宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

空とぶ天文台がとらえた生まれたての巨星

2013年05月31日 | 宇宙 space
太陽のような恒星は、チリとガスの雲の凝縮というシンプルなプロセスで生れます。
でも一方で、若い星が集まる活発な環境の中で生れる大質量星は、複雑なプロセスでできると考えられてきたんですねー

こうした生まれたての星のひとつが“G35”です。
“G35”は、“わし座”の方向8000光年彼方にある大質量星で、太陽の20倍も重い恒星です。

アメリカのフロリダ大学では、
NASAの成層圏赤外線天文台“SOFIA”に搭載された特殊な赤外線カメラで、
このまぶしい原始星“G35”のそばにある、かすかな領域をつぶさにとらえたんですねー





2種類の波長の中間赤外線で
とらえた“G35”











“G35”のコンピュータ・モデル
地球側に向いた上のジェットが
下のジェットより明るく見えている




画像1枚目は、“SOFIA”による中間赤外線像。
2枚目は、それを単純に模式化したコンピュータ・モデルです。
原始星が周囲の星間雲を内側から熱し、円錐形のガスのジェットを両極方向に放出する様子が分かります。

これらの観測で分かったことが、“G35”の構造は思ったよりもずっとシンプルだということです。

これほどの大質量星でも、太陽と同程度の星と同じようなプロセスで形成されるんですね。

ソユーズ打ち上げから5時間39分で宇宙ステーションへ

2013年05月30日 | 宇宙 space
ソユーズ宇宙線“TMA-09M”が、日本時間の5月29日午前5時31分に、カザフスタン共和国ハイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。

いつもと違ったのは、ソユーズが地球を4周回ったあとに約400キロ上空のISSに到着したこと。
打ち上げからわずか5時間39分後にドッキングを完了、午後1時14分にはクルーがISSに入ったんですねー





ISSに接近する
ソユーズ宇宙線



今回は、今年3月29日に続く2回目の友人ショートカット飛行で、
これまで、約2日間かかっていたISSまでの飛行を、
打ち上げのタイミングと、軌道への投入精度を完璧にすることで、
約6時間で行う運用プロセスが採用されています。

ソユーズ宇宙線の船内は狭いので、ISSに到着するまでの2日間に、宇宙飛行士は相当なストレスを受けることになります。
でも、今回のように約6時間で到着できれば、ストレスも大きく軽減できますね。

2つの銀河の間に見つかった中性水素ガスのかたまり

2013年05月29日 | 宇宙 space
アメリカの国立電波天文台のグリーンバンク望遠鏡を用いた観測で、
アンドロメダ座大銀河“M31”と、さんかく座の銀河“M33”との間に、大規模な中性水素ガスのかたまりが見つかりました。
2つの銀河の間に見つかった水素ガスのかたまり(赤い囲み)

“M31”と“M33”は、いずれも美しい渦巻銀河で、
天の川銀河から約250万光年の距離にあり、お互いの距離も近いんですねー

2つの銀河空間には、中性水素ガスが存在するらしいことは以前から分かっていたのですが、
グリーンバンク望遠鏡の高解像度観測で、今回初めて詳細が明らかになりました。

昨年の予備観測からは、2つの銀河が数十億年前に接近した際の、重力の相互作用で引きずり出されたガスと思われていました。

でも、細長い形状ではなく、それぞれが矮小銀河に匹敵するほど、大質量の濃いかたまりだったんですねー
なので、銀河とは別個のもののようです。

銀河間空間には、見えない高温の電離ガスが広がっていると考えられ、
このガスの中にひそむダークマターのフィラメントが、
芯のような役割を果たし、重力で集まったガスのかたまりができたようです。

