沼野充義はこう評している。
「スキャンダラスな性愛を描いた小説として読まれることが多いが、実は『古いヨーロッパ』が『若いアメリカ』に誘惑されるという構図の、二十世紀的亡命文学として読める」(沼野充義「『二〇世紀の夢』を読む30冊」『群像・2024・4・P.98』講談社 二〇二四年)
どんな著作か。
ウラジーミル・ナボコフ「ロリータ」若島正訳、新潮文庫、2006(1955)
三月二十二日に発生したロシアのモスクワでのテロ。二十三日アメリカ政府は「IS関与」として声明を出した。
しかしアメリカはもう若くない。国内のあちこちで疲弊した惨状を覆い隠すことひとつできていない。
一方、沼野充義のいう「『古いヨーロッパ』が『若いアメリカ』に誘惑されるという構図」は今なお有効だとおもっている。とすれば「古いIS」が「若いロシアに誘惑され」た、と見てもいいように思える。タイミングが良過ぎるとも思わない。逆説的にいえば順当なコースにさえ見えてしまう。
またウクライナ、パレスチナときて、そろそろ次が起こりそうな時期だと予想していたのは東西冷戦時代を知っている人々だけではないだろう。というよりウクライナ、パレスチナはもとより火種を抱えていたのであって、もっと足元の日本国内で起きている沖縄基地問題は連日大問題だということをあっさり忘れ去ってしまうことはできない。