バラの泉 今日のバラができるまで(3)~原種のうちの8種から~

2014年01月15日 | バラの泉


バラの原種は、150~200種あるといわれ、その内、現代バラの主要4系統
(ハイブリットティー・フロリバンダ・クライミング・ミニチュア)に関わる
主な野生種は7~8種といわれています。


1)ロサ・ガリカ(フレンチローズ)やロサ・ダマスセナ(香料用のバラ)

ヨーロッパ原産・紀元前から栽培されている。ヨーロッパ中西部から西アジアにかけて分布。

ロサ・ガリカは、ロサ・ダマスセナの片親。甘い香り。革質の葉・草丈は低い。
ロサ・ダマスセナは、ロサ・ガリカとロサ・フェニキアの自然交雑種とされる説があり。
樹高は高い。

ガリカとは、フランス地域の古い呼び名「ガリア」に由来。ロサ・ガリカは「フレンチローズ」
とも呼ばれる。白に近い薄いピンク~赤い濃いピンクあり。一季咲き。)


2)ロサ・キネンシス・スポンタネア(一季咲き・つる性)・ロサ・キネンシス(四季咲き性)

中国西南部、四川省に分布。花色は淡紅色から濃紅色までの変異あり。
現代バラに四季咲き性と木立性を伝える。

南ヨーロッパに16世紀初めに入り栽培。オランダ生まれのオーストリアの植物学者ジャカン
(1727~1817年)が、オランダのライデン植物園の標本館にあった植物学者グロノビウス
(1686~1762年)のバラの標本を元に1768年にロサ・キネンシスと名付けた。

 

3)ロサ・ギガンティア

中国南西部雲南省からミャンマーに分布。つる性、光沢のある葉。白~クリーム色の大きな花。
大変良い香り「大花香水月季」と中国では呼ばれ、ティーローズの香りは
これに由来
。月季花とは、毎月繰り返し花が咲いてくることや、花が咲き続けることに
由来します。


4)ロサ・ムルティフローラ

和名ノイバラ。日本・朝鮮・中国北部に分布。房咲き性で、
これが栽培バラの房咲きのもと。多数の5弁の白い花をつける。変種のツクシイバラは、
中国地方から西部九州に分布。 淡桃色から濃桃色。葉に光沢。一季咲き。


5)ロサ・モスカータ

ヒマラヤから小アジア、地中海(南ヨーロッパ・北アフリカ)に分布。ムスクローズ独特の
ムスク香(じゃこうの香り)のもとになった。多数の白い花
開花期が7月以降と遅いが秋まで返り咲く。ダマスクローズやノアゼットローズにつながる。

6)ロサ・ルキアエ

和名テリハノイバラ。本州・四国・九州・朝鮮・中国に分布。日当たりの良いところ、 
海岸・河原山地まで生育。葉に光沢がある「照り葉」。つるバラのもと。6~7月に 数個の白い小さな花。 一季咲き。

7)ロサ・フェティダ

現代バラの黄色の元になっている。西アジアの乾燥地。黒点病に弱い。

8)ロサ・キネンシス・ミニマ

中国原産。背丈の低いバラ。ミニバラのもと。

バラの原種は、北半球に自生し、北は、シベリア・アラスカから、南はエチオピアまで、寒帯から
亜熱帯まで広く分布しています。


ホームページで、新しいページ「バラの泉」を始めました。
こちらも少しずつ更新していきますので、ご覧いただけたら幸いです。









黄色のバラ 今日のバラができるまで(2)

2013年09月14日 | バラの泉
普段なにげなく見ているバラも、そのルーツを知ると、また育てる気持ちも新たになります。

18世紀末から特に発達したバラの品種改良の歴史を調べますと、改良バラの最初の頃の
黄色は、薄い黄色であったことがわかります。

それは中国から1824年にイギリスに来た薄い黄色の「パークス・イエロー・センティッド・チャイナ」
が交配親に使われたことによります。ティーローズやノアゼットローズの薄い黄色のバラはここに
起源があるからです。

ティーローズの「レディー・ヒリンドン」(5月20日)



そこで1883年に、あざやかな黄色を目指したのがフランス・リヨンの育種家ペルネ=ドゥシェでした。

野生種のバラ(原種のバラ)で濃い黄色の「ロサ・フェチダ」があります。もともとイランから
アフガニスタンに分布するバラで、1500年代の終わりにフランス生まれのフランドル(オランダ)の
植物学者クルシウスが、オーストリアから導入しました。