今回見つかったものは、まだほんの一部かもしれません。
でも、観測を続けることで、さらに広い範囲でどれだけの水素ガスが存在するのかが知ることができます。

そして、こうした中性水素ガスが銀河に取り込まれ、星を作られるときの材料になっている場面に出くわすかもしれませんね。

天文衛星“ハーシェル”がとらえた天の川銀河の再中央部

2013年05月28日 | 宇宙 space
天の川銀河の中心には、太陽の400万個分もの超巨大質量ブラックホールがあり、
その周辺の環境を探る観測や研究が進められています。

先ごろ科学観測を終えた欧州の天文衛星“ハーシェル”は、銀河面のチリにさえぎられることなく観測が行える赤外線天文衛星です。

この“ハーシェル”が、これまでに天の川銀河の中心にシアン化水素、水蒸気、一酸化炭素といったバラエティに富んだ分子の存在をとらえています。
こうした兆候から、ブラックホール周辺のガスの性質を知ることができるんですねー

スペイン宇宙生物学センターでは“ハーシェル”を用いて、天の川銀河の中心から数光年の範囲を詳細にとらえました。
すると、ガスの希薄な中心の空洞と、その周囲の濃い分子ガスの円盤を区別して見ることができたんですねー これは、遠赤外線観測では初めてのことです。






銀河とその中心部の様子
(イメージ図)



通常、星間ガスの温度はマイナス200度以下しかありません。
でも、中心部のガスは摂氏1000度以上もの高温になっていることが分かりました。

近くの大質量星の集まりから放射される紫外線だけでは、これほどの温度は説明できません。
なので、ガス雲同士の衝突、あるいは恒星や原始星からの流出物で生じた、強く磁化されたガスの衝撃が原因だと考えられています。

中心部のガスは、さらに内側に流れ込み、じきにブラックホールに吸い込まれるものと思われます。
そして、ブラックホールに落ち込む間際にガスは、超高温に加熱され高エネルギーのX線やガンマ線を放射することになります。

こうした放射は、まだ見ることができません。
でも、“ハーシェル”が観測したガスよりも、さらにブラックホールの近くに小さなガス雲があります。
この小さなガス雲が、今年中にもブラックホールに飲み込まれ、その放射がとらえられるしれないと注目されているんですねー

天の川銀河の中心はとても複雑な領域なんですが、今回の“ハーシェル”の観測が、
中心ブラックホール周囲の環境を探る重要なステップになるようです。

合体銀河から広がる700万度の高温ガス雲

2013年05月27日 | 宇宙 space
へびつかい座の方向約3億3000万光年彼方にある銀河“NGC 6240”は、天の川銀河と同等サイズの2つの銀河が衝突合体しつつある現場です。






“NGC 6240”の可視光画像
(ハッブル宇宙望遠鏡)





ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームでは、
X線天文衛星“チャンドラ”を用いて、この衝突銀河を取り巻く巨大なガス雲をとらえました。






X線天文衛星“チャンドラ”がとらえた
高温ガス雲





すると、天の川銀河直径の約3倍にわたって広がるガス雲の総重量が、
太陽の100億倍もあり、700万度以上という高温だということが分かったんですねー

“NGC 6240”では、銀河内のガスも衝突により激しくかき混ぜられていて、
少なくとも2億年前から、激しい星の生成(スターバースト)が続いているようです。

こうしたスターバーストでは、ひじょうに重い星がその短い一生を終えて、超新星爆発とともに次々と最後をむかえます。
超新星爆発のラッシュによって、酸素やネオン、マグネシウムやケイ素といった重元素がまき散らされて、周囲に広がっていると考えられています。

今後、この天体がたどる運命として、もっとも可能性が高いのは、
2つの渦巻銀河が数百万年かけて合体し、新しい楕円銀河ができあがるというシナリオです。

ただし現存するガスのうち、どのくらいの量が新しい銀河にとりこまれたり、宇宙空間にまき散らされるのかは分かりません。

銀河同士の衝突は、銀河が今よりも密集していた初期宇宙では頻繁に起こっていたんですねー
その壮大な現象について、比較的近くにある“NGC 6240”を観測すれば、多くのことを教えてくれそうです。