
簾がかかっているのは小料理屋。路地が残っているところは、古い民家がまだまだ散在する。人が住んでいないところも多くなってるが。昔は高いところから釉黒瓦と雪とのコントラストが望め、寺や屋敷とあわせて、城下町としっかり確認できた。場末では、屋根に瓦がなく、屋根に石がのっかかていた通りもあった。火事になるとメラメラと燃え上がるから大変無用心というか怖いと母親がよく言っていた。高度成長期には全ての民家に瓦が乗っかった。この昔の民家は見たとおり、2階が低い。元住人は頭がつかえるし、1階のかも居には頭を打った経験がある。
雪の兼六園を見て越前カニを食べようと金沢にやってきた。雪が積もっていては車の運転には不安がある。今は観光シーズンのオフ期だからと観光タクシーをチャーターすることにした。
黒塗りの観光タクシーで3日間貸切で幾ら走ってもOKで8万円と決めた。運転士はもともとは映画などの撮影カメラマンだったとか。明るい良く喋る人だった。
もう金沢には何回も来ているので、何処か観光客が余り行かない良い所は無いかと訊くと、当浪人が一眼レフカメラを持っているのをみながら、そこに案内してくれたのである。
場所はどの辺りだかわからないが、観音院と言ったように思うが、その境内のお墓群が切れたがけっぷちのところからの展望はなかなかだった。
浅野川沿い黒々とした瓦屋根が重畳と続いている。
寺の下に見えるのは東茶屋街あたりだろうと言う。雪が少し積もっていたせいか、確かにこのときは観光客は全く来なかった静かに連なる瓦屋根を楽しむことが出来た。
10数年前はもっと黒々としていたんですよ、と運転士が言っていたけど、もうあれから10数年も経ってしまっている。
あの浅野川沿いの瓦屋根の風景は今も残っているだろうか。