10月の終わり。真っ青な青空にススキの穂が映えていました。
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ひと際目立つ黄色のセイタカアワダチソウ
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今年、教科書以来の古典、「伊勢物語」を読む機会を得ました。出かけた先でちょうど読んだ、
有名な東下りの場面を描いた奉納された絵を見つけました。
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在原業平が、京に居づらくなって、友と数人で見知らぬ東国への旅に出かける途中
五月のつごもり、今の七月初めに、富士山に、雪が鹿の背中の模様のようにまだ白く
残っているのに驚きます。富士山の高さをみて、原文には
ここにたとへば、比叡の山を二十(はたち)ばかり重ねあげたらむほどして
なりは塩尻のようになむありける。 (伊勢物語 九段)
とあります。意訳すると、
その山は、この京にたとえるならば、比叡の山を二十ほど重ね上げたような大きさで
形は塩を作るときの円錐形の塩尻のようだ
と例えます。ちなみに比叡山の高さは843m 富士山は3776mですので
実際は、高さでは、4・48倍ですが、十ではなくて、二十という例えようは、
なんとも高く大きいことかと伝えたかった表現でしょうか。
伊勢物語は、在原業平と思われる男を主人公にした歌物語で、業平が元服した直後から
その死を迎えるまでの百二十五段の物語と、和歌二百九首からなります。
読み進むうちに、82段に出てくる渚の院(惟喬親王の邸)を知ると、また出先で
その場所を迷い尋ねながら行くことがありました。行きついてみると、今は
保育園になっており、渚の院址の石碑と、由来の看板がありました。
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今狩りする交野の渚の家、その院の桜ことにおもしろし。その木のもとに おりゐて
枝を折りて、 かざしにさして、上、中、下、みな歌よみけり。
馬の頭なりける人のよめる、
世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし
となむよみたりける。また人の歌、
散ればこそ いとどめでたき桜かな 憂き世になにか久しかるべき (伊勢物語八十二段)
今となっては、院の後に建てられた観音寺の江戸時代の梵鐘のみが残っているだけで往時を
しのぶものは何もありませんでした。ただフェンスごしに、色づき始めた桜の木が1本見えました。
桜の下で親王も臣下もみなが桜をめでて和歌を詠み、宴を愉しんだ跡に立っていると、馬の頭であった
業平の歌に対して、ある人の返歌の、「憂き世になにか久しかるべき」の歌が思い出されました。
「散ることがあるからこそ桜は素晴らしいのです。そもそもつらい世の中にいったい何がいつまでも変わらずに
ありましょうか 」⑴
変わらないものは何もない・・・それを目の前にしていると、ただあるのは今のみ、
あれこれ憂えずに淡々ととらえることが軽く生きるコツかもしれないと浮かびました。
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11月に入り、音楽会や展覧会をいくつも巡った今年の秋。
紅葉が進み、行く先々で美しいカエデやイチョウにも出会いました。
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こんなお菓子をいただきました。五感で感じる一期一会の行く秋の日々でした。
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追記 10月の末の午後、ふと窓から空を眺めていると、遠くにとてもきれいな雲が見えました。
空に現れた光の絵のようでした。
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⑴この訳は『新版 伊勢物語 付現代語訳 石田穣二訳注』より引用しました。
文中の古文は、この本から抜粋しました。