宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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ベテルギウスの行く手をはばむ?謎の壁

2013年01月31日 | 宇宙 space
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の赤外線天文衛星“ハーシェル”が、
オリオン座の1等星“ベテルギウス”の周囲に弧状構造をとらえました。







“ペテルギウス”の移動方向に
広がる衝撃波
その左側には、
直線状の壁のような構造も見える





冬のオリオン座の左上(北東)に見える赤い1等星が“ベテルギウス”です。

“ベテルギウス”は、直径がおよそ太陽の1000倍、明るさは10万倍という赤色巨星で、
外層を大量に放出して大きく膨れ上がっていて、やがて超新星爆発を起こす恒星として注目されているんですねー

今回、“ハーシェル”による最新の遠赤外線画像から、
“ベテルギウス”から吹き出す恒星風が、周囲の星間物質に衝突している様子や、
“ベテルギウス”が秒速30キロの速度で移動しているためにできた衝撃波(バウショック)が明らかになっています。

星の移動方向に見られる弧状構造からは、物質を失っていった荒々しい星の歴史が想像できるんですねー
恒星に近い側の層に見られる非対称な構造は、星の外層大気に生じた巨大な対流セルによって、チリに富んだガスが塊となって表面のあちこちから繰り返し放出された名残りとみられています。

弧状構造のさらに先(画像左側)には、興味深い線状の構造が見えています。
以前の理論では、この構造は“ベテルギウス”の進化の早い段階で放出されたものだろうと推測されていたんですねー

でも、最新の画像分析から、これは銀河の磁場に関連した繊維状構造か、
または、“ベテルギウス”によって照らし出されている星間雲の端ではないかと示唆されています。

もし、この棒状構造が“ベテルギウス”と完全に個別のものだとすると…
“ベテルギウス”と弧の動き、および棒状構造との距離を元にした計算では、
もっとも外側の弧は5000年以内に、さらに約1万2500年経ったころには“ベテルギウス”が、この構造に衝突するようです。

火星滞在10年目 火星探査車“オポチュニティ”

2013年01月29日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“マーズ・エクスプロレーション・ローバー・オポチュニティ”が、
1月25日に「火星へ着陸して丸9年」を迎えたんですねー
そして、いよいよ火星滞在10年目が始まります。

NASAは火星表面を移動しながら探査する無人探査車として、
2003年6月と7月に同型の“スピリット”と“オポチュニティ”を打ち上げました。

先に打ち上げられた“スピリット”は、2004年1月3日に火星への軟着陸に成功して、
その3週間後の25日に“オポチュニティ”も火星軟着陸に成功しています。

両探査車は、もともと90日間の活動予定だったんですねー
でも、“スピリット”は通信が出来なくなる2010年3月まで約6年間活動し、
赤道付近に着陸した“オポチュニティ”は未だに活動を続けています。

地球以外の惑星に着陸して、10年もの間活動する探査機は、異例とも言える成功例です。

まぁー 長い間活動して、遠くまで移動できたとしても、科学的な発見やミッションの達成が重要です。
それを考えても、“スピリット”と“オポチュニティ”は良くやったと言えますよね。


“オポチュニティ”は今月、エンデバークレーターを調査していて、着陸記念アティア日に合わせて“ビッチの丘”のパノラマ画像が公開されました。

火星のクレーターに地下水湖の痕跡

2013年01月28日 | 火星の探査
火星クレーターの観測から、かつて地下水湖があったことをうかがわせる新たな証拠が見つかりました。

これは、火星を周回しているNASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”による分光観測によるもので、直径92キロのマクローリンクレーターの底面の岩盤に、水が存在するところで形成される炭酸塩や粘土鉱物が含まれていることが分かりました。






深さ2.2キロにも及ぶ
マクローリンクレーターの底面




外部から、このクレーターに流れ込むような水路の跡がないので、地下から供給される水が溜まって湖になっていたと考えられています。

このクレーターは、数百キロにもおよぶ傾斜地のふもとにあるのですが、地球でもこうした場所に地下水湖ができやすいんですねー
なので、地下からの水の供給は、有力なプロセスと言えます。

“マーズ・リコナサンス・オービター”の観測からは、
これまでにも小天体の衝突で掘り起こされたと見られる岩石が、かつて地下にあった頃におそらく熱水で変質したことが分かっています。

