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X線新星“コンパス座X-1”のリングは、X線バーストのこだま?

2015年07月31日 | 宇宙 space
X線連星“コンパス座X-1”の周りに4重のリングが見つかりました。

このリングは、X線を反射したエコーが見えているもので、
その大きさやX線が届く時間差から、
“コンパス座X-1”までの距離が明らかになるようです。


X線バーストが作り出す4種のリング

“コンパス座X-1”は中性子星と大質量星の連星系で、
X線を放射している天体です。

2013年の終わりのこと、
この中性子星で、巨大なアウトバーストが2か月にわたって起こり、
その間は非常に明るいX線源となっていました。

その後、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”や、
ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”で観測してみると、
“コンパス座X-1”の周囲にX線で輝く4つの明るいリングが見つかったんですねー
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”がとらえた“コンパス座X-1”のリング。

この4種のリングは、
“コンパス座X-1”で起こったX線バーストからのエコー(こだま)のようでした。

電波観測では、“コンパス座X-1”にチリの雲が見つかっているので、
その雲の別々の場所で反射したX線が、リング状に見えているというわけです。
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”X線天文衛星“XMMニュートン”


X線と電波で分かった距離

雲で反射したX線は、真っ直ぐに届くX線よりも長い距離を通ってきた分、
地球に届くのが遅くなります。

この数か月の遅れをX線で観測し、
電波観測で分かっている雲の形状と組み合わせることで、
“コンパス座X-1”が地球から3万700光年の距離に位置していることが、
明らかになります。

“コンパス座X-1”は銀河面の濃いチリに隠されているので、
可視光線での観測はできません。

でも、そうした天体までの距離が、
X線と電波の観測データから明らかにされるのは興味深いことですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ X線新星 “はくちょう座V404星”のブラックホール連星がアウトバースト

ヴェガロケット、地球観測衛星“センティネル2A”の打ち上げに成功

2015年07月30日 | 地球の観測
アリアンスペース社が、
地球観測衛星“センティネル2A”を搭載した、
ヴェガロケットの打ち上げに成功しました。

今回の成功でヴェガロケットは、
デビュー以来、5機連続での打ち上げ成功になったんですねー

ロケットは、2015年6月23日に南米ギアナ宇宙センターから離昇。
順調に飛行し、打ち上げから54分43秒後に衛星を分離、所定の軌道に投入されたそうです。

地球観測衛星“センティネル2A”

“センティネル2A”は、“コペルニクス”に基づいて開発された衛星で、
光学センサーを用いて地球を観測します。

欧州では、コペルニクス計画によって全地球の観測網を構築し、
継続的で自立した、信頼性の高いデータを取得して、
欧州の安全・安心を充実させようとしています。

一方で、地球環境保全や気候変動に関わる現象の理解など、
広範囲におけるミッションやサービスをカバーすることも、
目的にしているんですねー

製造はエアバス・ディフェンス&スペース社が担当。
センティネル2A

寸法は3.3×2.3×1.7メートルで、打ち上げ時の質量は1130キロ。
高度786キロの太陽同期軌道で運用されます。

ただ、機器などの設計寿命が7.25年なのに対して、燃料は12年分を搭載。

これは、設計寿命を過ぎた後も機器が生きていれば、
運用を延長するためだそうです。


ヴェガロケット

“センティネル1A”は2014年4月にソユーズロケットで打ち上げられました。

そして今回の“センティネル2A”を打ち上げたのが、
ヨーロッパ宇宙機関とイタリアのアヴィオ社が開発した、
固体ロケット“ヴェガ”です。

アリアンスペース社では、
大型ロケットのアリアン5、中型ロケットのソユーズ、
そして小型ロケットのヴェガとロケットを揃え、
多種多様な衛星の打ち上げに対応できるようにしています。

ただ、ヴェガは小型ロケットという分類なんですが、
高度700キロの太陽同期軌道に、
1500キロほどの打ち上げ能力持っています。

なので世界のロケットと比べると、
どちらかというと中型に分類される能力なんですねー

ヴェガロケットは2012年2月に1号機が打ち上げられて以来、
今回が5機目の打ち上げになり、すべて成功を収めています。

また11月頃には、重力波観測衛星“LISA”の技術実証機になる、
“LISAパスファインダー”の打ち上げも予定されています。


市場が認める信頼

ヴェガロケットは、2012年にアリアンの打ち上げ機ファミリーに加わり、
ここ数か月の地球観測衛星市場において、多くの受注を獲得しています。

2015年に入ってからは、
  アラブ首長国連邦の衛星“ファルコン・アイ”、
  ペルーの“ペルーサット1”、
  グーグル/スカイボックス・イメージング社の3つの衛星“スカイボックス”、
の打ち上げ契約を獲得。

アリアンスペース社は、ヴェガロケットの信頼性を市場が認めると確信し、
2014年10月に、10機のヴェガロケットを一括購入しています。

また、2014年末には、
ヴェガ・コンソリデーテッド(ヴェガC)という、
打ち上げ能力を強化したロケットの開発も決定しているそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 再使用型スペースプレーン験機“IXV” 飛行試験に成功!

