福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

第1ラウンド エッシェンバッハの「ロマンティック」再び

2019-06-23 23:10:02 | コンサート


ほぼ諦めていた本日のエッシェンバッハ&エルプフィルのブルックナー「ロマンティック」のチケットが正規ルートで手に入った! 暇さえあれば、スマホでチェックしていたところ、昨夜10時過ぎにヒットしたのである。何事も諦めてはいけない。

というわけで、2019年6月23日(日)は、演奏会のトリプルヘッダーということになった。我ながら濃い1日であったなぁ。

第1ラウンド
11:00 エルプフィルハーモニー
エッシェンバッハ&NDRエルプフィル 
ショスタコーヴィチ: チェロ協奏曲第1番 
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

第2ラウンド
16:00 エルプフィルハーモニー
ケント・ナガノ& ハンブルク・フィル
メシアン: 世の終わりのための四重奏曲
ブルックナー: 交響曲第9番

第3ラウンド
19:00 ライスハレ
カンブルラン指揮 ハンブルク響
ヴェーベルン: パッサカリア
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
マルタ・アルゲリッチ pf
チャイコフスキー: 交響曲第5番

ケント・ナガノの終演予定は18時35分でハンブルク響の開演まで僅か25分。間に合わない可能性もありヒヤヒヤしたが、タクシー乗り場で横入りしようとするご婦人二人組より先にドアノブを掴んで乗り込み、ギリギリセーフとなった(笑)。気迫の勝利。当地では、タクシー乗り場であろうとドリンクカウンターであろうと、真面目に並んでいると、どんどん順番を抜かれるので、ある程度、強硬突破しなくてはならないことを覚えたのである(平時なら、少々お譲りしますが、本日ばかりはご容赦あれ)。



本日の座席は写真のご婦人が座ろうとしている右隣である。15階Kブロック3列目5番ということになる。クルレンツィスを聴いたのが同じブロックの2列目28番ということで、このブロックの最も上手寄り(ステージに向かって右)、しかも、やや屋根の被っていたところなので、本日の方が好条件であった。さらには、2列目までは前方の柵が視界の邪魔になるので、3列目はベストかも知れない。



エッシェンバッハ指揮NDRエルプフィルの演奏については先日絶讃したばかりだが、本日も大いに感動した。とにかくブルックナーの音楽にどっぷり浸れる至福、これに勝るものはないのだ。

平戸間の前から2列目と実質4階席では、当然ながら聴こえ方は違う。前者では、弦の囁きが美しかった。さらに、どんなに金管群が咆哮しているときでも第1ヴァイオリンの音型がすべて聴きとれる稀有の歓びをも味わったが、後者では細かな音型は音の塊となってしまう。その見返りとして、全体のバランスの美しさ、木管および金管群の存在感が増し、響きの法悦感が倍増する。

特に印象に残ったのはホルン。
前半のショスタコーヴィチでも、その驚異的なソロを披露したクラクディア・シュトレンカートの音をどうお伝えしたらよいのか?
その音の分厚さ、深さ、輝き、歌心など、いくら誉めても、まったく足りそうにない。恐るべきホルン奏者であり、その凄さを思い知らされたのは本日の座席である。



ただひとつだけ残念だったのは、わたしの左の方向から、補聴器のハウリングする音が絶えず漏れていたことである。休憩後に少しは止むことを期待したが、ブルックナーの前半は絶好調だったようで、その持続する電子音を意識から遠ざけるには相当なエネルギーが必要だった。音響の良いホールだけに、客席のノイズもよく響いてしまうのだ。

因みに、エルプフィルハーモニーでは、開演前にスマホの電源を落とせ等のアナウンスは全くない・・。

と書いて、いま思い出した!

ショスタコーヴィチをはじめるべくエッシェンバッハがタクトを掲げようとしたとき、16階の左サイドよりスマホの着信音が盛大に鳴り響いた。怪訝な顔をして振り向くマエストロ。とそのとき、ピッコロ氏がその音型を真似て吹いてみせた。なんたる妙技! 満場の拍手喝采に、殺伐としかけたホールの空気が緩んだ。ふと心和む瞬間であった。