関東周辺の温泉入湯レポや御朱印情報をご紹介しています。対象エリアは、関東、甲信越、東海、南東北。
関東温泉紀行 / 関東御朱印紀行
■ 老神温泉 「金龍園」 〔 Pick Up温泉 〕
オフィシャルHP
片品川を挟んで「東明館」と向かい合う老神では比較的小規模な15室の宿。老神温泉旅館組合のHPに7.8.10号の3源泉を使用という情報があったので行ってみました。
廊下の奥に大浴場(混浴)、露天(混浴)、婦人風呂の3浴場があり、大浴場と露天はハダカ移動可。大浴場と露天に入りました。
カラン4、シャワー・シャンプー・ドライヤーあり。土曜15時で3人。
大浴場では老神7号泉、露天では老神8・10号の混合泉をつかっています。
大浴場は、熱湯槽(黒みかげ石枠側面タイル貼鉄平石敷3.4人、43℃)とぬる湯槽(同5.6人)。
熱湯槽よこの湯だめ槽(脱衣所掲示によるとここも浴槽らしいが狭くて入れず)に据えられた巨大湯の花キャッチャーに赤茶けた石の湯口から熱湯を15L/minほど投入。湯口のうえにコップあり。湯の花キャッチャーには茶色の湯の花がたくさん捕捉されています。
湯だめ槽から熱湯槽、熱湯槽から側面の孔を介してぬる湯槽へ流し込み、ぬる湯槽端の上面排湯口へ排湯のかけ流し。
露天は、熱湯槽(石造3.4人)とぬる湯槽(同5.6人)。茶色と白に変色した熱湯槽の岩の湯口から熱湯を投入で、ぬる湯槽へ流し込み。ぬる湯槽端の上面排湯口へ排湯のかけ流し。
大浴場と露天でお湯のニュアンスが違います。
大浴場は、無色透明でわずかにうす茶色の湯の花の出たお湯。おだやかな温泉臭+かすかな甘イオウ臭。ほぼ無味ながらなぜか異様に喉ごしよく美味しいです。屈曲率の加減か手足の先が青白く光り、明瞭なキシキシもあって硫酸塩泉のイメージ。
露天は、無色透明で白と茶色の湯の花の出たお湯。微塩味+湯口で弱いながら松之山系墨系アブラ臭がしたのにはびっくり。弱いキシキシでよく温まる弱食塩泉のイメージ。
8号泉と10号泉が混合だったのはちと残念でしたが、それでも複数の源泉をともにかけ流しで楽しめるのは贅沢。派手さはないものの、お湯そのものをじっくりと楽しめるいいお宿ではないでしょうか。
〔大浴場〕
アルカリ性単純温泉(Na-SO4・Cl型) 59.1℃、pH=8.5、湧出量=測定せず(動力揚湯)、成分総計=0.52g/kg、Na^+=132mg/kg (81.87mval%)、Ca^2+=23.0 (16.35)、Fe^2+=0.03、F^-=6.7、Cl^-=100 (39.56)、SO_4^2-=144 (42.29)、HS^-=3.2、陽イオン計=159 (7.02mval)、陰イオン計=294 (7.10mval)、メタけい酸=63.0、メタほう酸=5.2、硫化水素=0.0 <H16.10.12分析> (源泉名:老神温泉7号泉)
<温泉利用掲示> 加水なし 加温なし 濾過循環なし 消毒剤使用なし
〔露天〕
単純温泉 47.1℃、pH=7.2、湧出量不明、成分総計=0.48g/kg、Na^+=111mg/kg、Ca^2+=23.4、Fe^2+=0.44、F^-=5.8、Cl^-=94.6、SO_4^2-=126、陽イオン計=139、陰イオン計=259、メタけい酸=63.7、メタほう酸=5.0、硫化水素=0.0 <H16.11.1分析> (源泉名:老神温泉8号・10号混合泉)
<温泉利用掲示> 加水なし 気温の低い期間のみ加温 濾過循環なし 消毒剤使用なし
〔 2006年1月23日レポ 〕
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■ 老神温泉について
〔老神温泉について〕
<プロフィール>
老神温泉は沼田尾瀬エリアではもっとも規模の大きい20軒弱の旅館を擁する温泉地。
片品川が川幅を狭める老神渓谷沿いにあって、紅葉でも有名なところです。R120から引き込んだところにあり通過車両が少ないので、規模のわりには静かな温泉街です。
以前は片品川をはさんで西側を老神温泉、東側を穴原温泉と呼んでいたらしく、お湯のイメージも若干違います。
