明鏡   

鏡のごとく

「アメリカ土産」

2017-01-22 23:43:52 | 詩小説


なぜか、家族へのアメリカ土産にトランプを買って帰ったのを思い出す。

空港で歴代のアメリカ大統領の顔入りのチョコレートと一緒に。

帰る前日に、歴代の戦闘機や各国の戦闘機を展示している施設へも足を運んだ。

セキュリティーは厳しく、荷物を調べられて、レゴのおもちゃとアメコミを見つけた係りの人が、

いいものを手に入れたな。

とニヤッと笑って言った。

これもアメリカ土産。

かつては動いていた戦闘機の展示は戦いの記憶の墓場で、如何にもこうにも、土産にはならなかったが。

B-29はあった。ガタがきて、奥にしまわれているという、エノラ・ゲイではなかったろうが。

当時の最先端の技術を駆使した爆撃機。

日本の戦闘機も威圧されるように小さいながらも、頑強に、そこにあった。

戦いはいつの時代にもあったのだが、それでも、平和にしていくことはできると思うことは無駄ではない。

あそこまで行き着いて、そう思うことにした。


その夜の、最後の晩餐は、豆のスープとサラダとアンガスビーフ?とビール。

戦争の圧倒的な記憶を見せつけられた後でさえ、アメリカは嫌いにはなれない、と夜の庭と横を走る車を見ながら、そう思った。

私たちは、少なくとも、もう戦うことをやめて、自転車に乗ってアメリカの行きたいところを走り回ることができていた。

地下鉄も、バスも、電車も使って。

道を尋ねることで、人と話した。

皆、優しく丁寧に行く先を教えてくれた。

アメリカに住んでいる道行く人が、あるいは答えてくれる人が、好きだった。

そこに住んでみたら、住んでいる人の答えようのない思いも、わかるのかもしれないと思いながら。

少なくとも、訪れた国は、自分の一部になりえるのだと。

どこにいても、自分の中に組み込まれていくのだと思いながら。

愛着を伴って、走り回ったのだ。

遠くから、見ているだけではわからないことが多すぎると思いながら。


願わくば、争いで遠くから死を思うのではなく、そこに住む人と会うことでお互い生き続けられることを。