福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

いちばん幸せな聴衆 スターバト・マーテル終わる

2015-06-10 11:30:08 | コーラス、オーケストラ


昨夜の第2夜をもって、エリシュカ先生&大阪フィルのドヴォルザーク「スターバト・マーテル」が終わった。

感無量である。

合唱団は、わたしの高く難しい要求に、短期間で応えてくれた。もちろん、まだ道半ばではあるけれど、今回は合唱団の変容していくプロセスがとても楽しく、大きな手応えを覚えた。

エリシュカ先生の芸術を間近に接することのできた歓びは一生の財産だ。その精神と肉体には、古よりつづくヨーロッパ、チェコ音楽の伝統が息づいており、文字で知ることの出来ない大事なことを、魂と魂によって感じることが出来たのである。

その伝統を知るマエストロから、東洋の異国の合唱団の歌うドヴォルザークが絶賛されたことは大きな自信となった。

また、首席客演コンサートマスター 崔文洙(チェ・ムンス)さんは、大学時代からの盟友。こうした幸せな形で再会を果たし、共演できたことは本当に嬉しい。彼の力なしに今回の名演はなかった。

4人の独唱陣も、東京ジングフェライン、長岡混声、富士ベートーヴェン、東大和「メサイヤ」などでわたしとの共演経験ある方々ばかり。そのご縁の大切さを痛感した。
魂を燃やしながら歌う半田さん、母のような包容力で魅せる手嶋さん、まさにヒーローと呼ぶべき望月さん、圧倒的な声量で聴く者を癒やす青山さん。
この四者のバランスが絶妙であった。

さて、2日目のパフォーマンス。
初日については60点と書いたけれど、決して悪い演奏ではなかった。しかし、2日目の気高き高揚感は只ならぬものがあり、多くの聴衆に熱い感動を与え、涙を誘ったのである。

わたし自身、2日目は合唱指揮者としてではなく、ひとりの聴衆として、
この名演を堪能することができた。

おそらく、あの広い大阪フェスティバルホールの客席にあって、わたしはもっとも幸福な聴衆であった。

ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」への愛情、エリシュカ先生への敬慕、そして合唱団への誇り。他の誰にも劣らないという自負があるからである。

ともあれ、客席合唱指揮者としてのお役目は無事に果たすことができた。井上道義先生へのご恩返しのひとつとなったなら本望である。