なので、地下の液体がマクローリンクレーターのような、深い窪地の底に浸みだしてきたのかもしれません。
ひょっとすると、地下には生命が存在できる環境があったのかもしれませんね。

紫外線で見つかった小さな銀河

2013年01月27日 | 宇宙 space
2億光年かなたの巨大な銀河。
この銀河の腕の先に、紫外線でした見えない小さな銀河の存在が明らかになりました。
1億3000万年前に起こった、銀河同士の接近の名残りと見られているんですねー





棒渦巻銀河“NGC 6872”とその周辺
左上の先に紫外線で見つかった
矮小銀河ある



上の画像は、南天の“くじゃく座”の方向約2億1200万光年かなたにある、棒渦巻銀河“NGC 6872”です。
そして、そのすぐ上には小型の銀河“IC 4970”も見えます。

NASAの衛星“GALEX”による紫外線観測データから、
“NGC 6872”の渦状腕の先端に、紫外線でしか見えない小さな銀河(左上の黄色枠)があることが初めて分かりました。

この銀河を含めると、“NGC 6872”は端から端まで52万2000光年もの広がりを持つ、巨大な渦巻銀河ということになります。
これは、天の川銀河の5倍以上という大きさなんですねー

発見された銀河は、次々と生れる恒星が輝く北東の部分にあり、
銀河同士が重力的に干渉し合う天体系に見られる、潮汐矮小銀河と考えられています。
紫外線で見ると“NGC 6872”の他のどの部分よりも明るく、
生れて2億年にも満たない高温の幼い星が、多く存在していることが分かります。

“GALEX”の他にも、地上の望遠鏡や天文衛星の観測データから、
渦状腕の恒星の年齢分布が調べられました。
すると、先端ほど恒星が新しく生れ、銀河の中心に近づくほど古い星が存在することが分かったんですねー
そして、この結果は、もう1つの渦状腕である南西部でも同じでした。

銀河同士が近づいたり、ぶつかったりすると銀河内の星形成が誘発されます。
この“NGC 6872”も、“IC 4970”との作用によって、腕の先端で星が活発に生れるようになったものと考えられます。

“NGC 6872”と“IC 4970”については、
2007年に別の研究チームが、1億3000万年前に再接近した様子をコンピュータシミュレーションで再現しています。
今回の観測成果は、そのシミュレーションと一致した結果となりました。

一方、“NGC 6872”の中心には、2万6000光年にも及ぶ棒状構造があり、しばらく星形成が行われた形跡がありません。
この構造は、数十億年以上前に作られたようで、ここに存在するのは銀河同士の接近以前に作られた古い恒星ばかりなんですねー

他の銀河と、作用した銀河の構造や力学を調べると、
宇宙の歴史において銀河にどのようなことが起こったのかが分かってきます。
このことは、宇宙がまだ若かった頃の銀河の姿を探ることにもつながるんですねー

着陸以来の大きな挑戦 “火星でドリル採掘”

2013年01月26日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“キュリオシティ”が、初めてサンプルのドリル採掘を行います。
対象は、石膏(硫酸カルシウム)と思われる、予想外の岩脈が入った岩盤なんですねー





“キュリオシティ”が
初めてのドリル採掘を
実施する予定の場所




“キュリオシティ”は現在、科学的調査の対象物の宝庫にいるそうです。

そこはゲイル・クレーター内のイエローナイフ湾と呼ばれる最も低い地点で、
多様な鉱物で満たされているんですねー
過去に水が存在しなければ、このような場所はできなかったと考えられています。

最初の計画では“キュリオシティ”は、ゲイル・クレーターの中央にあるシャープ山に向かい、
その途中で、着陸地点から500メートルほど離れた、この窪地に立ち寄るのは短時間の予定でした。

でも、ここで多くの新発見があったんですねー
なので、シャープ山に向かうのは、数か月後になるようです。

ドリル採掘は1月中に始まる見通しで、
小さめの敷物ほどの大きさの岩盤に、深さ約5センチの穴を5つ開けます。
そして、そこから出てきた鉱物の粉を、探査車搭載の2つの化学検査器で分析します。

ドリルは探査車が搭載している中で、最も複雑な装置なんですねー
ほかの装置は、すでに使われているのですが、未使用の機器はドリルが最後になりますよ。
なので、ドリルの操作は機械的な面で、着陸以来の大きな挑戦になるようです。