペンシルバニア州立大学の研究によれば、“HD 140283”の年齢は145億歳になるようです。
見積もりの誤差がプラスマイナス8億歳あるので、1番短い見積もりであれば宇宙の年齢の範囲に収まることになります。

今回の研究では、恒星の年齢の矛盾を解消するために、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で距離が推定しなおされています。

これまでの観測では、約20億年の年齢の差を生む距離の誤差を含んでいたんですよねー
今回のハッブル宇宙望遠鏡を用いた精密な測定では、誤差を5分の1に減らすことに成功しています。

距離が分かれば星の真の明るさも分かり、さらにそれが年齢の手掛かりになります。
精密になった距離のデータと、恒星の核燃焼のスピードや元素の量、
そして内部構造についての理論モデルから年齢を探ることで、これまでの推定より年齢を縮めることができたんですねー

“HD 140283”は見かけの動きがひじょうに速く、水素やヘリウムよりも重い元素の量が少ないので、銀河系を取り囲むハローという、古い星を多く含む領域から太陽の近くにやってきたと考えられています。

比較的近くにあり、しかも明るい恒星なので、
恒星の年齢を推定する研究にはもってこいの天体になるようですよ。

巨大ガス惑星誕生の瞬間を初めて撮影

2013年04月15日 | 宇宙 space
南米チリのアタカマ砂漠にある欧州南天天文台。

ここの望遠鏡に接続された高解像度カメラを用いた観測で、
恒星の周辺で形成されつつある原子惑星が、初めて直にとらえられました。

研究チームが見つけたのは、地球から355光年離れた天の川銀河内にある若い恒星“HD 100546”の周囲で、木星と似た巨大ガス惑星とみられる天体です。

惑星の形成過程に関する研究はこれまで、主にコンピュータシミュレーションを使って行われてきました。

でも、今回発見された天体が本当に形成途中にある惑星であれば、
惑星の形成過程や形成途中にある惑星と、その周囲の環境との相互作用を非常に早い段階から観測できる初めての機会になるんですねー

恒星“HD 100546”の周囲で形成される巨大ガス惑星(イメージ図)

地表の調査から分かるエウロパの海

2013年04月14日 | 宇宙 space
NASAジェット推進研究所の研究チームが、木星の衛星エウロパの地下にあるとみられる海から、地表に塩水が出ているという強い証拠を見つけました。







1988年に
NASAの探査機“ガリレオ”が
とらえた衛星エウロパ






衛星エウロパの表面は氷で覆われているのですが、
その100キロ地下には液体の広大な海があると考えられています。
そして、そこは生命がいる可能性がたびたび取りざたされる、天体の1つになっているんですねー

研究チームはハワイにある口径10メートルのケック2望遠鏡の、分光観測データを詳しく調べてました。

すると、エウロパの木星に向いていない側の赤道付近に、これまで見つかっていなかったわずかなスペクトルの吸収が見られたんですねー

さまざまな検証の結果、どうやらこれは“瀉痢塩(しゃりえん)”と呼ばれる、マグネシウムの含水硫酸塩鉱物であることが分かりました。

地下の海から地表に出てきた塩化マグネシウムと、
同じく木星の衛星イオの火山から、木星の磁場に沿って流れついた硫黄とが反応して生成されたもののようです。












衛星エウロパの地表と
地下の海のイメージ図
右上は木星、
中央奥は木星最大の衛星イオ










今回の研究の結果は、エウロパの海が閉じた場所ではなく地表とつながっていて、化学的な物質交換が行われているということを示しています。

これは、エネルギーが海に注ぎ込まれているということを意味するので、生命の可能性を考えるうえで重要なことになります。
そして地表を調べれば、地下の海のことが分かる っということにもなります。

生命の可能性を秘める海を探るヒントを、地表の調査から得れるかもしれないんですねー

地球を取り巻く放射線領域に第3の帯

2013年04月12日 | 地球の観測
地球をとりまく二重構造の放射線領域“バンアレン帯”の外側、
ここに第3の領域が一時的に出現しました。
幸運にも、探査機が打ち上げられて、わずか2日後の観測で見つかったんですねー





