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火星を居住可能にする? 構想中の“人工磁気フィールド”は厚い大気や海を復活させるかも

2017年04月25日 | 火星の探査

地球で私たちが生活することができ、
太陽系の他の惑星への移住を難しくしている理由のひとつに“磁気圏”があります。

それは、地球のようにある程度の磁気を帯びていないと、
宇宙から降り注ぐ太陽風を防ぐことができないからです。

そこでNASAは、火星に人工磁気フィールドを作って、
居住可能な環境に作り変えることを構想しています。
  人工磁気フィールドの生成には、
  1~2テスラほどの磁束密度が必要だとされています。

この構想では、火星のラグランジュL1地点に強力な磁気双極子を設置し、
太陽から吹き付ける粒子を、まるで盾のように防ぐことになります。

そして、火星の大気が増える環境を作り出すんですねー
  過去には酸素がたくさんあった!? 火星の大気はどう変化してきたのか
    

大気により火星が暖かくなると地下の氷が溶け出し、
海を復活させるかもしれません。
火星では大気によって水が維持される

かつての火星は、地球のように十分な磁気圏を持っていたと考えられています。

この磁気圏により、火星には大気や海があったようなんですが、
約42億年前の磁気圏の消失と共に宇宙線によって大気が削り取られ、
現在のような赤い乾ききった惑星になったようです。
  太陽風が火星を不毛な環境にした? 大気喪失メカニズムによる気候変動
    

もちろん、この計画で火星を住み良い環境にするには、
長い年月が必要なことが予測されます。

現在、NASAやスペースXなど進めている有人火星探査やマーズ・ワン社の移住計画など、
火星は少しずつですが身近な存在になってきてはいます。
  民間企業のスペースX社が火星探査を2018年に実施へ!
    

なので、将来的には人工磁気フィールドが、
火星への移住の解決策になるのかもしれません。

まぁー この計画はまだ想像的なアイデアなんですがね…


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生命に必要な3要素の探査へ! NASAのエウロパ探査計画“エウロパ・クリッパー”

2017年04月23日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
NASAが計画している木星の衛星エウロパ探査。
この探査ミッションの名称が“エウロパ・クリッパー”に決定したそうです。
探査機“ガリレオ”が撮影したエウロパ


最優先のミッション

木星の衛星エウロパは、これまで探査の最優先ターゲットと考えられてきました。

それは、エウロパの氷の殻の下には、
塩分を含んだ液体の水からなる海が存在するからです。

なので、NASAではエウロパを探査するため、
2020年代に探査機“エウロパ・クリッパー”を打ち上げる予定で、
もちろん探査の目的は、液体の水、化学物質、十分なエネルギー源の調査になります。

これらの生命に必要な3つの要素が、
エウロパに存在するかどうかを決定することにあるんですねー
  地球外生命の探査へ! NASAがエウロパ探査のコンセプトを発表
    

高速で宇宙を渡る探査機

探査機の“クリッパー”という名前は、
高速で海を渡る19世紀の大型帆船からきています。

3本のマストを備えた流線形の高速大型帆船は、その優美さと速さで有名で、
大西洋を行き来してアメリカとヨーロッパの間で様々な物品を送っていました。

その高速大型帆船の偉大なる伝統を受け継ぐ“エウロパ・クリッパー”は、
エウロパに2週間ごとに接近して帆走するように探査することになります。

初期ミッションで予定されているのは、計40~45回のフライバイ(接近通過)探査。

探査では衛星の凍った表面を高解像度で撮影したり、
衛星の組成や内部構造、氷の殻を調べたりするそうです。

ただ、“エウロパ・クリッパー”は木星の強い放射にさらされるので、
エウロパ付近を短時間で通過することになります。

なので、速度を上げてエウロパの上空を通過しながら、
膨大な量のデータを集めることになるそうです。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測

