ヴァン・デ・コーク教授の The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』
第12章。「思い出すのが,耐えられないほどの重荷」です。p.192,最後のパラグラフから。
抑圧された記憶の一番興味深い研究は,リンダ・メイヤー・ウィリアムズ博士の手になるものでした。その研究が始まったのは,彼女がペンシルベニア大学の社会学部の大学院生だったころで,1970年代初めでした。ウィリアムズさんは,10歳から12歳の女の子で,性的虐待治療する病院の救急室に入院する206名に面接したんです。実験室での検査もやって,子どもらと親たちの面接もして,病院のカルテに記録を残しました。7年後,ウィリアムズさんは,その内136人の子どもの,といっても,もう大人でしたが,追跡調査ができて,再び面接をしました。三分の一以上(38%)の女性が,カルテに記されていた虐待を思い出すことができなかったのに対して,15人(12%)の女性しか「子どものころに虐待されたことはありません」と言いませんでした。実に3分の2以上(68%)の人が,子供のころの性的虐待について別の事件のことを話しました。性的虐待されたのがもっと幼かったり,知り合いから性的虐待されたりした女性は,自分が虐待されてたことを一層忘れてしまいやすかったんです。
いま,NHKのテレビ小説「ひよっこ」で,お父さんが記憶喪失で苦労してますね。1964年の時代設定ですから,アメリカでも記憶喪失について研究されてない頃です。ですから,病気の説明が正確にされていた「ひよっこ」の番組は,時代考証に大きな誤りがあることが,ヴァン・デ・コーク教授のおかげで分かりました。とにかく,NHKは間違いが多すぎて,しかも,訂正もしないのは,爆笑問題ではなくて,大問題ですね。
横道でしたが,このウィリアムズさんの研究が,記憶喪失の初期の重要な研究となったんでしょう。
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