この一年、世界に波紋を投げかけてきた政策がいよいよ実施されるため、批判と混乱が生じている。
私は自分を、そこそこ水平思考の高い人間だと思っていたが、この政策をどのように考えるべきかには迷いがあるので、昨日一番の驚きは、政策の混乱そのものより、政策に異議を唱えた司法長官代理の更迭をツイッターで流すといった手法ということにしておく。
<米入国禁止令への反発続く、国連総長や共和党議員も批判> AFP=時事 2/1(水) 7:22配信より一部引用
ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が出した移民・難民の入国を規制する大統領令に対する反発は、1月31日も政府の内外で広がり続けている。
トランプ氏は前日夜、大統領令の擁護を拒んだサリー・イエーツ司法長官代理を解任。同大統領令に対し政府関係者が取った中で最も反抗的な行為を鎮圧した形で幕を閉じた激動の一夜は、かつてウォーターゲート(Watergate)事件の山場でリチャード・ニクソン大統領が必死の火消し工作を図った様子とも比較されている。
イスラム圏7か国出身者の入国禁止と難民受け入れ凍結を突然指示したこの大統領令については、トランプ氏が自己擁護を展開する一方で、国連から自党の共和党議員まであらゆる方面から批判的な声が上がっている。
トランプ氏側の関係者も含む反対派は、この大統領令は適用範囲が広過ぎる上、性急に発令されたことに苦言を呈している。
国家安保当局の元職員らは、大統領令は米国が宗教を理由にイスラム教徒との対決姿勢を取っているという誤ったメッセージを与えかねないと警告。米国務省では、外交官らが樹立からまだ1週間しか経たない政権に対して相次いで異議を表明する異例の事態となっている。
さらに、大統領令は事実上、イスラム教徒の入国禁止を目的に難民を「宗教検査」にかけるものだとの批判も集まっている。共和党のラマー・アレクサンダー上院議員は、「明らかな宗教検査というわけではないが、われわれ米国人の国民性とは一致しないものに迫っている」と指摘した。
<米入国禁止令の解除要求=「最善のテロ対策でない」―国連総長> 時事通信 2/2(木) 6:09配信より一部引用
国連のグテレス事務総長は1日、難民やイスラム圏7カ国出身者の入国を禁じた米大統領令について「(テロから)米国や他の国を守る最善の方法ではない。効果的な方法とは思わない」と批判した。国連本部で記者会見し、「すぐ解除すべきだ」と要求した。
また「国際テロ組織が米国のような国を攻撃するなら(テロリストに)紛争地域の国のパスポートを持たせて入国させたりせず、先進国のパスポート保持者や既にその国にいる人を使うはずだ」と指摘。大統領令を「テロリストから国を守るため」と説明するトランプ政権の主張に反論した。
「日本は四方を海で囲まれた単一民族国家なので、この手の問題には関心がない」などと云うほど無神経でもないが、これまで日常的にはそれを意識することは、あまりなかった。
学校やオフィス街や職場で、信仰や肌の色が違う人々と隣り合わせになった時、「違い」を感じることがあっても、その「違い」に偏見を持つことは少なく、まして優劣の問題とは感じない自分を、そこそこ水平思考の高い人間だと思っていたので、最近の自分に戸惑っている。
爆買い向きの店があるわけでも、世界遺産で観光客を呼び寄せる観光地でもない、一般的な地方都市にも少しずつ増えていると感じられる、異国の人々。
自分が「公」と捉えている空間では気にも留めなかった事が、「私」空間では微妙に(かなり)気になり、政府が進める移民政策にも’’待った’’をかけたくなる自分がいるので、混乱に揺れるアメリカに、「ピルグリム・ファーザーズが建国した経緯を忘れたか」と強く言うことが出来ないでいる。
それは、おそらく理屈ではない。
理屈ではないため、分断されてしまうと修復が難しいのではないだろうか。
