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ヴァン・デ・コーク教授の The body keeps the score : brain, mind, body in the healing of trauma 『大切にされなかったら、意識できなくても、身体はその傷を覚えてますよ : 脳と心と身体がトラウマを治療する時どうなるか?』
6章。「身体を失くすと,本当の自分も失くすよ」,p.100の第4パラグラフ,5行目途中から。その前も一緒に。
気持ちを表す言葉をなくすこと,アレキサイミア:いろんな気持ちを示す言葉が全くない
私には夫を亡くした叔母さんが一人いまして,痛ましいトラウマを負わされた成育歴のある人でした。その叔母さんは,我々子どもにとっては,実際にはおばあちゃんでした。その叔母さんはよく訪ねてきて,たくさんのことをしてくれました。カーテンを作ってくれたり,台所棚を配置換えしてくれたり,子どもの服を作ってくれたり。しかも,とても無口でした。叔母さんは人を喜ばせることに熱心でしたが,何が楽しいのかは分かりませんでした。楽しいことを互いに楽しんで,数日した後,会話が途切れて,長い沈黙を埋めるのに苦労しました。おばさんの訪問の最後の日,私は叔母さんを空港まで車で送りました。空港では,おばさんは,お別れのぎこちないハグをしながら,涙を流しました。皮肉ではなくて,叔母さんは,ローガン国際空港の冷たい風のせいで,涙ができるわ,とこぼしました。叔母さんの身体は,悲しみを感じていたのですが,おばさんの気持ちはそれが分らなかったんです。叔母さんは,若い夫婦の我が家,一番近しい健在の親戚を,離れていきました。
精神科医はこの現象をアレキサイミアと呼びます。ギリシャ語で,様々な気持ちを表す言葉がない,という意味です。トラウマを負わされた子ども等も,大人たちも,自分が何を感じているのかわからないのは,体感の意味が分からないからなんです。トラウマを負わされた人は,子どもでも大人でも,怒り爆発していても,「怒ってませんから」といいますもんね。怖そうな顔をしていても,「平気です」といいますしね。自分の身体が感じていることが分かりませんから,自分が必要と感じていることにも,無関心ですし,自分のことを気にかける試しもありません。それで,ちょうど善い時に,ちょうど善い程度に食べることもできませんし,必要な睡眠もとることもできません。
私の叔母みたいに,アレキサイミア(失感情語症)の人たちは,自分の気持ちを言葉にする代わりに,身体,態度で気持ちを示します。「時速100キロでトラックが突っ込んで来たら,どんな気持ちでしょうか?」と訊かれたら,たいていの人は,「そりゃ,怖いでしょ」,「恐怖で凍り付くわ」と応えるでしょう。アレキサイミア,失感情語症の人は,「どう感じかる? さあね,…ヒョイと避けたでしょ」という具合です。アレキサイミアの人たちは,様々な気持ちは,気にしたほうがいい何かのサインではなくて,身体の病気になってしまいがちです。怒ったり,悲しがったりするのではなくて,アレキサイミアの人たちは,筋肉痛,お腹の不調,その他,原因不明の様々な身体症状となってしまいます。
アレキサイミアの人たち,発達トラウマ障害の人たちは,いわゆる心身症,現在は身体表現性障害になる場合が多いです。身体表現性障害の一つ一つを追いかけても,うまくいきませんから,根っこのトラウマを治療しなくてはなりません。
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