大量のガスを呑み込んでいたのは、小さなブラックホールだった?

2015年07月29日 | 宇宙 space
非常に強いX線を発する謎の天体に、“超高光度X線源”があります。

この謎の天体のうち4つを“すばる望遠鏡”で観測すると、
ブラックホールがガスを一気に呑み込む“超臨界流”の反動により、
大量のガスを放出しているという証拠が得られたんですねー


太陽の100万倍以上も強いX線放射

天の川銀河から近くの銀河では、
銀河中心から離れた位置に、太陽の100万倍以上も強いX線放射が、
検出されることがあります。

これまで、その大部分は恒星とブラックホールの連星だと考えられていました。

でも、天の川銀河内で見つかっている連星ブラックホールの質量は、
せいぜい太陽の20倍程度なのに対して、
超高光度X線源は、これらのおよそ100倍ものX船を放っていました。

これほど強力なX線を放射する理由としては、
  太陽の1000倍以上の質量をもつブラックホールであること。
  太陽の100倍以下の小さなブラックホールが、
  理論限界を超えて大量のガスを呑み込む“超臨界流”が起こっている。
という2つの説があります。
おおぐま座の方向約1100万光年の距離にある
矮小銀河ホルムベルクIIにある超高光度X線源“X-1”(矢印)の多色合成画像。
(ハッブル宇宙望遠鏡で撮像)
周囲のガスが、強力なX線源で電離されて赤くなっている。

今回の研究では、4つの銀河にある超高光度X線源を、
“すばる望遠鏡”に搭載された微光天体分光撮像装置“FOCAS”で、
4夜にわたり観測。

その結果、4天体全てのスペクトルに、
加速された高温の“風”がブラックホール周囲の降着円盤、
あるいは伴星から噴き出していることを示す共通の特徴が見られたんですねー


小さなブラックホールに大量のガスが流れ込んでいた

これらの特徴は、天の川銀河内の特異天体“SS 433”でも見られています。

“SS 433”は、
太陽の10倍以下の質量のブラックホールからなるX線連星だと、
考えられています。

常時放出される高速ジェットの観測から、
“エディントン臨界光度”に相当する以上の量のガスが流れ込む、
“超臨界流”が起こっていることが確実な唯一の天体なんですねー

“エディントン臨界光度”とは、
天体の光度がある値を超えると、光の圧力が重力を上回り、
ガスが天体に落ちることができなくなること。

観測結果について研究チームでは、
小さなブラックホールに、大量のガスが一気に流れ込む反動で、
一部のガスが降着円盤として放出されている証拠だと結論付けています。

さらに、これらと同程度の明るさの超高光度X線源は、
全て同種族の天体であり、“SS 433”と同類だろうと考えています。

つまり、ブラックホールが小さくてもガスを呑み込む勢いにより、
明るいX線を放射するということです。
超高光度X線源(上)と“SS 433”(下)の構造および視線方向。
ブラックホール近くの降着円盤は“超臨界流”となっていて、
内部から強いX線が放射されている。
途中から、大量のガスが降着円盤風として吹き出していて、
そこからヘリウムイオンや水素原子の輝線が観測される。


“超臨界流”は、
X線天文衛星“ASTRO-H”

宇宙初期において銀河の中心にある超巨大質量ブラックホールを、短時間で形成するための有力なメカニズムの1つと考えられています。

その現象が近傍宇宙で見つかったことは、
宇宙の形成史を理解する上でも、非常に意義が大きいことなんですねー

ただ、超高光度X線源の中のブラックホールが、
“SS 433”と同様に太陽の数倍程度の質量なのか、
それとも数十倍程度なのか、といった問題がまだ残っています。

今年度打ち上げ予定の“ASTRO-H”など、
将来のX線天文衛星による謎の解明が待たれますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超高輝度X線源の正体はパルサーだった?


X線新星 “はくちょう座V404星”のブラックホール連星がアウトバースト

2015年07月28日 | 宇宙 space
太陽系から最も近いところにあるブラックホールの連星系、
“はくちょう座V404星”がアウトバーストを起こし、
大きな注目を集めているんですねー

“X線新星”の条件

X線新星と聞くと、どんな天体を思い浮かべるでしょうか?

