宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

メーザー源を調べてみると、大質量星形成領域の構造が分かってきた

2016年01月31日 | 宇宙 space
東アジアVLBIネットワークの電波望遠鏡による観測で、
大質量星形成領域に存在するメタノールメーザー源の内部固有運動が計測されました。

計測では回転膨張運動を示唆する結果が得られ、
原始惑星系円盤の運動を示している可能性があるようです。


メタノールメーザー源

今回の研究で用いられた東アジアVLBIでは、
水沢、入来、小笠原、石垣島のVERA4局と、
上海25メートル望遠鏡、山口32メートル望遠鏡、茨城32メートル望遠鏡を合わせた、
計7台の電波望遠鏡が使われました。

これまで研究グループでは、
これらの望遠鏡により宇宙のメタノール分子によって増幅された、
マイクロ波放射“メタノールメーザー”源の内部固有運動の統計的調査を行ってきました。

そして今回、
いて座の方向に位置する大質量星形成領域“G006.79-00.25”に付随する、
複数の6.7GHz帯メタノールメーザー源を観測。

すると、「メーザー源の運動の大きさが毎秒1~10キロで、
メーザー源が示す楕円形状の空間分布に沿った反時計回りの運動傾向を示している」
という結果が得られたんですねー
“G006.79-00.25”付随する、
6.7GHzメタノールメーザー源の重心位置(○印)に対する内部固有運動の様子。
円錐形のプロットがメーザー成分の内部固有運動になる。

この内部固有運動と視線速度を併せた三次元運動構造に対して、
円盤モデルを当てはめ、円盤の傾きや回転速度、膨張速度を計算すると、
半径1260天文単位(約1900億キロ)という構造が浮かび上がります。

さらに膨張運動について、
典型的なメタノールメーザー源の磁場強度を用いて見積もったところ、
円盤構造自体が膨張しているのではないことも分かりました。

磁気遠心力に伴う円盤風で、
円盤外側のガスが吹き飛ばされている可能性があるんですねー

今回の研究から分かったことは、6.7GHz帯メタノールメーザー源は、
大質量原始星の近傍の姿に迫ることができるツールとして期待できること。

これにより、メーザー源の様々な姿が統計的に得られれば、
原始星周辺の三次元運動構造を調べる大きな手がかりになりそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 銀河の地図作りから分かった、大質量星形成領域が遠ざかっていく様子

宇宙船の空中停止にも成功していた! スペースX社“ドラゴン2宇宙船”

2016年01月30日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
アメリカの宇宙開発企業スペースX社が、
“ドラゴン2宇宙船”のホバリング(空中停止)テストに成功していたようです。
空中停止する“ドラゴン2宇宙船”。

昨年の11月24日に行われたテストの動画では、
ワイヤーで吊り下げられた“ドラゴン2”が、
ロケット噴射でわずかに持ち上がったまま、
ほとんど動かない状態で制御されているのが分かるんですねー

スペースX社が現在運用している“ドラゴン宇宙船”は、
地球への帰還時にパラシュートで降下し海上に着水します。

これは“アポロ宇宙船”など、
これまでのアメリカのカプセル型宇宙船と同じ方法です。

でも新型の“ドラゴン2”は、
陸上へソフトに着陸することを目指しているんですねー

陸上へソフトに着陸する方法は海上への着水と比べ、
  船で回収する費用が掛からない、
  海水で濡れないので再使用しやすい、
  有人宇宙船の場合は乗員の負担が小さい、
といったメリットがあります。

ロシアの“ソユーズ宇宙船”はパラシュートで陸上に着陸しています。

でも、着地の直前に短時間の強力なロケット噴射で速度を落とすという程度…
着地の衝撃は小さくないし、転倒することもあります。

これに対し、“ドラゴン2”はSF映画の宇宙船のように、
ゆるやかに減速してソフトに着陸します。

今回公開されたテストの動画では、
この綿密な制御が成功しているようでした。
タッチパネルが多用され先進的な“ドラゴン2宇宙船”の船内。

またカプセル型有人宇宙船には通常、
ロケットで打ち上げられる際の脱出用ロケット、
軌道上で使用するための軌道変更用ロケットが、
個別に装備されます。

でも、“ドラゴン2”は8基の“スーパードラコ”エンジンが、
脱出用、軌道変更用、着陸用を兼用していて、コストダウンに貢献しています。

“ドラゴン2宇宙船”が運用を開始するのは2017年から。
NASAの委託で国際宇宙ステーションへ宇宙飛行士を輸送する予定です。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 有人宇宙船“ドラゴン2”が、打ち上げ中断システムの試験に成功!

二番目に大きなブラックホールも天の川銀河の中心にある?

