ブログ仙岩

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大石邦子の震災体験

2016-04-27 08:10:52 | エッセイ
風のあとさき181「すみれ色の靴が飛び」大石邦子エッセイストは、何年ぶりかに靴を買った。すみれ色の靴が宅配便で届いた。と5年前の3.11「ハイッ!みんぽう」の原稿を書いていた。

全く靴底の減らない車いすの大石さんは講演も多く、稀に新しい靴を履いて見たいとネット通販でいつものひも付きでないおしゃれな靴である。

履いてみたソファーから降りて、車いすに移った瞬間車いすが突然宙に浮き、すみれ色の靴が宙に飛んだ。今まで経験したことのない激しい揺れでブレーキなど役に立たず、電線が激しく揺れていた。

その時、工事中のガスの設備屋さんが駆け込んできた。思わず私はその人にしがみついた。日本観測史上最大の地震、津波、さらに追い打ちをかける原発事故である。

次第にその惨状が分かるにつれ言葉を失い何も言えなくなった。

一瞬にして人生が断ち切られた遠い事故の日のことを思った。十余年の療養の日々を思った。一瞬にして愛する人を失い絶望的悲しみを思うとき、こんな体でも今なお生きる命の負い目に押しつぶされそうになった。

あれから5年、被災地の人々の苦闘は続く、福島の悲惨を教訓に、原発の再稼働は見送られるかと思っていたが、司法の判断にさえ異議を唱える力は大きい。

核のごみ処理も確立されないまま見切り発車した国と電力会社の責任は重い。無人の町に咲く花は寂しい。