(英国のメイ首相)
11月20日、英国が欧州連合(EU)を離脱する期日まであと4カ月あまり。だが、経済に与える影響を和らげるための移行期間については、依然として当てにできない状況だ。写真は英国のメイ首相。ロンドンで15日撮影(2018年 ロイター/Peter Nicholls)
① ""アングル:英国の「合意なき離脱」で何が起きるか""
2018年11月22日 / 12:49 / 3時間前更新
William Schomberg
[ロンドン 20日 ロイター] - 英国が欧州連合(EU)を離脱する期日まであと4カ月あまり。だが、経済に与える影響を和らげるための移行期間については、依然として当てにできない状況だ。
英国のメイ首相は先週、EU本部とEU離脱(ブレグジット)協定の素案で合意した。だが与党・保守党内でも頑強な抵抗に直面しており、議会の承認も得られない可能性がある。
では「合意なきブレグジット」とは、一体どのようなものなのだろうか──。項目別にまとめた。
●英国経済
イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は、移行期間を伴わないブレグジットは、英国経済に対し、1970年代の石油危機に匹敵する「大きなマイナスのショック」を与えると警鐘を鳴らした。
🌊🌊 国際通貨基金(IMF)では、合意なきブレグジットによって英国経済はマイナス成長に陥ると予測している。
英シンクタンクの国立経済社会研究所は、英国経済の2019、2020年の経済成長率について、EUとの合意を伴うブレグジットであればそれぞれ1.9%、1.6%と予想しているが、「合意なき離脱」の場合には、いずれも0.3%にとどまると予測してい
●貿易
少なくとも短期的には、貿易障壁が高くなることで、英国、EU双方の企業が打撃を受ける。
英国の輸出企業はEUの輸入関税に直面する。関税率は平均5%だが、同国の主力輸出品については、自動車に10%が課せられるなど、さらに高くなる。
製造企業は、通関手続の遅れによって自らの「ジャストインタイム」製造方式に支障が出ることを危惧している。
だが離脱賛成派は、テクノロジーの活用により通関手続の遅れは緩和されると予想。将来的に英国がEUとの自由貿易協定を実現すれば、輸出も自由に行えるようになると主張してる。
また同賛成派は、EUとの緊密な関係を続けるよりも、米国やインド、中国といった、より成長率の高い国々と貿易する方が英国にとって利益になるとも主張している。ただし、英国財政を予測する担当者は、こうした諸国との2国間貿易による恩恵は小さなものに留まる可能性が高いとされている。
●港湾、企業倒産、備蓄
最初に影響が出る可能性が高いのは、港湾と空港だろう。政府は、イングランド南部の自動車専用道路2本と空港1カ所を、必要に応じて大型トラック駐車場に転用する計画を立てている。
フランスのボルヌ運輸相によれば、合意なきブレグジットに備えて、フランスは、港湾における通関手続きや検査対応を中心に、さまざまな措置を準備しているという。
英国勅許調達供給協会(CIPS)では、部品・原材料等の通関手続が10─30分遅延することによって倒産する懸念を抱いている英国企業は、全体の10分の1に及ぶと試算している。
多くの製造企業は、通関手続が遅れた場合でも製造ラインを稼働させ続けるために、部品の備蓄を進めている。英国政府は製薬企業に対し、薬剤の備蓄を通常より6週間分積み増しするよう要請している。
●財政とイングランド銀行
ハモンド英財務相は、ブレグジットが経済的なショックを与える場合に備えて財政支出を拡大すべく、財政上の予備費を積み上げてきた。
同財務相は同時に、長期的には、合意なきブレグジットという事態に陥るとすれば、緊縮財政を終らせるという自身の公約を考え直すことになる、と警告している。
離脱賛成派は、合意なき離脱は、EU予算に対する英国政府からの資金拠出がただちに終了することを意味しており、公共財政にとってプラスになるはずだと主張している。
英中銀は投資家に対し、合意なき離脱ショックが生じた場合でも、ただちに中銀が救済に動くとは当てにしないよう警告している。英ポンド下落によって、同国のインフレ率が押し上げられ、利下げの障害となる可能性がある。
●英ポンド
経済に打撃を与える可能性が高いことを考慮すれば、合意なきブレグジットによって、恐らくポンドは下落する。ポンドの対ドル相場は2016年にEU離脱を決めた英国民投票以来、約13%下げているが、この幅がさらに拡大することになる。
ロイターが1日発表した市場ストラテジストを対象としたアンケート調査によれば、EUとの合意が成立しない場合、ポンドは6%以上下落するが、合意成立の場合には約5.5%上昇すると予想されている。
●英国株価
ポンド安になれば、世界で事業展開する英最大手企業の多くにとって、株価が上昇する可能性がある。FTSE100種株価指数の構成銘柄であるブリティッシュ・アメリカン・タバコやGSKなど、収益の7割を海外で稼いでいる企業がそれに含まれる。
だが、より国内市場に注力して、収益の半分を自国に依存するFTSE250種株価指数に含まれる企業は打撃を受ける可能性がある。
従来の相関関係がいまも有効だとすれば、これは理にかなっている。だが先週、FTSE100と英ポンドがどちらも下落し、こうしたトレンドが一時的に乱された。秩序なきEU離脱リスクの上昇が投資家を動揺させるなかで、珍しく双方が連動する動きが生じている。
●債券
合意なき離脱による経済ショックが生じた場合、通常であれば、投資家は英国債という安全資産に流れるはずだ。債券価格とは反対方向に動く英国債利回りは15日、2016年以来最大となる下落を記録した。
だが、合意なき離脱はメイ首相にも大きな打撃を与え、新たに総選挙が行われる可能性がある。いくつかの世論調査では左派の労働党が優位に立っており、公共投資の大幅増を公約する同党の政策は、一部の投資家を動揺させることだろう。
(翻訳:エァクレーレン)
🌊 このリポートには書かれていませんが、イギリスのEU離脱の大きな理由の一つ
として、国民にEU域内の自由な人間の移動>移民のイギリスへの無制限の流入があり
ました。
しかし、現実には離脱が選挙で決まった後も移民の流入が顕著な減少はみせていない
ようです。
簡潔に言えばEUの煩雑な規制やルールの束縛を逃れて、また、EUへの経費などの
負担をカットすれば、自ずからイギリス経済は浮上するというのが離脱派の経済政策
の目論見と言えるでしょう。
しかしながら、この離脱賛成派の思惑は、実際に離脱した場合に手酷いダメージを
受けるでしょう。つまり、形は違っていますが、イギリス孤立主義で、トランプ大統領
の「アメリカファースト」の亜流の部分もあります。
さて、情報やデーターをどう組み立ててもネガティブな予測しか出てこないので、
当惑しています。また、日本への影響はどうなるのか、ぼつぼつリポートや解説も
出始めているのでチェックしてみます。