変種に花弁の表面が朱色で、裏面が黄色のもの「ロサ・フェチダ・ビカラー」があります。

さらにもう一種の変種で前の2種が花弁が5枚であったのに対して、大輪で八重咲きの
1836年にイランで発見された「ペルシアン・イエロー」があります。

ペルネ=ドゥシェは、この「ペルシアン・イエロー」を交配親にしました。なぜなら
「ロサ・フェチダ」は不稔性でほとんど種子をつけず、この「ペルシアン・イエロー」には
少し捻性があったからです。この花粉を使い、何千もの交配をして6年後の1888年に、
ハイブリッドパペチュアルの「アントワーヌ・ドゥシェ」との交配に成功。

その実生と、ハイブリットティー系統の一品種が交配され、その後最初の黄花品種
「ソレイユ・ドール(黄金の太陽)」が1900年に発表されました。

このバラは一季咲きだったため、さらに他のハイブリットティーと交配され、四季咲きの
「スブニール・ド・クロジュ・ペルネ」が1920年に出来ました。始めた1883年から
37年の歳月が流れています。その後の有名なバラ「ピース」(1945年)もこのバラが
先祖にあたります。

この鮮やかな黄色がもとになって、さらに他の育種家が独自の交配を重ねて、オレンジ色の
バラも生まれていきました。育種家の長年の夢が開くとき、その陰に、ものすごい努力と
出来るまで作り続ける情熱を感じます。


今年6月20日の花。このバラの名は、イングリッシュローズの「グラハム・トーマス」(1983年)です。
この花の4代前も「スブニール・ド・クロジュ・ペルネ」になります。








「コンスタンス・スプライ」 に寄せて 今日のバラができるまで(1)

2013年07月14日 | バラの泉
イングリッシュローズ・「コンスタンス・スプライ」。花径は、9cm~10cm。

イギリスのデビッド・オースチン氏が1950年に育種をスタートして、11年後の1961年に
「イングリッシュ・ローズ」第一号としてこの「コンスタンス・スプライ」を発表しました。

このバラは5月にのみ花が咲く、一季咲きのバラです。

コンスタンス・スプライとは、イギリスの女性で、1929年に高校校長を辞職した後、花屋を開店。
花や野菜など身近な材料で自由に創作して活けるスタイル、フラワーアレンジメントの基礎を
確立した方です。

出来るだけ多くの人に身近に花を楽しんでもらいたいという気持ちから「フラワースクール」を開き、
1946年には、花とともに、世界中の子女を教育するインターナショナルスクールを開設されました。
(コンスタンス・スプライ「ザ・フラワースクール」より)

写真は、今年の5月17日の「コンスタンス・スプライ」です。
 

「イングリッシュ・ローズ」とは、デビッド・オースチン氏によって作出された品種のことを指します。

その特性は、デビッド・オースチン著『イングリッシュ図鑑』p12によると

「イングリッシュローズ」は、二つの偉大な伝統を組み合わせたものです。つまり
ロゼット咲きやカップ咲きの花形や芳香などといった「オールドローズ」の特性と 
現代の「ハイブリッド・ティー」や、「フロリバンダ」のもつ豊富な花色や四季咲きの
特性とが融合したものです。」

ハイブリッドとは、英語のhybrid(動・植物の)交配種、雑種の意味からきています。
「ハイブリッド・ティー」とは、複雑な交配で出来た「ハイブリッドパペチュアル」という系統の
バラと「ティーローズ」と呼ばれる紅茶の香りをもつバラを交配してできたバラのことです。

原種を除いて、園芸品種の分類として「オールドローズ」と「モダンローズ」という分類があります。
1867年、フランスのギヨーが発表した「ラ・フランス」は、四季咲き・大輪・一輪咲きの性質
を持つバラで、いわゆる「ハイブリット・ティー」の誕生で、これが最初の「モダンローズ」です。
これ以降に成立したこの系統のバラを「モダンローズ」と呼び、それ以前のバラを「オールドローズ」
と呼びます。

ここで、ちょっとバラの品種改良の歴史を振り返ってみたいと思います。バラの品種改良は、特に
18世紀末、ナポレオンの最初の后、ジョセフィーヌが世界中の珍しい植物を集めさせ、育種家
(アンドレ・デュポン<1756-1817>)らに改良させたことにより多くの品種が生まれていく
ことになりました。

「オールドローズ」のほとんどが一季咲きですが、何度も咲かせたいという思いから、中国の
原種が持つ四季咲き性のものが、商人やプラントハンターにより、インド経由でヨーロッパへ。
そこで交配が繰り返され、「モダン・ローズ」の四季咲き性のもとになりました。

