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えっ 初初打ち上げなのに人を乗せちゃう? NASAの次世代巨大ロケットSLS

2017年03月06日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
NASAが計画を進めている、
次世代巨大ロケット“スペース・ローンチ・システム(SLS)”。

月や火星までも有人探査を視野に入れた計画なんですが、
NASAでは、その初打ち上げに宇宙飛行士を搭乗させることを考えているようです。
  有人火星探査を視野に入れた居住モジュールをNASAが試作へ
    

今のところSLSの初打ち上げになる“EM-1”ミッションが
予定されているのは2018年の秋。

この“EM-1”ミッションは当初、
無人の宇宙船“オリオン”を打ち上げ月周辺まで行くものでした。

でもNASAは“EM-1”の有人ミッションの可能性について、
調査を開始しているんですねー
NASAの次世代巨大ロケット“スペース・ローンチ・システム”


ロケットが間に合うか

無人ミッションを有人ミッションに変更することで、
SLSの初打ち上げは当初より遅れる可能性が出てきます。

現時点で“EM-1”の打ち上げが予定されているのは2018年の9月30日。

ケネディ宇宙センターから打ち上げられた無人の“オリオン宇宙船”は、
月軌道に投入され3週間後に地球へ帰還する予定です。
“EM-1”ミッションでは当初、
無人の宇宙船“オリオン”が打ち上げられる。

そして宇宙飛行士が搭乗する“EM-2”ミッションは、
早くて2021年に行われる予定になっています。

2回に分かれていた無人ミッションと有人ミッションを1つにすると、
SLSの初打ち上げが当初より遅れる可能性が出てくるんですねー

それは、SLSの構成に関する問題が原因になります。
“スペース・ローンチ・システム”の異なる構成

最初の“EM-1”で予定されているのは、
最も小さな70トンの打ち上げ能力がある“Block 1”です。

そして“EM-2”で利用される“Block 1B”は、
より大型でパワフルな第2段ロケット
“Exploration Upper Stage(EUS)”が採用されることになります。

ただ、“Exploration Upper Stage”はまだ製造されていないので、
有人ミッションに変更される“EM-1”に間に合うかどうかです。

もちろん、宇宙飛行士を搭乗させるとなれば多大な予算計画の変更や、
さらには搭乗員のリスク低減などに大きな労力を払う必要があります。

2030年代に火星への有人探査を計画しているNASAですが、
すでに計画は遅れ気味…

大統領の思いつきから始まった? この計画変更、
はたして、この先どうなるのでしょうか…


こちらの記事もどうぞ
  NASAの新宇宙船オリオン、試験機は12月に打ち上げ
    

なんで今さら? NASAがスペースシャトルのエンジン燃焼試験を実施。

2015年01月19日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
1月9日、ミシシッピ州にあるステニス宇宙センターで、
開発中の超大型ロケット“スペース・ローンチ・システム”の第1段ロケットに採用される予定の、
RS-25ロケットエンジンの燃焼試験が実施されました。

実はこのRS-25は、
かつてはスペースシャトルのメインエンジンとして使われていたんですねー
エンジンは液体水素と液体酸素を推進剤としていて、
A-1と呼ばれる試験台に取り付けられ、約500秒にわたって燃焼し無事に完了。

ただ、スペースシャトルとスペース・ローンチ・システムでは、
作動環境に大きな違いがあります。

例えば、スペースシャトルはRS-25を3基並べて装着していたのですが、
スペース・ローンチ・システムでは4基並べることになるので、
それぞれのノズルが受ける温度は高くなります。

また、加速が大きくなるので、
推進剤がエンジンに流れ込む際の圧力も、スペースシャトルに比べて高くなり、
さらにエンジンに流れ込む液体酸素の温度も、より低くなっています。

今回試験されたRS-25は、こうした変化に合わせた改修が施されたものなんですねー

スペースシャトル計画の下で、RS-25の燃焼試験が行われたのは2009年が最後で、
今回はそれ以来初の燃焼試験になります。

スペース・ローンチ・システムは、NASAとボーイング社によって開発が進められているロケットで、
完成すれば歴史上最も強力な打ち上げ能力を持つロケットになります。

ロケットは打ち上げ能力70トンの構成と、130トンの構成の、大きく2種類が開発される予定。

まず最初に開発されるのは70トン構成の機体で、
大型の無人探査機を火星や小惑星に送ったり、宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船を、
地球低軌道や月、地球近傍小惑星に送り込むことが可能になります。