一方、ハッブル宇宙望遠鏡による新たな成果も報告されています。

2014年にエウロパで観測された噴出らしい現象が、
2016年にも同じ場所でとらえられたんですねー

2014年に観測されたものは高さが約50キロだったのに対し、
2016年のものはエウロパの上空100キロにまで達していました。
2014年と2016年にハッブルがとらえたエウロパの合成画像。エウロパが木星の前を通過する際にUV光で撮影された画像には、プルームのシルエットが見られる。

噴出が見られた場所は暖かい領域に位置していて、
ここには1990年代終わりに木星探査機“ガリレオ”が発見した、
割れ目らしきものが存在しています。

この噴出はエンケラドスと同様に、
衛星内部からの水の噴出の証拠ではないかと推測されています。

もし噴出と暖かい場所に関係があるならば、
氷の地殻の下から噴出した水が、周囲の地表を暖めているのかもしれません。
  木星の衛星エウロパ、表面の筋模様は塩でできている?
    

あるいは、噴出した水が細かい霧のように地表に降ることで、地表の粒子の構造に変化が生じ、
熱をより長く保持できるようになって周囲との温度差が生じているとも考えられます。
ガリレオがとらえたエウロパの画像。ハッブルが観測したプルームは緑色の楕円形内にあり、この地域はエウロパ表面の暖かい領域と一致している。

土星探査機“カッシーニ”は、
エンケラドス表面にある割れ目から噴出している水蒸気プルーム(水柱)で、
生命のエネルギー源となりうる水素分子を検出するという大きな成果を上げています。
  生命存在の可能性が高くなった? 衛星エンケラドスで水素分子を検出!
    

“エウロパ・クリッパー”は、どんな発見をしてくれるのでしょうか。

探査によりで噴出の正体や成分、地下海の活動などを調査していけば、
エウロパにも、生命に必要な3つの要素が存在することが分かってくるのかもしれませんね。


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2つの巨大惑星が逆向きに公転している惑星系がある!?

2017年04月21日 | 宇宙 space
7年半に及ぶ観測から、巨星を周回する2つの巨大惑星が発見されました。

ただ、今回発見された巨大惑星は、
惑星同士の間隔が狭いので、安定した軌道が保ちにくいはずなんですねー

でも、現に惑星系が発見されているので、
何らかの方法で安定な軌道を実現していることになります。

いったい何が影響しているのでしょうか。


惑星同士の間隔

今回の研究では、3つの天体望遠鏡で約く7年半にわたって行われた観測から、
おおいぬ座の巨星“HD 47366”に、2つの系外惑星が存在することを突き止めています。

“HD 47366”は、おおいぬ座の方向260光年の距離にある実視等級6.1等のK1型巨星で、質量は太陽の約1.8倍、半径は太陽の約7倍。

発見された2つの巨大惑星の質量は、いずれも木星の2倍弱。

それぞれ中心星の周りを約363日と約685日で回っているので、
公転周期の比は1.88となり、一般的な複数巨大惑星系に比べて、
惑星間の間隔が狭いのが特徴でした。

このように惑星間の間隔が狭いと、お互いの重力によって軌道が短期間で乱され、
安定した軌道を保ちにくくなるんですねー

惑星間の相互重力を考慮して軌道進化を計算してみても、
“HD 47366”系の場合、観測データを最もよく再現する軌道は、
不安定だと分かります。

でも、現に惑星系が発見されたということは、
安定な軌道が何らかの方法で実現しているということになりますよね。


安定な軌道配置を実現している何か

たとえば、2惑星が規則的・周期的に重力を及ぼし合うことによって、
公転周期が簡単な整数比(今回の場合は2対1)になる“平均運動共鳴”が起こると、
安定な軌道配置が存在します。