ロイター通信が全米で1月30~31日に行った世論調査によると、米入国禁止令に賛成と答えた人が49%であるのに対し反対と答えた人は41%、「大統領令の内容は、大統領が選挙戦の時から約束していたものだが、国民の支持は鋭く割れている」と伝えている。
まとまらない自分の迷いをグダグダ書くよりも、このニュースで思い出した1ページを正確に記し、静かに考えるべきだと思っている。
「真昼の星空」(米原万里) (下記は「真昼の星空」より引用)
~引用開始~
グルジアの居酒屋、店に入ると正面の壁に掲示板があり、日替わりで内容が変わる。
ある日の掲示板
『ようこそ。当店におきましては、お客様は神様です。お客様のご希望は法律であります。それを遂行するためにこそ、当店スタッフ一同は日夜励むものであります。例えば、よく杯にタバコの灰や吸い殻をお入れになるお客様がいらっしゃいますが、そういう方には、さらにご要望にそいたく、灰皿にワインをお入れしてお持ちいたします』と書かれていたりする。
政情不安で何年も行けなかったが、1999年10月、十年ぶりに訪れたときも、扉の正面の掲示板は昔のままだった。
その日、そこに記されていたこととは
『飲酒が宗教を信仰するより優れている八つの理由
一、未だ酒を飲まないというだけの理由で殺された者はいない。
二、飲む酒が違うというだけの理由で戦争が起こった試しはない。
三、判断力の無い未成年に飲酒を強要することは法で禁じられている。
四、飲む酒の銘柄を変えたことで裏切り者呼ばわりされることはない。
五、しかるべき酒を飲まないというだけの理由で火炙りや石責めの刑に処せられた者はいない。
六、次の酒を注文するのに、2000年も待つ必要はない。
七、酒を売りさばくためにインチキな手法を講じるとちゃんと法で罰せられる。
八、酒を実際に飲んでいるということは、簡単に証明することができる。』
これを読みながら、こみ上げてきたのは、苦い笑いだった。
この間、この地帯を巻き込んだ凄惨な民族紛争の多くが宗教絡みだったことを、八箇条は雄弁に物語っていた。
~引用終わり~
週末には、頂き物の日本酒を飲みながら、今話題の「沈黙」(遠藤周作)を読み、静かに考えてみようかと思っている。
私は自分を、そこそこ水平思考の高い人間だと思っていたが、この政策をどのように考えるべきかには迷いがあるので、昨日一番の驚きは、政策の混乱そのものより、政策に異議を唱えた司法長官代理の更迭をツイッターで流すといった手法ということにしておく。
<米入国禁止令への反発続く、国連総長や共和党議員も批判> AFP=時事 2/1(水) 7:22配信より一部引用
ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が出した移民・難民の入国を規制する大統領令に対する反発は、1月31日も政府の内外で広がり続けている。
トランプ氏は前日夜、大統領令の擁護を拒んだサリー・イエーツ司法長官代理を解任。同大統領令に対し政府関係者が取った中で最も反抗的な行為を鎮圧した形で幕を閉じた激動の一夜は、かつてウォーターゲート(Watergate)事件の山場でリチャード・ニクソン大統領が必死の火消し工作を図った様子とも比較されている。
イスラム圏7か国出身者の入国禁止と難民受け入れ凍結を突然指示したこの大統領令については、トランプ氏が自己擁護を展開する一方で、国連から自党の共和党議員まであらゆる方面から批判的な声が上がっている。
トランプ氏側の関係者も含む反対派は、この大統領令は適用範囲が広過ぎる上、性急に発令されたことに苦言を呈している。
国家安保当局の元職員らは、大統領令は米国が宗教を理由にイスラム教徒との対決姿勢を取っているという誤ったメッセージを与えかねないと警告。米国務省では、外交官らが樹立からまだ1週間しか経たない政権に対して相次いで異議を表明する異例の事態となっている。
さらに、大統領令は事実上、イスラム教徒の入国禁止を目的に難民を「宗教検査」にかけるものだとの批判も集まっている。共和党のラマー・アレクサンダー上院議員は、「明らかな宗教検査というわけではないが、われわれ米国人の国民性とは一致しないものに迫っている」と指摘した。
