(イメージ画像・ネット取引)
① ""元日経新聞記者は「市場開始後30分」を見逃さない。それがネット株売買の「勝負どき」""
2018/11/17 15:53
元本割れすることなく、ローリスク・ミディアムリターンを狙って着実に利益を出していく“石橋を叩いて渡るネット株投資術”(石橋攻略)。今回は、ネット株の売買のタイミングについて解説します。
◆市場が始まってから30分ほどでその日の売買を終える
読者の皆さんの中にはネット株の売買のためには、「市場が開かれている間、ずっとパソコンとにらめっこしていなければならない」と思っておられる方が多いのではないでしょうか。その必要はありません。市場開始後30分が勝負です。この30分の間に手持ちの株式の動向がかなりはっきり分かります。そこでその日の売買を決めます。
たとえば、私が利用している松井証券のネット株画面には午前8時過ぎから私が保有している株式の売買価格気配がリアルタイムで表示されます。価格気配は数時間前に終わったNYダウやドル円相場、時には米FRB(米連邦準備理事会)議長発言、さらに毎月発表される米雇用統計、四半期別のGDP速報値などに大きく影響されます。
午前8時半頃から価格気配をチェックし、東京市場が始まる午前9時直前に一部銘柄の売買の予約を入れます。予約のメドですが、売却の場合は1万~2万円の差益が得られる価格水準です。
購入の場合は、例えば、株価が3000円以上の銘柄の場合なら前日比100円以上下落した水準で100株、株価2000円程度の銘柄なら、50円以上下落した水準で200株購入します。
実際の株式売買は午前9時から始まります。この段階で予約した株式の売買が成立する場合があります。予約が成立していない銘柄もあります。経験から言えば成立していない銘柄の方が多いのが普通。売却価格を高く設定したこと、購入価格を低く設定したことが原因です。
実際に市場が始まった段階で、売買価格の変化を見ながら価格水準を訂正します。この作業は市場が始まってから30分ほどで終了させます。米企業の業績悪化、金融政策の変更、地政学リスクの拡大などで米市場が混乱している場合などは、午前10時頃まで東京市場の動きを注視する必要がありますが、通常は市場が始まって30分ほどでその日の売買を終えます。
数時間前に終わったNYダウが上昇し、当日の日経平均にプラスに働く場合は、寄り付きが高めに反応する傾向があります。その後時間を経るにしたがって株価は落ち着いてきます。寄り付き付近で株価が上昇したときが売却による利益確定のチャンスです。
逆にダウが大幅下落した時は、購入のチャンスです。寄り付きの株価は下落幅が大きくなる傾向があります。その段階で購入します。その後下げ過ぎの場合は徐々に上方に修正されます。「市場開始後30分が勝負」という意味がお分かりいただけたと思います。私の場合は利益の8割近くをこの30分から10時までの1時間の売買で得ています。
◆後場(ごば)が始まった直後と終わる直前も狙い目
この時間が終われば外出し、さまざまな役所の会議や勉強会、環境NGOの支援などに時間を当てています。
もっとも、読者の皆さんの中には自宅にいる時間が多い方も少なくないと思います。私も会議などの約束がなく、終日家にいることがあります。このような時にはパソコンのネット株をちょくちょく見ます。
これまでの経験から言えば、朝9時から長くて1時間、このほかに株価が比較的変化し売買が成立する時間帯が二つあります。一つは後場(ごば)が始まった直後、もう一つは後場が終わる直前です。
後場は昼の12時半から始まります。前場(ぜんば)が終わる時間が午前11時半なので、1時間の休憩を挟みます。この間も外国為替市場は開かれています。この間に円相場が大きく動く場合があります。
また、日銀の金融政策決定会合が年に8回、2日間の日程で開かれます。最終日の2日目、正午過ぎに「経済・物価情勢の展望」(基本的見解)が発表されます。その内容しだいで円相場や日経平均が大きく動く場合があります。具体的には後場寄り付きの株価にその影響が投影されるからです。
もう一つは後場の引け直前です。東京市場は午後3時に終わります。その直前の午後2時半ごろからの30分、株価が比較的変化する傾向があります。一日の取引のバランス調整や取引が始まった上海、香港などのアジア市場の動向によって、株価が変動することがあるためです。
◆上海株、香港株やシンガポール株などの動向も無視できない
このほか、上海株の動向が日経平均に大きな影響を与えることがあります。例えば米中貿易戦争で、トランプ米大統領が追加的に中国製品に対し輸入関税を引き上げるなどと発言すると、それを嫌気して、人民元安(対ドル相場)→上海株下落が起こる場合があります。
上海株が下落すると、それに引きずられて日本の株価も下落することがあります。上海市場は午前10時半から始まります。前場中頃までは日経平均は上昇していたが、11時頃から下落に転じ、後場に入ると急落することがあります。
