鶴岡市にある慶応大学先端生命科学研究所発のベンチャー企業、スパイバー社が人工クモ糸繊維の量産化を可能にしたということが、同繊維で作られた青いドレスの映像とともに全国的ニュースになりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000571-yamagata-l06
もとより、ドレスなどは副産物であり、クモ糸の軽量・強靱な性質を活かした航空機や自動車などへの活用が研究の本命ですが、量産化=商品化ということではありません。
この研究・開発は、科学の偉大な可能性を感じさせ、社会の発展に大きく寄与する展望を秘めたすばらしいものです。
「それ自体が産業として成り立つかどうか」はさておいて、人類の進歩に貢献するものに違いありません。
しかしそれは、本来国が支援しておこなわれるべきものであり、鶴岡市が多額の支援をおこなってきたことの是非が問われています。
地方自治体としては、「地域に費用に見合った成果がもたらされるかどうか」で、支援を考えなければなりません。
ところが、県と市からそれぞれ3億5千万円、その他に積み立てている基金から1億3千万円程度、毎年投入されています。研究所そのものの他に、産業支援センターに投入されたお金も合わせると、この10年余りでざっと60億円を超える市のお金がつぎ込まれたことになります。
10年前に当時の市長は、「これからはバイオ産業の時代、この研究所が来たからには、40社の会社が出来、千人の雇用が生まれる。鶴岡の未来はバラ色だ!」と叫びました。
あれから10年。
現在鶴岡にあるのは、2社のベンチャー企業と、研究所と関連企業などで約240人ほどの雇用だけです。
高校生が研究に参加するなどの有用な事業もありますが、市が市民に説明してきたのは、あくまで「産業と雇用」であり、そこで投じた費用に応じた成果がなければなりません。
「お金には換算できない研究にも国は支援すべき」
「お金にならないことに地方自治体が支出すべきではない」
「見通しの不明確なものにお金を出してはならない」
「多額を要する事業ほど、市民に説明し、合意を得なければならない」
鶴岡市の研究所支援は、こうした基本的なところで間違っているのではないかと思うところです。
重ねていいますが、研究自体はすばらしいものと考えています。
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