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① ""ブランド品リユース「コメ兵」巡る異変の真相 増収増益でも株価が急落、その主犯とは""
野口 晃 2018/11/18 08:00
フリーマーケットアプリ「メルカリ」などの台頭によって、中古品の買い取り・販売ビジネス業を取り巻く環境が大きく変わっている。そんな中、実店舗を構えて営業する事業者の中で、「勝ち組」と見られてきたブランド品リユース最大手・コメ兵の株価に異変が生じている。
11月9日の大引け後に2018年度第2四半期決算を発表した後、12日に株価は急落。一時243円安の1420円をつけた。その後も年初来の安値を再び更新するなど、株価の低迷が続いている。
第2四半期決算は、売上高233億円(前年同期比12.3%増)、営業利益4億8900万円(同6.7%増)と、期初計画(売上高229億円、営業利益4億7500万円)を上回った。しかし、第2四半期(2018年7~9月期)だけをみると、売上高は120億円(同10.4%増)、営業利益1億5900万円(44.5%減)と、業績上振れを期待していたマーケットの期待を裏切った。アナリストらが重視する粗利益率は、前年同期の27.4%から25.7%へ大きく低下し、買い取り競争の激化による業績減速懸念が一挙に浮上した格好だ。
② 競争激化で高まる危機感
粗利益率低下の理由について、コメ兵は「8月に入って天候不順や訪日客需要が一服し、販売が減速した。需要期の第3四半期(9~12月)に向けて在庫の鮮度を維持するため、滞留在庫の値下げやBtoB(業者間取引)を増やしたため」と鳥田一利取締役は説明するが、それでも市場の不安は払拭できたと言えるのかどうか。実際、石原卓児社長は「競争も、顧客の奪い合いも起きている。競争に勝つには高価格で買い取ることができるか、顧客にとって便利な場所に店舗があるかどうかが重要になってきている」と危機感を隠さない。
コメ兵が得意とするブランド品の場合、高額品であることや真贋の問題があり、メルカリなどの影響は実際にはほぼ皆無。では、何がコメ兵を脅かしているのか。
実は、コメ兵のメインの調達先である個人からの買い取りをめぐる環境が大きく変化してしまっているのだ。これまでブランド品の買い取りは、コメ兵以外に「大黒屋」「ブランドオフ」「銀蔵」など、小売店舗を持つ企業同士の競争だった。
ところが、新興買い取り専門店の「なんぼや」「おたかやら」「エコリング」「ゴールドプラザ」などは店舗での買い取りに特化し、企業向けオークションや卸、EC通販などで販売を行う。小売部門を持たないというコスト面の優位を武器に、店舗網を急速に拡大している。
中でも、「なんぼや」を展開するSOUは2017年にブランド品リユース売上高で大黒屋を抜いて2位に躍進。「リピーターの獲得や持ち込まれる商材を買い切る施策を推進するなど、既存店の生産性向上が進んだ」(SOUの嵜本晋輔社長)2018年8月期には、売上高315億円(前期比39%増)、営業利益18億7000万円(同82%増)と大幅な増収増益を達成。売上高こそコメ兵に及ばないが、営業利益では肩を並べる存在になっている。
③ 買い取りの拠点数で見劣り
「リユースのデパート」を標榜するコメ兵の店舗は、名古屋本店、名駅、東京・新宿、新宿ANNEX、東京・銀座、大阪・梅田と、売場面積が300坪以上の大型店が中心だ。店舗数は100~200坪の中型店、20~30坪の小型店を合わせて計17店になる。
ブランド品の買い取り拠点数はこれら店舗と買い取り専門の「買取センター」のほか、前期から併設を進めた「LINK SMILE」「USED MARKET」など別業態店の買取センターを合わせ、2018年9月末時点で29店。地域別に見ると、東京や愛知への出店が主力で、関西は3店、中国、九州はそれぞれ1店で、北陸や四国、東北、北海道が空白地域になっている。
対して、SOUのブランド品買い取り拠点は、2018年8月末時点でなんぼや48店、事前予約システムを導入した「BRAND CONCIER」6店の合計54店だ(ほかに古美術を扱う八光堂を含めると63店)。コメ兵がまだ出店できていない百貨店内にも買い取り拠点を持つうえ、四国を除く全国をカバーしている。
今期に入っても9月に大阪・難波に同地区3店目となる「NAMBAなんなん店」、11月には横浜に「マルイシティ店」、川崎に「マルイファミリー溝口店」を開業するなど、出店ペースを加速している。
これに対し、コメ兵は前期に別業態店への「買取センター」の併設を進めたのに続いて、今年10月には愛知・豊田、11月に東京・経堂、12月には神奈川・向ヶ丘遊園と買取センターの出店を加速している。
これまで効率が悪いとして力を入れてこなかった店舗から、顧客宅に出向き、査定を行う「出張買い取り」を再び強化している。同時に、コメ兵が手薄な郊外や地方の需要の取り込みを狙い、新たな買い取り強化策にも着手している。
前期から開始した百貨店の外商担当者とコメ兵の査定担当者が同行し、外商顧客の自宅で査定を行う百貨店の外商部門との提携は、埼玉県川越市の丸広百貨店や名古屋市の丸栄、愛知県豊橋市のほの国百貨店、埼玉県熊谷市の八木橋百貨店などとの提携を実現。丸広百貨店との提携では、前回に比べて5割増の買い取りを実現するなど、着実に成果があがっている。
④ コメダ珈琲と「異業種提携」
2018年10月には古物営業法の規制緩和によって、店舗や顧客の自宅以外でも買い取りが認められた。それを機にコメダホールディングスと連携、10月28日から11月11日までの2週間、同社の名古屋市瑞穂区上山町のコメダ珈琲本店駐車場に「買取キャラバンカー」を派遣してブランド品の買い取りを行っている。
2週間の限定開催の予定だったが、来店客数が想定の4倍を超え、査定担当者を2人から急きょ3人に増員するほどのにぎわいだった。「上山町から名古屋本店のある大須まではなかなか行けないが、いつもの場所にコメ兵が出向くということで新規顧客の開拓につながっている」(石原社長)。今後は百貨店の催事会場やマンション、オフィスのフリースペースでの開催も検討に入っている。
買取センターの出店加速や出張買い取りの強化に加えて、こうした新規の買い取り策でどこまで買い取り専門店との差別化を図り、マーケットの不安を払拭できるのか。コメ兵の手腕が問われている。
🌸 コメ兵 、TYO: 2780
1,438 JPY −13 (0.90%)
11月16日 15:00 JST
※ トップランナーもいつ脱落していくか判らない厳しい業界です。飲食店業界も
また、浮き沈みが大きいですね。