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〔 温泉地巡り 〕 川治温泉

<プロフィール>
川治温泉は五十里湖からの男鹿川と奥鬼怒からの鬼怒川本流が合流するところ、鬼怒川温泉よりひときわ山ぶかい立地にあって、昔から“傷(けが)の川治、やけどの滝(鬼怒川)”といわれて、多くの湯治客を集めてきました。比較的大型の旅館が多いですが、鬼怒川よりはしっとりと落ち着いた雰囲気の温泉地です。
かつての玄関口は東武鬼怒川線「鬼怒川温泉」or「鬼怒川公園」駅。1986年10月、野岩鉄道が開通し「川治温泉」駅が開設されて、さらに鉄道の便もよくなりました。

 
【写真 上(左)】 遊歩道から温泉街
【写真 下(右)】 旧川治橋から下流方向

現在の宿数は約15軒。近年は団体客の集客に苦戦しているようで、旅館のなかには破産手続き進行中(営業は継続)のものもありますが、温泉地をあげて活性化にとり組み、地元農産物をつかった全旅館共通料理(鬼子蔵(きしぞう)汁、とばっちり他)なども企画されています。
男鹿川の河畔にある露天風呂「薬師の湯」は古くから「岩風呂」の名で親しまれ、いまも多くの浴客を迎えます。
歓楽温泉の鬼怒川、秘湯の湯西川に挟まれて、やや個性に乏しい感もありますが、豊富な湯量とおだやかな泉質をもとめて訪れる固定客も多いようです。

*ここは祖父が好きで、子供のころ夏場によく連れてこられたので個人的に思い出ぶかい温泉地です。

鬼怒川・川治温泉観光協会
川治温泉旅館組合


【写真 上(左)】 柏屋付近
【写真 下(右)】 薬師の湯の看板

<歴史>
天和三年(1683)、日光大地震(一説に大風雨)による葛老山の山崩れでできたせき止め湖は、江戸から五十里の距離にあることから五十里湖と呼ばれました。災害による脆い堰堤でてきた湖ゆえ決壊のおそれがあるため、会津藩五十里関筆頭役人高木六左衛門は、困難な自然ダム湖の掘割り工事に挑みましたが成就せず、責を負って切腹しました。40数年後の享保八年(1723)、夏の大雨によりついに五十里湖は決壊し、下流に大洪水を引き起こしました。これが宇都宮でさえ三尺に及ぶ出水を記録したという、歴史に残る五十里洪水です。

川治温泉はその洪水が引いたあと、筏乗りをしていた多平、伝次郎の二人によって発見されたお湯といわれます。会津西街道の脇道である川沿いの道(川路)にあったため「川路」が転じて川治温泉になったと伝えられています。
また、「登隆館」の館内掲示には「享保三年(1718)嵐の夜、五十里湖が大決壊した数ヶ月後、鬼怒川と男鹿川の合流点の沿岸に数しれない蛇の群がりがありました。驚いて近づいてみると温かい水が湧き出ており、それが源泉となっています。」とありました。

ながらく湯治場として栄え、戦後の高度成長期には交通の便を活かして鬼怒川とともに隆盛を迎えましたが、バブル崩壊後は団体客ばなれや足銀の破綻など苦戦がつづきます。
しかし、最近、川治の持ち味である豊富な湯量と湯質やわらかなお湯が次第に見直されつつあるように思います。


【写真 上(左)】 登隆館の浴槽
【写真 下(右)】 蘭綾の露天

<温泉>
温泉好きのあいだでは川治温泉の源泉はナゾが多いとされています。それは分析書に「共同浴場源泉」「共同源泉」という源泉名が多くみられ、では集中管理泉かというとそうでもなさそうで、なにがなにやらわからなくなっていくからでしょう(笑)。また、本家の「薬師の湯」に分析書掲示がないことも一役買っているのでは?

県資料によると、川治温泉には下記4本の源泉が記載されています。(スペック(数値ちがい多数あり代表的なもの)・湧出地は筆者にて付記)

1.温泉ホテルNo.1 (藤原町川治2)
  単純温泉
2.温泉ホテルNo.2 (藤原町川治2)
  単純温泉 47.8℃ pH=7.8 成分総計=0.349g/kg
3.共同源泉 (藤原町川治22)
  単純温泉 45.5(45.9)℃ pH=8.1 成分総計=0.419g/kg
4.共同浴場源泉 (藤原町高原66番地北)
  単純温泉(Na-Cl・HCO3・SO4型) 41.9(36.3)℃ pH=8.0 成分総計=0.30g/kg

うち、1.2は混合泉が蘭綾・明月苑、1の単独使用は如水庵(休業中?)、2の単独使用は山味亭こうわ、3.4はあわせて「川治温泉共同泉」といわれ、3は薬師の湯・一柳閣本館・東山閣・宿屋伝七、4は柏屋・登隆館で使用されている模様です。

「川治地区には、泉温40~50℃の温泉を湧出する横坑式の源泉が4坑あって・・・(中略)・・・横坑源泉は鬼怒川と男鹿川の合流点近くにあって、浅間山と呼ばれる小山地の南麓(男鹿川右岸部)から掘進されている。上流から2,1,3,4号の順で並んでおり、2-4号間の水平距離は約170mである」(中央温泉研究所 高橋保氏「川治温泉の源泉と温泉湧出状況の変化」より引用)という調査があるので、泉源は「薬師の湯」周辺に集中しているものと思われます。
ひょっとすると「薬師の湯」の浴槽奥にある配湯槽?(鍵のかかった扉あり)は横坑泉源のひとつなのかもしれません。

なお、各泉源は自噴と思われ、登隆館館内掲示によると、総湯量は3,400L/minに達するそうです。

 
【写真 上(左)】 宿屋伝七の内湯
【写真 下(右)】 山味亭こうわの浴槽

お湯はおおむね40℃台の単純温泉でCl、SO4、HCO3をバランスよく含みます。pH高めでとろみを帯びた、浴感おだやかな通ごのみのお湯といえそうです。

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