宮城県東松島市にある清泰寺(せいたいじ)の小池康裕住職(75)が、2003年の県北部連続地震や東日本大震災で被災した檀家(だんか)らのため仏像を彫り続け、震災6年の11日、1000体目が完成する。小池住職は「1000体は節目だが、今後も犠牲者遺族の心を支えたい」と鎮魂のためにノミを持ち続ける。
暖房もなく冷え込む清泰寺本堂脇の制作小屋。小池住職がお経を唱えながら、ヒノキに当てたノミを木づちで打ち、高さ40~50センチほどの仏像を彫り込む。表情はどれも穏やか。「犠牲者のため思いを込めてね」と言葉少なに語る住職の右手中指は、第1関節が木づちやノミの持ちすぎで曲がっている。「彫りすぎが原因。左手もしびれる」と苦笑する。1日8時間以上、作業することもある。
約250年前に建てられた本堂は、03年7月26日の最大震度6強の県北部連続地震でほぼ全壊。死者は出なかったが、県内で675人が負傷した。檀家らを励ますため、壊れた木材などで仏像を彫り始め、600体を制作した。
11年の震災で寺の建物の被害はほとんどなかったが、市内は関連死を含めて死者・行方不明者1134人に上り、肉親を失った檀家も多い。「像を近くに置き、亡くなった人が一緒にいると思い続けることが大切」と制作を再開した。
妻と娘、孫2人を津波で失い、仏像を渡された男性(78)は「寺にはよく足を運び、励ましてもらった。仏像もありがたい」と話す。震災後の制作は400体近くになり、七回忌の今月11日に合わせて、1000体目となる仏像を仕上げる。
市内でも被災者の住環境は改善が進む。だが小池住職は「犠牲者への愛情を持ち続けることが本当の復興と思う」と話す。1000体で終わりではなく、檀家のために生涯、制作は続ける。【野口麗子】
毎日〜〜〜〜〜〜