ふるくから”尾瀬の玄関口”を謳い、尾瀬・丸沼方面や日本の名滝100選「吹割の滝」の観光拠点として知られてきました。
この温泉地もバブル期、団体客に照準を合わせた収容100人以上の大型旅館が多く、やはり団体客離れと投資回収に苦しんでいるようです。平成17年3月、NHKの「難問解決 ご近所の底力」に活性化策を相談し、放映されています。
露天風呂をもつ宿が多く、12の旅館の露天風呂に十二支を定め、昭和62年に始められたスタンプラリー「露天風呂十二支巡り」は長らく親しまれましたが、現在は廃止されています。(全部回ると急須と12の干支茶碗が揃いました。)
「老神伝説」にちなむ”蛇まつり”はしばしばマスコミにとりあげられ、関東一ともいわれる朝市も名物です。
イベントこそ有名ですが、観光パンフや宿のHPなどを見ても周辺の観光地の紹介が多く、老神温泉自体を活性化して売り込んでいこうという意欲があまり感じられません。
旅館のすぐ下を流れる老神渓谷も見事だし、手頃な散策コースもいくつかあるようです。なにより施設20軒弱に対して10以上もの源泉という恵まれた温泉資源を持つ温泉地なので、個人客に訴求する新たな魅力を打ち出して、活性化を図ってほしいものです。
追記.2010年時点では、活性化にかなり気合いが入っているようです。
伊東園グループや「ぎょうざの満州」が進出し、外部の風が入ったことも大きいのかな?
<歴史>
〔老神伝説〕
「その昔、赤城山の神(蛇)と日光二荒山(男体山)の神(百足)が仲違いをして戦となった。油断から敵の矢に打たれた赤城の神は、赤城山のふもとまで逃げ帰ったところで、二荒山の神に追いつかれた。これまでか、と矢を地につき刺すと、あら不思議、そこから湯が湧き出した。矢傷をその湯に浸してみると、たちどころに傷が癒え、力をとりもどした赤城の神は、二荒山の神を追い返した。傷ついた神が敵を追い返す力をえたことにちなみ「追神」と呼ばれるようになり、いつしか転訛して「老神」となった。この伝説にちなんで、老神温泉では、毎年5月上旬の赤城神社例祭に張りぼての蛇をかつぎ歩く(蛇神輿の渡御)『老神温泉大蛇祭』がおこなわれている。」
有名な「老神伝説」という開湯伝承をもっています。あまりに「老神伝説」のインパクトが強いので、実史の情報がなかなかとれませんが、嘉永二年(1849)の温泉番付に「上州東老神湯」として載っているので、江戸後期からそれなりの温泉地として知られていたようです。
その後も順調に発展し、バブル期には団体客を迎え入れる大規模温泉地となりましたが、近年、個人客の時代を迎えて「田舎体験」など、新たな集客策が模索されています。
<温泉>
takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)によると、老神温泉で動力源泉17(内 利用源泉16)となっています。(その下にある「大楊温泉」も老神に含まれているかも。・・・「石亭旅館」のそばに「大楊橋」というのがある。)
また、老神温泉旅館組合のHPなどの情報や分析書を総合すると、源泉総数は15(一説に18)で、源泉利用状況は下記のとおり。
老神1号泉 アルカリ性単純温泉(Na-SO4・Cl型) 54.2℃ pH=8.8 0.47g/kg
東秀館
老神2号泉 単純硫黄温泉(Na・Ca-Cl・SO4型) 49.8℃ pH=8.7 0.496g/kg TS=5.1
湯元華亭
老神4号泉 単純硫黄温泉(Na-Cl・SO4型) 50.8℃ pH=7.8 0.64g/kg TS=6.1
東明館
老神5号泉 単純温泉(Na-Cl・SO4・Cl型) 38.6℃ pH=6.8 0.44g/kg TS=0.1
朝日ホテル/紫翠亭やまぐち/ホテル山口屋
老神6号泉
白雲閣漏田旅館(現 山楽荘本館)
老神7号泉 アルカリ性単純硫黄温泉(Na-SO4・Cl型) 59.1℃ pH=8.5 0.52g/kg TS=3.2
老神観光ホテル観山荘/伍楼閣/金龍園/亀鶴旅館/旅館石亭/若乃湯
老神8号泉 単純温泉 47.1℃ pH=7.8 0.48g/kg (10号泉との混合泉データ)
吟松亭あわしま/山楽荘/牧水苑/上田屋旅館/金龍園/楽善荘/ハーベルハート
老神9号泉
旧白雲閣漏田旅館?