その中国の四季咲き性のバラとは、次の4種類がはっきりしてます。

●「スレーターズ・クリムソン・チャイナ」1792年イギリス・植物栽培家・ギルバート・スレーターにより
●「パーソンズ・ピンク・チャイナ」1789年イギリス・ジョセフ・バンクス中国より導入、すぐフランスにも
●「ヒュームス・ブラッシュ・ティ-・センティッドチャイナ」(1809年ヒューム・東インドからイギリスへ。
またフランスヘ)
●「パークス・イエロー・ティー・センティッドチャイナ」(1824年パークス・中国から英国園芸協会へ。
翌年フランスへ。)

このあと第一号の「モダンローズ」1867年の「ラ・フランス」の誕生まで、
約80年の歳月をかけて、フランス・イギリス、アメリカの育種家により、品種改良が
続けられました。

こうして、四季咲きのモダンローズが誕生したのです。茎一本に大輪一輪だけ、花形は
花びらがペンの形をした高芯剣弁咲きのモダンローズが主流になっていき、20世紀初頭は、
ハイブリッドティーの全盛期となりました。

そして一季咲きのオールドローズが、庭から姿を消していってしまったようです。

ところがイギリスで、可憐な花形の、沢山の花を咲かせるオールドローズを惜しむ愛好家が、
品種の収集に努めました。デビッド・オースチンは、そのオールドローズとモダンローズの、
その両方の良さを取り入れた花を生み出すために、11年もの長い年月の試行錯誤の結果、
「イングリッシュローズ」という独自のバラを作出しました。

その第一号が「コンスタンス・スプライ」です。しかし、残念ながら、一季咲きでした。
さらにその後の10年に亘る交配、育苗により、1970年にイングリッシュローズに
四季咲きの花が生まれ、花色がピンク、白から、オレンジや銅色、アプリコット色と増え、
耐病性も勝ち得てきたのです。

デビッド・オースチン社では、新品種ができるまでに、8年を要しているようです。

1年目、新しく交配。種を45万~60万粒取り、セルトレイで発芽させ1本ずつ、手作業で移植。
2年目、花の美しさだけで1万5千に選別。更に台木に芽継ぎし、育てる。
3年目、5000種に選別
4年目、2500種に選別
5年目、150種に選別
6年目、20種に選別
7年目、12種に選別
8年目、新品種の6種が選ばれる。

最終審査では、条件の悪い土に密に植え、肥料、水、薬剤散布、花柄摘みを一切行わずに、
株にストレスを与えて、その中で美しく咲く品種を選抜するそうです。
(『イングリッシュローズのすべて』別冊NHK趣味の園芸 より)


育種家の、より美しく、丈夫な花を生み出したいという想いが実り、新品種が世に
送り出されるのですが、この長い年月の手間と世話を思うとき、手にしたバラを
大切にしたいと思います。

6月末から7月上旬にかけて、アンの庭では2番花があちらこちらでまばらでは
ありますが咲きました。2番花は5月の1番花に比べて花径も小さく、さらに、
この猛暑で花の咲く日数も2~3日とあっという間ですがやはり花がある庭は
嬉しいものです。

6月25日「セント・オルバン」

7月7日
「ジェームズ・ギャルウエイ」の蕾と、「クラウン・プリンセス・マルガリータ」
   

「グラミス・キャッスル」


7月8日
「リッチフィールド・エンジェル」
 

7月9日
「アンブリッジローズ」は、小さいながらも 21個もの蕾をつけ、毎日咲いてくれました。


今年の6月は、前半は暑く後半は雨が続き、黒点病で葉を落としたバラもあり、
さらに葉が萎縮するものも出ました。

そんな時は、病気の葉は出来るだけ取り去り、ヒノキやヒバから抽出した成分の
植物活性液を5000倍くらいに薄めたものを鉢に灌水したりもしました。

バラにとっても、例年になく過酷な夏の暑さです。朝、夕の水やりはかかせません。
日中、鉢に直射日光が当たり過ぎないように置き場所を工夫したり、鉢の周りの地面に、
打ち水をしたり、鉢の中の温度が極端に暑くなり、根がゆでられたようにならないよう
気をつけています。通常は花が終わったら、2枚目の5葉のところでカットしますが、
2番花は花だけをカットしています。7月8月は基本的には、花芽を出さずに休ませる
のがよいようです。