そして2030年頃には130トン構成の機体が完成する予定です。

実現すれば史上最大の打ち上げ能力を持つロケットになり、
いよいよ火星や小惑星への有人着陸が視野に入るんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ NASAの新宇宙船オリオン、試験機は12月に打ち上げ

NASAの新宇宙船オリオン、試験機は12月に打ち上げ

2014年09月22日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
今年12月に実施予定のEFT-1ミッションで使用される、
オリオン宇宙船の試験機が公開されました。
オリオンは現在NASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、
NASAの宇宙船としては、スペースシャトルの後継機にあたります。

ただ、地球の低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、
オリオンはアポロ宇宙船のように月へ、
そして、さらにその先の火星や小惑星にも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められています。

オリオンの最初のミッションは、探査飛行試験1(EFT-1)と名付けられていて、
大型の人工衛星の打ち上げに使われているデルタIVへビーロケットに、
無人のオリオンを搭載して打ち上げられることになります。

今回完成したオリオン試験機は、
ケネディ宇宙センターのペイロード・ハザーダス・サービシング施設に移され、
燃料の充填が行われた後、上から被せるような形で打ち上げ時の緊急脱出システムが取り付けられます。

それが終われば、いよいよデルタIVヘビーの上に搭載され、打ち上げです。
なお、ロケットはすでに到着していて、こちらも並行して準備作業が進められている段階なんですねー

EFT-1では打ち上げ後に、地球の軌道に乗り、まず地球低軌道を1周します。

その後、デルタIVの第2段エンジンを再点火し軌道の高度を上げることに…
約5800キロに達した後、地球の大気圏に向けて落ちていくことになります。

そして大気圏に再突入後、パラシュートを開いて太平洋上に着水し回収される予定です。


大気圏再突入時の速度は秒速約9キロにもなり、
耐熱シールドが受ける温度は摂氏約2200度に達するんだとか…

この試験により、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが、
設計通りに機能するか確認するんですねー

ただ、EFT-1で使用されるオリオン試験機には太陽電池は搭載されず、
内蔵バッテリーでの駆動になるようです。

また、生命維持システムやスラスターなども搭載されず、
サービス・モジュール部は、実質的に形だけのものになっています。
このEFT-1が完了した後、
得られたデータから、さらにオリオンの開発が進められ、
2018年11月に探査ミッションEM-1が実施される予定です。

EM-1でもオリオンは無人なんですが、
打ち上げに使用されるロケットには、現在オリオンと並行して開発が進められている、
新型ロケットのスペース・ローンチ・システムが使われることになります。

EM-1では地球から月まで行き、
月の裏側を回って地球に帰還するルート(自由帰還軌道)での飛行が行われ、
オリオンの全システムと、スペース・ローンチ・システムの能力が試験されます。

そしてEFT-1とEM-1が無事に完了すれば、
いよいよ次はオリオンに宇宙飛行士を乗せた、有人飛行が行われるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 超大型ロケット“スペース・ローンチ・システム”の開発が正式決定!

超大型ロケット“スペース・ローンチ・システム”の開発が正式決定!

2014年09月10日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
これまでNASAが検討と設計を進めていた“スペース・ローンチ・システム”、
このロケットの開発が正式に決定しました。

“スペース・ローンチ・システム”は、史上もっとも強力な打ち上げ能力を持つロケットで、
これが完成すれば、小惑星や火星への有人飛行が可能になるんですねー
決定事項を正確に言えば、
“スペース・ローンチ・システム”の70トンバージョンの開発のため、
2014年2月から計算して計70億2100万ドルの予算を投じるというものでした。
そして最初の打ち上げ日は、2018年11月以降としています。


“スペース・ローンチ・システム”は打ち上げ能力70トンのロケットと、
130トンのロケットの大きく2種類が開発されることになっています。

まず最初に開発されるのは70トン構成の機体で、
大型の無人探査機を火星や小惑星に送ったり、
宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船を地球低軌道や月、
地球近傍小惑星に送り込むことが可能になります。

2030年ごろには130トン構成の機体がデビューする予定で、
いよいよ火星や小惑星への有人着陸が視野に入ることに…
130トン構成が実現すれば、史上最大の打ち上げ能力を持つロケットになるんですねー