老神10号泉 単純温泉(Na-Cl・SO4型) 61.5℃ pH=- 0.55g/kg
朝日ホテル/吟松亭あわしま/老神観光ホテル観山荘/紫翠亭やまぐち/ホテル山口屋/
山楽荘/牧水苑/上田屋旅館/金龍園/楽善荘/ハーベルハート
若乃湯1号泉
伍楼閣
若乃湯3号泉
伍楼閣/若乃湯
薬師の湯
山楽荘/旅館石亭
観音薬湯 アルカリ性単純温泉 50℃ pH=8.9
老神仙郷
pHの高いうすめの単純温泉ないしは単純硫黄温泉がメインで、うっすらとイオウ臭香る肌ざわりのよい美人の湯。F^-(フッ素イオン)の含有量が比較的多いのは片品尾瀬方面のお湯の特徴です。浴後きりっとした爽快感が出るので、以前は夏場によく行きました。
総湧出量ははっきりしませんが、泉源数が多く、かけ流しの施設が多いように思います。自家源泉の宿もあり、ほとんど日帰り可なので、温泉マニアには攻めがいのある温泉地かもしれません。
なお、片品川東岸、「東明館」の北には硫化によると思われる急峻なガレ沢がありますが、これと硫黄泉の旧穴原温泉との関連は不明です。
〔 2006年1月21日レポ(9月24日追補) 〕
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■ 小野上温泉 「小野上村温泉センター」 〔 Pick Up温泉 〕
オフィシャルHP
日帰り温泉の草分けとして紹介されることも多い、昭和56年開業の群馬屈指の老舗センター系施設。この地にはふるくから”塩川鉱泉”がありましたが、takayamaさんの「群馬の温泉ページ」に掲載されている県薬務課作成の温泉統計(平成11年度温泉利用状況)には、”塩川温泉”の記載はなく、小野上温泉で源泉2(内 利用掘削泉1、未利用自噴泉1)となっています。
現地の説明板には「温泉センター開設前(昭和56年)に44.5℃の自噴泉(恵の湯)、その後、500mの掘削で50.4℃、558L/minの自噴泉(幸の湯)を開発」とあるので、旧塩川鉱泉は枯渇してしまったのでしょうか。ただし、平成2年の分析書には”塩川温泉”とあり、施設の裏手にある貯湯槽にも「小野上村塩川温泉」とあって詳細不明。
平成4年、すぐそばに「小野上温泉」駅が開設、地域あげてのバックアップが感じられ、吾妻線沿線でも屈指の人気施設として知られてきました。めがねさん、イッサキさんのレポあり。
ここは、以前、よく入浴しましたがひさしぶり。
エントランスまわりはやや狭くて暗めですが、施設のふところが深く、いくつかの広間や個室があります。WCの手洗いにも温泉が使われているのにはおどろき。
浴場をとりまくようにL字型の脱衣所。ロッカー100円没収式はセンター系としては時代おくれか?