初めの頃はその原因がよく分かりませんでした。いろいろ調べた結果、最近では「上海株の下落が原因」と分かり、必要に応じて上海株の動向をチェックすることもあります。上海株だけではなく、香港やシンガポールなどアジア関連の株価が横並びで下落する場合も日経平均にはマイナスに働きます。拡大を続けるアジア経済圏の動向が無視できなくなってきたことを示しています。
このように一日の取引時間の中で、株価が動きやすい時間帯があります。しかし、だからといって「石橋攻略」はそれほど夢中で一日中パソコンにしがみつくことは勧めません。それでは疲れてしまいます。朝の一時間程度集中するだけで十分です。
◆10月のダウ暴落はなぜ起きたのか
ところで、今年10月はダウが乱高下し、日経平均にも大きな影響を与えました。損切、追証に追い込まれた個人投資家も多かったようです。大変興味深い現象だったので、簡単に振り返ってみましょう。
ダウは9月末から10月初めに5営業日続伸し、10月3日(水)の株価は前日比54ドル高の2万6828ドル。史上最高値を更新しました。それをピークに下落に向かい、10日(水)は前日比831ドル安、翌11日(木)も545ドル安、2日間で1376ドルもの暴落です。
ピークの3日と比べると、1週間ほどで1776ドルの下落です。その後も振るわず、29日(月)には、月間の最安値、前営業日比245ドル安の2万4442ドルまで落ち込みました。ピーク比で2386ドルも下げたことになります。
なぜ、ダウは突然暴落したのでしょうか。その謎を解くカギが5日(金)に発表された米国の9月の雇用統計です。9月の雇用統計は米国経済の好調さを示すものでした。まず、非農業部門雇用者数は前月比13.4万人増。市場予想を下回りましたが、7月、8月の雇用者数が大幅に上方改定され、7~9月の3か月平均は19万人増と高水準を維持しました。失業率は3.7%。48年9カ月ぶりの低水準を記録しました。さらに9月の平均時給は27.4ドル(前月比0.08ドル増)となり、過去最高を更新しました。
◆長期金利上昇を嫌気してダウは暴落
市場関係者は好調な9月の雇用統計を受けて、需要が膨らみ物価上昇圧力が加わると判断したため、長期金利が急上昇しました。雇用統計発表後、5日の10年物国債の利回りは一時、2011年5月以来約7年ぶりに3.24%まで跳ね上がりました。
「将来、金利上昇が続けば企業業績が悪化する」と判断した投資家が利益確定のため株売りに転じ、それがあっという間に株式市場を包み込んで今回のダウの大暴落を引き起こしたと言えるでしょう。市場関係者の中には、今回の下落を「長期金利暴落」と呼ぶ人もいます。
◆日経平均も3000円を越える大暴落
ダウの暴落は日本の株価にも大きな影響を与えました。ダウが史上最高値に近かった10月2日(火)の日経平均終値は前日比24円高の2万4270円。1991年11月13日以来およそ27年ぶりの高値を付けました。
これをピークに日経平均はダウ下落に足を掬われて下げ続け、29日(月)には月間最安の2万1149円まで暴落しました。ピークからの下落幅は3121円です。ダウ暴落が日経平均株価の暴落を引き起こしたことは明らかです。
◆12月の米利上げは既定路線、金利と株価の関係に目が離せない
これからの株価の見通しはどうなるでしょうか。11月初めに発表された10月の雇用統計は引き続き米経済の好調ぶりを示しています。このため、米連邦準備理事会(FRB)は12月に開くFOMC(連邦公開市場委員会)で、今年4回目の利上げに踏み切るのは確実視されています。
政策誘導金利(FFR=フェデラル・ファンド・レート)は0.25%引き上げられ、2.50%の水準になる見通しです。2019年も3回の利上げが見込まれています。そうなれば、来年中に短期金利であるFFレートが3%を超える可能性があります。
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FFレートが引き上げられれば、当然長期金利の上昇を促します。実体経済との比較で、金利が高すぎれば企業収益を圧迫し、景気減速のきっかけにつながるかもしれません。それが株価に影響を与えることは当然です。来年は、金利と株価の動向が注目される年になりそうです。
<文/三橋規宏>
みつはしただひろ●1940年生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学教授、同大学名誉教授、環境を考える経済人の会21事務局長等を歴任。主著は『新・日本経済入門』(日本経済新聞出版社)、『ゼミナール日本経済入門』(同)、『環境経済入門』(日経文庫)、『環境再生と日本経済』(岩波新書)、『サッチャリズム』(中央公論社)、『サステナビリティ経営』(講談社)など。
☀ ザッと目を通しましたが凡太郎には参考になります。また、後でじっくり読むことに
します。