<米入国禁止令の解除要求=「最善のテロ対策でない」―国連総長> 時事通信 2/2(木) 6:09配信より一部引用
国連のグテレス事務総長は1日、難民やイスラム圏7カ国出身者の入国を禁じた米大統領令について「(テロから)米国や他の国を守る最善の方法ではない。効果的な方法とは思わない」と批判した。国連本部で記者会見し、「すぐ解除すべきだ」と要求した。
また「国際テロ組織が米国のような国を攻撃するなら(テロリストに)紛争地域の国のパスポートを持たせて入国させたりせず、先進国のパスポート保持者や既にその国にいる人を使うはずだ」と指摘。大統領令を「テロリストから国を守るため」と説明するトランプ政権の主張に反論した。
「日本は四方を海で囲まれた単一民族国家なので、この手の問題には関心がない」などと云うほど無神経でもないが、これまで日常的にはそれを意識することは、あまりなかった。
学校やオフィス街や職場で、信仰や肌の色が違う人々と隣り合わせになった時、「違い」を感じることがあっても、その「違い」に偏見を持つことは少なく、まして優劣の問題とは感じない自分を、そこそこ水平思考の高い人間だと思っていたので、最近の自分に戸惑っている。
爆買い向きの店があるわけでも、世界遺産で観光客を呼び寄せる観光地でもない、一般的な地方都市にも少しずつ増えていると感じられる、異国の人々。
自分が「公」と捉えている空間では気にも留めなかった事が、「私」空間では微妙に(かなり)気になり、政府が進める移民政策にも’’待った’’をかけたくなる自分がいるので、混乱に揺れるアメリカに、「ピルグリム・ファーザーズが建国した経緯を忘れたか」と強く言うことが出来ないでいる。
それは、おそらく理屈ではない。
理屈ではないため、分断されてしまうと修復が難しいのではないだろうか。
ロイター通信が全米で1月30~31日に行った世論調査によると、米入国禁止令に賛成と答えた人が49%であるのに対し反対と答えた人は41%、「大統領令の内容は、大統領が選挙戦の時から約束していたものだが、国民の支持は鋭く割れている」と伝えている。
まとまらない自分の迷いをグダグダ書くよりも、このニュースで思い出した1ページを正確に記し、静かに考えるべきだと思っている。
「真昼の星空」(米原万里) (下記は「真昼の星空」より引用)
~引用開始~
グルジアの居酒屋、店に入ると正面の壁に掲示板があり、日替わりで内容が変わる。
ある日の掲示板
『ようこそ。当店におきましては、お客様は神様です。お客様のご希望は法律であります。それを遂行するためにこそ、当店スタッフ一同は日夜励むものであります。例えば、よく杯にタバコの灰や吸い殻をお入れになるお客様がいらっしゃいますが、そういう方には、さらにご要望にそいたく、灰皿にワインをお入れしてお持ちいたします』と書かれていたりする。
政情不安で何年も行けなかったが、1999年10月、十年ぶりに訪れたときも、扉の正面の掲示板は昔のままだった。
その日、そこに記されていたこととは
『飲酒が宗教を信仰するより優れている八つの理由
一、未だ酒を飲まないというだけの理由で殺された者はいない。
二、飲む酒が違うというだけの理由で戦争が起こった試しはない。
三、判断力の無い未成年に飲酒を強要することは法で禁じられている。
四、飲む酒の銘柄を変えたことで裏切り者呼ばわりされることはない。
五、しかるべき酒を飲まないというだけの理由で火炙りや石責めの刑に処せられた者はいない。
六、次の酒を注文するのに、2000年も待つ必要はない。
七、酒を売りさばくためにインチキな手法を講じるとちゃんと法で罰せられる。
八、酒を実際に飲んでいるということは、簡単に証明することができる。』
これを読みながら、こみ上げてきたのは、苦い笑いだった。
この間、この地帯を巻き込んだ凄惨な民族紛争の多くが宗教絡みだったことを、八箇条は雄弁に物語っていた。
~引用終わり~
週末には、頂き物の日本酒を飲みながら、今話題の「沈黙」(遠藤周作)を読み、静かに考えてみようかと思っている。