浴場はかなり広くて、脱衣所側から順に、サウナ、水風呂(カルキ臭なし)、ローマ風呂風円形浴槽(大理石枠タイル貼10人位)、ジャグジー槽(同3.4人)、銘石風呂(岩枠石貼12人以上)と人気の露天(鉄平石枠玉石敷12人以上、半分屋根付)。昭和56年開業の施設にしては多彩な陣容で、これも人気の一因かな。
カラン20位。一部に”源泉”の札の掛かったカランがありますが、他のカランも源泉使用かと思います。土曜12時で10~20人とけっこう盛況。老舗の施設らしく場なれた風の年齢高めの客層。
円形浴槽は、浴槽中央の大理石の湯口から投入+側面注入で底面吸湯+オーバーフロー。
銘石風呂&露天は、石の湯口から投入で底面自然流下?+オーバーフロー。
露天と円形浴槽はややぬるめ、その他の浴槽はやや熱めです。
ほぼ無色透明(露天はうす茶色にやや懸濁し白とうす茶の浮遊物あり)のお湯は、僅微重曹味と鼻に抜けるような薬味。ハーブの”ルー”に似た感じの苦薬っぽい匂いは近くのあづま温泉「桔梗館」と同系。(マイナーなたとえですみません(笑))
明瞭なツルすべととろみがあり、重曹やアルカリよりもメタけい酸が効いているようなイメージのお湯。かなり温もり感が強く水風呂直行可。
お湯はおおむね加水がありますが、銘石風呂の湯口そばはわりあいに濃度感が高く、とろみや温泉臭もしっかりとしていて、わずかながらアワつきもありました。ジャグジー槽もけっこうお湯がいいです。
外の駐車場入口に飲泉所があり、ここの熱いお湯にはかなり強いツルすべととろみが感じられ、おそらく非加水と思われます。浴槽のお湯も冬場は加水しないようなので、冬場が狙い目か?
以前は恵の湯使用だったからか、もっと塩気の強いお湯のイメージがありますが、これはこれでなかなかにいいお湯です。派手さはないですが、老舗らしい安定感のある施設かと思います。
■浴場掲示 <H15.4.7分析/源泉名:小野上温泉幸の湯>
Na-塩化物温泉 47.1℃、pH=8.8、湧出量不明、成分総計=1.18g/kg、Na^+=357mg/kg、Cl^-=570、HCO_3^-=52.5、CO_3^2-=36.1、陽イオン計=380、陰イオン計=628、メタけい酸=178、メタほう酸=5.8 (写真不明瞭につき間違いあるかも)
■浴場掲示 <H12.10.16分析/源泉名:小野上温泉幸の湯>
Na-塩化物温泉 47.6℃、pH=8.8、湧出量測定せず(動力揚湯)、成分総計=1.23g/kg、Na^+=376mg/kg (95.43mval%)、Cl^-=529 (84.92)、HCO_3^-=29.1、CO_3^2-=39.1、陽イオン計=401 (17.2mval)、陰イオン計=640 (17.6mval) メタけい酸=187、メタほう酸=6.2
■屋外飲泉所掲示 <H12.10.16分析/源泉名:小野上温泉幸の湯>
Na-塩化物温泉 46.4℃、pH=8.8、1.9L/min(動力揚湯)、成分総計=1.24g/kg、Na^+=377mg/kg (95.36mval%)、Cl^-=537 (84.94)、HCO_3^-=39.1、CO_3^2-=40.9、陽イオン計=402 (17.2mval)、陰イオン計=648 (17.8mval) メタけい酸=186、メタほう酸=6.1
■浴場掲示 <H2.11.28分析/源泉名:塩川温泉幸の湯>
Na-塩化物温泉 48.1℃、pH=8.55、湧出量不明、成分総計=1.264g/kg、Na^+=431.5mg/kg 、Cl^-=614.6、HCO_3^-=21.2、CO_3^2-=29.7、陽イオン計=455.6、陰イオン計=692.7、メタけい酸=112.1、メタほう酸=3.7
〔 2005年11月28日レポ 〕
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【 コラム 】 温泉宿の名前-1
そこで、今回は温泉宿の名前についてまとめてみます。
かなり大きなテーマなので、今後すこしづつ補強していきたいと思います。
温泉宿にとって、ネーミングは宿のイメージを印象づける大切なものです。
