「光の子どもの家」の教育方針
児童養護施設「光の子どもの家」理事長 菅原哲夫さんのインタヴュー、先日このブログでも取り上げましたから、覚えておられる方も多いと思います。先日触れなか...
ちょうど一年前の「光の子どもの家」のブログ。愛着障害の子どもに対する、素晴らしい実践をご紹介しましたね。児童精神科医も児童養護施設の職員も、教員も、臨床心理士も、トラウマ研究の大学教授も、愛着障害のことを知らない人がビックリするほど多く、極々少数の良心的な人、たとえば、先日の心理臨床学会で、愛着障害のケアについてお話下すった、杉山登志郎さんとか、横浜市戸塚区の「子どもの虹情報研修センター」の増沢高さんのような人たちが、そのケアに当たっているくらいですね。愛着障害の対応(「治療」とか、「教育」とは呼べないので、「対応」としました)は、学校でも、児童施設でも、精神科医も、PTSDを研究している大学教授も、愛着障害の子どもの気持ちや脳の変異を無視して、自閉症やADHDと誤診して、ADHD向け精神科薬のコンサータなどが処方し(児童精神科医)、発達トラウマと震災トラウマの区別もできず(大学教授ら)、アメリカ精神医学会やアメリカ児童虐待専門家協会(APSAC)が、「やってはならない」=「禁忌」だとしている、「ルールや日課等の正しいことを押し付ける」ことをしている(教員と施設職員)場合が、圧倒的多数なのが、日本の許されざる、悲しい現実なんですね。その中にあって、マインドフルネスやEMDRを学んでないと思われる「光の子どもの家」の施設職員らが、徹底的に肯定的な言葉や肯定的な態度(「あなたに会えて、良かった」)のシャワーを、愛着障害の子どもに与えているのは、優れた実践として、ご紹介したのが、昨年今日のブログでした。
一昨日ご紹介した、ヴァン・デ・コーク教授のThe body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『虐待されたら、意識できなくても、身体は覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』にも、アメリカ版「光の子どもの家」が紹介されています。それが、スティーヴ・グロス(Steve Gross)です。スティーヴは、トラウマセンターの遊びのオジサン(年が分からないので、遊びのニイチャンかもしれません)です。スティーヴは、いつでも明るい色のビーチポールを持っているそうです。そして、いつもピカピカの笑顔を、重たい愛着障害の子どもに、チラリと向ける(英語では、これをflash フラッシュ と言います。ここは、he would flash them a big smile.)ようです。でも、重たい愛着障害の子どもは見て見ぬフリ…。スティーヴは、しかし、それで諦めるような支援者ではありません。しばらくしてから、カラフルなビーチボールを、その愛着障害の子どもの近くに「たまたま」落として、そのボールを返してもらうみたい。でもその子は、気乗りのしない感じでボールを返すだけ…。でも、そんなやり取りをしている内に、次第にやり取りができるようになって、その子もスティーヴも、笑みを交わす仲になるそうですね。リズムよく子どもの気持ちに合わせることを繰り返して、小さな安全な場をスティーヴは、作り出します。そこでその子が人と関わることを学んでいくわけですね。
日米の「光の子どもの家」に共通していることは何なのか? 理論や今までにこだわらずに、≪いまここ≫にいる子どもと誠実に向かい合うことで、子どもが必要なことを、≪いまここ≫の子どもから学んでいくことです。それが、直感のなせる業ですね。臨床的な直感です。私に言わせたら、この臨床的な直感が、生活のハビットになってる人は、独特の良い香りがしますから、すぐにそれと分かります。やり取りの出来ない悪臭の人も一方ですぐに分かるんですが、芳香の人も、同様にすぐに分かります。
この芳香が、愛着障害の子どもには必要ですし、この芳香こそが、愛着障害を癒すことは、日本でもアメリカでも、違いがありません。