“スペース・ローンチ・システム”のコア・ステージと呼ばれる第1段部分は、
基本的にはスペースシャトルの外部タンクを流用し、改修されたこのが使われます。

さらに、ロケットエンジンもスペースシャトルに使われていたRS-25Dが装備され、
その両脇には、やはりスペースシャトルで使われていた固体ロケット・ブースターを流用、セグメント数を増やしたものを装備します。

コア・ステージの上部には、ミッションの目的や打ち上げるものの大きさ、質量に応じて用意された何種類かの上段を搭載することになります。

これらのバリエーションは、
それぞれブロックIやブロックIAといった呼び名が付けられていて、
さらに有人宇宙船を搭載する型や、貨物のみを搭載する型にも分かれています。


すでに“スペース・ローンチ・システム”の初期バージョンを造るための要素は、
整いつつあります。

例えば、ロケットとオリオン宇宙船との結合に使われるアダプターは、
すでに開発が終わっていて、
今年の12月に予定されているデルタIVヘビー・ロケットによる、
オリオン宇宙船の打ち上げで同じものが使われます。

また、“スペース・ローンチ・システム”の飛行4回分に当たる、
16基のRS-25ロケット・エンジンは、
すでにNASAステニス宇宙センターにあり、
この秋から始まる燃焼試験を待っている段階なんですねー

“スペース・ローンチ・システム”の両脇に装備される、
5セグメントの固体ロケット・ブースターも、
ATK社による燃焼試験が行われています。


“スペース・ローンチ・システム”は次に、最終設計審査が待ち構えています。
これを越えれば、いよいよ1号機の生産が開始されるんですねー

予定通りに計画が進めば、
2018年11月に、無人のオリオン宇宙船を載せた1号機を打ち上げ、
試験飛行が行われる予定です。

また、その2年後には友人のオリオン宇宙船の打ち上げがあり、
そして2030年代までに、火星への有人飛行が実現する計画になっています。

ただNASAには、
“スペース・ローンチ・システム”を開発するために必要な予算はあるのですが、
実際に使用するための予算は、まだ与えられていないんですねー

なので「2030年代に火星へ行く」という構想は、
今のところ夢物語でしかないのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ オリオン宇宙船の初打ち上げに向け、ロケットの準備進む

オリオン宇宙船の初打ち上げに向け、ロケットの準備進む

2014年03月14日 | スペースシャトル ~ SLS, オリオン
3月6日、フロリダ州のケープ・カナベラル空軍ステーションに、
NASAの新型有人宇宙船オリオンの試験機を打ち上げるための、
デルタIVロケットのブースターが到着しました。
オリオンは、現在NASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、
NASAの宇宙船としては、スペースシャトルの後継機になります。

地球の低軌道までしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、オリオンはアポロ宇宙船のように月へ…
そして、さらにその先の火星や小惑星にも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められているんですねー

オリオンの初飛行は、今のところ2014年9月18日に予定されています。

この初飛行は探検飛行試験1“EFT-1”と呼ばれていて、大型の人工衛星の打ち上げで使われている“デルタIVヘビーロケット”に、無人のオリオンを搭載して打ち上げられます。

そして地球周回軌道を1周した後に、最大で高度約6000キロにまで達する軌道を飛行、秒速約9キロで大気圏に再突入し、太平洋に着水する計画です。

これによって、オリオンの電子機器や耐熱システム、パラシュートなどが設計通りに機能するかが試験されるんですねー

今回到着したのは、その“デルタIVヘビーロケット”で使われるブースターで、
通常の“デルタIVロケット”の第1段の両脇に、さらに第1段をくっつけて打ち上げ能力を増強させたロケットになります。

その後は“EFT-1”の結果を受けて、さらに開発が続けられ、
2017年12月17日には新型ロケットSLSを使って、オリオンの試験飛行が実施されることになります。

探検ミッション1“EM-1”と呼ばれるこの飛行は、無人のオリオンを月まで飛ばし、裏側を通過してほぼ1周した後に地球に帰還させる計画です。

さらに2021年には、探検ミッション2“EM-2”が実施される予定になっているんですねー

“EM-2”は14日間の有人ミッションで、4人の宇宙飛行士を乗せたオリオンをSLSで打ち上げ、月周回軌道で4日間を過ごした後に地球に帰還するそうですよ。



こちらの記事もどうぞ ⇒ NASAの新型ロケット(SLS)が、基本設計審査会を通過