お客はまず名前をきいて、「高そうだな~」とか、「お洒落っぽい」とか、はたまた「なんかショボそ~」とか感じるわけで、それは宿がリニューアルで名前を一新する例が多いことからもわかります。
たとえば、塩原大網温泉の一軒宿は、近年、「ホテルニュー大網」 → 「湯守田中屋」 → 「温泉 宿小町」と2回も宿名を改めています。
有名宿になるとそれ自体がもはやブランドで、和倉の「加賀屋」、修善寺の「あさば」など、国内はおろか海外にまでその名が知られています。
宿名は時代とともに流行りすたりがあり、その流れを辿っていくと時代ごとのお客の嗜好が浮きぼりになって、なかなか興味深いテーマとなりそうです。
宿名はいくつかのタイプに分類されます。
ここでは、タイプごとに分類し、その特徴をみていきたいと思います。
なお、これから書く内容は、あくまでも筆者の個人的主観によるもので、例外も多々あります。念のためお断りしておきます。
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<温泉宿の名前の分類>
1.そのまんま型
温泉名や源泉名をそのまま宿名にしてしまうもの。当然ながら一軒宿が多く、数軒ある場合も湯元の場合が多い。
(例)蔦温泉(青森)、真木温泉(山梨)、諏訪温泉(鹿児島)
2.和風屋号型
2-a.□□屋(家)
江戸期には宿名に屋号を用いるケースが多く、その伝統を汲むもの。老舗温泉地の老舗宿に多い。民宿などでオーナーの苗字+屋とする例も多い。
(例)東山「有馬屋」(福島)、和倉「加賀屋」(石川)、湯村「朝野家」(兵庫)
2-b.□□旅館
2-b-a.□□旅館(旅館□□)
由緒正しき老舗旅館と大温泉地の比較的中規模な年季入りめの宿に多い。昔ながらのギミックなし直球勝負浴槽で、源泉をザコザコにかけ流ししてたりするので狙い目。
(例)鉛「藤三旅館」(岩手)、修善寺「新井旅館」(静岡)、垂玉「山口旅館」(熊本)
2-b-b.□□温泉旅館
1の派生型。これも一軒宿が多く、お湯に定評のある宿が多い。
(例)五色「五色温泉旅館」(北海道)、酸ヶ湯「酸ヶ湯温泉旅館」(青森)、黒薙「黒薙温泉旅館」(富山)
2-b-c.□□屋(家)旅館
2-aの派生型。これも老舗温泉地の老舗宿に多い。”屋”と”旅館”は屋上屋だが、つかいふるされた”旅館”というワードが陳腐化せず、逆に風格をもたらしているのが凄い。
(例)銀山「能登屋旅館」(山形)、草津「大阪屋旅館」(群馬)、明礬「岡本屋旅館」(大分)
3.ホテル型
(※これから書くのはあくまでも個人的な評価で、例外も多くあることを重ねてお断りしておきます。)
近年、いちばん苦戦しているのがこのタイプ。背景として、トレンドの”新・和風感覚”を打ち出しにくいということもあるのでは。「□□ホテル ■■亭」など和風のサブ名称をつける例が増えているのもこれを裏づけていると思う。
傾向としては、団体向けの大型キンキラ豪華系と家族経営的な小規模宿に二分される。
お湯的にはハズレ指数が高まるが、源泉を所有している有力施設やビジホなどでは自家源泉を潤沢につかっていることもあるので、ひとくくりにはできない。当たりはずれの大きいタイプといえる。
3-a.□□ホテル(□□観光ホテル、□□温泉ホテル etc...)
ふつう□□には観光地名や温泉地名が入る。わりに古くからあるパターンで、とくに「□□ホテル」型はレトロで格式の高い宿が意外に多い。”ロイヤル””グランド””国際”などのプレステージ的形容詞が入るやつもけっこうある。軒数が多く施設的に松から梅まで、お湯的にも名湯からスカまで玉石混淆。
(例)□□ホテル型
鳴子「鳴子ホテル」(宮城)、熊の湯「熊の湯ホテル」(長野)、日奈久「不知火ホテル」(熊本)
(例)□□観光ホテル型
新赤倉「赤倉観光ホテル」(新潟)、片山津「加賀観光ホテル」(石川)、京町「京町観光ホテル」(宮崎)
(例)□□温泉ホテル型
万座「万座温泉ホテル」(群馬)、塩壺「塩壺温泉ホテル」(長野)、大沢「大沢温泉ホテル」(静岡)
3-b.ホテル□□
