福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

エリシュカ先生入魂のブラームス

2015-06-20 21:42:14 | コンサート
本日、午後2時からは昨夜の再演。
前半のベートーヴェン4。昨夜は弦の鳴りが薄い、浅い、と思わないでもなかったが、今日は終始充実の響き。

エリシュカ先生の指揮も昨夜に較べて、二周りくらい余裕があって、速めのテンポが設定された後半2つの楽章、上滑りのない落ち着いた風格の漂うのがよかった。
前半2つの楽章も、古典的なフォルムを構築しつつ、自由な息遣いによってスコアに命を吹き込むという、まさに大家の棒。

ブラームス4番は、月並みな表現で恐縮ながら入魂の演奏。大阪のドヴォルザークでは、ピアニッシモからピアノの繊細の際立ったマエストロの棒が、ここでは魂を全開にしてブラームスの憂愁に共鳴している。
両端楽章のクライマックスに向かう高揚感も尋常でなかったが、秋の黄金の豊穣を思わせる第2楽章のカンタービレも忘れがたい。これぞ、まさに人生の実りである。

両演奏を聴き終えたこの充足感、安心感は何なのだろう?
それは古より受け継がれてきたヨーロッパ音楽の伝統が息づいていたからに他ならない。青春時代より、ヒストリカルもののレコードたちによって育まれた我が音楽的感性が故郷に帰ったような懐かしさに震えるのである。

札幌交響楽団も万全の態勢でエリシュカ先生の指揮に応えていた。コンマス・大平まゆみは、マエストロの心に寄り添いながら、オーケストラ全体を暖かくリードしていたし、フルートを筆頭に木管も美しく、ブラームスでの肺腑を抉るトロンボーン・セクションも見事。そして、ゲスト出演の菅原淳によるティンパニが名人の域で演奏を支えていた。

週末の自分のレッスンをキャンセルするのもどうか、と思ったりもしたが、札幌まで来た甲斐はあった。レッスンの振替はできても、エリシュカ先生のコンサートには換えがない。人生は一期一会。楽屋での再会も心から嬉しいものであった。



さあ、次にエリシュカ先生とお仕事する機会が与えられるなら、どの作品がよいだろう?
今日の4番を聴いてしまうとブラームス「ドイツ・レクイエム」に心が傾くし、あの「スターバト・マーテル」を思うとドヴォルザークの「レクイエム」を望みたくもなる。うーん、 どちらも捨て難い・・(勝手な妄想)。

写真は、終演直後の楽屋にて、通訳のプロハースカ尚子さんとともに。

追記
開演前のロビー・コンサートも実に素晴らしかった。
モーツァルト: 協奏的大六重奏曲 変ホ長調より第1楽章。とは、あのヴァイオリンとヴィオラのソロによる協奏交響曲のアレンジ。
大平まゆみと青木晃一のソロに魅せられた。