X線や新星という名前は耳にしたことがあると思いますが、
この2つがつながった“X線新星”という名前は馴染みがないですよね。

中性子星またはブラックホールが、
通常の恒星と近接連星を成している連星系で起こる活動現象の1つが、
X線新星です。

連星系は、2つの星の間の距離が非常に近いので、
恒星の外層は、中性子星やブラックホールへ向かって流れ出していき、
降着円盤を形成します。

この現象は、
矮新星をはじめとする激変星で起こっていることにそっくりなんですが、
主星が白色矮星でなく、中性子星やブラックホールなどの、
より密度の高い天体だという違いがあるんですねー


“X線新星”のアウトバースト

このような降着円盤も激変星の場合と同じく、
安定して降着するのではなく、ときどき急激に物質が降着することがあります。

激変星の場合、この現象は矮新星アウトバーストとして観測されます。

でもX線連星の場合、中心天体がより高密度なので、
円盤が形成されている半径の重力ポテンシャルの深さは、
激変星の場合より、はるかに深くなります。

このため、矮新星の場合と比べて、エネルギーの高いX線を主に放出することに…
なのでX線新星と呼ばれているんですねー

新星と名が付いているのですが、いわゆる新星爆発とは別物になります。

もっとも、このX線の一部は円盤に再び吸収されて再放射されたり、
円盤からシンクロトロン放射されたりすることにより、可視光でも明るくなります。

そして、可視光で11等台に達することもあり、観察が行えるというわけです。


新星爆発ではなかった

“はくちょう座V404星”は、1938年に発見された古い新星です。

その後しばらくの間は、あまり注目を集めることもありませんでした。

でも、1989年にX線天文衛星“ぎんが”が、X線で明るくなっているところを発見。
この天体の増光が新星爆発ではなく、X線新星のアウトバーストだと確認されました。

このアウトバーストの際に、
可視光でも再び12等まで明るくなり、各地で観測がされました。

その後の研究で、このX線連星が持つ高密度天体は、
中性子星ではなく、ブラックホールらしいことが分かり、
ブラックホール連星としても知られるようになります。

今のところ、太陽系からもっとも近いところ(約7800光年)にある、
ブラックホールだと考えられているんですねー
X線天文衛星“ぎんが”X線天文衛星“スウィフト”


観測は今が狙い目かも

今回のアウトバーストは、
6月15日にX線天文衛星“スウィフト”によって、
“はくちょう座V404星”の位置にX線で明るくなっている天体があると、
報告されたことに始まりました。

これを受けて、可視光線でのフォローアップ観測がなされ、
12.65等まで明るくなっていることが明らかにされます。

そして、このフォローアップ観測の終了時には15.43等まで暗くなることに…

でも、6月16日には16.18等だったのが、、
13.1等とさらに明るくなっているとの報告が…
16日の観測は、いったん暗くなったところをとらえたようです。

その後、この天体はさらに明るくなり、ときに11等台に達することもあったようです。

短いタイムスケールで大きな変動を示す天体なので、
特にアウトバースト直後は1~2時間で3等級ほど明るさを変化させることもあるんですねー

ただ、タイミングが悪いと16等くらいまで暗くなることもあるのですが、
アウトバーストから数日が経過し、
このような大きな変動は少し収まってきたきたようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ いて座のX線新星はブラックホール連星


巨大ガス惑星“ホットジュピター”に成層圏を検出

2015年07月27日 | 宇宙 space
巨大な高温の系外惑星に、成層圏が存在することが分かりました。

この天体は、
アンドロメダ座の方向約380光年彼方に位置する系外惑星“WASP-32b”。

今回、ハッブル宇宙望遠鏡で分光観測すると、
この惑星の大気に成層圏が検出されたんですねー
成層圏がない場合(左下)とある場合(右下)で、
大気の温度構造を比較したイラスト。図の下が大気の内側。
暗いところは摂氏約500度、黄色の部分は摂氏3000度。


温度逆転現象も起こしている

地球の成層圏は、
地表から雲の高度あたりまで広がる“対流圏”のさらに上にあります。

成層圏は大気中の分子が、太陽からの紫外線や可視光線を吸収して、
「日よけ」のような役割果たす場所になります。

気温は、上空では低く地表に近いほど高い対流圏とは逆に、
成層圏では高度が高くなるほど温度も上昇。

この温度逆転現象は、
成層圏中のオゾンが太陽からの紫外線を吸収することで起こっています。

木星や土星でも、
成層圏に含まれる炭化水素によって温度逆転現象が生じています。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測では、
“WASP-33b”に摂氏約3000度の成層圏があることや、
それより低層の大気の温度が約1500度であることが、
明らかになっています。

この惑星では、大気中の酸化チタンが星からの放射を吸収して、
大気の温度逆転を引き起こしているようです。