先日のヨーヨー・マさんも天才ですけれども、この五嶋みどりという人も天才でしょう。「社会福祉にも関心が深い天才音楽家」くらいのことしか知りませんでしたが、今回「プロフェッショナル 仕事の流儀」のプログラムを録画で見て、素晴らしい! と思いましたよ。
五嶋みどりさんが大事にしていることは、「自分と向き合うこと」。
本物は違いますよね。自分と向き合うことなしに、「本物」なんて、ありえない。その自分が「本当の自分」ですから、「本当の自分」と向かい合わずして、本物なんてありえないでしょ。「自分は偽物ですけれども、作品は本物」なんてことは絶対にない。
音は、じゃぁ、どこから現れるのか。ウァイオリンと弓で出すのが音じゃぁ、ない。五嶋みどりさんは、「音は自分の中から」聴こえてくるものだと言います。Find your voice. ですから、内側から聴こえてくる音を、表現するのが、演奏だということになります。
「自分を出す」と「出る杭は打たれる日本」でしょ。「自分を出す」には通常、勇気が必要です。でも、五嶋みどりさんのように、出る杭の出方が、「出過ぎ」だと、打ちようもないんでしょうね。かのバーンスタインが、世界が、認める存在です。
「自分を出す」時に五嶋みどりさんが気を付けていること。それは「素直」だと言います。そりゃそうでしょうよ。でもね、この「素直」になるために、年がら年中、「ドレミ」からウァイオリンを練習している。イチローとも通じる、徹底的な基礎の練習の繰り返し。まるで修道僧か、雲水か。それは、練習を通じて、「欲をそぎ落としていく」ことだそうですね。欲があると、「本当の自分」が素直に出ることにはならない。「欲」があると、出てくるのは、素直な「本当の自分」じゃぁなくて、「厚化粧の自分」だったり、「見てくれのいい自分」だったり、「武装した自分」だったりしますでしょ。
「素直」と言っても、ですから、何もしないことじゃぁない。努力に努力を重ねた上で初めて与えられるもの。セレンディピティなのかもしれませんよね、「素直」もね。
自分を出すことはどういうことなのか? 自分を出すことは素晴らしい、などといろいろと感じ、考えさせられて、非常に愉快です。
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