2016年01月29日 | 宇宙 space
天の川銀河の中心領域にある特異分子雲中に、
太陽の10万倍の質量を持つブラックホールが潜んでいる、
っという兆候が見つかったんですねー

銀河中心ブラックホールの形成と成長

ほぼ全ての銀河の中心には、
太陽の10万倍から10億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールがあることが、
最近の研究から分かっています。

もちろん天の川銀河も例外でなく、
その中心部には、太陽の約400万倍もある超大質量ブラックホール“いて座A*”があります。

でも、その形成や成長のメカニズムは解明されていませんでした。

今回の研究では、
“いて座A*”から約200光年離れた位置に発見された、
特異分子雲“CO-0.40-0.22”を観測。

この分子雲の詳細な電波観測を行い、
詳細な空間構造と運動を明らかにしています。

これらの結果から、
そこに太陽の10万倍もの質量を持つコンパクトな重力源があることで、
この分子雲の運動が説明できることが分かります。

赤外線やX線観測では、
この重力源の位置に存在する天体は見つかっていないので、
ブラックホールだとすると、天の川銀河では中心部の“いて座A*”に次いで、
二番目に大きなものになります。

こうした中質量ブラックホールが、
銀河の中心部から200光年という比較的近い距離に存在するなら、
「中心にある超大質量ブラックホールは、中質量ブラックホールの合体で形成され成長する。」
というシナリオを支持する重要な観測的事実になるんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ 初の中間質量ブラックホールを確認 “HLX-1”

フライバイから半年… でも“ニューホライズンズ”のデータ送信はまだまだ続く

2016年01月28日 | 冥王星の探査
探査機“ニューホライズンズ”の冥王星フライバイから半年が経過しました。

現在“ニューホライズンズ”は地球からどんどん遠ざかりながらも、
膨大なデータを少しずつ送信しているんですねー

今回は、氷火山とみられる地形“ライト山”の高解像度画像が公開されました。
“スプートニク平原(非公式名)”と名づけられた地域の南側にあるの“ライト山”。
この画像には約230キロの範囲がとらえられている。


火山は最近まで活動していた

NASAの探査機“ニューホライズンズ”は、
昨年7月14日の冥王星フライバイ時に、冥王星表面を複数のカメラで撮影していました。

今回公開された高解像度画像は、
約4万8000キロの距離から、
  “LORRI”カメラで撮影されたデータ(1ピクセルあたり450メートル)と、
約3万4000キロの距離から、
  RalphとMVICカメラで撮影されたデータ(1ピクセルあたり650メートル)を
  合成して作られたもの。

この氷火山と思われる地形は、
ライト兄弟にちなんで“ライト山(非公式)”と呼ばれています。

高さは4キロ、幅は約150キロと巨大なもので、
もし本当に火山なら、太陽系外縁部に見つかったものとしては最大になるんですねー

研究者たちは、赤い物質が画像中にまばらに分布している様子に注目していて、
「なぜ、もっと広範囲に広がっていないのか?」という謎を解き明かそうとしています。

また不思議なことに、
“ライト山”には衝突クレーターがたった1つしか見当たりませんでした。

これは表面が比較的新しいことを意味していて、
地質学的な意味で、最近まで火山活動があったことを意味しているそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星に氷の火山を発見! 最近まで活動していたそうですよ

宇宙で一番最初に誕生した星 の痕跡を発見?!

2016年01月27日 | 宇宙 space
遠方の宇宙に見つかった、重元素の割合が非常に少ないガス雲。

このガス雲、
ひょっとすると宇宙で一番最初に誕生した第一世代の星の内部で作られた、
重元素の痕跡なのかもしれないんですねー


第一世代の星は重元素率が低い

宇宙で一番最初に誕生した第一世代の星。

この星の痕跡を含むと思われる古いガス雲が、
ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”による観測から発見されました。

ガス雲が発見されたのは、
ビッグバンから約18億年しか経っていない遠方の宇宙で、
炭素や酸素、鉄などの重元素の割合が、
太陽の1000分の1以下と非常に小さかったんですねー
宇宙で最初に誕生した星のシミュレーションのスナップショット。
どのようにしてガス雲が重元素で満たされたのかを再現している。

重元素はビッグバンでは作られず、
その後に誕生した恒星の内部で作られることになります。

反対に、宇宙で一番最初の星は、重元素を含まない新鮮なガスから作られ、
現在、私たちの近傍の宇宙に見られる、
重元素を含むガスから誕生した星とは性質が大きく異なります。

そして第一世代の星は、水素やヘリウムから元素合成を行い、
誕生からわずか200万年ほどで超新星爆発を起こし重元素を周囲にばらまき、
周囲のガスに第一世代の星の痕跡を残すことになります。

なので、そのガスの中の重元素の割合は大きくなるはずです。

これまでに見つかってきたガス雲の重元素率は高いので、
第一世代より後に作られた星からの重元素が含まれていたことが考えられます。

一方で今回発見したガス雲は、極めて低い重元素率を示しているので、
第一世代の星に由来する重元素だけを含むと想定した数値と一致する、
初めての例になるんですねー

今回発見したガス雲では、炭素とケイ素の割合を計測できました。

でも、その数値は決定的なものとは言えず…
後の世代の星による可能性も残っています。

なので、もっと多くの元素を検出できる、新たなガス雲を発見する必要があります。

それらを調べることによって初めて、
宇宙で最初に誕生した星による独特のパターンを検証することができるんですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ ビッグバン直後の元素から生まれた第一世代星を発見?