宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

さらに詳細、広範囲の地図作成へ “スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”

2014年08月31日 | 宇宙 space
14年間にわたる史上最大の宇宙地図…

この地図作成を進めていた“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”が、
今回、新開発の機器を導入して、さらに詳細、広範囲の観測を行う新たな段階に入ったんですねー
新開発の光ファイバー結束技術を活用した“MaNGA”プロジェクトでは、
1つの銀河内の複数個所(画像右下)の分光観測を行う。

今回始まった観測プロジェクトのひとつ、
“MaNGA”(アパッチポイント天文台近傍銀河地図作成)では、
スローン財団2.5メートル望遠鏡に、
新開発の結束光ファイバーを用いた観測装置を組み合わせて、
1つの銀河の中の最大127点を、同時に分光観測することが可能になっています。

従来のほとんどの観測では、
1つの銀河につき、1点の分光観測結果が得られるだけだったので、
大きな進歩になるんですねー

銀河の中の星とガスの分布図を作ることで、
何十億年もかけて形成された、銀河の成長の仕組みも解明していくことになります。

“MaNGA”以外のプロジェクトもスタートしていて、
“APOGEE-2”と呼ばれるプロジェクトでは、
スローン財団望遠鏡に南米チリの望遠鏡が加わり、
これまで観測できなかった領域を含む、天の川銀河全体の星の運動を詳しく調べていきます。
“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”では、
これまで宇宙誕生から20億~30億年後、70億年後~現在までの範囲の
地図作成が進められてきた。
“eBOSS”プロジェクトでは、30億~70億年後の銀河や、
クエーサーの分布図を作成する。
これは宇宙が加速的な膨張を始めた時期にあたる。

“eBOSS”プロジェクトでは、
宇宙誕生30億年後における宇宙膨張のようすを詳細に測定し、
現代の物理学において最大の謎のひとつである“ダークエネルギー”の正体に迫るんですねー

世界各地の40以上の研究機関から、
200名以上の研究者が参加する“スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”。

このプロジェクトにより、
私たちが知る宇宙、銀河、天の川銀河の姿が、
今後も描きかえられていくことが期待されます。

ガス雲の動きから分かった、“宇宙竜巻”の形成過程

2014年08月30日 | 宇宙 space
ブラックホールが発生源とみられる謎の天体“宇宙竜巻”の観測から、
周辺の分子雲の動きが詳しく分かりました。

分子雲の衝突の影響で、ブラックホールへ流れ込む物質の量が一時的に増加し、
それにともなって竜巻が発生したと推測できるんですねー
“宇宙竜巻”の観測画像。
分子雲の運動などが可視化されている。

さそり座の方向約4万光年彼方にある“宇宙竜巻”は、
らせん状の特異な形をした電波天体です。

過去の研究から、
回転ブラックホールの両極方向に噴出したジェットによって、
形成されたとする説が提唱されています。

でも“宇宙竜巻”を作り出したとされる、
ブラックホールのジェット噴出などの活動が見られず、
どのようにしてブラックホールが、
一時的にジェットを噴出し“宇宙竜巻”を形成したのかは、
分かっていませんでした。

なので、“宇宙竜巻”の正体についても議論は続いているんですねー

今回の研究では、
電波観測で過去に検出された分子雲と、
もうひとつ新たに見つかった分子雲の運動や速度から、
2つの分子雲が過去に激しい衝突を起こしたとみられることが分かりました。
“宇宙竜巻”が形成される仕組み。
(左)分子雲同士の衝突により、
一時的に大量の物質がブラックホールに流れ込んで双極ジェットが発生。
(右)双極ジェットと分子雲が衝突して双極プラズマが発生。

また、分子雲中に衝撃波が発生しているようすも観測されています。

研究チームでは、これらの観測から、
分子雲の衝突によって発生した衝撃波の影響で、
ブラックホールへ流れ込む物質の量が一時的に増加し、
ブラックホールから双極ジェットが発生して、
“宇宙竜巻”が形成されたと考えているようです。

無人補給船が大気圏再突入でバラバラになる様子

2014年08月29日 | 宇宙 space
ATV-5(ジョルジュ・ルメートル)
国際宇宙ステーションに物資を届けた、
ヨーロッパ宇宙機関の無人補給船
“ATV-5(ジョルジュ・ルメートル)”。

この後、約6か月係留され、
国際宇宙ステーションで発生した廃棄物を積み込み、地球の大気圏に再突入して、ミッションを完了することになります。

ただ今回は、大気圏に再突入してバラバラに燃え尽きる様子を、リアルタイムで撮影・送信するんですねー

大気圏再突入時に使われるのは“ATV破壊カメラ”といい、
赤外線カメラと衛星通信カプセルの2つで構成されています。

衛星通信カプセルは、
航空機に搭載されるフライトレコーダーのようなもので、
ATVがバラバラになる様子をデータレコーダーに記録し、
イリジウム通信衛星を経由して送信することになります。

同じようなカメラは、
日本の無人補給船“こうのとり”にも搭載されていて、
2012年から“こうのとり”が再突入して燃え尽きていく様子を、
内部から撮影しデータを蓄積しているんですねー

“ATV破壊カメラ”の場合、
衛星通信カプセルは、1500度の高熱に耐えれるのが特長で、
高度やカプセルの姿勢(向き)に関わらず、
データを送信することができます。
大気圏に再突入するATV(イメージ図)