もう1つの放射線領域




“バンアレン帯”は、地球を取り巻く二重構造の放射線領域です。
内側のベルトは、地表から数百キロから約1万キロまでの領域にあり、
外側のベルトは、1万数千キロから数万キロまでの領域に広がっています。

太陽嵐などの影響で大きく膨張する性質を持っていて、
膨張時には通信衛星やGPS、宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士達にも危険を及ぼす可能性があるんですねー

その“バンアレン帯”を調べるのが、双子の他探査機“RBSP(放射帯嵐他探査機)”です。
2012年8月に打ち上げられ、その2日後に観測装置の1つREPT(相対論的電子陽子望遠鏡)を早速稼働したところ、直前に起こった太陽フレアにより“バンアレン帯”が膨らんだんですねー

この観測から、外側のベルトにはっきりと分かれた第3の放射線帯が出現していることが分かりました。
4週間後に、太陽からの強力な衝撃波で消滅するまで、“RBSP”はこの領域を観測し続けています。





太陽観測衛星“SDO”がとらえた
第3の放射線領域出現の
要因とみられる太陽フレア


今回の発見によって、“バンアレン帯”のダイナミックで変化に富む性質が明らかになり、
さらに太陽活動にどのように反応しているのか? についても理解を深める成果が得られました。

今後の観測でも、宇宙天気への影響の研究や、
太陽系内外の天体周囲で見られる基本的な物理プロセスの研究などに、
役立つデータが得られるようですよ。

巨大質量ブラックホールの高速自転を計測

2013年04月11日 | 宇宙 space
2つのX線天文衛星を駆使した観測で、
銀河の中心にある巨大質量ブラックホールの高速自転が、正確に計測されました。

多くの銀河の中心には、太陽の数百万~数十億倍という、
とても重いブラックホールがあると考えられています。

ブラックホールはその強い重力で、恒星やガスを飲み込んだり、合体したりして成長し、
周囲には引き寄せられた物質の円盤が形成されます。

こうしたブラックホールの自転速度は、ブラックホール自体と母銀河全体について知る手がかりになります。

回転が遅ければ、いろいろな方向からランダムに小さな塊を引き寄せてきたということだし、
回転が速ければ、物質の流入が均一で安定していたか、
あるいは銀河同士の合体の際に、中心ブラックホールも合体した過去があったと推測できるんですねー

そして、自転速度を知るには、円盤から放射されるX線に含まれる鉄の輝線の“ゆがみ”を見ることになります。
これは、自転が速いほど重力の影響で空間が曲げられ、円盤の内縁がブラックホールにより近づけられ、ゆがみは大きくなるからです。





銀河中心からのX線は、
ブラックホールの
重力効果(上)を
反映したもの



でも、やっかいなことに、この“ゆがみ”が起こるのは重力だけじゃないんですねー
周囲のガス雲でX線がさえぎられることでも起こる可能性があります。
なので、この2つの要因を区別することが課題でした。

今回観測されたのは、ろ座の方向にある銀河“NGC 1365”。
その中心にある太陽200万個分の大質量ブラックホールです。

このブラックホールも高速自転しているとみられていたのですが、
“ゆがみ”が起こる要因が区別できないので、高速自転が確実とは言えなかったんですねー

そこで、今回行ったのが、それぞれ違うエネルギーのX線を観測する方法。
2つのX線天文衛星“XMMニュートン”と“ニュースター”で、同時に観測したんですねー

すると、X線はガス雲にさえぎられておらず、
鉄輝線の“ゆがみ”は、そのままブラックホールの重力効果を反映したものということが、はっきりしました。

っということで、“NGC 1365”の中心ブラックホールは、実際に高速自転していることがわかったのですが、
すでに、同じ方法を他の銀河中心ブラックホールにも応用して、観測研究は進んでいます。

そして、重力の時空への影響を見る今回のような研究は、
一般相対性理論の検証にもつなることになるんですねー