関とおるの鶴岡・山形県政通信

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新型コロナ「5類化」以降の懸念は大

2023年04月22日 | 医療・介護・福祉など社会保障

 山形県は、4月20日(木)新型コロナウイルス感染症に係る危機対策本部第69回本部員会議を開催し、
 5類移行後の医療提供体制、感染症法上の位置づけ変更後の感染対策の考え方等についての方針を決定しました。
 5月8日以降、「新型コロナを5類として位置づける」という政府方針を受けてそのまま具体化するものとなっており、医療を確保し患者の命と健康を守るという点で多大な懸念を持ちましたし、県議会の意識にも危惧を抱きました。
 
1)まず入院医療については、指定医療機関・重点病院・協力病院計21病院で確保している294床を11病院104床に減らし、「コロナ患者入院経験あり」の医療機関49病院に378床、「経験無し」の7病院54床を加えて、過去最大入院数536床を確保するとしています。
  しかし、「経験あり」とは、コロナ患者の「入院を受け入れた」のでは無く、入院患者からコロナが発生して対応を余儀なくされ、感染拡大抑止もできなかったケースが大半と思われます。
 よって、「経験」を踏まえて受け入れるどころか、「入院中に感染が判明した患者も施設・体制の整っている、指定医療機関・重点病院に入院(転院)させてほしい」という回答が返って来るものと思われます。
 「経験あり」「経験無し」の医療機関が今後入院を受け入れていく可能性がどこにあるのか、県方針では示されませんでした。
 ましてや政府は、コロナ患者の入院受け入れのための病床確保(ベッドを空けておく)に対する補助金、感染拡大抑止に関わる診療報酬特例も縮小・廃止しようとしています。
 既に、PCR検査費用は医療機関の持ち出しです。
 「施設内療養」検証を/高齢者コロナ感染 井上氏要求/参院内閣委 (jcp.or.jp)
 確実な入院に尽きる/高齢者コロナ 井上議員に参考人/参院内閣委 (jcp.or.jp)


2)そしてこの病床確保は、現在コロナの診療・検査をおこなっている医療機関を現状の457から730に増やす事が前提になっていますが、457という数字自体、3年間拡大を要請してきて到達している数字であり、「できない」医療機関には、隔離した診療・検査場所を確保できないことなどの条件があります。
 そもそも、入院にも外来にも、医師・スタッフが感染することによる休診・診療制限にほとんど補償が無いというリスクについて、何も対応が示されていません。


3)医療費・検査費用は、原則自己負担になります。
 5日間の投与で94000円になる薬の3割負担なら、薬代だけで約28000円になります。
 モルヌピラビル「高すぎる」開業医の8割 | m3.com
 高い自己負担が受診を抑制することは間違いありませんが、政府はその推計すらしようとしません。
 なお、ラゲブリオ、パキロビッドという主力治療薬も制約があったり効果は重症化予防などに止まったり(それ自体は重要な効果ですが)、特例承認までされたゾコーバも「入院期間を一日程度短縮する」という「効果」に止まり、「後遺症の発生軽減」の可能性が新たに言われる程度のようであって、多くの感染者が高い治療費を出して使用するに足る薬は無いと思わざるを得ません。

4)他に、外出自粛要請の廃止、陽性者療養期間の短縮、濃厚接触者待機期間の廃止、健康観察・陽性者登録の終了、保健所への発生届停留角廃止、宿泊療養施設の終了、療養者への食料支援の終了、などなど、感染拡大抑止対策が政府方針通り廃止・縮小されますが、新型コロナウイルス対策について政府に助言する厚生労働省の専門家会合も、5類化に際して、「第8波」を超える規模の「第9波」が起きる可能性もあると提言しています。
 
5)感染時の症状の軽重に関わらず、重大な症状も含めて後遺症が高い確率で発生することも新型コロナの脅威です
  コロナ 4人に1人後遺症/参院決算委 吉良氏、対策迫る (jcp.or.jp)
 後遺症 医療につなげて/コロナ 吉良議員「病院リストを」/参院予算委 (jcp.or.jp)
 後遺症 子の人生左右/コロナ感染 学校現場に周知を/参院委で吉良氏 (jcp.or.jp)
 私自身も、1月3日に発症したコロナの後遺症と診断された咳症状が治まらず、議員の使命と考える街頭宣伝が3ヶ月超えてまだまともにできません。

6)政府が、「コロナは季節性インフルエンザと同等」などといくら言っても、様々な病気で抵抗力の低下した患者にとっては死をももたらし兼ねない恐ろしい感染症であり、医療機関では「コロナを外部から持ち込まないための職員への検査、患者・職員に感染者が発生した場合の検査(ほとんど病院の持ち出しとなる)、職員の日常生活での感染対策の要請、などなどこれまでの対策はまったく変えられない」(県内の民間医療機関経営幹部)と、死力を尽くした対応が続きます。
 コロナ 衆院参考人質疑/5類後も医療確保を/塩川議員に太田・大曲氏 (jcp.or.jp)

 最前線の治療の実践に裏付けられた専門的知見を発信されてきた埼玉医科大岡秀昭教授が1月26日の段階で指摘しておられた懸念は、まったく解消されていないように思われます。
 専門医「コロナ5類移行の"開放感"が最も怖い」 | 新型コロナ、「新しい日常」への前進 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
 東京新聞は、1月26日に
 「自己負担が増えれば、受診を控える人が増える可能性」と報じ、「亡くなっても自己責任というメッセージ」という識者の見方を紹介
 今月だけで死者8000人…そんな中でのコロナ「5類化」で社会はどうなるのか:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 今後、専門家会議が提言している、高齢者などへのワクチンの追加接種、介護や医療現場での感染対策、それにウイルスの遺伝情報の分析などの実施はもちろんですが、
 日本における新型コロナの最大の教訓として、医師・看護師を始めとする医療従事者の配置基準が余りに低すぎて、新型コロナのような緊急事態に対応できなかったということを直視し、欧米並みの体制に向けた改善に踏み出すことが何よりも求められています。
 
7)私は、20日(金)におこなわれた県議会議会運営委員会に委員外議員として出席し、「5月8日以降の感染対策について議会として緊急に審査すべきだ」と発言しましたが、自民党・県政クラブの委員の誰からも賛同は無く、「意見として聞いておく」という議会運営委員長のまとめで終わりました。緊急対応の必要性を感じていないということです。
 県議会の対応も厳しく問われています。