大気圏再突入に伴う船体の崩壊は、高度80~70キロ付近で起き、
衛星通信カプセルは、秒速6~7キロの高速で落下することになります。

宇宙機が大気圏に再突入する際には、
帯電したガスが機体からガスバーナーのように炎を吹き上げ、
“ブラックアウト効果”と呼ばれる状態が起きます。

この状態を克服するために“ATV破壊カメラ”では、
カメラと通信システムを、分離した構造にしているんですねー

赤外線カメラは“ATV”の船体に取り付けられ、
船体と共に燃え尽きます。

一方で、セラミック製の耐熱材で覆われた衛星通信カプセルは、
カメラから受信した映像を“ATV”船体が崩壊している最中から、
リアルタイムでイリジウム衛星にデータ送信します。

専用のアンテナを備えた衛星通信カプセルにより、
大気圏再突入の「最後の20秒間」が記録できると期待されているんですねー

雨を観測し続け17年… 長寿の衛星は引き継ぎを終えて運用終了へ

2014年08月28日 | 地球の観測
NASA/JAXA共同の熱帯降雨観測衛星“TRMM(トリム)”の推進剤が切れたようです。

この推進剤は軌道を維持するためのものなので、
“TRMM”は高度402キロの軌道を維持できなくなり、
降下を始めることになるんですねー
“TRMM”は1997年12月に打ち上げられた、NASAとJAXA(NASDA)共同開発の地球観測衛星です。

南北緯度35度までの熱帯を中心とした地域で、雨を降らせる雲の厚さを観測することができる、
降水レーダー“PR(日本開発)”や、
マイクロ波放射計(アメリカ開発)を搭載し、台風やハリケーンなどの観測を行ってきました。

2005年には北米に大きな被害をもたらした、
ハリケーン“カトリーナ”の観測も行っていたんですねー

17年にわたる長期の運用期間から得られたデータは、
地球全体の降水の仕組み解明に大きく貢献してきました。

そして2014年2月には、NASA・JAXA共同開発の後継機“GPM”が、
種子島宇宙センターから打ち上げられることに…
“GPM”では、南北65度までの広い範囲で降雨を観測できるようになります。

さらに、日本開発の二周波降水レーダー“DPR”は、
2種類の周波数を使い分けて、
より細かい雨粒や雪の観測も可能になっています。

ただ“GPM”打ち上げ時には、
“TRMM”の運用期間は、あと2年程度あると予測されていたんですねー

でも、2014年7月8日にNASAの“TRMM”運用チームが、
推進剤タンクの圧力計の数値が、推進剤切れを示したことを発表することに…

今後は、現在の運用高度である402キロの軌道を、維持することができなくなり、
すでに“TRMM”は高度402キロから、下方へ降下を始めているようです。

少量の推進剤が、まだ残っているのですが、
これはスペースデブリとの衝突を回避するために温存し、
衛星が安全に降下できるようにするそうです。

“TRMM”の観測は、高度335キロまで継続される予定で、
このまま正常に推移すれば、
2016年の2月と予測される大気圏再突入の前に運用が終了になるんですねー

ただ、NASA開発のマイクロ波観測装置と雷観測装置は、
完全な降下まで運用を継続するそうです。


2004年にNASAは、“TRMM”の運用を予算面の問題から、
一度は終了を宣言したことがあります。

でもこの時は、気候や気象を研究する日米を始め多くの科学者が、
反対を表明し、運用継続が決定したという経緯があります。

今年7月の台風8号を始め、気象現象の解明に活躍し続けている“TRMM”。

当初予定の3年間という運用期間を大幅に超え、
後継衛星“GPM”にしっかりと活動を引き継いで、
軌道を離れていくことになるんですねー

探査機の採取サンプルから、太陽系外からの微粒子を発見?

2014年08月27日 | 宇宙 space
NASAの探査機“スターダスト”が地球に持ち帰ったサンプル採取器から、
太陽系外からのものとみられる7個の微粒子が見つかりました。
星間チリとみられる微粒子のX線画像

これらはサイズにより組成や構造に違いが見られ、
異なる歴史を経てきたようなんですねー
比較的大きいサイズのものは、雪のようにふわふわとしたものが多いそうです。

恒星間空間からやってきたチリを
星間チリと呼びます。

でも今回見つかった粒子を星間チリと断定するには、酸素同位体比の測定など、さらなる調査が必要なようです。


サンプル採取器のエアロゲルに
飛び込んできた微粒子の痕跡(赤)
ただ3つの比較的大きな微粒子は硫黄化合物を含むのですが、これは星間チリには、ありえないという意見もあります。

でも、もし星間チリであることが確定すれば、
史上初のサンプルになるんだとか…

しかも、採取サンプルから粒子を探す作業はまだ進行中で、まだまだ見つかるかもしれません。



星間チリは年老いた巨星の活動や、数百万年前の超新星爆発により、
生成されると考えられています。

今回の発見はその由来や進化を、
さらに詳しく探る有力な手がかりになると期待されています。
探査機“スターダスト”。
うちわのような形のサンプル採取器表面の
エアロゲルで微粒子をキャッチする。

1999年に打ち上げられた“スターダスト”は、2004年にウィルド彗星のコマに突入し、
史上初めて彗星物質のサンプル採取を行いました。

星間チリの採取は、2000年と2002年に行われ、
2006年の運用終了前には、採取器が収められたカプセルを地球に投下。

回収された採取器のサンプル分析は、今も続けられているんですねー
2011年3月、運用終了前に最後の燃料噴射をしている
スターダスト(イメージ図)