高度成長期には一世を風靡したが、近年減りつつある。とくに「ホテルニュー□□」とくると、「あ~、団体客様御用達の歓楽ぎんぎらホテルか・・・」と思われる可能性大だ。ビジホや小規模宿ではオーナーの苗字が入るケースもある。□□に個性があると格調を保つが、□□がまずいと一気にチープでB級なイメージが出るので□□が生命線か。
(例)例示はやめときます (^^;)
3-c.亜流型(ロッジ□□、ビラ□□、ヒュッテ□□など)
小規模なスキー宿や山小屋などにみられる。立地的に温泉はサブ的なものとなるので、客層も温泉好きというよりはスキー客や登山客が多い。
4.和風伝統型
宿やすまいなどをあらわす和様のワードを末尾に据えたもの。
4-a.□□荘(□□山荘、□□別荘)
比較的こぶりな旅館や公共の宿、会社の保養施設などでもよくつかわれる。語感的にやや軽いが、熱海「大観荘」、天橋立「文殊荘」など格式高い老舗旅館にもみられる間口の広いタイプ。山荘型や別荘型はひと味違った重みが出てくるような気がする。とくに別荘型は高級宿が多い。
(例)□□荘型
二岐「大丸あすなろ荘」(福島)、塩河原「渓山荘」(群馬)、新川妙見「妙見石原荘」(鹿児島)
(例)□□山荘型
温川「温川山荘」(青森)、谷川「水上山荘」(群馬)、長門湯本「大谷山荘」(山口)
(例)□□別荘型
伊豆長岡「古奈別荘」(静岡)、道後「大和屋別荘」(愛媛)、由布院「亀の井別荘」(大分)
4-b.□□館
比較的歴史の古い温泉地の老舗に多い。使い古されているのに陳腐化せず、安定感もある。湯抜き栓一ケ所だけの古き良き浴槽があったりする。
(例)いわき湯本「松柏館」(福島)、法師「長壽館」(群馬)、湯原「湯原館」(岡山)
4-c.□□閣
これも歴史ある老舗宿でつかわれる。和風の重厚で格調高いイメージがあるので、不用意に安宿でつかうと名前負けするおそれあり(笑)意外に山中の宿でもつかわれる。
(例)天人峡「天人閣」(北海道)、松之山「凌雲閣」(新潟)、仙石原「俵石閣」(神奈川)
4-d.□□楼
これも老舗旅館御用達の格調高いタイプ。箱根に多い。「頓狂楼早雲閣」などというcとの複合型もある。
(例)塔ノ沢「福住楼」(神奈川)、仙石原「仙郷楼」(神奈川)、三朝「万翆楼」(鳥取)
4-e.□□苑/□□園
パターンが散っていてまとめにくいが、老舗温泉地の中堅旅館に多いのか・・・。
(例)□□苑
箱根湯本「金湯苑」(神奈川)、久美浜「碧翆御苑」(京都)、鉄輪「神和苑」(大分)
(例)□□園
土湯「天景園」(福島)、老神「金龍園」(群馬)、皆生「海潮園」(鳥取)
4-f.□□庵
やわらかな語感を醸し、高級隠れ宿の人気にともない一気に台頭しそうなタイプ。1日●組限定などという、料理にもこだわった小粋なおこもり宿向けか。
(例)箱根湯本「桜庵」(神奈川)、浅間「喜祥庵」(長野)、谷川「仙寿庵」(群馬)
4-g.□□亭
これも老舗に多い。とくに「●●ホテル □□亭」という複合型が多い。
(例)伊香保「千明仁泉亭」(群馬)、七味「渓山亭」(長野)、下呂「下呂ロイヤルホテル雅亭」(岐阜)
5.意匠創作型
いわくいわれやコンセプトを込めた凝ったタイプ。当然ながら高級宿に多い。
5-a.由来型
史跡や歴史的な由来にもとづくもの。意外にすくない。
(例)積翠寺「要害」(山梨)、龍神「上御殿」「下御殿」(和歌山)、有馬「陶泉御所坊」(兵庫)
5-b.嘉字型
客と宿に幸あれかし、と名付けられたのかな? 御利益がありそう。
(例)(違ってたらごめんなさい ^^;)
箱根湯本「萬翆楼福住」(神奈川)、伊豆山「桃李境」(静岡)、宇奈月「延楽」(富山)
5-c.料亭型
難読漢字やかなまじりの格調高いもの。割烹旅館の独壇場。高そ~(笑)
(例)奥湯河原「海石榴」(神奈川)、湯谷「はづ木」(愛知)、雲仙「半水廬」(長崎)
5-d.とにかく長い型
最近増えているのが「●●●の宿」という枕詞がつくやつ。鬼怒川の「鬼怒川旅物語りと言う名の旅館」は枕詞なしでこの長さ、凄い!(笑)。
(例)村杉「ふるさとがしのばれる宿 角屋旅館」(新潟)、鬼怒川「清しきひとの宿 鬼怒川御苑」(栃木)、湯西川「彩り湯かしき花と華」(栃木)
<つづく>
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