でも、このとき予想される中心星の動きは観測データと大きく異なっていました。

また、両惑星がほぼ円軌道で周回していれば安定な軌道配置が存在するのですが、
これも観測結果からやや外れることに…

上記以外に考えられる可能性は、
2つの惑星がお互いに逆向きに公転する“相互逆行”の状態にあるというものでした。


お互いに逆向きに公転

今回の観測データでは、
中心星の視線方向の動き(地球に近づくか遠ざかるか)しか分かっていません。

10年足らずの観測では、惑星がどちら向きに公転しているかは、
ほとんど区別できないんですねー

そこで、“相互逆行”を仮定して軌道進化を計算してみると、
軌道は100万年以上も安定することが分かります。
  逆行惑星の作られかた
    

惑星が相互に逆行して公転していると、軌道が接近していても短時間ですれ違うので、
同じ方向の公転“順行”に比べて軌道が安定しやすくなります。

理論曲線に相当する2惑星の軌道の形(赤い実線)。
左が順行(不安定)、右が相互逆行(安定)の場合(外側の惑星の軌道が左右反転した形になっている)。
+印は中心星の位置、破線は比較のため示した太陽系の地球と火星の軌道。

ただ、これまでに“相互逆行”が確認された惑星系は存在していません。

なので、“HD 47366”系が本当に“相互逆行”が存在する惑星系なのか、
興味が出てきますよね。

研究グループでは、さらに長期間の観測を続けることによって、
この疑問を明らかにするそうです。


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生命存在の可能性が高くなった? 衛星エンケラドスで水素分子を検出!

2017年04月19日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
厚い氷の層に覆われた海を持つ小型の衛星エンケラドス。

NASAによると、エンケラドス表面にある割れ目から噴出している水蒸気プルーム(水柱)で、
生命のエネルギー源となりうる水素分子を検出したそうです。
“カッシーニ”が撮影したエンケラドス。表面を覆う氷には“タイガーストライプ”と呼ばれる長いひび割れが走っている。プルーム(氷柱)は、このひび割れから噴き出している。


海底の熱水活動

2015年10月、土星探査機“カッシーニ”が、
エンケラドスの南極近くに見られるガスや氷の噴出(プルーム)の中を飛行して、
成分を調査しました。(この噴出は2005年に“カッシーニ”が初めて見つけたものです。)
  エンケラドスの地下には衛星全体に広がる海がある!?
    

衛星エンケラドスから噴出した水蒸気プルームの中を飛行する探査機“カッシーニ”。

分析の結果、噴出物の約98%が水、1%が水素、
残りが二酸化炭素、メタン、アンモニアなどであることが明らかになります。

これらの成分の中で、特に重要なのが水素ガスの検出になります。

これまでの研究で、
エンケラドスの海底では熱水活動が起こっていると考えられてきました。

今回の結果は、これを独立に裏付けるもので、海水と岩石との反応で水素が生じ、
それが海水中に広がって地表から噴出したものが検出されたもののようです。


生命のエネルギー源を発見

さらに、この発見を重要なものにしているのが、
水素ガスが生命のエネルギー源になる可能性があるという点です。

地球上では、熱水化学反応によって、
太陽光が届かない深さの海底にある熱水噴出孔に、
微生物が生息できる環境が形成されています。

もし、エンケラドスの海に微生物が存在しているなら、
大量の水素と海中に溶けている二酸化炭素とを結合させることによって、
エネルギーを摂取していると考えることができるからです。

私たちの知る生命にとっての最優先必須材料は、
 液体の水
 代謝のためのエネルギー源
 炭素、水素、窒素、酸素などの化学物質
になります。

小さな氷の衛星エンケラドスには、
この3条件すべてがほぼ揃っていることが“カッシーニ”の探査から示されたんですねー
土星と、その最も内側の環の間に入ろうとする探査機“カッシーニ”(イメージ図)

燃料切れが迫っている“カッシーニ”は現在、
NASAがグランドフィナーレと呼ぶミッションの最終段階にあり、
土星とその環の間にある幅2400キロの隙間を飛行しています。
  探査機“カッシーニ”が最終ミッションを開始! 今度は土星の環を通過
    
