#聖書の言葉 #単独者の恵み #すごく善い言葉のありか
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「発達トラウマ障害 Enpedia」
をご参照ください。
ヴァン・デ・コーク教授の The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『大切にされなかったら、意識できなくても、身体はその傷を覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』 は,翻訳が終わりましたが,印象的な言葉を適宜拾ってみようと思います。
p.119のブランクから。
今朝は,p.121の,第3パラグラフ,7行目から。
心が途方に暮れていると
良心的な両親でも不安になることが多いのは,アタッチメント研究によって,ときどき子どもに我慢ならないことや,うっかりしてこどもに調子を合わせることができない事が,一生残る傷を子どもに残すんじゃないか,と心配になるからです。実際の暮らしの中では,誤解や思い違いや分かり合えないこともありがちでしょ。お母さんやお父さんが赤ちゃんのサインを見落としたり,他のことにかまけたりしていますから,赤ちゃんは自分で自分を落ち着かせる方法を自分で編み出します。限度内であれば,問題はありません。子どもたちは,満足できなくても,ガッカリしても,何とか折り合うようになります。「善い」お母さんと一緒なら,子どもは,気まずいことがあっても,絆は直るということを覚えます。白黒が付くのは,子ども達がお母さんと一緒に居て安心,という気持ちに,腑に落ちることができるのか否か,ということです。
「普通の」中流家庭の2000人以上の赤ちゃんの中でアタッチメント・パターンを調べた研究では,62%は安心してくっ付くパターン,15%が,お母さんを避けてくっ付けないパターン,9%が,お母さんに不安なまま(2つに引き裂かれながら、と言ってもいい)くっ付けないパターン,15%が,お母さんに途方に暮れてくっ付けないパターンでした。面白いのは,男女差や生まれ持った気質は,アタッチメント・スタイルには,ほとんど影響しなかった,ということです。たとえば,「難しい」気質の子どもでも,途方に暮れるスタイルになるとは限りません。低階層の子どもでは,お母さんに途方に暮れてくっ付けないパターンになりやすく,それは,両親が経済的に苦しく,また,家族がバタバタしてして,大変な苦労をしているからです。
赤ちゃんの頃に安心できなかった子ども達は,大人になっても,自分の気分や気持ちの出し方を思い通りにするのが難しいんです。幼稚園までは,途方に暮れている赤ちゃんは,怒ってばかりいるか,あるいは,他の子から離れて関わらないようにするかで,その後,いろいろな心の病になります。途方に暮れている赤ちゃんは,また,生理的にも苦しんでいて,心拍数に現れるように,心拍数は大きく上下し,ストレスホルモンが大量に出て,免疫機能が落ちます。生理反応がうまくできない子ども達は,子どもが育つにつれて,正常になるんでしょうか? それとも,安心できる大人がいるところに引っ越せるのでしょうか? 私どもが知る限り,こういう子等は正常になることもなければ,引っ越しもできません。
親から大事に育てられませんと,子どもが途方に暮れるだけじゃあありません。親自身が自身のトラウマを抱えていますから,自分の気持ちをコントロールできませんし,心豊かな慰めや見守りを,一貫して子どもにプレゼントすることもできません。親が抱えているトラウマとは,子どもの頃粗末に育てられたり,性的に弄ばれたり,あるいは,最近親兄弟がなくなったり,ということです。どんな患者さんでも,子どもを安心して育てるのに役立つ支援で,手に入る支援は全て必要ですが,特に粗末に育てられた(訳注:発達トラウマ障害の)患者さんは,特に,子どもが求めていることに,息を合わせるために支援が必要です。
親が分かっていないことが多いのは,自分が(訳注:子どもに)息を合わせていない,ということです。ペトリア・べーベが見せてくれたビデオを今でも鮮やかに覚えています。そのビデオは,お母さんが生後3か月の赤ちゃんと遊んでいるものです。全てがうまくいっていても,赤ちゃんが尻込みして,頭をよそに逸らすことがあります。お休みが必要です,というサインです。でも,あ母さんはそのサインがくみ取れないので,赤ちゃんにもっと関わろうとますます頑張ることになります。お母さんは赤ちゃんに顔を近づけたり,もっと大きな声で話しかけたりして。赤ちゃんがさらに尻込みしても,お母さんは赤ちゃんを揺らしたり,つついたりし続けます。しまいには,赤ちゃんは大声で泣きだします。赤ちゃんが大泣きすると,お母さんは赤ちゃんを床に下して,ガッカリした顔をしてその場から立ち去ります。お母さんは「嫌だなぁ」と感じているのは明らかですが,お母さんができなかったのは,赤ちゃんのちょっとしたサインを見逃しただけなんですよ。このようなちょっとしたサインの見逃しでも,何度も何度も繰り返されたら,お母さんは「もう知らない」という気持ちにいつもなりやすい,と思いません? (夜泣きをする赤ちゃんや動きが激しい赤ちゃんを育てている人ならどなたでも,何をやっても上手くいかないことが,どんなにストレスになるか,を善くご存じです)。日々赤ちゃんを落ち着かせることができずに,陽気で楽しい歓びで赤ちゃんと向かい合うことができないため,そのお母さんは,「この子は私にダメだしする子だ」と感じてしまいます。
治療の中で,お母さんに途方に暮れてくっ付けないアタッチメント・パターンの結果が問題なのか,トラウマの結果が問題なのかを区別することができません。こと2つ結果は絡み合っているからです。私の仕事仲間のレイチェル・イェフダは,性的に弄ばれたり,レイプされたりした,大人のニューヨーク市民のPTSDの割合を調査研究しました。ホロコースト後にPTSDになったお母さんは,トラウマ体験の後に,重たい心の病になる割合が,優位に高いことが分かりました。これを説明する一番理に適った説明は,生い立ちのために,育ちが粗末になり,暴力を受けた後にバランスを取り戻すことが難しかった,ということでしょう。イェフダが気付いたことは,2001年に(訳注:マンハッタンの南部にあった)世界貿易センターの大惨事に妊婦さんのお子さんたちにも,育ちが粗末になる同じ脆さがある,ということでした。
同様に,痛みのある出来事に子どもがどう応じるかは,その子の親がその子を落ち着かせるのか,それとも,ストレスを掛けるのかに大いに関わります。私の以前の学生で,いま若年者精神科部門の局長をしている,グレン・サックスによれば,重たい火傷で入院した子でも,PTSDになるか否かは,その子がお母さんと一緒にして安心できるかどうかで,予見できる,と言います。お母さんに安心してくっ付く安心は,たくさんのモルヒネに匹敵しますから,痛みをなくすことができます。お母さんに安心してくっ付く安心が豊かになればなるほど,鎮痛剤は無用になります。
もう一人の仲間,クラウデ・ケムトブは,ニューヨ~ク大学付属ランゴーン医療センターの家族トラウマ研究計画部長ですが,911のテロリストの攻撃を直接目撃した112人のニューヨ~ク市の子どもの調査研究をしました。調査中にPTSDやうつ病になっていたお母さんの子どもは,情緒障害になる子が6倍,自分の体験に対して過剰の攻撃的になる子は11倍になることが分かりました。お父さんがPTSDの子ども達は,問題行動をすることが分かりましたし,ケムトブが気付いたのは,これは直接的なものではなくて,お母さんを介してのものだ,ということでした。
子ども対するお母さんの影響力は,男性に残念かもしれませんが、お父さんとは比べ物にならない,ということでしょう。