“カッシーニ”にとって今回の発見は、
探査計画の中で最高の業績になるのかもしれませんね。


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  地球外生命の探査へ! NASAがエウロパ探査のコンセプトを発表
    

超大質量ブラックホールのそばに新種の分子ガス雲を発見

2017年04月18日 | ブラックホール
銀河の中心にある超大質量ブラックホール。

このブラックホールの直ぐそばにある、
分子ガス雲の質量と星生成率を調べてみて見つけたもの。

それは、これまでの研究で欠けていた部分を埋める、
新種のガス雲だったそうです。


活動銀河核

天の川銀河の近傍(数億光年ほど)に存在する銀河のうち、
1割程度は、ひときわ明るく見える中心部分“活動銀河核”を持っています。
  星、星間チリ、星間ガスといった通常の銀河の構成要素とは別の部分から、
  エネルギーの大半が放出されている特殊な銀河。このエネルギーは、
  活動銀河の種類によって若干異なるが、電波、赤外線、紫外線、X線、γ線など、
  電磁波のほぼ全ての波長域で放出されている。このエネルギーの大半を、
  銀河の中心1%程度のコンパクトな領域から放出していて、この部分を活動銀河核と呼ぶ。

  “活動銀河核”に違ったタイプ
    

これらの銀河の中心では、
太陽の100万倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールに、
ガスやチリが降り積もり、その時に解放される重力エネルギーが、
可視光線などの電磁波として放射されます。

今回の研究では、
こうした“活動銀河核”の周辺に存在するガスやチリの性質、
とくにそこからどの程度の割合で星が誕生すのかを解明するため、
アルマ望遠鏡による電波観測データを解析しています。

研究チームが調べたのは、
くじら座の方向約5000万光年彼方にある“活動銀河核”を持つ渦巻銀河“M77”について、
銀河中心からわずか50光年の至近距離に位置する分子ガス雲の性質でした。

そして明らかになったのが、
この分子ガス雲は太陽の約20万倍の質量を持ち、活発に星を生んでいるのですが、
その質量と星生成率は、これまでの研究で「ギャップ」となっていた部分を、
埋めるものだということでした。
“活動銀河核”を持つ渦巻銀河“M77”(左下)。



分子ガス雲と星生成率の間にある法則

従来の研究で、分子ガス雲の質量と星生成率との間には、
良い相関があることが知られていました。

でも、“天の川銀河の分子ガス雲”と、
“活発に星を生んでいる遠方の銀河の分子ガス雲”の間には、
明瞭なギャップがあり、その部分がどうなっているのかは謎だったんですねー

そして、今回観測対象になった、
“M77”の“活動銀河核”の直ぐそばにある分子ガス雲が、
まさにそのギャップを埋めるものだったというわけです。
分子ガス雲の質量と星生成率との相関関係。
天の川銀河の中にある分子ガス雲と、活発に星を生んでいる遠方の銀河との間には同じ関係が見られ、その間にある“M77”の分子ガス雲(☆マーク)も同じ関係にフィットしている。

当初、活動銀河核の周辺にある分子ガス雲は、
超大質量ブラックホールの重力場や強烈な電磁波、ジェットによる影響を受けているはずなので、
天の川銀河にある普通の分子ガス雲とは性質が違っていると考えられていました。
  星の形成を妨げている? 超大質量ブラックホールから吹く風
    

でも予想に反して明らかになったのは、
超大質量ブラックホールの直ぐそばという過酷な環境においても、
今まで知られていた法則にしたがって星が生まれていたこと。
  星の誕生を促進させていたのは、超大質量ブラックホールのジェットだった!?
    

このことは、分子ガス雲と星生成率の間にある法則が、
普遍的であることを示す結果となりました。

今回の発見により、
宇宙における星生成の原因を統一的に理解する研究への道が拓けたんですねー

さらに、他の活動銀河核の周辺にある分子ガス雲を系統的に研究することで、
活動銀河核とその母銀河の進化に関する研究も進展することが期待されます。


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